怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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スパイ・ゲーム

はい、というわけでミーティング~!いつものネット会議だね。

プラウダは今じゃねえ座ってろと言っておいたのでいない。

 

「さて、とりあえず配信はうまく行ったわけだが……どう思う?」

 

司会進行はいつも通り王様だ。

 

「少なくとも、あちらに十分な備えがあるのはすでにわかっている!ロボットやら核融合やらの与太はどこまで本当かは置いておいてな。ナンダクマル少佐、資料を見せてやれ!」

 

カシャル大佐の部下で、今は政府の幹部であるサム・ナンダクマルだ。

タミル系っぽい軍人がチャット内に資料を出す。

こいついかにも『文官』って感じで苦手なんだよな……

 

「ええはい。お見せしている資料ですが、一枚目が通信途絶前の日本の軍装備。二枚目が通信途絶前と現在の日本の公開されている範囲の輸出入です」

 

数字だらけでよくわかんねえ。

ここでサムが私を一目見てはため息をつく。こういう小姑仕草が苦手なんだよ!

 

「これらの資料からわかることですが、現在の日本は売るほどに物資に余裕があり、途絶前ですら十分すぎるほどの軍備があることです。それから、ネット上の情報を加味しても……少なくともあの巨大シェルターの存在そのものと街並み、そして生産設備の存在は確度の高い事実でしょう」

「マジかよ……」

 

思わずつぶやいちゃうね……アレほぼマジなんだ。

少なからず参加者は絶句してる。いや、あんなんと急に戦えないって。

なんなんだよ冷凍ビーム戦車って。

 

「いずれにせよ我々がやることに変わりはない!アルン大尉、遠征の進捗はどうなっている!?」

 

今度のやつは今度のやつで、カシャル大佐の懐刀みたいなやつだからな……

 

「は!報告いたします!スラウェシ島および周辺海域のアビス掃討は完了!2月中にジャワに取り掛かります!スラウェシ島の復興を急いでおりますが、こちらはペースは常識的な範囲にとどまっております!損耗は軽微!懸念点としては弾薬の兵站路が……」

 

話は長々と続くが、要は順調らしい。あまりにも大佐ファンボーイ過ぎるんよ。

でもまあアビス駆逐は簡単でも復興は簡単じゃない。

そらそうなんだよ……

アビスを駆除するのはすぐできるけど、壊れた設備を直すのはな……

「『噂』はどうなっている?情報戦略としてだ!」

 

アビスは明神製じゃね?という『噂』ね。遠征軍が流すことにしてるんだわ。

 

「は!こちらも現在の所順調であります!明神への不信は元々あったものでありますから!そこに加え先日の放送!むしろ我が国が日本へ肩入れしているのではないかと不満があります!」

「そうか!わかった!報告ごくろう!……というわけだ。不本意だがこのままでは我が国が同類とみられかねん!派遣隊はそのまま治安維持で信頼を勝ち取るべきだ!」

 

まあそうだね。そら私がコラボ配信してたらね。

王様が重々しく言う。

 

「やはり、日本とは距離をとるべきだろう。あまりにも危険すぎる。時間が必要だ」

「だが、現実は待ってくれん!あちらさんの軍部から招待状だ!ASEAN解放に支援として人員と物資を送る、だそうだ!」

「一枚かませろ、というわけか……支援と言われれば断りづらい」

 

大勢がうんざりしたため息を吐く。私もその一人だ。

 

「……だが、この話おそらく裏がある!この一文だ!『現地にて酒を酌み交わせる日を待ち遠しく思います』これだ!そのほかにもあるが、要は軍部は明神に内緒のコネクションを作る気らしい!あちらさんは火遊びがご所望だ!どうする!?」

「……外交において、裏口は常に存在すべきだ。緊張関係ならなおさらのことだ」

 

王様が即座に答えた。そこから議論が始まる。

私も参加するか……

 

「……カムナビトは来るんすか?」

「文面ではその予定だそうだ!おそらく『共鳴』でコンタクトをとるだろう!箱入りのお嬢さんだ、手を出すなよ!?」

「うちのバカどもにはしっかり言っておきます……!」

 

そこからはもう長いよ。じゃあ招くにしたってどういう口実で?とかそういう。

 

「……いずれにせよ、軍と明神の間で隔意があるならば好都合だ。ここからは多少のリスクを考慮してでもあちらの実情を知る必要がある……ここからは、水面下で動いていくべき時だ」

「より高度で柔軟な対応が求められる作戦になる!気を引き締めていけ!」

 

 

てなわけで春先にはもう『支援要員』とやらが来ることになった。

表向きは派手な歓迎をして、友好ムードを演出する。

さもこっちが『つつがなくお帰りいただこう。怖いし』と思ってる風を装う。

 

んで、歓迎パーティーに私も出席するわけよ。

ドレスなんて初めて着たよ。青い海を思わせるフワフワサラサラの長ーいワンピース。

家族からは褒められたけどね。

 

「あなたが代表さんですか!私は香坂つむぎです!こちらはフィアンセの田中隆文さんです!」

 

なんか……ピンクの猫みてえな奴が来た。ウソだろオイ。そんな髪色になるの!?

いや、コンクリ色の肌の私が言う事じゃないけど。

 

「田中です。海軍の三佐をしております。こいつは本来来る予定ではなかったのですが……無理を言って申し訳ありません」

「いえいえ、カムナビトの人とは会ってみたかったですし」

 

これは『ウソ』だ。もちろん双方の軍部であらかじめこいつらが来るように調整していた。

『つむぎがわがままを言って無理やり乗ってきた』そういう筋書きになっている。

オイなんで私がスパイ映画みたいな真似をすることになっている……?

 

「私もコヴナントの人と会ってみたかったんですよ!ウェヒヒヒ……いや~、やっぱりカワイイですね!」

「あ、それはどうも……カムナビトの人と会えて私もうれしいです。公式の場もいずれできればいいんですがね」

 

私とつむぎが握手をする。共鳴を出してみる。

あっ、なんか返ってきた。なにこのテレレレーンって音。

なんか……イメージが返ってくる。絵だなこれ。

一枚の絵で私とこいつがテラスで喋ってるシーンだ。

ちょっと強く握り返してうなずく。

目線で向こうもなんか言いたげな感じを出してくる。

 

「すみません、本当にこいつがわがままを言って……日本としてもなかなか管轄がちがったりして『難しい』んですよ。それにしても『日本語お上手ですね』!」

 

これは事前の取り決めであった『共鳴できた?』という合図だ。

 

「ええ、『母が教えてくれましたので』。そうだ、『お食事でもいっしょにどうですか?』」

「ええ喜んで」

 

これは『共鳴成功』の合図。本当にスパイ映画の世界だよ。

 

「あっ、そうだ!テラス席とかいいんじゃないですかね!?ここは本当に星がきれいで……」

「こら!あんまり困らせちゃいけない。エレナ代表はお忙しい方なんだから」

「いえいえ、軽く食べるくらいなら。いい場所があるんですよ」

 

その上でつむぎの手を握ってテラスに向かう。

 

「はわわ……!代表さん自ら……か、感動しちゃいます……!」

「ははは、大げさですね~」

 

共鳴でこっちは文章や声を送ってみるが、どうも向こうはあんま共鳴に慣れてない感じだ。イメージが断片的なんだよね。

「こいつはコヴナントもカムナビトも描くのが好きな変わったやつなんですよ」

「へー、じゃあ一枚そのうち描いてくださるとありがたいです」

「ええ、そのうち是非に。おいおい、またボーっとして」

「す、すいません……少し感動しすぎてめまいが」

 

その間にも密談用に複数用意された場所につれていく。

テラスのベンチの一つ……ここだ!

 

「ああ、じゃあちょうどいいや。ここにベンチあるんで少し横になってください」

「あ、ありがとうございます」

「膝かしますよ」

「ひょえ~!」

「おっと、気を失ってしまったかな?すいません、こいつ緊張するとね」

「いえいえ、すぐによくなりますよ」

 

よし、これなら安定するだろ。

思い切り強く共鳴を伝える。

 

『おい!聞こえる?共鳴に慣れてないみたいだね』

『すいません、カムナビトは共鳴を教えられないばかりか、それを防ぐデバイスも普段は着用させられているんです』

『マジか。とにかくこっちは日本の内情が欲しいし、あんたは共鳴に慣れてないから伝えたいこと優先して』

 

こいつ画像に文字書いて返事してきたよ。達筆だ……

ていうかマジか。まあ、そりゃ独裁者ならそうするわな。

 

『あの都市の周りにある『グレートウォール』。あれ自体も共鳴妨害の仕掛けがあります。うかつに近づかないでくださいね』

『ああ、わかった。それでそっちが最優先で伝えたいことある?』

『あります。日本も一枚岩じゃないです。軍としては明神を排除したいです。あの男は危険すぎます』

 

ヨシ!これが引きたい情報だ。でも大丈夫か?こっちに都合よすぎない?

 

『わかった。こっちもそういう情報が少しづつ入ってきてる。こっちが確かめたいのは2つだ。アビス作ったのアイツってマジ?あと明神がコヴナント排除したいって聞いたけどどうなの?』

『アビスの制作者は明神です。コヴナントについては……そこまで積極的に排除したいわけではないでしょうけど、彼にとってはおそらく『大道具』の一つでしかないです。カムナビトに人体実験をしていたことも……それが軍との決裂の原因にもなりました。軍はカムナビト保護を打ち出しています。子供を守るという誇りと、明神への備えのために』

 

やってんなあ明神!やると思ったよクソ野郎が……

落ち着け。他国の事情だし、ぶっちゃけ他人だ。

それに、好都合な展開じゃねえか……

 

『OK、ほかには?』

『これがアドレスとパスキー、パスワードです。あと2時間しか使えません。急いで!』

 

本当にスパイ映画だな!くそっめんどくさい……

 

『わかった。ありがとう。気を付けてな』

『そちらもご無事で』

 

ここでつむぎがゆっくり目を開ける。

 

「う、うう~ん……ここは?少し、『夢を見ていたような』……『いい夢でしたけど』」

「すいません、どうやらつむぎは興奮しすぎたみたいです。俺が連れて帰ります」

「いえいえ!『貴重な体験でしたよ』。それじゃあ、ほかのお客さんも持てなさなきゃなので」

「ご迷惑をおかけしました……ご武運を」

 

すれ違いざまにイケメンボイスで言われたわ。

私はそのまま共鳴でチェシャにアドレスを渡してなんでもない顔してパーティーに戻った。

いやー……こんなの映画の中だけでいいわ。

飯の味がしないもん。

どこまで書こう?

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