ネタバレが激しすぎる魔法少女まどか☆マギカ   作:カイテン・マテナカータ

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第三話に追記しました内容:10話までは毎日投稿 以降は未定


第四話 冗談じゃない、みたい

 日常とかけ離れた光景。非・現実的な悪夢。

 決してそれはいい受け取り方を出来るものではなく、悪感情を煮詰めたような事象に由来する。

 魔法少女。あるいは魔女。それが彼女たちを取り巻く新たな環境の全てだった。

 

「私は巴・スグシヌワ・マミ。あなたたちと同じ、見滝原中の三年生」

 

 あっさりと彼女は名乗った。まどかとさやかにとっては、一つ年上だった。

 目の前で悪意を蹴散らし撃ち抜いた彼女の言葉には暖かさと共に、突き放すような現実味が伴っている。生半可な気持ちでその姿を見ることさえ、己が彼女を侮辱していると錯覚するような重みがあった。

 光に包まれ、可愛らしい効果音と踊るように変化していく。変身していく。西洋風の衣装には正統派の可愛らしさと、クラシカルな綺麗さが籠っている気がした。

 まどかは、それに見惚れていた。

 

「ふふ……縁起でもないけれど、長生きしたいわ。そして、キュゥべえと契約した魔法少女でもあるの」

 

 現実に戻ったとて、その色は深くまどかの脳に結びついた。火を噴いた撃鉄の音も、光景も何もかもが。

 次の瞬間、彼女は引っ張られたような感覚に陥っていく。

 

 眩い朝日が網膜を刺激する。寝ぼけているようだ。

 また変な夢だ、とまどかは寝ぼけ顔をしょんぼりさせる。

 

 ふとベッド横のぬいぐるみの列に目を向ける。

 そこには、白いふわふわの生き物がいた。

 

「おはよう、まどか」

 

 ぽかんと口を開け、それを眺めた。

 変な夢では済まなかったらしい。

 

 小気味良い歯ブラシの音が重なる。先日と同じふたつ分の歯磨きの音が聞こえた。

 

「まどかぁ、ゆうべは帰りが遅かったんだって?」

 

 眠そうな声でまどかの母親が尋ねる。まだ目も開ききっておらず、服もすこしだらしない。

 水道水を口に含んだ。

 

「先輩の家にお呼ばれしちゃって」

 

 がらがらがら、ぺっと水を捨てて言う。

 

「ま、門限とかうるさいことは言わないけどさ……晩飯の前には一報入れなよ」

「うん、ごめんね」

 

 まどかはふと後ろを振り返る。

 そこにはプラスチック製の風呂桶に浸かったキュゥべえの姿があった。居心地良さそうにくつろいでいる。

(人には見えないんだね……)

 

 昨日の事を思い出す。どれも鮮明に覚えていた。

 マミさんの家に二人でお邪魔した。ケーキなんかまで出して貰って、思い返してみると申し訳ないやらありがたいやら何も分からないやらでいっぱいいっぱいだった。

 紅茶のカップがかちゃりと鳴る。ケーキにフォークを入れれば、滑らかに甘味が舌を踊らせた。

 

「マミさん、すっごくおいしいです!」

「ん~、めちゃウマっすよ!」

 

 お世辞ではなくとても美味しいお菓子に、さやかは脇目もふらずパクついた。

 

「ありがとう。キュゥべえに選ばれた以上、あなたたちにとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って」

「うんうん、なんでも聞いてくれたまえ~?」

「さやかちゃん、それ逆……」

 

 和やかな会話の先、マミがデパートで見た宝石を大事そうに手に置いてみせた。

 まどかがきれ~、と目を輝かせる。

 

「これがソウルジェム・コワセナイーノ。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの。絶対に壊せない物でもあるわ」

「契約って?」

 

 さやかが尋ねる。

 するとキュゥべえが話し始めた。

 

「ボクは、君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる!」

「えっ、ほんと!?」

「願い事って……」

「なんだって構わない!」

 

 無機質な赤い目が言う。

 

「どんな奇跡だって起こしてあげられるよ!」

 

 さやかがその言葉に浮足立って顔をほころばせる。

 

「うわ、金銀財宝とか不老不死とか、満漢全席とか~!?」

「あはは……いや、最後のはちょっと……」

「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。この石を手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ」

 

 あっ、とまどかは何かに気付いた。さやかも同じような表情をしている。

 

「魔女……?」

 

 ずごごごご、と勢いよく水流が排水口に流れ落ちる。

 思い出したのはそこまでだ。それでまどかには十分だった。

 

「ねぇ、ママ」

「んー?」

「もしも、もしもだよ?魔法でどんな願い事でも叶えてもらえるって言われたら、どうす」

「役員を二人ばかり他所に飛ばしてもらうわ」

 

 あまりにもきっぱりと簡潔な回答。

 まどかは笑うしかなかった。

 あとそうねー、とまどかの母はぼやくように言う。

 

「社長もさぁ、もう無理がきく歳じゃねんだからそろそろ隠居考えてほしんだけど……代わりがいないってのがなぁ……」

 

 まどかは困り眉で冗談交じりに呟く。

 

「えへへいっそ、ママが社長さんになっちゃったら?」

 

 化粧バッグを閉じる。

 

「────その手があったか」

「営業部にさえしっかり根回ししとけば、企画部と総務は言いなりだし。そうなると問題は経理のハゲか────」

 

 いつの間にか服装もびしっと、肩に化粧バッグをかけている姿はいつもより凄みがあった。

 まどかはまだ髪も結んでいない。困り顔のまま苦笑した。

 

「ママ、目が怖いよ……」

 

 

 

 時は戻ってマミの自宅。

 

「魔女って何なの?魔法少女とは違うの?」

「願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれた存在なんだ。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を巻き散らす。しかもその姿は普通の人間には見えないから質が悪い!」

「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ。そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

 

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ」

 

 今まで現実感、一種の冷たさを感じている理由がはっきりとした。

 マミさんはそんなものと戦っているんだ、とまどかはその身が引き締まる思いだった。

 

「形の無い悪意となって、人間を内側からむしばんでゆくの」

「そんなヤバい奴らがいるのに、どうして誰も気付かないの?」

「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね。さっき君達が迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ」

 

 キュゥべえの言葉に、二人は感心しながら話に耳を傾けていた。

 マミは微笑んだまま恐ろしいことを説明する。

 

「けっこう、危ない所だったのよ?あれに飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから……」

「マミさんは、そんな怖いものと戦ってるんですか?」

「そう。命がけよ。だからあなた達も、慎重に選んだ方がいい。キュゥべえに選ばれたあなた達にはどんな願いでも叶えられるチャンスがある。でもそれは、死と隣り合わせなの」

「ぅえ……?」

 

 さやかはうーん、と悩んでいた。まどかはうめく。

 少し明るい声でマミが喋り出す。

 

「そこで提案なんだけど、二人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

「うぇっ!?」「えっ……」

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみると良いわ。その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの。できるだけ死にたくないじゃない?」

 

 願いを叶えて生きるのも、こんな敵相手では大変だから。とマミが言って終わった。さやかちゃんは結構乗り気だ。見るだけなら、と思っているのだろうか。わたしも同じように思う。

 

 まどかは考えていた。

 断りたいなー、と思いながら、髪にリボンを通した。

 危ないことは、あんまりいやです。

 

 けど、断れないかなとも思いました。

 だってわたしは、今まで頼まれたことを断れた試しがないですから。それがどんなことでも、とにかくお願いされたことを拒めません。それがわたしです。

 変われるなら、変わりたいな。そう思います。

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