「はじめまして。私、プロクト株式会社の
当方、家庭教師という職に就いて長くなりますが、ここまで反応の薄いお客さんは初めてです。
お母さんはずっとニコニコしながら料金表とにらめっこしてるし、子供は興味なさげにスマホいじってるし。
だが、カテキョとして数々の商談を成功させてきたオレには切り札がある。今までで一度もスベッタことがないギャグを出す時だ。
「あ、あの~。
「……」
「……」
くそっ!! オレはギャグなんてやったことないんだよ!! ふざけんな!
「大将、生もう一杯!!」
結局あの後空気が悪くなって商談は失敗に終わった。上司には怒られるし、やってらんねえ。
オレは頑張ってんだ! と心の中で叫びながらビールをあおっているとふとポスターが目に入った。
「……世界一周の旅? 『あなたの価値観を変える』か……」
オレは居酒屋を飛び出て夜の街に繰り出した……
あ、あれ? ここはどこ? 私はダリ。サルバドールダリ。
目が覚めるとそこは森の中だった。木々が青々と茂って木漏れ日が温かい。
あ~落ち着く~。
「今何時だろ? ……え?」
寝ぼけながらもスマホを起動し画面をのぞいた。
「11時ィ~?!?!」
オレの声が山中に反響し木々を揺らし、小鳥たちを逃がす。ああ、自然とはなんとも趣深い。
そっとスマホの電源を切り、森を進むことにした。草や花が生い茂り、歩くたび良いにおいがする。すると後ろから幼げな声が聞こえた。
「声がしたのはこっちの方か~?」
「チルノちゃん、もう帰ろうよ~」
むむ? 幼女2人がこちらに歩いてきてるではないか。怖がらせないように商談で培った優しい笑顔で話しかけてやるとしよう。
「やあ」軽く右手上げて営業スマイル!!
「で、でたぁ~~!! お前だな! さっき大声出したのは!!」
チルノ、と呼ばれた幼女Aがビシッとこちらを指さす。
「ち、チルノちゃん危ないよ~。この人ヤバい人だよ~」
幼女Bはこちらに失礼なことをいいながら幼女Aにしがみつく。
すると、幼女Aがおもむろに両手をこちらにひろげ足を開いた。
「あんな大声出されると迷惑なんだ! あたいが退治してやる!!」
なんだ、ヒーローごっこをしてたのか。仕方ないのってあげよう。
「グハハハ、お前の国を守りたければ必殺技を使うがよい!!」
「本性を現したな! 英吉利牛と一緒に冷凍保存してやるわ!!」
「あんたたち、うちの敷地で何してんのよ」
「ゲッ、博麗の巫女!!」
まずい! 大人が来てしまった。少しだけ恥ずかしいではないか。紳士として対応しよう。
「ゴホン、いやいや私はこの子たちと遊んであげてただけですよ」
完璧な対応だと思ったのだが彼女はこちらを疑うような視線を向けてきた。
「あんた、どこから来たのよ」
しまった! ここは彼女の敷地内なのか。「酒に酔ってて覚えてなくて」といえば大人として終わりだ。そうだ、ここは某論破王にならって論点ずらしをするとしよう。これ、商談でも役立ちます。
「そういうあなたはなかなか珍しい恰好をしていらっしゃいますね。巫女さんですか? いやはや若いのに伝統を継ぐとはご立派でございます。オホホホ。……では!」
といって帰ろうとしたが先ほどの幼女たちに阻まれてしまった。
「なんだお前、博麗の巫女知らないのか! バカなんだな!」
「チルノちゃん失礼だよ。適当いって逃げようとしてたんだよ!」
クリーンヒットォ! 幼女Bに図星を突かれてしまった。巫女さんの顔つきは険しくなる一方だし、最終手段だ。
「スイヤセンっした──ッ! 酔っぱらってなんも覚えてないんスヨー!!!」
オレは腰を90度に曲げ相手から許しが出るのを待っていると。
「はぁ。紫いるんでしょ? これもあんたの仕業?」
巫女さんは誰かと話し出したが相手が見えない。電話だろうか?
しばらくしたのち、巫女さんから許しをいただいた。
のだがどうやらここから帰る方法がないらしい。
「交通手段もあまり発達していないところまで来てしまったのか……」
「まあそんなとこ。帰る手段が整うまでちょっと待ってて」
オレ思う、ゆえにオレあり。オレは昨夜社会から逃げ出したくてたまらなかった。そしてここにたどり着いた。しかも、社会の喧騒とは程遠い田舎町。
「オレ、ココに引っ越します!!!」