怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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老けていく罰

とにかく朝飯食って、一息つくとレオンは話を切り出した。

 

「それで、君たちはこれからどうするつもりだ?」

 

ここからが大事な交渉になる。どこまで受け入れられるかだ……

 

「まずはっきりしておきたいのは、私はあんたらに敵対するつもりはないよ。ただまあ、受け入れにくいのはわかるつもりだよ」

「……続けてくれ」

「とりあえずは、当初の予定としてはここでそっちが下手に攻め込めないくらいの基地を作るつもりだったけど、それは一旦おいとく」

 

レオンは困ったように笑った。

 

「ずいぶんと警戒されたものだ」

「……まあ、自分が別の種族だとして、あんたら人類の歴史を見てたら、ドン引きするのはわかるだろ」

「……違いない」

 

うーん、取り巻き連中がイヤそうな顔してるけど、避けては通れない話題だしね。

 

「でもまあ、もう見つかっちゃったし、だから逆に取引だ。あんたらに協力するから、この島に住ませてくれ。うまく行きそうなら、なんとか山ほど仲間を呼び集めてアビスを駆逐するよ」

「つまり、共に戦おうというわけか……仲間を呼べるのか?どのくらいいるんだ?」

「こう……鯨の鳴き声みたいなもんでさ。ある程度の内容なら、かなりの距離でも呼べるんだわ。でも、今の所応えてくれるやつがあんまいないから、私たち人型アビスがどれだけいるのか私もわかんねえ」

 

まあ……嘘と真実を混ぜてね。手の内全部は明かせないよ。

 

「なるほど……その仲間を呼ぶ計画は一旦待ってほしい。まずは共に戦い、共存ができるかどうか試さないか?」

 

レオンは手を差し出した。私は握手に応じる。

 

「まあ……何事も試してみないとわかんないよな。OK、まずはホームステイする感じでいいか?」

「かまわない。俺たちの村についてきてほしい」

「わかった……リスナーちゃん大丈夫?朝早かった?」

 

リスナーちゃんはややこしい話にうとうとしていた。

ジャムールがその体を支えるテイで太もも触ってる。

 

「え?ふわぁ……大丈夫よ。どこかお出かけに行くの?」

「こいつら一緒に住もうって。私は良いと思うけどついてきてくれるか?」

「このおうちはどうするの?」

 

あー、この小屋か。すぐに作れるんだけどな。

 

「またすぐに作れるよ」

「そう……でも、エレナがいくならいくわ。ジャムールはついてきてくれるの?」

「フヒ……もちろんですよ……私の家もありますし」

「そう!ジャムールのおうちに行くのね!今から?」

「今からだよ。じゃ、いこうか」

 

私たちは立ち上がり、小屋から荷物をかついで戻ってくる。

 

「話はまとまったようだな。ではいこう。メラポク第二村に」

 

まあそういうわけで……私たちはジャングルの中を歩くことになった。

 

 

ジャングルの中の獣道みたいな道を歩いてくんだけどさ。

途中から『走ってもかまわないか?君たちがどれだけ走れるのか知りたい。戦闘の基本は行軍だからな』ってレオンが言ってきたのでメチャクチャ走った。

普通に時速60キロくらいは出るんだけどな……

レオンたちも普通に40kmくらい出してきたよ。

やっぱアビス細胞適合手術うけてるんだろうな。

 

それで一時間くらいかな。村が見えてきた。

うーん、これは……長屋だねえ。ロング・ハウスってやつだ。

ヤシの木とかで作ったバラック小屋って感じ。長方形で部屋割りとかなさそうなの。

よく見たら家畜小屋とかもあるね。山羊とアヒルと鶏か。

おっ、そこそこ農地もあるじゃん。それなりの畑がいくつかある。

でも大規模農作って言う感じの広さじゃないね。庭に畑作ってますレベルだ。

 

村の様子は、Tシャツ短パンの褐色のガキと布みたいな服を巻き付けた姉ちゃんとおばさんと兵士っぽい迷彩服の褐色のおっさんたちがうろうろしてたり、ボケっとタバコ吸ってる。

あとみんなスゲエじろじろ見てくるから無害アピールで笑顔で手を振ったら暇そうなガキどもがわっと寄ってきた。暇なんだろうな。

 

「姉ちゃんロフの友達?」

「ああそうだよ。よろしくな」

「なんかちょうだい!」

「あ~……この飴袋ごとやるから、みんなで分けろ」

 

ポケットに入れておいてよかったよ。飴袋。

 

「わーい!」

「姉ちゃん太っ腹~!ロフの彼女なの?後ろのおっぱいデカい姉ちゃんも?」

「もうパコッた?パコッたの!?ねえ!」

「ロフ童貞卒業できたの?!」

 

指で卑猥なサインしてくる~!品性も遠慮もねえ~!

でもまあ、ガキってのはこんなんでいいんだろ。

私もよく知らねえけど。

 

「フヒッ、フヒヒ……」

「ヤッたんだ!やるじゃん!どうだった!?どうだった!?」

「やーいロフの彼女~!」

 

舌出しておちょくってくるガキども……!

ジャムールもうれしそうにして表情でこたえてんじゃねえ!

あっ、リスナーちゃんの方に行った。

 

「な、なに?なに?」

「ねえちゃんおっぱいでっかー!」

「肌がイルカみたいな色だ!」

「足太い!腕太い!絶対強いよ!力こぶつくって!」

「え?え?」

 

ガキどもが調子こいてる~!

え~っと確かこういうクソガキ共は放っておいて断固先に進むのがいいんだっけ?

 

「こらこら!悪ガキども!後でお話するんだ!先に村長(ビッグマン)に挨拶しなきゃいけない。お前たちはビッグマンよりえらいのか?違うだろう!?」

「うるせー!レオンのハリウッド野郎!」

「バーカ!」

 

レオンはガキどもを素早く散らすと、手招きしてきた。

ガキどもは何がおかしいのかキャッキャ笑いながら遠くに走っていく。

 

「子供たちは初めてかい?適当に相手するんだ。全部かまっていたらきりがないぞ。さあ行こう」

「びっくりしたわ……」

 

純粋なリスナーちゃんにはいい相手かもしれない。

ちょっとくらい図太くなった方がいいからね。

 

「ああ、元気なガキどもだったね。いいんじゃない?暗いよりは」

「……その通りだな。だが、相手にしてくるとそんな気も失せてくるよ」

「まあ適当にやるさ。……これが村長の家ね」

 

なんか……ちっせえあばら家だな……バナナかヤシのでっけえ葉っぱと枝でできてる。

 

「ビッグマン!客人を連れてきた。この間言っていた特別な客人だ」

「……ああ、かまわない。入りなさい」

 

なんか……仙人みたいな、日干しにしたスルメイカみたいなしわしわのじいちゃんだわ。このじいちゃんは短パンしかはいてねえ。

プカプカ紙タバコ吸ってる。

 

「……それで?何をしに来たのかね?」

「あ~、アビスぶっ殺すし、そのへんの鳥とか狩るならやるよ。そういうわけでしばらく住ませてくれる?」

 

村長はしばらく私たちの顔を見て、うなずいた。

 

「……かまわない。わしら来るものはこばまない。ただ、合わないなら帰りなさい。わしらはわしらのやり方をする。見て学びなさい。すべてを言葉にすることなんかできんのだから」

「……わかった。家くらいなら建てられるからその辺に建てていい?」

「好きにしなさい。どけと言われたらどくように」

「ありがとう」

 

レオンがうなずいて、ビッグマンにお礼らしきタバコをおいていった。

家を出ると、リスナーちゃんがびっくりしたように訪ねてきた。

 

「ねえ、あの人なにか調子が悪いのかしら?体がしわしわよ」

「別に病気じゃないよ。長い長い時間を生きると普通は生き物はああなんの。『老い』っていうんだけど」

「私たちもああなるの?」

「さあ?わかんないけど、たぶんそう。まあそうなるまでずっと長い時間がかかるから慣れるらしいよなんだかんだで」

「こわいわ……」

 

私はそっと手を握ってリスナーちゃんが安心できるようにしてみる。

うーん、難しいなあ!老いとか死とか、私も昔は受け入れがたかったからなあ……ママはずっと抱きしめてくれたけど。

 

「大丈夫だよ。怖がることじゃない。残念なことだけども」

「うん……なんだか、変な場所ね。村って」

 

ウワーッ!罪悪感を感じる~!

無垢で悩みのなかっただろうリスナーちゃんに俗世のアレコレを教えるのはやっぱ罪にほかならねえよなあ……

これをこの先自分の種族ごとやんの!?マジかよ~……

自分の罪深さに嫌になる~!

でも、なんも知らないで人間とバチバチに殺し合うよりマシだから……

そのはずだから……

 

「なんかごめんね……付き合わせちゃって……」

「でも、エレナやジャムールとはいっしょにいたいから。がんばるわ……」

「フヒ……だ、大丈夫です……そんなに悪い所でもないですよ……」

 

レオンはなんか先に歩いて道案内してくれてる。

どこ連れてかれてるの私たち?

 

「ああ、村での暮らしも悪い事ばかりじゃないさ。飯でも食べて暗い気分を吹き飛ばそう。ここは食堂だ。食べながら話をしよう」

 

そういやお昼すぎだわ。

森をめっちゃ走ったからな。

長屋の一つに入ると、葉っぱとか絨毯で作ったカーペットが敷かれている。

厨房らしき土間では、ブルドックみたいな顔にビア樽みたいな体した中華系のおばちゃんが中華鍋振ってた。

エプロンつけてて頭はバリバリのパーマだよ。

本当にいるんだこういう人!?

 

「遅いよレオン!……首尾は上々みたいだね。なんだい、かわいいお嬢さんじゃないか。どんな化物が来るかと思ったよ!腹減ってんだろ?!そこ座って待ってな!できたら持ってくよ!」

「あ、はい……」

 

うーん、広東語なまりだね。ママと見た香港映画を思い出すよ。

エネルギッシュな肝っ玉母さんって感じだ。

さて、どんな飯がでてくるかな。マレーシア料理って初めてなんだよ。

本格的な中華もね。

 




人物図鑑。

■李・美安
食堂のおばさん。52歳。
中華系マレーシア人。
若い頃はわりとちゃらちゃらしていた。
中華料理屋の旦那ができて、娘2人をもうける。
彼女の家族は孫2人を遺してアビスの被害で死んだ。
だがそれでも彼女は今日も中華鍋を振り続ける。
暗い過去を見ぬように。残ったものを数えるように。

どこまで書こう?

  • このまま一気に行こうぜ!
  • もうちっとだけ続くんじゃ
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