真っ暗な朝だ。まるで極夜だよ。
この暗さって有害だったりしない?
すくなくとも人間はずっと夜だと鬱になるらしいけど。
でも実際私らにはどうなのか?わからねえんだ……やってみねえと……
「あ、おはようございます……昨日はエレナも思い切り叫べてよかったですね……」
「ああうん……水中街はみんないるからね……朝ごはんある?」
「暖炉にかけておきましたよ……」
「ありがとう」
ここではカプセルクッカーは水中ヒーターは使わない。
水圧で壊れるからだ。なのでこうやって暖炉に直でかけて熱する。
おっ、甘い。今日は
ディープタウンが寒い場所である以上、持ち込む食品は高栄養のものが推奨される。
代表的なのがピーナッツバターに無水バター、ペミカンだ。
要は登山食だが、これだけだと味気ないのでココナッツパウダーとか調味料も入れる。
改めて住める場所じゃねえなあんまり……
一応、光で深海生物を集めて漁業したり、トイレの汚水を使ってエビとか養殖してはいるらしいけど。やはりつらいものがあるよね……
やはり鉱山や避難所として使うのがいいのかもね。
実際、避難所をかねたメタンハイドレード採掘施設ではあるし。
「うまいなあ」
「やっぱり深い所にくるとジャムールの方が上手よね」
「すぐになれますよ……フヒヒ……」
深海になると沸点とか変わるんだよ。
だからこの深さになるとジャムールの方が料理上手いんだ。
改めてとんでもない所だよね。
■
出発!到着!深海800mだ。
いやだってひたすら降りてくだけだもん……
スールー・ディープタウンは暗黒のなかにぽつんと光輝く街が出現したみたいだ。
暗すぎる立地の陰気さを和らげるようにあえて派手な建物が多い。
バカみたいな数の発光アビスは、それだけ私たちが闇を恐れる証拠だ。
なんだろうな……タイのお寺とか日本の繁華街みたいな感じ。
赤とか黄色の明るい色の装飾が多い。
毒々しいほど煌びやかな不夜城ならぬ永夜城だ。
「おっ!来たな母さんたち!どうだ立派になっただろ!?」
「ああ、すごいよ。ここまで来るのに大変だったもん。よくこんだけ作ったよ」
「はーっはっは!言っただろう!私はあの狭い町で終わる気はないと!」
うん、ここを作ってるのハナビなんだわ。深海の方が使える面積多いからね。
でもここですら800m。真の海底はだいたい2000mだ。
しかもここみたいなちゃんとした地面じゃないらしい。なんと粘土だ。
けどこいつは挑戦すんだろうな……
「いや本当すごいよ。繁華街じゃん。街作るの大変だろー?」
「ははは……お母さんはすごいことやってたのはわかった」
「なー?」
笑いながらゆっくり下降して街に降りる。
うーん、ド派手な夜の街だね。しゃちほこの看板とかあるもん。
真っ赤な歌舞伎町の門みたいなのとか、ド派手な金ぴか大仏とかさ。
こういう真っ暗な場所ではこういうものがないと陰気でしょうがないだろうから。
「でも大丈夫?ここは寒いし、暗いから病気になったりしないかママは心配だわ……」
「なーに、その時は這ってでも帰るから大丈夫だママ!」
「ちゃんと食べてる?脂っこいのばっかりだと栄養偏るかもって……」
「おお!そう言うと思ってレストランを作ったんだ!ママたちも食べていくといいぞ!」
リスナーが心配するのもわかるよ。この水深は寒すぎるし暗すぎるもん。
プラウダもよくこんな水深で街作ってるよね。
「それにほら!街の中は寒くないように作った!」
「この子すごいんですよ……海底火山から温泉引いてきましたからね……フヒ」
「エビや魚も寄ってくるから食料は心配いらないぞ!」
なんか、そこら中から太いパイプが備えてあって、中から温水が出てる。
たしかに街中に入るとあったかいわ。
これ海底温泉か!すごくない?私たちの娘。
たしかにここはカガヤンリッジ海底火山に近いけど。
でも山そのものは見えねえんだよ。暗いから。
「硫化水素とか硫黄とか大丈夫?」
「マンガン鉄フィルターと家畜アビスとチューブワームの生物フィルターによる三重の浄化槽を通してるからな!」
「マジで?いや本当によくやったよお前……すごいわ」
「はーっはっは!そうだろう!お母さんの娘だからな!」
「うん、えらいぞーよくやったよ本当に」
うれしそうにしてるので頭なでてやった。褒める時は褒めなきゃだからね。
「むっ……レ、レストランに行こう!海の底はエビが多くてな!いろいろ食べ方を考えてるんだ!」
「そっかそっか。楽しみだ」
照れてるなあ。私もこうだったな……
血は繋がってないけど、こいつは私に一番よく似てると思う。
家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか私はそうは考えていません。
やっぱり私の娘じゃないかこいつ……?
■
レストランは巨大な怪獣型アビスの頭蓋骨を用いて作られていた。
ここにも怪獣型アビスいたんだ?なんなら倒したんだな……
それはいいとして、なんか……デザインがモンハンの食堂でありそう。
「イエーイ!カンパーイ!」
「わーい王様来てくれた!」
「今日演奏あるんですよ!聞いてくださいね!」
食堂は町の住民でいっぱいだ。
まああの悪ガキたちや、新たに来たコヴナントだけなんだけど。
一応孫世代もちょっといるのかな。時間がたつのはええ……
「ああうん、乾杯!いやーすっごいよ。良く作ったね。がんばったよお前ら」
乾杯で打ち合わせるのはフラスコ型の金属容器だ。
料理も飲み物も基本これだよ。水中だからね。
今はいってる飲み物は、酒に家畜アビスから取れるある種の薬物をまぜたもんだ。
まあ私たちが酔える酒ってなるとこれになる。アルコール効かないからね。
だって極寒と暗黒の中で働くんだよ……?酒ないとおかしくなるだろうからさ。
「あったまるね!ホットワインっぽいわ。飲んだことないけど」
「フヒ……フレーバーを作るのは大変でしたよ……」
「料理お待ち!アンコウとエビの鍋ですよ!」
一人分づつフラスコに分けて盛るのが水中スタイルだ。
ふーむ、味付けは唐辛子と酢の風味だね。マレーシアでよくあるやつだ。
「あら!お野菜入ってるじゃない!よかったわ。ちゃんとしたもの食べてて……」
「はっはっはそうだろう!心配ご無用だ!野菜は案外深海でも持つし、ちょっと昇れば意外に海藻もあるんだ」
そういえばネットで見たけど深海ではあんま物腐らないんだよ。
寒いし水圧で殺菌されるらしいからな。
そういえばハンコ押した領収書の中にディープ行きの物資で野菜あったわ。
「カイコウオオソコエビって食えるんだな……」
「なんだか、すごく懐かしい気がする味ね」
それは、私たちの起源がまさにこういう海底からだからなのかもね。
明神のラボで作られはしたんだろうが、アビスが育ったのは海底だ。
私たちの故郷の味、か……
「カレーで煮込むと案外おいしいんだ!アンコウ鍋で出汁で煮てもうまい!」
「ちゃんと料理してんだなあ」
「はっはっは!」
お母さんは安心したよ……
ちなみに演奏はメタルバンドだった。ドラゴンフォースのコピーバンドだね。
水の中なのによくいい音出せるよね。頑張ったんだねえ……
なんでメタルかって言えばたぶんアレだ。
ほら、寒い北欧では激しい音楽が流行るって言うじゃん。
どこまで書こう?
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このまま一気に行こうぜ!
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もうちっとだけ続くんじゃ