怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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南の島のクリスマス

まあ、そういう政治上の問題は色々ありつつもクリスマスだ。

色々あってもお祝い事はした方がいいからな……

今日は港にある超広い教会で夜ミサだよ。

クリスマス飾りは復興した港町のそこら中に飾ってある。

あるけどやっぱり普通にあったかいから、あんま似合ってない。

まあきれいだけど。

 

教会はロングハウスの建築を基本にして超でかい長屋形式だ。

そこにおごそかな飾りのついた長椅子やら飾りやらを運び込んだ。

でけえ十字架も木を彫って作ったし。

いやあ……自分で作っておきながら本当に荘厳だな。

今日ばかりは牧師は二人ともそろっている。

 

『妙なる御歌は天より響きぬ。主イエスは生まれぬ。ノーエール、ノ~エ~ル……』

 

コヴナントと人間のコーラスが重なり、讃美歌が神々しく響く。

いや、本当に神々しく感じるんだよ。マティアスがピアノ伴奏してるはずなのに。

二千年練りに練られた賛美のための歌スゲエ~。

神妙な気持ちになっちゃうよね。

 

『今ぞ生まれし、君を称えよ。定めたまいし神の御座を、離れて降り。

御霊によりて乙女に宿り、世人の中に住むべきために。

今ぞ生まれし、君を称えよ!』

 

神々しいんだよ……強制的に心を揺り動かされるからすごいよね讃美歌。

歌詞だけ見ると平沢進だけど。

子供たちや人間の中には涙ぐむ者もいる。

まあ……人間の場合はめちゃくちゃ苦労しただろうからね。

そこにマティアスの説法がスーッと入るわけよ。

 

「メリークリスマス。おめでとうございます。今年もさまざまな苦難がありましたが、それでも皆様とこうしてクリスマスを祝えることをうれしく思います」

 

長いんだよ、クリスマスの説教って……

でも讃美歌で神妙な気持ちになるから聞きやすいからこれ作ったカソリックはとんでもねえわ。

参考にしたいね。演出力ってやつを……

 

「特に今年は復興の年でした。皆様も希望を多くもてたことを喜びつつ、しかしそういった目に見える現物的な希望ではなく、今夜は宗教的な希望、救いについて思いを巡らせるべきでしょう」

 

こいつ身振り手振りも使うから本当に演説向きなんだよね。

なんでサイコ野郎にそんな才能があるんだよ。

 

「キリスト教においては、イエスは神の子であり、神自身です。

わかりやすく言えば皆さんがゲームをする時に使うアバターのようなものとお考え下さい。

なぜそのようなことをされたか?それは神が人を愛しているからです。

神にとって我々は小魚やアリのようなものです。

実際、我々の身の程という物はそういうものです。嵐に会えば流されるしかない。

それは皆さんもアビス災害において感じられたことと思います。

そんな程度の我々を愛してくださったからこそ、神はその身を矮小なる人の身に変えて、藁のごとく脆弱で愚かな我々に合わせて言葉をかけてくださったのです。

我々がいかに生きるべきかということをね。

そして人の犯すあらゆる罪を先に引き受けて命を捧げられた……

少なくとも、我々はそう信じています。なんという献身的な愛でしょうか。

……つまり、神はご自身でこのような世界を造られた『責任』を取って自らこの世界に人として降り立ち、人が犯す罪……たとえば我々は命を食べねば生きていけないといった原罪を代わりに引き受けてくださったのです」

 

長え。

よくこんだけスラスラ出てくるよ。

カンペ使ってねえし、なんなら毎回説教の内容その場で考えてるって言ってたもん。

 

「それは洗礼を受けたすべての人々……つまりコヴナントも含めた我々の『生きる』という罪を神が立て替えて払ってくださったのです。故に我々は共存してもいいのです。この未来への希望と救いを胸に、今日皆さんと祈れることを幸福に思います。アーメン」

 

いやあ……さすがプロだ。違うなあ……

さらっとコヴナントを仲間扱いしてくれてるからな。気を使われている……

 

「さあ、堅苦しい説教はここまでにして、歌いましょう。救い主がお生まれになった日を祝う賛美の歌を!」

 

オーバーアクションでもそれっぽく見えるからなこの空気だと。

その後がっちり『諸人こぞりて』と『きよしこの夜』も歌った。

ついでにチェシャと一緒に札束持って献金した。

こういう時にそういうの見せとかないとじゃん?

まあ毎月の十分の一税を今払っただけなんだけど。

説教でこんだけ持ち上げてくれるのも代金の分は仕事をするからだってさ。

 

 

ミサが終わってプレゼントお披露目で、ハナビが水上スキーで爆走したり。

水上ドックラン開放のテープを切ってみんなで犬放したり。

リスナーとジャムールには私が指輪贈ったり。

いつの間にか港の人らが作ってた射撃場でナツミが銃のお披露目したりね。

 

この銃かなり本格的なんだよ。ジュース缶くらいの高圧ガスボンベを弾倉の後ろにつけるだろ?小さ目の矢を弾倉に20発くらい入れてあるだろ?あとは小型のガドリング式でフルオート射撃で矢が飛んでいく。

 

射程距離が陸で300m水中で100mだってさ……

アサルトライフルの射撃速度でだ。

いやー、娘ながらヤベーもん作ったなと思う。

 

ちなみにこの水中銃開発事業は軍部からすげえ後押しされてて今は5.56x45mm NATO弾を水中仕様にする仕事をナツミが頼まれてたりする。

なんでもサボっていうカバーパーツをつけてどんぐり型の弾頭にするけど、発射すればそのカバーが二つに割れて中から矢がでてくるらしい。

フレシェット弾っていうんだってね。

矢の細さによる威力減衰は矢羽根部分が貫通時に肉をえぐるので問題ないとか。

銃本体もいずれは3Dプリンタを引っ張り出してポリカーボネイトで量産するとか。

おっかねえ……

 

そんで娘が作った銃を私がジャガーノートたちに授与すんだもん。

重さを感じるね。

塩ビ製だから物理的には超軽いけど。

 

戦争の足音を感じるよ……

 

 

イベント終わってあとは夜祭りの時間だ。

屋台が出てスピーカーからクリスマスキャロルが聞こえる。

夜のビーチのベンチで、私とジャガーノートが出会ったので話しておく。

 

「いやー、いいクリスマスだったな。神聖な空気?っていうのが私にもわかったぜ」

「ああ、いい式だったね。アリスちゃん元気?」

「まあな……また出兵が近いのか?今度は家族で行くつもりだぜ。あいつももう戦えるからな」

 

そう言いながらジャガーノートは塩ビ製の曲線的でちょっとトランペットみたいなデザインの水中アサルトライフルを眺める。

銃を与えるってそういう事だからなあ……責任を感じるよ。

 

「そっかあ……それがいいかもね。今回はちょっと長くなりそうっつーか……対日に対する牽制でさ……そこらじゅうの国に恩を売らなきゃだし」

「あー、あの話か……最悪、人間が相手の可能性もあんだな。それに、プラウダも」

「ああ……そうなるね」

 

ジャガーノートにはだいたい話してあるんだよ。さすがに現場指揮官だからね。

 

「まあね、そうなったらアリスちゃんはこっちに帰還させてもいいし。何か理由つけるから」

「まあ、戦況を見てだけどな、多分大丈夫だぜ。あいつも戦士に育った。いけるはずだ」

「無理しないでくれよ本当に……生きて帰ってくれ。それが一番だし今お前に死なれると本当に困るからね?」

「ああ、戦争か……これがこっちで祝える最後のクリスマスに、いや縁起でもねえな」

「場合によってはね。長い戦いになるかもだし」

 

私たちは冷えたビールをグイっと飲んだ。

 

「面倒だな」

「面倒なんだよね……メリークリスマス」

「ああ、メリークリスマス」

 

なんか、乾杯って言うより杯を交わすって感じになっちゃうよね。

先に見える長い戦いを覚悟して……私たちは平和なクリスマスを大切に楽しんだ。

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