世話焼き生徒会長、ヒロインの心まで焼き尽くしてしまう   作:古野ジョン

2 / 2
第2話 会長は後輩を輝かせたい

「て、テンプレのファイルに直接書き込んでましたあ……!」

「何やってんのよ星野さんっ!!」

「ご、ごめんなさい~っ!」

 

 あ、彩音がめちゃくちゃ小さくなってる……。そして榊が大きく見える。もともと背は低くないけど、それ以上に怒りのオーラで膨張しちゃってるなあ。

 

「今月の生徒会だよりはどうするのよ!? 発行できないじゃない!」

「分かってますよお~!」

 

 うーん、怒ってるなあ。怒った顔も美人で素晴らしい……じゃなくて、実際怒るだろう。長年ずっと使われていたテンプレートだし、うっかりミスで吹き飛ばしたというのは流石にまずい。

 

「はあ~……。でも星野さんを叱っても仕方ないわよね、消えたデータは戻ってこないのだし」

「そ、そうですよっ! もっと建設的なアクションを起こしましょうよっ!」

「データと一緒に役職も消したいの?」

「それだけは嫌ですっ! また流浪の帰宅部員には戻りたくないです~っ!」

 

 おいおい、榊にすがってどうするんだよ彩音。とはいえコイツを叱っても仕方ないことはたしかだよな。なにか建設的な行動を、というのは間違ってないかもしれん。

 

「で、どうするの瀬名くん?」

「助けてくださいよ会長~っ!」

 

 おっ、美人な同級生と可愛い後輩に見つめられると照れちゃうな。

 

「……なにニヤニヤしてるの?」

「笑ってないで何か言ってくださいってば~っ!」

 

 ヤバい、これじゃ俺まで榊にしばかれちまう。ここは解決策を考えなければ。一応、生徒会長だしな。

 

「と、とにかく。榊の言う通り、彩音を責めても仕方ない。俺がちゃんと教えていればこうはならなかったんだし」

「でもどうするつもり? 今の星野さんに一から作り直すのは無理よ」

「そ、そんなことないです!」

「ソフトの使い方もままならないのに、間に合うわけないじゃないの」

「……はい」

 

 榊がズバズバと言うもんだから、流石の彩音もこたえたみたいだ。実際、一からテンプレートを組み直すのは今の彩音には無理だろう。それは榊の言う通りではある。

 

「あっ、私職員室に行かないといけないんだった。ちょっと行ってくるわね」

「行ってらっしゃい」

「……」

 

 なんて考えていたところで、榊が生徒会室から出て行ってしまった。さっきまであれだけ騒いでいたのに、すっかり彩音も静かになった。

 

「かいちょ~……」

「なに?」

 

 黙り込んでいたと思ったら急に喋り出した。なんだか本当に元気がなくなっちまったな。弱ってる彩音も可愛い……って、そうじゃない。

 

「私って……生徒会のお役に立てているんですか?」

「どうしたの、急に」

「会長に拾ってもらったのに、全然お仕事出来ないし……凛花先輩には毎日怒られるし……」

「……」

 

 正直に言えば、あまり役には立ってないと思う。まあ、事務作業の能力を見込んで勧誘したわけでもないしな。

 

「やっぱり向いてないのかなあ……」

 

 彩音は机に突っ伏してしまった。普段は元気いっぱいだけど、意外とナイーブな面もある。希望して生徒会に入ってきたわけじゃないし、思うところがあるのかもしれないな。

 

 もちろん、榊が厳しくする理由も分かる。彩音が貴重な人材であることに変わりはないし、いろいろと仕事を覚えてもらわないといけないからね。

 

「かいちょー、本当にクビにしないですよね……?」

「あはは、大丈夫だよ。新人なんだから気にすることないって」

「生徒会を追い出されたら……私が杜宮(ここ)に来た意味、本当に無くなっちゃうんで」

 

 彩音の目が寂しさを訴えていた。今の彩音は自信を失っているんだ。せっかく生徒会に入ったから頑張ろう……なんて思ったはいいけど、全然うまくいかない。そんなところか。

 

 自信を取り戻す方法は一つ。成功体験を得ることだ。小さな仕事でもいいから、最後までやり遂げさせてあげたいんだけど……あいにく彩音が出来そうな仕事がないんだよな。

 

 ……いや、待てよ。仕事がないなら作ってあげればいいんだ。今の彩音でも輝ける、そんな仕事があるはずだ。

 

「彩音、ちょっと待ってろ」

「えっ?」

 

 椅子から立ち上がり、荷物が積んである教室の隅へと向かう。弘法筆を選ばず、という言葉がある。その道に優れた者なら、どんな環境でも良い結果を残すことが出来るという意味だ。

 

「あったあった」

「なんですか、それ……?」

 

 ようやく見つけた段ボール箱に入っていたのは、白い画用紙と鉛筆だった。その二つを持って歩いていき、彩音の前に置いてやる。

 

「仕事を頼みたい。彩音にしか出来ないんだ」

「ど、どういうことですか……?」

 

 画用紙と俺の顔を見比べる彩音。なんだかエサを取り上げられた小動物みたいで愛嬌があるな。可愛い。さて……。

 

「――してほしいんだ。出来るか?」

 

 そう尋ねると、彩音は無邪気な笑みを浮かべて、子どもみたいに跳ね上がった。そうだよな、俺の知ってる彩音はこうじゃないとな!

 

「はいっ! 任せてくださいっ!」

 

 ふわっふわのハーフアップが、大きく揺れた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。