OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜 作:ニコラス―NICORUTH―
「 と、云うことがあった次第。 」
「 なるほど。確かにそんなモンスター見たことないッスね。 」
「 オラたちが宝を物色してた時に、そんなことが起きてたのかゾ。 」
後日、ヴリヒルドリアに戻ったオレは、タドコロとMURさんにあのドラゴンのことを話していた。
二人もあれに興味を惹かれたらしく、その正体についてなんであるかと考察していた。
「 東洋龍型、緑のフォルム、超古代チックな彼。まるで検討がつきませんね・・・このあたりのドラゴンといえば、王道を征くあのシルエットばかりだから、より異物感に拍車がかかりますね。
本当にそいつ、どっからでてきたんだ? 」
「 そうなんだよな。なにからなにまで正体不明。かろうじて氷属性が効くらしいこと以外、未だ未知。奴の攻撃は魔法にも、ただのスキルにも見えず、かといってこの世界特有の、武技とも違っているようだった。奴は一体何者なんだ? 」
「 東方の地から来たにしても、真なる竜王の特徴とはまるで合わない。それにそのドラゴン、なんか見覚えがあるような気がするゾ。 」
「 ユグドラシルで? 」
「 いや、別のゲームだゾ。確か、ポケモンじゃなかったかゾ? 」
2130年代でも、そこそこのネームバリューのある名前がでてきたな。オレはよく知らないが。
「 ポケモン?それってあの電気ネズミが主役の? 」
「 そうだよ。おらの好きなポッチャマ・・・がでる一つ前の世代にそんなドラゴンがいたって聞いたゾ。 」
「 はえー。 」
「 ですが、可笑しくないですか、MURさん? 」
オレたちのいる部屋に、また一人、ホモが入室する。この二人とよく一緒にいる魔法詠唱者だ。彼にはアルベド周りで世話になった。
「 おっ、KMR! 」
「 僕たちはみんなユグドラシルからこの世界に来たんですよね。でもユグドラシルって、確かポケモンは取り入れてなかった筈です。あちら側からNGをだされて。 」
「 確か、大昔にデザインが似すぎぃ!なオープンワールドがでて、裁判沙汰になったのが今でも尾を引いてるって聞きましたねぇ! 」
「 今でも他ゲームとのコラボに消極的な理由がそれだったなぁ。とすればソイツがどこから来たのかより謎が深まるゾ。 」
「 ですが、いかんせん情報が足りません。あのドラゴン、『烈空の竜王』が何者であるかは確かに気になりますが、今は魔導国への対処を優先しないと。あちらは、こちらを容赦なく潰しにかかるでしょうから。 」
KMRさんはモモンガを酷く警戒しているようだ。まぁ無理もない。守護者が二人離反し、重要なNPCが二体もやられ、ナザリックのNPCのリーダーである守護者統括も、こちらに囚われている。
となれば、アイツはなにをしでかすか分からない。
オレも九階層でメイド三人拉致したからな。
あ、あとあのナーベラルは本人が表の冒険者稼業でいない時の代役の上位二重の影だったらしい。
高レベルのNPCかと思ったら、偽物掴まされた訳だ。結局、あの場での収穫といえば、悪魔合体のサンプリングの一例ができたくらいだ。
ここまでされればモモンガの奴はブチギレて乗り込んできても可笑しくはないが、直接ここには来ないだろう。というのも・・・
「 位置自体はパンドラズ・アクターが覚えてるから、いつでも殴り込める。 」
「 今のヴリヒルドリアには、ナザリックのNPCが三人いるゾ。にもかかわらず魔導王が来れない理由は、高レベルモンスターやNPC、プレイヤーが複数人滞在しているからだと思うゾ。街の中に転移しようものなら、周囲から袋叩きにあって死ゾ。 」
というからである。下手に手を出せば、そちらが痛い目に遭う。これはユグドラシルを知り尽くしたアイツだからこそ、誰よりもよく知っているだろう。故にモモンガはヴリヒルドリアにはそのままでは近づけない。そのままいけばオレのドラゴンたちが一斉にブレスを繰り出すし、たとえその目を誤魔化してもクックルにバレて、伯爵や七八銀を相手にする羽目になるだろう。ルベドは一度倒され、第八階層のあれらも動かすにはリスクが大きいらしいのでそうやすやすとは使えない。正直、モモンガや階層守護者なんかよりも、烈空の竜王がまた来て荒らされる方がよっぽど被害がデカいような気がする。アレや真なる竜王、そして話に聞く八欲王なんかに比べれば、ナザリックが小物に見えて仕方がない。
「 それにPRRNがいる以上、SYLTIAも相手にしなきゃならなくなる可能性もありますねぇ! 」
「 信仰系のガチビルドだったな。 」
「 そうですねぇ。大凡真っ向から戦うと、MMNGに勝ち目はないです。 」
「 クレリックなんだっけか?やっぱ信仰系は最強だってはっきりわかんだね。 」
そう、ことユグドラシルにおいて最強の魔法ビルドは信仰系で間違いない。やはり物理戦にもある程度の適正があるというのが強い。しかもDQ以降は〈マホカンタ〉があるからな。
こちらでもそれは変わらない。信仰系は魔法詠唱者にて最強。
「 そうでありんす!(肯定) 」
「 ファッ!?」
タドコロの驚く顔を尻目に、ペロロン自慢の吸血鬼がドアを開けて入室する。
白い肌。赤い瞳。赤紫の見事なドレス。なにも知らぬ者ならば思わず見惚れてしまいそうな、美しい淑女である。
・・・胸は詰め物らしいが。
MURさんは間の悪いときに来たとバツが悪くなったような素振りを見せ、KMRさんも何処か驚いているようだ。
「 失礼。今信仰系が一番強いと聞こえんしたので。 」
「 そ、そう。お前さSYLTIAさ、入る時はノックして、どうぞ。 」
「 あぁ、申しわけありません。今すぐ自害・・・ 」
「 そんなことしなくていいから(良心) 」
「 あぁ、そうでありんすか?それはそうと、今朝この街に侵入者が入ってきたので、牢にぶち込んだでありんす。 」
「 ほう? 」
「 殺そうかと思いんしたが、チビスケが止めたので生かしておきんした。竜王国から来た冒険者らしいでありんす。処遇はそちらにお任せいたしんす。 」
ふーん、竜王国の冒険者ねぇ。ま、近場に急にこんなとこでてきたら、そら調べたくもなるが、よくもまぁ近寄ろうと思ったもんだ。
そしててっきり殺すもんだと思っていたが、アウラのやつ、気が利くじゃないか。
で、どうするか。
「 なにか変わった様子はないかゾ。 」
「 そのリーダーらしき男は私やチビスケをみて、欲情してたでありんす。思いっきりナニが勃っていんした。 」
「 そいつロリコンかよ。 」
「 多分、竜王国の守りの要だったチームかゾ? 」
「 え?竜王国ってその辺法国と、メイドインモモンガのモンスター任せじゃなかったっけ? 」
「 一応、防衛費はかさむんだが、冒険者とワーカーも雇ってたらしいゾ。ビーストマンの国はこないだタドコロが潰したから、その意味がなくなって、こっちの調査の依頼を受けたんだと思うゾ。 」
そうか。ここで変な弊害が生まれたか。この竜王国は長いことビーストマンの侵略に悩まされ続けてきた。その守りを担っていたのがスレイン法国の部隊であり、冒険者たちであるわけか。
が、このビーストマンがいなくなったことで、次に注意を惹いたのが、このヴリヒルドリアだったわけだ。ついでにトロールもタダノさんが鏖にした。曰く、ギリメカラ一体立てるだけで死んでったらしい。その為、彼らにとって他に脅威と呼べそうなのは、ミノタウロスしかいない。
「 はぁーなるほど。で、そいつの処遇は? 」
「 ボクが〈記憶操作〉で頭の中を弄ってもいいんですが・・・ 」
「 でも、それで戻しても、竜王国がこっちに関心を持ち始めたのは不味いっすね。あっちは魔導国と関わりがあるから、変に干渉されるかもしれないっすね。 」
「 ならば、どうしますか? 」
「 であれば、迂闊に手をだせないようにするゾ。 」
「 というと? 」
「 奴らはこのヴリヒルドリアが、都市国家連合と繋がってるとは知る由もないゾ。それを奴らにキチンと知らしめる。一度、あの国の王女に会いに行くゾ。 」
「 話してわかってくれる相手なのか? 」
「 もちろんただ話すわけじゃない。こちらの戦力の一端を見せて威嚇もするゾ。ただでさえビーストマンのせいで連中はカツカツだゾ。そこにこのヴリヒルドリアを知らしめ、都市国家連合の威も示すゾ。 」
「 人、やらんのか? 」
「 殺すのは敵の戦力に絞るゾ。民間人に手をだせば、魔導国に大義名分を与えることになる可能性が高いゾ。下手に一般人に被害を加えるより、力の差を見せつけて竜王国の奴らに手をだす気をなくさせる。これだけで十分。 」
「 それに、魔導国なら連中の興味あろうがなかろうが来る時は来ますねぇ!せめて竜王国の奴らがこっちに来ないようにするのが最適解だって、はっきりわかんだね。 」
「 AINZ様なら阿部さんの如くホイホイ来るでありんす。その時はあの御方をホルマリン漬けにして、その美貌を永遠のものにしたいでありんすえ。 」
「 お前、一応アイツは主人じゃなかったっけ? 」
「 あの御方はイケ骨でありんすが、私にとっての一番はやっぱりPRRN様でありんす。 」
「 SYLTIA、あとでその冒険者を見に行くから、PRRNとこに戻って、どうぞ。 」
「 はい。では失礼いたしんした。 」
吸血鬼は、そのまま部屋を後にした。しかし、次にやることが決まった。次に向かうは竜王国。これまたすぐ近くだ。
そこの女王に会いに行く。
前の飛竜騎兵部隊の里みたいに、何かしらに襲われるなんてことは恐らくないか。
ナザリックは今、デミウルゴスを失ったばかり。行動はより慎重になるだろうから、表立って介入はできまい。
今度はこっちが襲う側だ。
ああ、楽しみだ。人間のくせに竜王を名乗る彼女。
会うのが、とても楽しみだ。
震えて眠れ、ドラウディロン。
明日には、お前の絶望の顔が見れるだろう。
・・・そういえばだが、里に烈空の竜王が襲来する前、モモンガはやけに落ち込んでいるようだった。
アンデッド、というかシャルティアをみるにスケルトンは感情抑制が働くらしいが、まるでそれが機能していないような、ショックが大きいような様子だ。エントマの口ぶりをみるに、里でなにかを目論んでいたデミウルゴスが何者かに襲われて死亡したのを、アイツは確認したんだろう。
オレはそれがうちのギルドマスターの仕事だと思っていたが、モモンガからみて、ルルはこれといって面識のない赤の他人だ。他人に身内をやられたとあれば、落ち込まずに怒り狂う筈だ。だのに、あの凹み様。あの場でオレと戦うよりも、ペロロンチーノの説得に耳を貸すよりも、プレアデスの撤退を優先した。つまりその直前、モモンガの身にそれだけのなにかが起きた。そしてそれは、おそらくルルによるものではない。アイツがああまでなる要因、それはおそらく・・・