怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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覚えておいてね私のことを遠い空まで届くの

全てが終わって、プラウダがゆっくりと私のいる軍艦の甲板に降り立った。

兵士の皆さんが銃を向けるが、プラウダはあっさりと両手を上げる。

 

「戦うつもりはない。エレナに挨拶がしたいだけさ」

 

私は警戒しつつも船室を出て軍艦の上をぴょんぴょん跳んで近づく。

いやだって、歩いていったら遠いし……

 

「あー、お疲れ?助かったよ。ありがとうな……」

「ああ、元からやるつもりだったことさ。かまわないよ」

「それにしてもとんでもねえもん作っちゃったんだな」

「ああ、そのことも含めてね。話をしに来たんだ」

 

プラウダは遠くに浮かぶルルイエに目を向ける。

 

「地球は、いずれコヴナントと人類の混血が根付くだろう。もちろん、それは人類の根絶を意味しない。双方の純血種と混血が入り混じった複雑な世界になるだろうね」

「まあね。でもこれならコヴナントの絶滅はもうないんじゃないの」

 

私はだからもう人類絶滅とかやめようよ、という事を言外に言いながらプラウダを見た。

 

「いや、だからこそだ。だからこそ私は生存への新たな試みをしたい」

「どういうこと?」

「私たちは宇宙を目指すよ。ルルイエの傷が癒えたらすぐにでも。これが私のプランBだ。最初からこれを温めてたんだ」

 

マジかよ……こいつもスケールデカいな。私はもうついていけないよ。

 

「ウソだろお前!マジかよ……『アレ』(人類根絶)全部ブラフなの!?ウッソだろお前!?」

「ブラフじゃないよ。どっちも並行してできることだった」

 

あっ、そういう?いざとなれば人類殲滅用要塞になるのこれ?

そっかあ……

 

「あ~そっかあ……じゃあ、旅立ちは止めないほうがいいね……」

「むしろ私は君に問いたい。……君たちも行くかい?」

 

プラウダが手を差し伸べてきた。

うーわマジか。いやあ……うーむ……迷うなあ。

ちょっと心ぐらつくよ。

でも、答えは決まってることだ。

 

「……行ってこいよ。私はここでやるだけやってみるよ」

「そうか、馬鹿な事を聞いたね。君ならそう言うと思ってた」

 

私たちは握手をする。でもそれは手を取ったわけじゃない。

離別の握手だ。こいつ、こんな小さな手でそこまでやってきたんだなあ……

 

「地に足をつけてせいぜいあがくがいいさ。いつか……いつかまた会える日も来る」

「そっか。私たち不老不死なんだって?」

「たぶんね。少なくとも君と私はそうだ。瞳の色が金の女性型コヴナントはほかに居なかっただろう?おそらく私たちは同じ一体の怪獣から生まれたのさ」

「つまり姉妹か……ほかのみんなは?」

 

そういう関係性だったの私たち?マジで?そうか……姉妹か。いいもんだな……

私の問いにプラウダはしずかに首を振った。

 

「わからない。あと20年は生きるだろう。それ以上は……長いか短いかもわからないんだ」

 

プラウダは手を放してゆっくりと浮き上がる。

 

「……そっか」

「ああ、そうだ」

 

私はプラウダを見上げ、プラウダは私を見る。

 

「じゃあな、姉妹」

「ああ、いつかまた」

 

プラウダは空を飛んで、ルルイエの方に向かって行った。

もう振り返らずに。

 

 

それから、1週間もせずにプラウダは宇宙へと旅立った。

海水の1パーセント?いや一桁下だったかな?とにかく膨大な量の海水と共に。

球体の水に包まれて宇宙へ行くルルイエの姿はニューレムリアからもよく見えたよ。

 

ニューレムリアの復興も相変わらず爆速で進んで2か月たったらもうほぼ元通りだった。

心の傷も表面上はまあ……

でも、明神が付けたこの傷と私たちはずっと向かい合っていくことになるんだろう。

 

日本はまだドタバタしてるが、クーデターは成功した。

国の立て直しやら、明神の残党やらまだまだいて問題山積みらしいが。

時々、カムナビトから共鳴の通信が入るようにはなったよ。

 

今はニューレムリアの立て直した海の上の自宅で月を眺めていた。

たまに、ルルイエが月にかかって見えるんだよね。

今はまだスペースコロニーでしかないけど、そのうち太陽系出る気だろうな……

 

ラジオから歌が流れた。たしか……『鯨』って曲だ。

 

『鯨が絶望して捨てていったこの場所で 私は生きている やりきれなくなるわ』

 

たしかにその通りだ。それでも、私が選んだことだ。

『大きな海に抱かれてみたいのよ 時折水面に顔のぞかせて』

『月を眺めて 歌を歌う 傷ついた鯨と一緒に』

 

私はいつまで生きるのだろう。みんなはいつまで生きられるのだろう。

不安はある。

それでも、ここで生きていこう。

 

だって……お腹に子供いるもん。なんか普通にできたわ私も。

多分リスナーとの子じゃないかなあ?

だから、この子と一緒に生きていく。

この海で……

 

「エレナー!ご飯できたわよ!」

「うん、今行くリスナー」

 

リスナーが外の水面から顔を出して言った。

私はラジオをそのままにして、月を少し見てからリスナーのいる海へと飛び込んだ。

 

「あー、あのさ……」

「エレナ?大丈夫?お腹の子が蹴った?」

「……いや、なんでもない。いっしょに行こう!」

「ええ!みんな待ってるわ!」

 

夜の海に、歌が響く……




あとがき

これでひとまずの終わりです。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
皆さんに多くの感想をいただき、作者冥利に尽きます。重ねて感謝を。

その上で反省としましては
もう少しスケベシーンと発展パートに力を入れるべきでしたね。
「新キャラと出会う→できることが増える→領地発展」
このエンジンで面白さが回っていたので、それをもっと信じるべきでした。
これは純粋に私の力量不足なので次作に生かしたいです。

うまくいけばこの後も書けるかもしれませんが、自分でも未知数です。
あまり期待しないで気長にお待ちください。

ではまた!ありがとうございました!

どこまで書こう?

  • このまま一気に行こうぜ!
  • もうちっとだけ続くんじゃ
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