OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜 作:ニコラス―NICORUTH―
ドラゴン、かっこええよな。
皆さんの思い出深いドラゴンといえば、何でしょうか。
オレは、王道を征く、
皆さんも感想で教えていただけると、幸いでございます。
ドラゴン。古くは大自然の化身として、幾多の地域、幾多の文明の中で崇められていた、強大なる存在。
その多くは巨大な翼を有したオオトカゲという姿で描かれ、炎の息を吐き、強力な爪や尾を備える。今日に至るまで、多くの人々を魅了してやまない、まさにロマンというべき幻獣だ。
オレもそんなドラゴンに、魅入られた一人。
この存在を知ったのは、本当に幼い頃。なにかのテレビだか映画にでてきたのに惚れ込んだのがきっかけで、オレはこのモンスターを追いかけ始めた。様々なマンガやアニメを見たし、ゲームもした。
そのいずれにも、ドラゴンがいた。というか、ドラゴンのないコンテンツに手をつけることはなかったといっていい。うちの母ちゃんはレディースだったらしく、その背には立派な昇り竜が彫られていた。大学教授だった親父はアジアのドラゴンの伝承を特に研究していたし、子供の時、一緒に風呂に入った時にみたナニもドラゴンだった。妹は知らん。
とにかく、オレのこれまでの人生とはドラゴンにまつわるものだった。それは大人になった今でも変わらない。いい歳こいたおっさんがと思うかもしれんが、仕方があるまい。憧れは止められねぇんだ。
そして、そんなオレが熱をあげまくったゲームが一つ。MMORPG、「 ユグドラシル 」である。
恐るべき自由度を誇るこのゲームは、スライムやスケルトンのような異形種にすらなることができ、中には竜人なんてのもあった。そう、竜、ドラゴンだ。であればオレもこのゲームに挑まねば、無作法というものだ。
こうしてユグドラシルの世界をオレは竜人「 あるじぇんと 」として駆けることになる。モンスターや他のプレイヤーを倒して、種族か職業レベルをあげる。思いのほか楽に95レベ代まで上がるもんだと思ったもんだ。
職業は、ドラゴンテイマー。魔獣をテイムできるビーストテイマーの亜種みたいなものでこれはドラゴンの系列のみテイム可能である代わりに、ビーストテイマーが従えるそれよりもレベルが高く補正されるのだ。その次に、召喚魔法に富み、物理攻撃力もそこそこあるシャーマンを修めている。
勿論竜人故に、ブレスも吐くこともできる。かなりのめり込んでいたんだが、ここで一つの転機を迎えることとなる。
ひょんなことから知り合った、他八人のプレイヤーとクランを結成し、当時流行っていた異形種狩りから自分たちの身を守ろうとみな必死になった。
勿論、オレも。あの頃は大分充実していた。PKしに来たプレイヤーを返り討ちにしてなぁ。仲間も増え、親しい友人だってできた。が、最終的にオレはあのクランを去ることとなってしまった。理由は、アイツだ。
「 誰かが困っていたら、助けるのは当たり前! 」
な~にが正義降臨だよ。自己陶酔野郎が。
彼はどうも融通が利かない節があってな、自分が正しいと思ったらまったく曲げようともしない。その上、ワールドチャンピオンときたものだから、たちが悪い。それでもオレは残り続けたんだが、ある日、アイツにされたある出来事がきっかけとなって、クランを辞めることにした。仲間たちにはそのままユグドラシルも引退するともいっていた。が、だ。
召喚した魔龍をみて、思ったのだ。
「 このまま辞めていいのか?たかだか一人の為に。 」
さっきもいったな?憧れは止められないと。これ程作り込まれたドラゴンを見れるのはこのゲームだけだ。やりがいをここまで感じたのも、ユグドラシルだけだ。だからこそ、オレはさらに、ドラゴンを極める事とした。ひたすらにドラゴンをテイムし、宝や素材を集めていく。そんな中で、ユグドラシルは一種のマンネリ化を回避すべく、あることを試み、実施した。
この2100年代では子どもに語り継ぐ昔話レベルとなった、大手のRPGとのコラボである。これはネトゲならあるあるだよな。
その中でも日本のファンタジー作品の金字塔たる、
「 DQ 」のイベントは、オレにとって実に有意義なものだった。
多種多様な、ドラゴンたち。あるものは翼はないが、その分体格に秀で、あるものはティラノサウルスに翼が生えたようで斧を得物とし、またあるものは金色の王道なドラゴンである。
それらをみては一喜一憂し、また一体また一体とテイムしていった。
そうしていると、出会いとは不意に来るものだ。
偶然、オレは奇妙な男たちと知り合う事となった。
「 タダノフタナリ 」。上位悪魔のガンナーだ。
オレがドラゴンたちを連れているように、コイツも悪魔を連れた、「 デビルサマナー 」だった。
なんでも、彼は悪魔にほれこんだ、いわば同じ穴の狢であったらしい。
日常が悪魔だったわけだ。
「 烈怒ふぃーるど 」。モンクとガンナーを修めたワーゴリラ。
曰く日常がゴリラだったのだという。
その他にも仲間が増えていき、やがてギルド「 千年王国 」を設立するまでに至った。このギルドというのはかなりの数が存在しており、2ch連合なる超巨大ギルドがその悪質さ故に他ギルドから袋叩きに遭ったなんてこともある。オレたちのギルドもそれに参加した。あとは声優ギルドを襲い、引き抜きを行ったりもしたっけな。
その後も色々あったりしたものの、最盛期を過ぎたユグドラシルは衰退の一途を辿り、サービス開始より12年が経過したある日に、とうとうその歴史に幕を閉じる事となった。オレたちはその終わりを見届けようとメンバーたちに呼びかけ、拠点である廃棄都市、ヴリヒルドリアにて幾人かが集結することとなる。
他愛ない世間話や思い出の話題が飛び交う中、オレは一人、寂しく思った。長年愛されたゲームというのは、その最後は賑わいを見せるものだが、ユグドラシルにはそこまでの人がおらず、各サーバーは閑散としていたそうだ。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きありとはいったものだが、ここまでの素晴らしい体験を、空想だったドラゴンをここまで感じさせてくれたこのゲーム。その最後にしては、あまりにも哀愁漂うものだ。
かつてここまで、虚しく終わる物語もあったであろうか。
そうして、時刻は0時を過ぎ・・・
「 ん? 」
妙だ。サービス終了時刻だというのに、強制ログアウトされない。何かしらのエラーかなにかか?
と思って、チャットを開こうとしたのだが・・・
「 何!? 」
チャットを開けない。明らかにおかしな現象が起こっている。
「 都市外になにかあるかもしれない。見てくる。 」
「 あぁ、頼む。 」
そういって烈怒さんは部屋を飛び出していった。
「 あるじぇんとさん、これどういうことだべな? 」
「 オレに聞くな。・・・! 」
オレに話しかけてきた友人をみて、あることを気づく。あれ、ユグドラシルって表情の再現までできたっけか?
「 どうかしたか? 」
「 タダノさん、口開いてねぇか? 」
「 え・・・あ、確かに。今気づいた! 」
「 そこの壁に銃、撃てる? 」
「 あぁ、撃ってみる。 」
いつも持ってるアサルトライフルを構えたタダノさんは、引き金を弾いて弾を一発発射する。
すると、パンッという音がして、確かに弾が放たれ、撃った壁に黒い弾痕を作る。
銃口からも、煙がでていた。
なるほど。どうやら武器は使えるらしい。
「 どうなっている!? 」
凄い勢いでドアを開けて外をみてきたワーゴリラが戻ってきた。
「 烈怒さん! 」
「 さっき外をみてきたが、街の外はオレたちの知る風景じゃない。平原だ。平野のど真ん中にヴリヒルドリアがおったってる。 」
「 平野? 」
「 そう。オレたちはムスペルヘイムで活動していた。だが、あんな場所オレは知らない。 」
彼のその表情は、ことの深刻さをオレたちに伝えてくれた。どうやら、何かしらのアクシデントに巻き込まれたようだ。
「 表情が変えられる。武器も使えて都市の立地も変わった。
・・・新しいゲームか? 」
「 あり得ん。いくらなんでも急すぎる。 」
「 こういうの、昔小説で読んだことがある。異世界転移だか転生だかってやつなんだけども。メガテンでもあったな。ifだったか? 」
「 そんなこと、余計あり得ることなのか? 」
「 まぁ、いずれにせよ、今自分たちがこの姿でいるのなら、もしかして・・・ 」
ユグドラシルのゲームそのままの能力を行使できるのか?それを真っ先に試そうとしたのは、タダノさんだった。
悪魔を呼んでみようといつも使う召喚器「 COMP 」を取り出す。メガテンコラボの際に実装されたデビルサマナーが悪魔を召喚、行使する為に使用する装備であり、登録された所有者しか使うことができない。これで呼び出される悪魔は召喚魔法で呼び出すものより強力で、7、80レベルなんてザラだ。
「 来い・・・! 」
COMPを展開したタダノさんの下に、黒い影が二つ現れる。三ツ首のそこそこ大型な犬と、赤い細身のオーソドックスな丸々目の悪魔。強面なその顔はいつにもまして迫力があった。
地獄の番犬、ケルベロス。デビルサマナーが使役する中で、上位に位置する悪魔であり、彼にとっても、付き合いの長いモンスターだ。
もう片方はバガブー。こちらもタダノさんのパートナーと呼べる悪魔だ。
「 殺丸、バガブー。オレがわかるか? 」
「 ワン! 」
「 バガブー! 」
そのケルベロスと悪魔は、主人の問いかけに答えるように短く吠える。殺丸というのは、タダノさんが付けた名前である。精神系即死魔法「ムド」を多様することからそう名がつけられた。
勿論、他に炎属性、暗黒属性の魔法も使えるし、見た目通り接近戦もこなせ、即死魔法に耐性まである。
そんな物騒な由来のある名の地獄の番犬は、三つの首を一つずつ、主に撫でられ、気持ちよさそうにしていた。バガブーも腕に抱きかかえられている。
「 召喚したモンスターが反応を示している。あれではまるで、生きているようだ。 」
「 AI、なんて考えられないか? 」
「 それなら尚あり得ん。ユグドラシルの有り様から垣間見るに、告知も無しに運営がNPCにAIを取り付けた新作をだして、オレたちにテストさせているなんて考えづらい。それならちゃんと人を募ったほうが効率的だろう。 」
烈怒さんのいうことはごもっともだった。ユグドラシルは殆ど詳細が明かされない、プレイヤーが手探りでそれを探っていくのが醍醐味の一つだった。
ギルドランキング3位のワールドサーチャーが数々のマップを冒険しているが、それでもすべてが明るみにでたわけではない。例えばスケルトンの上位種族、「 死の支配者 」なんかも、存在を知っているものは限られる。敵モンスターとしてもそんなにでてもこない。
掲示板で、あるアンデッドのプレイヤーが話題になっていたが、彼がスケルトンの上位種だと分かっていても、なんという名前の種族かを知ってるものは限られる。
そういえば彼、元気にしてるだろうか。
そう思いながらもオレも事実を確認しなければならないので、外にでてみることにした。
もはや、灯りが少し点いているくらいの、文字通りのゴーストタウンのような街の中、自立人形たちが見回りをしている。その先の地平、確かに何かあるようだ。
「 見に行くか。 」
オレは力を入れて、背から翼を出現させて、空を飛んでみた。なるほど、ゲームの中と同じような感覚で大丈夫らしい。
オートマタたちが守る街の中を抜けると、確かに草と砂漠の木々の光景が広がっている。
烈怒さんの言う通り、平野であるらしい。
その場に降りて、空を見上げる。
「 おぉ。 」
子どもの頃、夜に見上げた空というのはどうも曇っていた。大気汚染が凄まじいもんだからマスクをしていなければ外に出歩くことすらできない。そんな中で空も汚染されていた。
が、見てみろ。この藍色の銀河に瞬く星々を。
これは本物だ。紛うことなき本物の夜空だろう。
この夜空の下、ここにさらにドラゴンを添えることにより、深みをますのだ。ドラゴンは何にでも合う。ファンタジーだろうがロボットアニメだろうが特撮番組だろうが、まずドラゴンがそこにいるのだ。
「 召喚。 」
ドラゴンテイマーのスキルとして、使役しているドラゴンをこの場に呼び出す事ができる。
光とともに現れたのは、オレと長い付き合いの黒い魔龍だ。
「 まさか、こうしてお前とまた会えるなんてな。 」
「 グルゥゥ・・・ 」
ファヴニールの額に手を当てる。コイツの鼻息がオレの肌に触れる。この感覚を、データやコンピューターなどで表現できるものか。
この世界について、オレたちはなにも知らない。なにかしら危険な存在と出くわすかもしれない。その時はコイツらが頼りになるだろう。
「 これからもよろしくな。 」
「 ヴォォォォォオオオオ!! 」
無も知らぬ大地に、龍の雄叫びが木霊する。かつて、オレが生まれるよりも遥か昔に、多くの人々が情景を抱いたであろう空想したであろうその姿をみて、オレはこれが夢ではないと確信するに至る。こいつをよべるということは、他に仲間にしたドラゴンや、召喚魔法で呼び出したドラゴンも使役できるということ。この先、この見知らぬ世界を仲間やドラゴンたちと駆けるわけだ。
武者震いがしてきそうだ。
・・・アンタも、そう思うだろう?
「 ファヴニール!〈煉獄の息〉!! 」
オレが杖を指した方向に、龍の業炎の息が放たれる。その場から殺気を向けられているのを感じたので、牽制とスキルがちゃんと効果を為すかの実験も兼ねて、龍にブレスを指示した。
思いのほか遠くに届き、目に見えるだけの森林が業炎に包まれ、こちらを視ていたらしい存在ごと、その場の生命を焼き尽くした。
なるほど、どうやらダメージをちゃんと通るらしい。これならば、ドラゴンたちのアレやこれやも試せる機会が回ってくるかもしれない。
次回はどうすっかな、オレもな〜。
あるじぇんとorタダノフタナリvs番外席次or隊長として、その後に千年王国でスレイン法国を潰しにかかるというのがいいかな、とも考えていますが、うーん。