怪獣娘トロピカルアイランド開拓記   作:照喜名 是空

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オフチョベットしたテフをマブガッドしてリット

「食いな」

「あー、ありがとう。いただきます。これ何?」

「カンクン・ブラチャンだよ。こっちはママ・ロジャック。テータリックも持ってくるからさっさと食いな」

 

何の何の何?

おばちゃんは鼻を鳴らすと厨房に戻る。

なんか……野菜炒めと肉じゃがっぽいのが鍋でドカッと出てきた。

レオンはなんかもキッチンから持ってきたでかいバナナの葉っぱに料理をもりつけて、スプーンとフォーク配ってくれた。

 

「さあ食べてくれ。それが空心菜のエビ炒め。そっちはじゃがいものロジャック……まあ、混ぜ煮込みだ」

 

うーむ、見るからにスパイシーな感じだね。ロジャックの方はケチャップあんかけみたいな色してる……

まあいい香りはしてるよ。

 

「へー、これがかぁ。えっと……いただきます」

「いただきます?……こうかしら……?」

 

マレー語にいただきますがあってよかったよ。

 

「それですくって食べるの?」

「そう、これが食器ね。食べるための道具なんだわ。スプーンね。難しかったらこう握って」

「わかったわ」

 

うん、うめえ。空心菜エビ炒め(カンクン・プラチャン)はなんつうか……トロピカルな中華炒めって感じだ。うめえ。

エビの風味がいいね。

ジャガイモの混ぜ煮(ママック・ロジャック)は……うん、だいぶ中華だよ。ピーナッツがアクセントになってあんかけの酸味と唐辛子の辛味が……まあ喧嘩しつつも美味しいわ。

ゆで卵が添えてあるけど、こいつが味の喧嘩を仲裁してる。

うん……うまいんじゃないの?不味くはないし、なんならおいしいけど、今までの味のジャンルにない複雑な味だわ……

 

「おいしいわ!なんだかすごく……不思議な味……」

「うまいね。おばちゃんこれ美味いよ!」

「フヒ……ミセス・アンのご飯、おいしいでしょ……」

 

ジャムールがもしゃもしゃロジャックを食いながら笑う。

お前の手柄じゃないと思うんだけど……

そう思ってたらおばさんがヤカン持ってきた。

お茶かな?

 

「テータリックだ。レオン、引いてやりな」

「まいったな、これをやるのは久しぶりなんだが」

 

なんか……小さなヤカンとジョッキ、あと人数分のコップが出てきたわ。

レオンが腕まくりして立ち上がる。何が始まるんだよ。

 

「少し驚くだろうが、これもこのお茶の作法だ。見ててくれよ」

 

なんか……ヤカンからジョッキに、ジョッキからヤカンに何度も移し替えてる。すんげえ高い位置からジョッキに向けて注ぐんだよ。

そんでもって腕の動きと相まって、まるでお茶を飴みたいに引き延ばしてるように見える。

こう……ヤカンから引っ張って伸ばしてる感じだな。液体なのに……

 

「おー、すごいねそれ……」

「昔は屋台をやったこともあるんだ」

「プロじゃん」

 

で、最後はコップに注いで渡してきた。

色と匂いからしてチャイかミルクティーの類だな。

 

「ビールみたいに泡立ってるんだけどそういうお茶なの?」

「そうさ、こうやってホイップすることで味が変わるんだ」

「ヘー、いただくね。甘いな~。山羊のミルクなのこれ?砂糖とかどうしてんの」

「なんだかすごかったわ……いただきます。これすごく甘いわエレナ!」

 

すんげえ甘い。砂糖と練乳を山盛り入れたのか?って味。

リスナーちゃんは名残惜しそうにコップ舐めてる。

これだけの砂糖をどこから持ってきたんだよ。

 

「ははは、その通りだ。すべて代用品さ。ミルクは山羊から、砂糖はパームシュガーやキャッサバを原料にね……このキャンプは全部がそうさ。あるもので、なんとか文明を維持しているんだ」

「わ、私も少しなら調味料出せたり、農園の肥料とか作ってるんですよ……フヒ……」

 

なるほどそれがジャムールが受け入れられてる理由か。

私もなんとか作りたいね。毒腺から調味料……

そういえば昨日の夜、こいつ母乳だしてたけどそれがそうなの!?

 

「ああ、ジャムール。君なしではこの村はここまで豊かにはならなかった」

「フヒ……」

 

代用食か……パームってことはヤシか。あれから砂糖つくれるんだ……

キャッサバってのはわからないけど、農作物からなんとか糖分作ってるんだな……

私はその執念に素直にスゲエと思ったよ。そこまでやるんだ……

ジャムールの母乳からできた調味料と肥料はちょっと引くわ……

 

「すごいね……執念だな。やっぱうまいもん食いたいもんね」

「それもある。だが、俺たちは伝え続けなきゃいけない。かつての文明をね。妥協して生活レベルを下げれば技術はあっというまに忘れられる……それだけは避けたいんだ」

 

真剣な顔だった。

文明、か……ママが私に伝えようとしたものでもある。

たしかに便利だったりおいしかったりするけど、それ以上の何かがあるんだろうな。アイディンティティっていうんだっけ。

 

「自分たちが誰だったか忘れないように……ってわけか?」

「そうだ。俺たちが獣ではなく人間だったことを忘れないためにね」

 

レオンはさりげなくリスナーちゃんにお代わりを注いでた。

まあ貴重なもんだし、残してもね。

 

「じゃあ、ごちそうさんでした」

「ごちそうさま!」

「フヒ……」

「また来な。夜になったら宴だよ!」

 

レオンが笑って手を振った。

 

「ありがとう、ミセス・アン。よろしく頼む。さて……家を建てるなら、このへんの木を使ってくれ。農作物がどれかはジャムールに聞くといい」

「ああ、助かるよ。斧まで貸してくれて」

 

ジャムールの小屋の近くの土地を貸してくれるらしい。

まあ……ジャングルを切り開きました、って感じの赤土の空き地だね。

 

「そうだ、気をつけてほしいことがあるんだが……村長たちプナン族は貸し借りという概念はない。物はすべて村の共有物という価値観だ。だから、どうしても手放したくないものはきちんと自分のものだとハッキリいうことだ。ただし、消耗品は共有物にした方がいいぞ。共有しない奴はケチと見なされるからな……正直、俺たちにも理解しがたいんだが」

 

レオンは声を潜めて斧を貸してくれた。

へー、つまり貸したら基本かえってこねえし、今度は借り返す必要があるわけね。原住民と避難民の価値観の違いか……

顔つき違うやつらが大勢いるしな……文化の衝突がめちゃくちゃあるからこそ、私たちみたいな異種族が入れたのかも。

 

「この村も一枚岩じゃないってわけか」

 

レオンは笑って肩をすくめる。

 

「むしろ寄せ集めさ。そうだな、この村の始まりを語っておこう」

 

私は木をぶった切る手を止めてレオンを見た。

 

「街を焼け出された避難民、それを率いる元軍人たち。これらが狩猟民のプナン族や農民のイバン族に頭を下げて森の暮らしを教わっている……それが村の始まりなんだ。だから、君たちを受け入れる土壌があったのかもな」

「まあ……まあ私らもなんとかうまくやっていくよ……この村も、色々大変なんだな」

「それでも、座して滅ぶよりはましだ。()()()も、きっとそうなんだろう?」

「まあね……」

 

滅ぶつもりはないから、お互い我慢して共存する。

この村は、私が作りたい世界の縮図なのかもな……

レオンも、そのへんをうすうすわかってるからこれだけ協力してくれるんだろう。

 

どこまで書こう?

  • このまま一気に行こうぜ!
  • もうちっとだけ続くんじゃ
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