結局まず私がプラウダとコンタクトを取って、少人数で交渉を手探りでやっていく……
そういう形になった。
つまり、ネット会議で王様と鬼司令監修の上で脳内掲示板でプラウダと交渉するわけだ。
「よし、やってくれ。情報の開示は事前の打ち合わせ通りに」
「わかりました」
ウーッ!胃が痛い!緊張する交渉だよ……
エレナ:プラウダ?実は困ったことになった。話がしたい。
プラウダ:何だい?今は多少時間がある。聞こうじゃないか。
「つながりました。今行けそうです」
「わかった、やってくれ」
エレナ:これは亡命者からの情報で確かな事はわからないんだけど、どうもアビスは人間が作った物らしい。どう思う?
プラウダ:なるほど。まあそうだろうね。そこまでわかっているという事は具体的な人物もわかってて、その上で私たちがどうするかという話だね?
エレナ:そうだ。お前自身がどうしたいかも含めてな。
プラウダ:ではまずその人物について聞かないとね。
私はネット会談にこの会話をほぼ書き込みながら王様たちからの指示も聞いて情報を明かしていった。
明神ヤバいよって。今わかってるジョーさんからの情報をほぼ正確にだけど。
エレナ:明神カズマってのはそういうやつらしい……でもあくまで亡命者からの話だし。
プラウダ:ふむ、なるほどね……べつに今すぐどうこうしようというほどは怒っていないよ。そこまで私は短絡的じゃない。けれど、気に入らないし、むしろチャンスだね。
エレナ:チャンスって何の?
プラウダ:愚昧なる創造主を殺して民族の独立を得る。建国神話としては悪くない神話だ。とはいえ、相手の戦力もわからないではね。それに、そろそろまどろっこしくなってきた。どうせそっちはすでに人間と会議しながらやってるんだろう?ネットでそれに参加できるかい?
これもネット会議に伝える。GOサイン出たわ。
エレナ:そっちネット環境あるの?
プラウダ:あるよ。君たちが水中と海上で生活してるようにね。さ、そっちのネット会議アプリとパスワードをくれ。こっちのメールアドレスはこれだ。『アドレス』
うおっ、また文章添付だ。アドレスだけで済んでよかった。
エレナ:わかった。技術的な問題でつなぐまでしばらくかかるから待っててね。
プラウダ:いいとも。
その日のうちにビデオ通話までいけたよ……そういうわけでネット会議だ。
どっと疲れるね。
しばらくネット環境が整うまで海上部分の家でぐったりして休憩してた。
ああ、こんなにも空が青いのになんで私は家でパソコン会議してんだ……
■
そういうわけで仕切り直してネット会議だ。
プラウダの方は……うーん、背景は丸太で組んだ頑丈なログハウスっぽいね。
暖炉とか絨毯とかある。北国って感じだ。実際は最南端だろうけど。
「改めてよろしく。私はルルイエ閉鎖海域国の元首、プラウダだ」
軽く手を挙げて挨拶するプラウダの姿はあの日のままだ。
つまり白いレースのフワフワドレスだ。
それは石膏みたいな血の気のない白い肌と金色の目、二本角で人外の美を体現している。
私今日Tシャツなんだけど!?個性の差を感じる……
「ブルネイ連邦大統領ヴァイジャヤ・カシャルだ!」
「副大統領エドモンド・ウォンだ」
「私はブルネイのコヴナント代表ってなんか立憲君主みたいなのになったよ」
プラウダのふーんって顔からはなんも読み取れない。
明神にどこまで怒ってるかとかそういう真意はなんもだ。
「そうか。面白い地位になったね。さて、はじめようか。君たちはあれだろう?どうせ明神とやらと私たちをぶつけ合わせたいんだろう?」
「言葉を飾らずに言えば、そうなる。だが今の所日本がどこまで『おかしく』なっているか不明だ。こちらとしては拙速に戦端を開くより、事実確認を重視したい」
プラウダがクスクス笑う。うーん、お嬢様というよりご令嬢って感じだ。
「こちらもそこまでは急がない、いやむしろもう少し時間が欲しいかな。戦力の拡充に時間が欲しいのはそちらも同じだろう?」
「ああ、急な行動は控えてほしい。あくまでお願いだが」
「とはいえ、明神の側にどんな隠し玉があるかわかったものじゃない。そちらも軍拡を急いでほしいね」
「無論だ」
プラウダは優雅な仕草でお茶を入れて小奇麗なカップで飲む。紅茶かな?
「そうだな……こういう筋書きはどうだろう。君たちの戦争が熟したならば、私たちはエレナの共存派とは別の『秩序ある分断』を選んだ派閥として国家の名乗りを上げよう」
クッキーまで持ち込んでるよコイツ。
「そして……時が来たら『コヴナントの怒りとして創造主を討つ』。たとえば、そうだな……『かわいそうなレジスタンスから真実を聞いて義憤で立ち上がった』とかね。そうだ、そもそも日本全体と戦う必要もない。レジスタンスに協力してクーデターしてもらえばいい。そして、全ての責任を明神に押し付けて『ボルネオ対日本』ではなく、『明神対世界』の構図にすれば日本だって悪い顔はしないだろう」
話に合わせてパキッとクッキー割るしさあ……自分のかわいさを解ってるよね。
「事実はどうあれ、『そうだったこと』にしてしまえばいい。きっと明神博士も気に入ってくれる演目さ。それでことが終われば『君たちの奮闘によって、敵対は得策ではないと悟った』……『冷戦の始まり』だ。そういうシナリオはどうだろう?ああ、もちろん茶番さ。本当に敵対するわけじゃない。今はね」
うーん、圧がある。圧があるよ。
ほんとかー?ほんとに止まるかー?
私たちに都合よすぎないかー?そもそもそれでどうやって人類滅ぼすんだよ。
数百年スパンでやる気とか言ってたから、総合的に見て人類の戦力が削れればいいのか?
「……なるほど。茶番というのは、実に便利な言葉だ」
こちらから口を開いたのは王様だ。
「そうであることを、願っておこう」
うおっ、こっちもすげえ圧……軍人の本気の脅しだ……
私はこのヒリついた場から1秒でも早く逃げたくなった。
でも私のはじめた物語だからな~!
「その通りさ、真実がどちらだったかなど、今決める必要はない。そして、その時にシナリオを選べば、それが『真実』だったことになる。そうだろう?」
「いいだろう。君たちが『実は味方だった』というシナリオになるように……私は努力する。君たちが、余計な『誘惑』に駆られないようにな」
プラウダもしれっとした顔でこの重々しい交渉を乗り切ってるからスゲエよ。
頭いいだけで説明できねえよ。どんな教育受けてきたんだよ。
「では、時が来るまであちらの調査とお膳立てを頼むよ。私たちが、いざという時の『切り札』であり続けられるようにね……」
そういうわけでヒリついたまま会談は無事に終わった。
後で王様とプラウダ双方から色々愚痴られたよ。
プラウダは『君は良い相手と組んだね。やはり人類根絶は難事業になりそうだ』とか。
王様からは『やはり人類とは相いれない派閥もある、か……』とか。
なんか……なんかバチバチの敵対関係の間に勝手に挟まれている……!
いや、最初から間に挟まる位置で家作っちゃった感じというか……
気が重いよ~!
どこまで書こう?
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このまま一気に行こうぜ!
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もうちっとだけ続くんじゃ