じゃあ……食うか、このサメ。
「エレナ、大丈夫?いえ、素敵だったわ!」
アビス絶滅ソングなのは黙っておこう……
「あー、うん。ありがとう……じゃ、食おうか。料理するわ」
「リョウリ?話してくれたやつね!たのしみだわ!」
人間はアビスを食えない。こんな歌うたっといて何だけど。
毒がどうとかじゃなく、細胞単位で浸食されるかららしい。
生で食ったら胃袋から癌化して死ぬ。
なので、アビスを食料とするためには細胞全部を殺しきる徹底的な加熱とミンチ、さらに放射線滅菌やら化学的処理やらを経てただのタンパク質まで分解して、それを家畜に食わせて……って過程が必要らしい。
なんでそこまでして食おうとするんだよ!?
なお日本はフグに倣って3年間の塩漬けで解決したらしい。
なんでそこまでして食うんだよ!?
日本人やべーな。
「じゃー見ててね。まず火起こしね。こうやって乾いた木をナイフで削ってフェザースティックを作ってー」
「これね!乾いた木ってこんな感触なのね」
でも、人型アビスである私にとっては細胞浸食はない。
だってアビス同士でも普通に食いあい起こってるし……
なんならこのタイプの虎サメは何度か食ってるし。
ヒレと軟骨と何かのキモがうまいんだよ。
「それで、可燃油を毒腺から出してーちょっと木につけて。メタルマッチで着火します」
「きゃっ!これが、ヒなのね……」
そうなんだよ……爪の毒腺から可燃性の油も出るんだよ普通に。
なんか……オリーブオイルっぽいのが。
メタルマッチは金ヤスリみたいなやつでこすったら無限に火花がでるやつだよ。
これは普通のキャンプ用品らしい。
「あとは薪を放り込めばまあ……簡単だけどこれが焚火ね」
「……綺麗ね」
「だろ~?それでまずは鍋にこいつのひれをこうしてこうやって……ナイフでいい感じに切って真水と海水を良い感じに割って……海藻のこれとこれを入れて……」
リゾートからパクってきたミネラルウォーターを使ってヒレを煮る。
鍋もかっぱらってきた。
アビスの腕力だとアビス肉をナイフで簡単に切れるんだよね。
ママによれば、ケーキくらい簡単に切れてるらしい。
「ここで肝を投入して~、ハーブで味を調えて……」
「なんだかいい香り」
「軟骨は肉をちょっと残してフライパンで可燃液といっしょに炒めて、塩を振って……できたよ。『虎サメの肝スープ』と『虎サメの炙り軟骨』。たべなよ。いただきますって」
肝スープをお椀によそい、皿に炙り軟骨をのせて渡す。
「イタダキマス?ってなに?」
「あー、えっとね。ママの国のなんつうか……宗教で……まあ要はこいつへの感謝だよ。命と肉をもらうからありがとうなって。すべての食材に感謝を込めてってね。……いただきます」
「よくわからないけど、いただきます?」
リスナーちゃんは素手で食べ始めるけど、まあ……今はいいや……
私?私はもちろんスプーンつかうけど?
これも教える必要あるんだろうな~。めんどくさいな~。
でもやるけどさ……
「おいしいわ!すごくおいしいわ!」
「だろ~?肝がまろやかさを出してるんだよ。ハーブがいい香りしてるし」
「まろやか……これってそう言うのね」
ハーブはママの家にあった農園についてたのを乾燥させてありったけビニール袋に入れて持ってきた。
今使ったのはセージとバジルだな……こういう海産物には合うんだよ。
魚っぽい磯の香りとまろやかな脂味がいいんだ。
海水も塩代わりにいい味出してる。んめえ~。
「あっ、そうだ。ジャガーノートに自慢してやろ」
「じまん?」
「いい子とうまいもん食ってるぞ~、早く来いよ~って」
リスナーちゃんと食事の画像をおくってやったら、ちょっとキレてた。
その後プラウダがアップルパイを作って画像を出したり。
……勧誘合戦になってるな~。嫌になるね、自分たちの打算が。
ママも、こんな気持ちだったのだろうか?
■
一晩寝て、防水ケースに荷物を詰めて川を上流に向かって遡上していく。
リスナーちゃんが海水から川の水に慣れるのは大丈夫かなと思ったけど、まったく問題なかった。アビスのバカみたいな耐久力と順応性にかかれば塩分濃度とか全く問題なかったぜ。
川はまあ……泥ですね、土が染み出て土色だよ。
川岸にはマングローブっぽいよくわからない南国の木が生い茂っている。
3mくらいあるアビス魚狩って丸焼きにして食って、脳内ラジオに歌を流しまくって、秘密基地建設によさそうな場所を探していく。
あんまり奥地に行ってもアレだし……こんだけジャングルの中ならまあ人こねえだろ。海への逃げ道も複数確保したいしな。
海から川をさかのぼって20km。まあこんなもんだろ。
「ここを私たちの秘密基地とする!」
「おうち?」
「まあ、おおむねそう。古い石造りの遺跡があるのがいいよね。遺跡になるくらい昔からここは陸地で人が住める場所ってことだから」
「この石?これがおうち……?」
「ずっと昔はね。ここから使えるように直していくわけ」
「よくわからないけど、手伝えることがあったら言ってね!」
リスナーちゃんは普通にいい子だった……素直すぎる……!
守ってあげたい、人間の悪意から……!
「いや、荷物持ってくれてるだけありがたいよ。それじゃ家作っていこうか。こう言うの慣れてるから大丈夫大丈夫」
リゾートから工具とか調理具とか細々した道具を袋に入れて担いでもらってきたんだよね。
リスナーちゃん、私より腕力と泳ぐ力あるからさ……
とりま、のこぎりでそのへんの比較的まっすぐな木を建材として活用する。
「じゃー、できるだけまっすぐで私たちが乗っても折れないくらい太くて頑丈な枝をこんくらいの長さに切りそろえて持ってきてね!」
「いいわよ!そのへんのを切ってもいいのよね?」
「いいよ。どうせ邪魔な木は切り倒すし」
「わかったわ!ちょっとしゃがんでくれる?」
「こう?」
「じゃあいくわよ~!えいっ!」
リスナーちゃんが触手にマチェットを持ってぶん回すと半径30mくらいの範囲の木がスパっと円形に切れてるんだよ。
人型アビスの力すんげえ~。
雑に振り回しただけで木が草みたいに切れてるんだけど。
まあ……力はあって困ることはないからいいや……
「じゃあ、いい感じの長さに切ってるわ!」
「はいよ、それじゃあ私はハンマーで木を地面に打ち込んでいって~」
柱になる木を地面にトンカン打ち付けていって、そこにそのへんのツルで作った縄で枠組みをぎっちり固定して~、その上に枝をのせて行けばとりあえず床は完成だ。
同じ要領で屋根と壁も作って、屋根は土を盛った後にデカい葉っぱのついた枝で屋根を作って~、うん、二人で暮らすにはかなり広々した家ができたな。
「あっという間にできたわね!これが家?」
「まあ、おおむねそう」
ここまでで1時間たってねえんだよ。うォおん私は人間重機だ。
人間じゃないけどね。
あとは石をつみあげて、その上から粘土を盛ってかまどの完成だ。
「さてと、今日は何を食おうかな~」
「私何か食べれそうなものを取ってくるわ!」
「お~ありがと。じゃあゆっくりしてるわ」
「まかせて!」
まあ水の確保とかあるんだけどね。
切り株の中からそれっぽい木を……あった。水が湧き出るタイプの木だ。
毒は……うん、味からして毒ないなこれ。
これにペットボトルとか設置しとくと夜までには2リットルくらいは手に入るわけよ。
複数やれば二人分の水は手に入るわけ。
あとはリスナーちゃん用に水槽っていうかお風呂作っとくか。
地面掘って~、二人分は入れる穴作って~、川の水をバケツで組んでザバーっと。
寝るころまでにはある程度澄んでるだろ。
「取ってきたわ!」
「ワニか~。食ったことないけど、まあやってみるよ」
「たのしみだわ!」
っていうかこれ、ワニ型アビスだ。
たぶんこう……鱗取るだろ?足の肉はそのままステーキでいけそうだな。
骨や爪をナイフで取って~、ステーキの形にするだろ?
BBQ用の鉄串も持ってきたから、刺して塩コショウとタイム、セージをかけるだろ?焼くだけだよ。
「まあ、おおむね鶏肉かな……鳥よりちょっともちもちしてる」
「いただきます。おいしいわ!いくつ食べていいの?」
「私の分は確保してあるし、まだまだ焼けるから好きなだけ取りな~」
「ありがとう!おいしいわ!」
だってこれも5mくらいあるんだよ……リスナーちゃんはこれを尻尾もって軽く引きずってきたけど。
調味料がたりねえな~。塩だけでもリゾート廃墟から後で確保しておかなきゃな。
「
「ああ、別に食べていいよって言ったじゃん」
「あなた誰!?」
なんかマレー語で話しかけられてたわ。
私はボルネオを拠点に決めた時点で北京語と広東語とマレー語とイスラム語とインドネシア語を習得してる。
英語はもうママから習ってた。
どうなってんだろうな、人型アビスの言語能力って……
「いや、誰キミ。っていうか人型アビスだよね……?」
『あっ、多分そうです。ふひひ……。私も自分が何かわかりません。わかりませんけど、たぶんあなたと同じ種族っぽいので……』
新しく表れた人型アビスはなんていうのかな……魔女っぽかった。
紫の毒々しいとんがり帽子に見えるキノコみたいな頭皮。
その下から鮮やかな紫の髪の毛がもさもさ生えてる。
服はなんか黒っぽい布を巻いてた。
「あの、なんて言ってるのかしら……?」
「この肉くれって。私は良いと思うよ。リスナーちゃんは?」
「えっ、別にいいけど……誰……?」
『えへ、えへへ……ダメですかね……?』
『別にいいよ。食べな』
私は新しく現れた魔女っぽいアビスに笑って肉串を差し出した。
めっちゃ食うじゃん。だからぽっちゃりするんだよ。
なんていうか……スケベな体形なんだよね。
おなかふっくらしてて胸とケツがでかくて。
「ていうか言葉がややこしいからこれできる?」
エレナ:これ。わかる?
ロフ・ジャムール:あっ、はいわかります……ずっと見てたので……
リスナー:ジャムール?っていうの?私はリスナー。よろしくね!
脳内掲示板できたわ。っていうかずっと見てたのかよ!
普通に参加してくれよ!
この掲示板、言語って言うか言葉の表すイメージみたいなのが直でくるんだよね。
こう……オート翻訳みたいな。
エレナ:ずっと見てたのかよ!?マジ?
ジャムール:え、ええまあ……こないだの……アレも……ふひひ……
エレナ:アレってあれ!?
ジャムール:あれです……
リスナー:すてきだったでしょう?
ジャムール:あっはい。
なんで本人を前にそんなん言えるんだよ!?
あと、リスナーちゃんには情操教育しないと……
ていうか、こいつの名前、マレー語で『キノコの精霊』みたいな意味になるな。つまり人間に名付けられているってことだ。
『ところで名前があるってことは人間ともう会ってるな?』
『あっはい。なんか……森に住んでる人たちがそう呼ぶので……いろいろ食べ物とかもらっているんですけど、アビスの肉は毒だから食べちゃダメって言われたんです。でもおいしそうで……』
『食欲につられて来たと』
『まあ……そうです、すいません。今まで黙ってて……』
串についた肉を全部食べたらきっちり串をそろえて返してくる。
つまりこいつは文明を知っている。
でも、森に住んでる原住民はたしかそういう感じじゃないはずだ。
こいつと会ってる人間って何だ?
いや、それよりも。
『黙ってたってことは、もう人間と共存する気だったってことか?』
『はい……なんだかんだ良くしてもらってるので……私がアビスを撃退したり、治療薬を作ったりとか……』
『人間に無害な薬つくれんだ。すごいね』
『そのくらいしかとりえがないので……アビスも毒で倒してますし』
まあ非力な方ではあるんだろうな。そういうタイプもあるのか……
というか性格があんまり戦いに向いてなさそう。
私も戦うの好きなわけじゃないけど。
『……プラウダのことか?黙ってたのは』
『ま、まあ……それにどうせ近くに来るみたいでしたし……』
慎重なのか怠惰なのかわかんねえな……
まあ、それだけ戦いたくなかったんだろう。同胞とね。
ちなみに脳内掲示板では普通にジャムールとリスナーちゃんが他愛ない話してる。
あくまで、たまたま出会ったみたいなテイの会話してるからこいついい性格してるよ。
『じゃあまあ、おいおいその人間たちとも会わせてくれる?』
『それよりもそのあの、ええと』
なんかリスナーちゃんとジャムールが近づいてくる。
あっ、なんか既視感!この熱っぽい目!
「この子もエレナの事好きだって言うから、だからお友達ね!エレナ、今日も愛し合いましょ!」
『さ、三人で……フヒ、フヒヒ……』
黒い布の腰辺りを押し上げてるなんかがある~!こいつもか~!
『両方』あるタイプか~!
まあ……種族の創成期は異性が絶対的に足りないもんね。
「う~~ん、私はそういうのどうかと思うけどなあ……そ、そうだリスナーちゃんも嫌だろ?いや、どうなのかなこれ……私が原因で揉めるのもな……」
「? 別にいいけど……なんで?ダメなの?」
「いや、リスナーちゃんがいいならいいわ……」
押し切られちゃったよ……いいのかこれで~!?
『いいんですよね?ねっ?ねっ?私、もう我慢が……』
『わかった!わかったよ!やるしかないな……!今!ここで!』
『フヒヒ、ヒヒヒ……や、やわらかい……!』
まあ、もうすでにリスナーちゃんにすごい力で抱きしめられてるからな。
詰みってやつだ。
あとジャムールの手つきがすごいスケベで私もなんかムラムラしてきちゃったし……
まあ、やったよ。
あとやっぱりジャムールはドスケベだったし、最終的にはリスナーちゃんにも手を出してた事を付け加えておく。
この続きはR18版であります。
どこまで書こう?
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このまま一気に行こうぜ!
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もうちっとだけ続くんじゃ