怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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薄氷の下で

それからは、しばらく穏やかな日々が続いた。

なんか水面下でめちゃくちゃスパイ合戦してはいるらしいけど。

その上で双方の軍部で作戦が練られているらしい。

 

おおまかには日本軍が明神にクーデター起こして暗殺して、すべての悪行をやつのせいにする。

表向きには『海外支援で()()()仲良くなったので日本軍が明神を排除したい流れに同調した』というシナリオだ。

日本軍さんそれ外患誘致だと思うけどいいんすか!?覚悟決まってるな……

で、軍部がうまく蜂起を宣言したらそこに乗っかる形でジャガーノートを送る。

その上ですぐにプラウダが建国宣言、ダメ押しに明神を倒す……という流れらしい。

 

つまりジャガーノートたちが主力だ。

なのでANSEAN解放の任務を終えるか一段落するまで動けない。

とはいえ、状況がいつ変わるかわからんのでジャガーノートたちはいつでも動けるように安全マージンを余計にとって休息を多めに進軍してるらしい。

 

表面上は不気味なほど平和だった。それが私をさいなむ。

これで本当に良かったのか?作戦はうまく行くのか?

迫るXデーを感じながら、私は緊張していた。

……でもそれは恐怖ではない。

これは私一人で決めた事じゃないし、一人で何でもやらなきゃいけないわけでもない。

仲間がいるよ……!

 

 

1年……水面下で戦争が進行しつつ1年だ。

思えばずいぶん賑やかになったもんだ。

コヴナントはめちゃくちゃ人口が増えて今や150人くらいかな……?

 

プラウダ側とも色々準備は進んでて、家畜化アビス技術もどんどん進んでるらしい。

っていうかとうとう怪獣アビスを『制作』可能になったらしい。マジかよ……

 

だいぶ……だいぶ文明の技術ツリーがヤバい方向に行ってるけどいいんですかこれ。

まあうちも人のことは言えない。水中街とは別に深海基地計画ってのができてさ。

 

いざ事が始まったら水中街を焼かれる可能性がある。だから深海に避難先を作る計画だ。

現在の軍用潜水艦の耐圧限界は300m。それよりさらに深い海底に作る必要がある。

 

政治的なあれこれや海底の地理の関係でフィリピンとの海峡、スールー海の海盆に建設地が決まった。

カガヤンリッジ海底火山の資源利用もできるかもだし、なんかちょうどいいかんじの盆地があったらしい。なんと水深800m付近だ……

 

ちなみに、太陽の光が届くのが200mまで。つまり完全なる暗黒の世界。

水温4度だよ!ここまで寒いと私らでも『なんか……着るもの欲しいな』くらいの感覚になる。

 

だからウェットスーツとかラッシュガードとか着たうえで炭酸ガス式の水中カイロ入れてるけど、これだってどこまでもつか……

水圧の関係上、空気の断熱層を作る保温は出来ない。

だから温水で断熱層を作るしかない。

 

でもまあなんか……なんとかなったらしい。できちゃったよ深海街。

名付けてスールー・ディープタウン。

 

「真っ暗すぎない……?静かすぎるし超怖いんだけど」

「フヒ……そうですか?私は落ち着きますけどね。ゆっくり慣らしながら降りていきましょうね」

 

なんとジャムールが深海街の開発主導の一人でさ。

機械がほぼ使えない深度だから家畜アビスの方が便利なんだよ。

今も超発光クラゲアビスをジャムールが風船みたいに手に持って大陸棚を降りてってる。

リスナーはたくさんの荷物をもって歩荷やってくれてる。

 

「寒いけど、でもなんだか落ち着く気がするわ」

「フヒヒ……そうでしょ……もう少ししたら休憩小屋があります」

 

大陸棚は海中のさらに深い所に降りてく急斜面って言うか断崖なんだけど、ここにちょくちょく休憩小屋も設置されてる。

一気に潜ったり、上昇したら気圧水圧で死ぬからな。だからルールとして潜行ルートが決まってて必ず休憩を取るようになってる。

暗くてマリンスノーが舞ってて、まるで逆雪山登山だ。

暗黒とマリンスノーの吹雪の中私たちは泳いでいく。

遠くにぼんやり輝いて見えるのが山小屋ならぬ谷小屋だ。

 

「すごいな……本当に山小屋みたいなんだけど」

「子供たちが作ってくれましたよ。エレナがブッシュクラフトを教えてくれたおかげですね」

「何が役立つか解んねえもんだな~」

 

マリンスノーで屋根が白くなった木造の小屋なんだ。デザインも山小屋みたいだしさ。

斜面のわずかになだらかな部分に柱を突き刺して安定を確保してる。

軒下にたくさんの発光イソギンチャクをくっつけて灯りを確保してるらしい。

なんにせよありがたいぜ……

 

「暖炉つけましょうね……」

「燃料ね。荷物の中にあったわ」

 

リスナーが荷物を下ろして中から硫化鉄とマグネシウムの混ざった「固形燃料」を取り出す。

こいつは水中で水と化合して熱を発する。要はデカいホッカイロだ。

見た目は石炭みたいな感じの小石の山だけど。

でも、むき出しで持ち歩くとすぐに水と反応してしまう。

なので小分けにして真空パックに入れてある。

この谷小屋では使う分だけ補充して出ていく仕組みだ。

 

「エレナ、お願い」

「はいよ。スゥーッ……ヨガフレイム!」

リスナーが真空パックを切って暖炉に燃料を入れる。

私は思い切り水を吸い込むと、こう……腹にグッと力を入れて火を噴く。

なんで水中でも火が出るのかは私にもわからねえ。

そもそも火を噴けること自体おかしいよ!

いや、たしかに火を噴くタイプのアビスはめっちゃ食ったけど。

 

これで炙ってやることで発熱のきっかけを与えてやる。

よし……手をかざすとほんわかあったまってきたな……

 

「温まってきたわ」

「フヒ……やっぱり水中街と深海街の行き来はまだ問題が多いですね……」

「そもそも深海に街作れて生身でいけるだけとんでもないって。陸でいえばマチュピチュみたいなもんだもん。しょうがないよ」

 

ほぼやってることが高山に街作るのと変わらねえんだ。

リスナーが窓の外を見て、吐息を吐く。

 

「マリンスノーが綺麗……本当に雪山みたいね」

「実際登山してるようなものだからね……綺麗だ」

「コーヒーでも入れましょうか……?」

「そうだね、休もう」

 

水も使えるんだよここ。

プラスチック製の浄化槽を持ち込んで、中に塩と化学反応する浄水剤を定期的に交換してる。

簡単な仕組みの手押しポンプと、竹とかで作ったストローつきの水筒で飲み物を作るわけだ。

粉コーヒーだけど、こんな所では格別の贅沢品だ……

 

「静かだ……」

 

コーヒーを飲みながら窓を見てしまう。

暗黒の中に深々とマリンスノーが降り積もる。

喧騒を離れてこんなところにいるのが贅沢な気がするね。

 

「そうね……ねえ、寒いからもう少しくっつきましょう?」

 

リスナーがするりと私のウェットスーツの中に触手を入れてきた。

私はそっと近寄ってリスナーの手を握る。

 

「あー……うん。ジャムールも来なよ」

「フヒ……下降予定に余裕があるから、少しなら……」

 

そういうわけで一泊することにした。

翌日、私たちはGショックの目覚ましの音で目覚めた。

太陽届かないからね……

いやこれなんでこの水深でも普通に動くんだよ!?

すげえなカシオ。

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