怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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ハロウィンっておおむね盆踊りだよね

とりあえず……とりあえずしばらくの所はなんとかなった。

フィリップのおっさんに『王様』経由で割り増し料金支払って日曜学校やってもらったり。

マティアス?任せられねえって。ハードな哲学問題突き付けそうだもん。

あとは暇そうなプナン族のおっさんに物資を分けて子供たちにサバイバル講習がてらブッシュハウスの建て方を教えてもらったり……

私もできるだけは教えたけどね。

木で軽めの家作って石くくり付けて海に沈める。これで部屋とか家ができる。

そこに発光イソギンチャクアビスを持ち込んで灯りにする。

水中ハンモックも手本見せて自作できるようにした。

ヤシの皮とかから頑丈な縄編んで、ヤシの実とかココナッツを浮きにして、石を重しにして……って感じだ。これでけっこう自由自在に繭型のハンモックができる。

 

何やってるかって?教育だよ!

さすがに四則演算と読み書きと料理くらいは教えとかないとまずいって……

半年くらいかかったかなあ?いやあ……がんばったよ……

日曜教会で勉強と礼拝やって。

土曜日にはプロジェクター借りて映画上映会やって情操教育するしさあ……

 

ジブリ、香港カンフー映画、インド映画のローテーションだよ。

小学校から中学校の精神発達状態の子にはそのくらいがいいんだって……!

古いハリウッドも流したね。ジャン・クロード・ヴァンダムとアーノルド・シュワルツェネッガーとブルース・ウィリスには頭が上がんねえよ……

チョイスの古さ?それはママが私に見せたのがそう言うのだったからだね……

でも情操教育にはそういうのがいいじゃん?

勧善懲悪で悪党をぶちのめしてキスしてハッピーエンドだ。

善悪を教えるには結局それでいいんだって……!

 

まあ……正直私も映画鑑賞会はいい休養になったよ。

舞台用の広いイカダにスクリーン張ってみんなで海面から顔出して見るわけだ。

これが快適でさあ……

なんなら海辺の村の人間たちもボート出して鑑賞しに来た。

映画で人集まるの目当てで出店や屋台も来てさあ。

楽しかったね……

 

 

まあ……そんなわけでボルネオに来てから一年がたとうとしていた。

チビ共が来てから半年。収穫祭をかねたハロウィンの季節だ。

とはいえ、私らがバケモンの仮装したらそれはそれで何か問題があるだろ。

かといって死者を弔うとなってもまだ死者いねえし。

 

だがあえて盆踊りだ。趣旨としてはおおむねハロウィンだろ。

私がママから教わった祭りはそれしか知らねえし。

その上、なんならママの思い出話と映像記録しかねえ!

でもがんばったよ私は。それっぽいやぐら組んで太鼓叩いて歌って踊りも教えたよ。

マティアスと粘り強いレスバもしたね。

 

「……すごいものだな。これが日本の祭りか?」

 

設営テントにレオンがビールをもってやってくる。

「たぶんね。こんな感じじゃないかな?」

「ボンダンス……なぜ日本の祭りを?」

「盆踊りってさあ、あの世から里帰りしに来た死者をもてなして慰める儀式なんだよ。たしか」

 

おっ、花火あがった。高かったんだよこれ?

子供たちがキャッキャ言ってる。買った甲斐があったよ……

 

「君たちに死者はまだいないだろう?」

「だからこれは人間たちへの償いの意味も兼ねてる。死者を慰めて、どうか祟らないでくださいってわけ」

「……そうだな、そうあってくれることを祈るよ。俺も」

 

神妙になっちまうよね。

サブスクから引っ張ってきた炭坑節がスピーカーから流れる。

不思議と、懐かしくなるリズムだ。鎮魂にはちょうどいい。

 

「パパ~!」

「おうどうしたエレナ?難しい顔して!祭りだぞ!笑え笑え!」

「おかえり、ジャガーノート。アリス、一緒におやつを食べよう」

「うんパパ!」

 

ジャガーノートと娘のアリスが浴衣を着てやってくる。

そうだよ浴衣だよ。こういうのも買ったり、布から裁縫したり、マジで大変だったよ。

でもまあ……アリスみたいな子供がお菓子をもって浴衣を着て祭りに行ける……

そういう状況を実現できた。ならそれでいいんだろう。

 

「いや、この祭りの意味とか、金どうしよっかとか考えてたらさあ」

 

そう、金だ。アビス細胞治療薬や肥料はジャムールと私以外にも10人近くが作れるようになった。量も十分だ。基幹産業ではある……あるんだけどさあ……

これは正直、人権と安全保障の代金みたいなところあるし。

アビス素材の売却もそろそろ頭打ちになってきたし……!正直在庫が余りつつある……

あとはもう漁業くらいしかねえ……!そう!この村には!現金収入があんまりねえ!金が!ねえんだ!!

たすけてくれ~!

 

「今日くらいはいいだろ。楽しまなきゃ損だぜ」

「……そうだね。まあ、がんばったよ私は……がんばってるよねえ!?」

 

迫真の顔で詰め寄ったら頬になんか冷たいもん押し付けられた。

ジャガーノートがかき氷くれたわ。仙草ゼリーと練乳とフルーツ乗ってるやつ。

うめえ……

 

「じゃなきゃこんなん毎日食えないだろ。お前がいなきゃこの祭りはなかった。違うか」

「おう……」

「正確にはお前の子じゃないけど、お前も親になるんだろ」

「まあね……」

 

リスナーちゃんも妊娠したんだよね。たぶんジャムールの子。

これ結構、コヴナントの妊娠率って低いな?ほぼ毎日やってるんだけどね。

 

「大丈夫さ!君たちコヴナントは成長が早い。心配するほどの事じゃないさ」

「そうなんだけどさあ……金の事とかいろいろ考えちゃうわけよ」

「オイオイ……見ろよこの村!お前が作ったんだぞ。お前はちゃんとリーダーやれてるよ」

 

私は砂浜から海に浮かぶ村の海上部分を見る。南国の夜に、ぼんやりとLEDランタンの灯りがともる。

 

「……きれいなもんだな。そっか……これを私たちが作ったんだな……え、マジ?いつのまにこんなデカくなったの?」

 

思ったよりデカいしちゃんとしてるわ。こんなんだもん。

 

【挿絵表示】

 

「だろぉ~?案外大したことしてるんだってお前は!ったく……お前を褒めるの苦手なんだよ」

「娘はめっちゃ褒めてるよね」

「当たり前だろ!私の娘だからな!」

 

自然と笑顔になっちゃうね……

そこから自然とジャガーノート一家は祭り囃子の中に消えていった。

いやがんばったな私……ママに誇れるくらい立派にやったよなあ?

 

「ふー……」

 

椅子に背を持たせかけて星を見る。思えば遠くに来たもんだ……

 

「エ、エレナ!エレナ!やりましたよ私!」

「どしたんジャムール……てオイ!」

「わ、私たちの子です……えへへ……」

 

ジャムールの手にはたこ足の赤子が産着につつまれて眠ってた。

マジで!?リスナーちゃんの子もう産まれたの!?いやだいぶお腹デカくなってたけど陣痛とかそういうのないの!?

 

「あれ!?じゃあリスナーちゃんは!?」

「ま、まだまだ生まれるらしいです……」

「おバカ!一緒に行くぞ!」

「さ、産婆さんも一応ついてるんですけど、わたし、わたしどうしてもうれしくて、エレナに報告したくて」

「わかった先行くわ!赤ちゃんたのむ!」

「あ、はい」

 

私は気づけば駆けだしていた。

浴衣を脱いで海に飛び込む!ちょっと泳ぐとイカダが無数にある海面でリスナーちゃんが産婆さんと浮かんでた。

「ん……んん~!え、エレナ……見て、私たちの赤ちゃん……」

 

オイもうすでに2人出てきてるじゃねえか!マジ?

産婆のおばさんが神妙にお腹をなでて探り、うなずく。

 

「これで全員だね。三つ子が産まれたよ。褒めてやりな。あとしっかり栄養取って寝るんだ。わかったね」

「よし、ジャムールはリスナーちゃんと海の中の家でゆっくり休んでて。私は赤ちゃんの面倒みるから。……ありがとう、すごいよリスナーちゃんは」

 

おぎゃあおぎゃあと赤ちゃんの声が祝福のように聞こえる。

 

「よかった……私の赤ちゃん……うふふ……」

「は、はい……!わたし、ちゃんと守りますんで……」

 

いや~かわいいな!なんだか私が産んだような気すらしてきたわ。

がんばろう……がんばろう国家運営!やるぞ~!うお~!

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