Do you know?I'm a deus
日本に向かう船の中、私は明神のプロファイルを読みつくした。
日本軍の協力者から送られてきたものだが、改めてヤツはクソ野郎だった。
ユウトを殺す前ですら、もう邪教の教祖兼麻薬カルテルのリーダーをやってる。
大学中退後にストリートの喧嘩で無敗。その知名度を使いチンピラや半グレを組織。
自作の麻薬でカルト教団を作りその資金でさらにアビス制作を始め……といった経歴だ。
街を乗っ取り、警察に鼻薬をかがせて県を乗っ取った。
万全の態勢で怪獣を放ち、ドサクサに紛れて国を取った。
まぎれもない暴力クソ野郎だ。
いつが最初の殺人だったかすらわからないので、きっかけすらつかめない。
だが推測できる。あいつは……きっと人の醜さってやつにうんざりしたんだ。
無数の録音や動画、アイツの書籍からそれがわかる。
そして、うんざりしたから粛清し、人の進化に賭けてアビスを作った。
それでもうまくいかなくって……
ただただ闘争と暴虐に明け暮れたり、紆余曲折あって……
とうとう、あいつの自意識は神になることを目指してしまった。
あいつの目指す先とはおそらく……
とにかく、私は遺書と動画とこの先私が帰ってこなかった場合の指示をすべてした。
今できるあらゆる用意も……
■
そうして、明神とのリアル会見に臨んだ。
こいつが……
思ったよりも元気そうで、それでいて崩れそうな危うさと幼さがある。
なんだろう、セミファイナルしてるセミみたいな男だ。
嫌なギラギラした輝きの目だ。こう……網走監獄入墨囚人みたいな。
会場は丸の内ハイアットホテル。
これどう見てもマルノウチスゴイタカイビルなんだけど。
赤じゅうたんが引かれて、創設時の幹部らしきヤクザめいた男たちや、タマモが私たちを冷徹に見ながら生動画配信をしていた。
「やあやあ!感激だね、コヴナントの代表に会えるなんて!」
「ああ、どうも……まずは遭難者を救助していただきありがとうございます」
たぶん、私は無表情だっただろう。
はらわた煮えくりかえってる相手にお礼を言う時はそうなるんだなってわかった。
「いいんだよ!これも友好さ!患者はこれが終わったら早めに返すからさ!」
「いえ、すいませんが先に……」
「ところでこの間の件は考えてくれたかな!?」
私が言いきる前にかぶせやがる。
「……一つだけいいすか。あなたの考えてるシナリオ……わかったかもしれないんですよ」
「へえー?いいねえ。聞かせてくれる?」
初めて面白そうに笑ったなコイツ。クソ野郎が。
さあ推理ショーの始まりだ。
演出大好きなコイツだからこそ、こういうのはプロレスしちゃうだろ。
「あなたが最初に選挙に出た街……いえ、それはいいや。あなたの著書にあったんです」
こいつ最初に支配した街でヤクザ抗争して18人殺して、地元住民を恐怖で支配してたからね。
なんならそこは因習地方都市で昔から超治安悪い街だ。
だからこいつはそこで学んだんだ。
「『人は空間に支配される。部屋の内装から土地、国の立地のすべてがそこにいる人をデザインする』あなたの思想の一つだ。その上で大陸とか通り道国家とか、ずっと争いの絶えない土地をあなたは嫌ってた」
明神がわかってるね~って顔でうなずいてる。クソッあたりか。
となると最悪のシナリオだなこれ。
私はわざと推理ドラマみたいにゆっくりと明神の周りを歩く。
「そして、あなたが発表した論文……『空間デザインと認知の相関関係実験』。さらにあなたが手掛けたいくつもの街……あなたは、街をデザインすることで人をデザインできると思ってる。ええとたしか……『舞台が人を作る』だったかな?」
実際コイツ支配した街を再開発でバカみたいに平和な街にしてるんだ。
それがこいつの政界進出の足掛かりになった。
「違うかい?君たちがそこまでのんびりできたのも南国の楽園だからだろ?」
「そして、あなたは……少なくともアビス制御装置を使って怪獣型アビスを作れるし操れる。アビス素材に制御装置組み込んで武器にできるんだから、生体でできないはずがない。いや、真偽は良いです。とにかく……あなたは『怪獣アビスで地球そのものをデザインしなおす』つもりだ。違いますか」
古畑任三郎スタイルで手の平でさっと相手を指さしてやる。
めっちゃ推理ドラマでいい推理された犯人の笑い声するじゃん、
クックックって……
「粗だらけの推理だけど、合格点あげようかな。僕がアビスを操れたり作れたりする証拠も欲しいけど、まあそこはいいや。でも手落ちが一つあるね。僕が人類をどうデザインしたいかがない。それが僕の動機のコアじゃないか!」
明神は手を広げて笑う。
双方の護衛に緊張が走った。
「それはあんたの中でどっちに導くべきか迷いがあるからだろ。南国の楽園で『もう争わない、奪わない理性ある生き物』にするつもりか、ヒリつく闘争の中で『絶え間なく牙を研ぎ続ける獣』であるべきか。あんたも決めかねている。だから、あんたは……」
明神が目をかっ開いて大げさに身振り手振りをして演説を始める。
「そうさ。世界中をケーキみたいに切り分けて島にしてさ。そこをデザインしていろんな可能性を確かめたいんだ!進むべきは理性か?野生か?生きるべきは平穏か?狂奔か?僕にもまだわからない!でも実験すればわかるはずさ!これまでもそうだった!」
世界をケーキみたいに島国に切り分けてってそれワンピースですよね?
このパクリ野郎が……それって実質世界征服だろ。
お前ほど悪い奴はそうそういねえよ。天竜人そのものだよコイツ。
「じゃ、お決まりだけど聞いておこうか。世界の半分を君にあげよう!さあどうする?」
私はスゥーっと息を吸って最大音量で叫んだ。この推理ショーも終わりだ。
ここから先はバイオレンスになるぜ!
「お断りだバーーーーッカ!!」
まずは小手先の300デシベル。人間なら衝撃で死ぬ。人間ならな。
くそっ、大笑いしてやがる。
「あっはっはっは!元気いいねえ!そうこなくちゃ!これでわかりやすくなった!」
「やっぱ効果なしか」
「当たり前さ。僕がアビスを作った。こう言っておこうかな『僕が与えた運命の元でおとなしくしていればよかったのに。
そこから、双方銃撃戦が始まる。よし、ここまでは計算通りだ。
私も衝撃波を駆使して戦い始める。ていうか明神クソ強いな!
科学者タイプで格闘強いクソ野郎なのは反則ですよね?
「へえ、それスト2の動きか。バージョンからして6かな?いいよね、僕もアバターバトル好きだよ」
ローキック!くそっ見てから昇竜拳かよ。
「でもストリートで僕に勝てると思わないほうがいいかな」
素手で殴られまくるんだこれが。明らかに見てから択を選ぶのがうまい。
「あんた、やり慣れてるな!?」
「答える必要はないって言っておこうかな!」
ボッコボコに世紀末バスケされて宙を浮いてる間にちらっと見えた。
私の策の一つ目が発動したみたいだな。
「あいたっ。なんだいこれ?へえ、なんだ。あなたもできるんじゃないですか。先生」
明神の頭が狙撃でちょっとだけ弾かれて窓の外を見る。
そこにはすでにヘリと戦車が私たちのいるビルを取り囲んでいた。
そう、もうマツリが攫われた時点で日本軍は決起の準備を始めててくれた。
あとは私が明神のたくらみを暴いて、開戦理由を作るだけだったんだ。
『明神!私だ!香坂防衛大臣だ!日本軍はもうつきあいきれん!日本の、世界の未来のために我々は決起する!明神……さようならだ!』
「ああ、そういうのはいいですから先生。もっと僕に対しての本音あるでしょ?」
『……血のたぎるままに闘争に身をやつして何になる。もうやめなさい』
「あははっ、やっぱ先生はわかってないなあ」
なんか香坂って人、大学でコイツにバイオテクノロジー教えてた本人なんだよね。
師弟対決ってわけだ。その隙に私たちは全力で逃げ出す。
「タマモ。ちょっと踊ろうか?」
「ええ、あなたの念願の花道……このタマモ、どこまでもご一緒させてもらいますわ」
反対側の窓から飛び出して逃げる私たちを尻目に明神に向けて戦車砲、ガドリング、ミサイルが降り注ぐ。
うーわっ……ビルの上がポキッと折れてこっちに降りかかる。
まあ走ってよけれるけど。これ街中の人がひでえことになるだろうけどいいんですか……?
逃げ出す私たちが見たのは、爆炎の中で無傷で明神を守るタマモの姿だった。
シンプルにカラテがつええやつなのか……?
いずれにせよ、火蓋は切って落とされた。
戦争が始まる。世界VS明神の戦争が。
生き残るのはどっちだ。ヤツを倒さなきゃ『私たち』に未来はない。
どこまで書こう?
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このまま一気に行こうぜ!
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もうちっとだけ続くんじゃ