世話焼き生徒会長、ヒロインの心まで焼き尽くしてしまう 作:古野ジョン
「て、テンプレのファイルに直接書き込んでましたあ……!」
「何やってんのよ星野さんっ!!」
「ご、ごめんなさい~っ!」
あ、彩音がめちゃくちゃ小さくなってる……。そして榊が大きく見える。もともと背は低くないけど、それ以上に怒りのオーラで膨張しちゃってるなあ。
「今月の生徒会だよりはどうするのよ!? 発行できないじゃない!」
「分かってますよお~!」
うーん、怒ってるなあ。怒った顔も美人で素晴らしい……じゃなくて、実際怒るだろう。長年ずっと使われていたテンプレートだし、うっかりミスで吹き飛ばしたというのは流石にまずい。
「はあ~……。でも星野さんを叱っても仕方ないわよね、消えたデータは戻ってこないのだし」
「そ、そうですよっ! もっと建設的なアクションを起こしましょうよっ!」
「データと一緒に役職も消したいの?」
「それだけは嫌ですっ! また流浪の帰宅部員には戻りたくないです~っ!」
おいおい、榊にすがってどうするんだよ彩音。とはいえコイツを叱っても仕方ないことはたしかだよな。なにか建設的な行動を、というのは間違ってないかもしれん。
「で、どうするの瀬名くん?」
「助けてくださいよ会長~っ!」
おっ、美人な同級生と可愛い後輩に見つめられると照れちゃうな。
「……なにニヤニヤしてるの?」
「笑ってないで何か言ってくださいってば~っ!」
ヤバい、これじゃ俺まで榊にしばかれちまう。ここは解決策を考えなければ。一応、生徒会長だしな。
「と、とにかく。榊の言う通り、彩音を責めても仕方ない。俺がちゃんと教えていればこうはならなかったんだし」
「でもどうするつもり? 今の星野さんに一から作り直すのは無理よ」
「そ、そんなことないです!」
「ソフトの使い方もままならないのに、間に合うわけないじゃないの」
「……はい」
榊がズバズバと言うもんだから、流石の彩音もこたえたみたいだ。実際、一からテンプレートを組み直すのは今の彩音には無理だろう。それは榊の言う通りではある。
「あっ、私職員室に行かないといけないんだった。ちょっと行ってくるわね」
「行ってらっしゃい」
「……」
なんて考えていたところで、榊が生徒会室から出て行ってしまった。さっきまであれだけ騒いでいたのに、すっかり彩音も静かになった。
「かいちょ~……」
「なに?」
黙り込んでいたと思ったら急に喋り出した。なんだか本当に元気がなくなっちまったな。弱ってる彩音も可愛い……って、そうじゃない。
「私って……生徒会のお役に立てているんですか?」
「どうしたの、急に」
「会長に拾ってもらったのに、全然お仕事出来ないし……凛花先輩には毎日怒られるし……」
「……」
正直に言えば、あまり役には立ってないと思う。まあ、事務作業の能力を見込んで勧誘したわけでもないしな。
「やっぱり向いてないのかなあ……」
彩音は机に突っ伏してしまった。普段は元気いっぱいだけど、意外とナイーブな面もある。希望して生徒会に入ってきたわけじゃないし、思うところがあるのかもしれないな。
もちろん、榊が厳しくする理由も分かる。彩音が貴重な人材であることに変わりはないし、いろいろと仕事を覚えてもらわないといけないからね。
「かいちょー、本当にクビにしないですよね……?」
「あはは、大丈夫だよ。新人なんだから気にすることないって」
「生徒会を追い出されたら……私が
彩音の目が寂しさを訴えていた。今の彩音は自信を失っているんだ。せっかく生徒会に入ったから頑張ろう……なんて思ったはいいけど、全然うまくいかない。そんなところか。
自信を取り戻す方法は一つ。成功体験を得ることだ。小さな仕事でもいいから、最後までやり遂げさせてあげたいんだけど……あいにく彩音が出来そうな仕事がないんだよな。
……いや、待てよ。仕事がないなら作ってあげればいいんだ。今の彩音でも輝ける、そんな仕事があるはずだ。
「彩音、ちょっと待ってろ」
「えっ?」
椅子から立ち上がり、荷物が積んである教室の隅へと向かう。弘法筆を選ばず、という言葉がある。その道に優れた者なら、どんな環境でも良い結果を残すことが出来るという意味だ。
「あったあった」
「なんですか、それ……?」
ようやく見つけた段ボール箱に入っていたのは、白い画用紙と鉛筆だった。その二つを持って歩いていき、彩音の前に置いてやる。
「仕事を頼みたい。彩音にしか出来ないんだ」
「ど、どういうことですか……?」
画用紙と俺の顔を見比べる彩音。なんだかエサを取り上げられた小動物みたいで愛嬌があるな。可愛い。さて……。
「――してほしいんだ。出来るか?」
そう尋ねると、彩音は無邪気な笑みを浮かべて、子どもみたいに跳ね上がった。そうだよな、俺の知ってる彩音はこうじゃないとな!
「はいっ! 任せてくださいっ!」
ふわっふわのハーフアップが、大きく揺れた。