OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜   作:ニコラス―NICORUTH―

2 / 31
 今回はドラクエより、2体ドラゴンでます。


すべてが未知のエリアへ

 転移の翌朝。オレたちは今後の方針を決めるべく、ヴリヒルドリアの中でもひときわでかい建物、通称公民館にいた。ここは新イベントの告知発表や開催された際にメンバーが集まりどのように立ち回るか、どのクエストをこなすか等のギルドの方針を議論する場として運用していた。

今回も、この前代未聞の異変を受けて、現在いるメンバー、そのうち四人が集っていた。

円卓の席には、オレとタダノさん、それに烈怒さんもいた。ギルドマスター不在につき、今回の会合は烈怒さんが司会を務めてくれる。

オレがギルドマスターじゃないのか?はは、勧められすらしなかったよ。まぁ、無理もないか。

 

「 それではこれより会議を始める。先ずは現状の整理だ。スネークイーターさん、頼む。 」

 

「 了解した。 」

 

 烈怒さんに話を振られたのは、バンダナのオッサン、スネークイーターさん。彼はレンジャーとガンナーを修めたワースネークだ。うちガンナー多いな。

何処かの特殊部隊にでもいたのか、いわゆる斥候とそういった部門の知識に秀でている。

 

「 まずオレたちは前日、サービス終了を間近に控えたユグドラシルにログインして、その最後を見届けようとしていた。 」

 

 つい昨日のことだから、よく覚えている。

 

「 他愛もない話しに花咲かせ、いざ時刻が0時になり、オレたちはサーバーから弾き出され、あの大気と人心が汚染された世界に戻るものだとみな思っていた。そうだろう? 」

 

「 そう、だよな。 」

 

 返事を返したのは、タダノさんだった。ここはオレも便乗しよう。

 

「 オレはてっきりこのまま終わるもんだと思ってた。 」

 

「 オレもだ。あの素晴らしい体験をさせてくれたゲームが、こうも寂しく終わるものかと何処か歯がゆく感じていた。が、実際はそうでもなかった。 」

 

「 そう、気づけばオレたちはログアウトされず、オレたちの街はこの平野のど真ん中にある。口が動いてモンスターとコミュニケーションも取れる。こうして呼吸ができていることからもするに、大気汚染も進んでいない。ここはオレたちのいた世界とは別の何処かだ。 」

 

「 やっぱり、飛ばされた、てことすかね? 」

 

「 そうだろうな。で、戻れるかどうかはともかく問題は・・・ 」

 

 スネークイーターさんは一服を吸って口から煙を吐いた。そういやこの人も喫煙者だったな。

 

「 スネークさん、こんな時にタバコはよしてくれ。 」

 

「 悪いな烈怒。こういうのは無性に欲しくなってくるもんなんだ。で、問題はこの世界の生態系だろうな。 」

 

「 生態系? 」

 

「 どのような植物が群生していて、どのような生物が生息しているのか。どれが食えるか食えないか。把握するのはサバイバルの基本中の基本だ。でなれば、この世界ではおそらくいきていけん。それにだ・・・ 」

 

「 それに? 」

 

「 オレたちと同じように、ユグドラシルから飛ばされてきた奴もいるかもしれん。コンタクトを取るのが望ましいが、そうなった場合、新たな問題はそいつがオレたちにどのような対応を取るかだ。 」

 

 なるほど、確かにその線はある。今この場の自分たちと同じように、ユグドラシルに最後まで残っていた者たちもいるかもしれない。が、仮にいたとして、そいつがこちらに友好的に接するかどうかは分からない。最悪、殺し合いになるかもしれない、か。

 

が、そんなことはどうだっていい。オレが望むもの。それはただ一つ。ただ一種の生命だ。

 

「 というわけで、まずやらねばならんのは、周辺環境の調査だ。オレは勿論参加するが、他に名乗り出るものは? 」

 

 悩むことはなかった。真っ先にオレは手を挙げた。

 

「 ほう、あるじぇんと。まさかお前が一番に来るとはな。ここでも探すのか? 」

 

「 その通りだよスネークさん。世界が変われどオレの求めるものに変わりはない。ここでも探すさ。新たなドラゴンを。 」

 

「 よし、オレも行く。仲魔やら悪魔合体の素材やら色々試してみたいからな。 」

 

「 オレも出向いた方がいいな・・・結局、この場にいる全員が参加することになるか。 」

 

「 では、この場にいない者には、あとで伝達するとしよう。ところでだが烈怒よ。 」

 

「 どうかしたのか? 」

 

 これからの方針そのものは決まったが、スネークさんからまだなにかあるようだ。

 

「 気にはならなかったんだが、さすがに四人しかいないというのはどうかと思うぞ? 」

 

「 そのことなんだが、オレたちでうまいこと決めてくれとみんな丸投げしてなぁ。特に七八銀さんなんか、部屋で横になって鼻ほじくってたんだぞ。

そのすぐ横っちょには、タブのあいたマウンテンデューだ。 」

 

「 またか・・・アイツリアルでもそうなんだよ。 」

 

 スネークさんは呆れたように額に手をあてた。

 

「 それで、ガマ星雲第八軍曹は? 」

 

「 蔵に籠もってパワードスーツの整備だ。伯爵やクックルも一緒になってなぁ・・・ 」

 

「 彼奴等また一緒にいるのか。廣井三十六景は? 」

 

 

「 はぁ・・・呑んだくれてたよ。どうやら結婚してたらしくてなぁ、あの人。ユグドラシルに来る前に旦那となにかあったらしい。けねでぃーと唯々Ⅲが付き添っててくれてる。 」

 

「 そうかぁ。それは仕方がない。 」

 

 スネークさんが仲間の所在を聞き、烈怒さんがその回答。やはりこの二人は仲が良いものだとしみじみに感じている。あ、そういえば・・・

 

「 ギルドマスターはどうした? 」

 

「 あぁ、あの人サーバーには居たらしいんだけど・・・なにしてんだべ? 」

 

 どうやらタダノさんは、彼がログインしていたらしいことは知ってるようだ。

とすれば、この世界の何処かに飛ばされたのだろうか。

まったくルル=ルルのヤツ、こんな時に顔を見せないとは。彼がいてくれたら、幾分かマシになったろうに。

 

 それから、オレたち4人は入念な準備を整え、調査を開始することになった。

一人一つ蘇生アイテム、ポーションも5個もって基本的にまとまって行動。オレは蘇生魔法を覚えているが、念には念を入れておくに越したことはない。なにかしらの理由ではぐれたり、別行動を取らざるを得なくなった場合、通信機能を持ったマジックアイテム、魔導トランシーバーにて逐一報告。これぐらいやればいかなる状況にも対応できるだろう。

一応レンジャーであるスネークさんがいるが、特機戦力候補とでもいうべき敵性存在との交戦にいち早く対応できるよう、オレたち2人のモンスターを一体連れ歩くこととした。

タダノさんは殺丸にした。まぁ無難である。犬なので嗅覚に優れ、それも三つ首があるのだ。これほどの適任もおるまい。

で、オレも今いるドラゴンたちから今回の探索のパートナーを決めることとなるが、ファヴニールはデカすぎて目立つのでまず除外。いざとなったら呼べばいいしな。

というかあのサイズはまず無理だろう。今回は何処かのギルドやら国を潰しにいくのではないのだから。とすれば、アイツかな。あれもそこそこデカいが、まぁ仕方あるまい。

 

「 来い! 」

 

 オレはそういって、今回連れて行くドラゴンを一体呼び出した。緑色のティラノサウルスが、斧を持ったような姿。背には申し訳程度の小さな翼がある。

 

「 バトルレックスか。 」

 

「 コイツなら、今回連れてくのに、申し分ないだろう。なぁ、ドランゴ? 」

 

「 グァア!! 」

 

 ドランゴは元気そうに返事をした。コイツはバトルレックス。DQコラボの際に実装された、ドラゴン系モンスターのうち一種。その名の通り手に持った戦斧を主武器とし、通常の攻撃よりも、クリティカルがでる確率の大きい〈魔神斬り〉の他、いくつかの攻撃スキルと、火炎のブレスを会得している。

コイツならそこそこの機動力もあるから、ついてこれるはずだ。

 

「 では、行くとしよう。 」

 

 こうして、スネークさんを中心に、オレ、タダノさん、烈怒さんの四人に、殺丸とこのドランゴを加えた探索チームの活動が始まった。

都市をでると、燦々と太陽の照らす平野が広がる。もはや我々の代ではかなり貴重な大自然。木々の緑と、砂の茶色に彩られた世界。なのだが一部分黒く焼け焦げた跡がある。これをみると、ここはあの夜空を見上げた場所であり、オレがまったく知らぬ世界に来たのだと改めて実感させられる。

そこはオレが昨夜、ファヴニールのブレスを放った場所だ。あの火炎の吐息が、緑をきれいに焼けあげていた。

 

「 あそこにいってみませんか? 」

 

「 あの焼けたとこか。 」

 

「 ええ。昨夜、あそこからなにかの気配を感じまして。気のせいかもしれないが、本当になにかの痕跡が見つかるかもしれない。 」

 

「 第一村人が、焼死体になってると? 」

 

「 確認してみるか。 」

 

 異形種の男四人とモンスター二匹、炎に焼かれた跡地に足を進める。草木の焦げたような匂いが風に乗って漂う。その香りやわずかに残った燃え殻を踏みつける感覚はゲームと違い、この五体はやはり生きているのだと伝えられる。

 

「 焦げくさいな。一体何度程の火を吐いたんだ? 」

 

「 ドラゴンなんてあちらじゃ存在しないからな。今のところは知りようがないだろうが上位種だ。相当な熱量ではあるだろう。 」

 

 烈怒さんもスネークさんも、冷静にファヴニールの吐いたブレスについて考察している。

こういった場合、彼らは本当に頼りになってくれるものだ。

 

 灰に塗れた地面。そこ一面は生命の痕跡こそ残れども、生きているものはなにもいない。生に満ちた平野の中で、そこだけは無情な死が広がっていた。

 

「 よく燃えている。晩に焼けたにしてはまだ大分熱を感じるな。人間の遺体らしき者は見当たらない。灰になったか? 」

 

「 農耕なんかなら、良い肥料になるだろうな。 」

 

「 土いじりか。そんなもの、する機会がこの先あるのかな? 」

 

「 オレたちは姿形は変われど、生き物だ。摂食は必要になるだろう。 」

 

「 こいつは、リスか?巻き添え喰らって焼き死んだか。 」

 

 スネークさんの手には、黒焦げになったげっ歯類らしき小さな動物の焼死体が取られている。まさか、初めてリスを見るのが、ドラゴンに焼き殺された姿になるとは。

スネークさんはそのリスを大きく開けた口に放り込もうとしていた。

 

「 バカ、なにをやってる!? 」

 

「 味をみておかんとならんだろう。 」

 

 あぁ、そういえばこの人、こういう趣向の人だったな。その気になればダンボールからネズミまで食う人だ。さすがに調理するらしいが。

 

「 だからってなにもそれじゃなくていいだろう。 」

 

「 焼き具合も見れるかもしれんぞ?知っておいて損はないだろう。 」

 

「 はぁ・・・わかった。食ってみろ。 」

 

 烈怒さんも折れたか、スネークさんにこのリスを食べてみるよう勧めた。

 

「 ・・・? 」

 

 そんな中、オレもなにか灰色の中に何かを見つけた。服か旗のキレのようだが、見たことのない紋章が刻まれている。

 

「 で、どうだ?お味は。 」

 

「 うーん、なかなかいい感じに焼き上がっている。こいつは多分木陰か林辺りに潜んでたからこれぐらいで済んだんじゃないか?人間がまともに喰らったら、丸焼きは確定だろうな。 」

 

「 どうしたあるじぇんとさん? 」

 

「 こんなものを見つけたんだが。 」

 

 他三人に、この布切れを見せた。

特に烈怒さんが、それに描かれたマークを凝視している。

 

「 ほう、コイツは? 」

 

「 特徴からして、何処かの国の国章か? 」

 

「 まさか、その国の連中がウルトラ上手に焼けましたとなったか。 」

 

 その時、オレはまたしても何か視線を感じた。昨日のやつだろうか。

それに、これに気づいたのは、オレだけではないらしい。

 

「 ガァルルゥゥ・・・!! 」

 

「 どうした、殺丸!? 」

 

 タダノさんのケルベロス、殺丸だ。やはりなにかの匂いか気配をビンビンに感じているようだ。その三首から歯茎を剥き出しにして、視線の方向を威嚇している。

ここまで殺気立つとは相当やばい相手なのか?

 

「 こそこそ隠れてないででてきたらどうだ!?

〈 メラゾーマ 〉! 」

 

 信仰系炎魔法を放ち、物陰にいる誰かに攻撃を仕掛ける。殺丸も同属性の精神系魔法〈アギダイン〉を撃ってくれた。

火炎が爆散し、またしても木々が赤く明るくまさしくメラメラと火の手を伸ばして焼けていく。艶々の茶色い木の皮が、黒く燃え朽ちていく。どうやら、魔法もちゃんと使えるらしいな。一つ学びだ。

 

「 焼きリスのおかわりか? 」

 

「 もうリスはいい・・・来るぞ、構えろ! 」

 

 烈怒さんのこの言葉の後に、炎の中から黒い影が飛びかかってくる。オレはそれを見て咄嗟に補助魔法を詠唱した。

 

「〈スクルト〉!〈バイシオン〉!」

 

 物理防御と物理攻撃力の向上効果が全員にかかり、降りかかる刃を愛用の十字のスタッフで受け止める。それは三日月のように鋭く弧を描いているような形状で、鋼の刃先は鈍色に光沢を帯びている。

 

「 まったく、占星千里はなにをみたんだか。竜王クラスの邪竜がでたと聞いて出てきてみれば、そんなのどこにもいないじゃない。でも・・・ 」

 

 それはビジュアル系のような見た目をした少女だった。薄黄色のパーカーを着ていて、白黒の髪をツイルテールに結っている。オレをみるその瞳も、白と黒のオッドアイだ。

こうも白黒づくめでは、あの動物を連想してしまうな。

 

「 アンタは強そうだ・・・ 」

 

「 パンダ? 」

 

「 ・・・え、なにそれ? 」

 

 少女は困惑していた。口ぶりからして聞いたこともないのか?

 

「 だから、パンダみたい。白黒の、笹食ってるクマ。 」

 

「 え、知らないけど、そんなクマ。 」

 

「 聞いたなスネークさん。彼女はパンダを知らない。 」

 

「 2130年代でもそれなりに知られてるだろうに。 」

 

「 だとすると、この世界にはパンダはいないのか。 」

 

「 それか生息数が少ないのかもしれない。ただでさえ絶滅危惧種だったろう? 」

 

「 パンダで真面目に考察するのか・・・ 」

 

 烈怒さんとスネークさん、オッサン2人がパンダでバカ真面目に考え事をしているのを他所に、彼女は大鎌を構えなおしていた。

 

「 お目当てはオレってことでいいの? 」

 

「 そうなるね。あの竜は貴方のなんでしょ? 」

 

 あの竜。ファヴニールのことか。とすれば、彼女はあの布切れに描かれた国章の国の人間か。

 

「 貴方の力は、人類にとってこの上ない脅威になる。だから始末する為に私が来た。この絶死絶命が。 」

 

 絶死絶命。聞くからに即死持ちか?しかし情報が足りん以上は、決めつけは危ういか。ここは精神的揺さぶりをかけよう。

 

「 ダッサ。 」

 

「 だ、ダサい? 」

 

「 そう、ダサい。変な仇名を自分から名乗るな。もう少しシンプルでいいんだよ。

絶命少女リリカルパンダとか。 」

 

 とにかく、その昔に知った、ドラゴンとロリとショタのでるアニメから引用してみたが、我ながらなんと天才的なネーミングか。

 

「 だからなによそのパンダっての・・・まぁいいわ。とにかくアンタたちには死んでもらうから。 」

 

 そろそろ本番らしい。後ろで仲間が銃を構えていてくれているが、今自分がどれだけ戦えるかをみたいところだ。

 

「 ヤバくなるまで手は出さないでくれ。 」

 

「 分かった。 」

 

「 ワン! 」

 

 オレが視線を向けると、タダノさんは一言承諾の返事を返し、殺丸も軽く吠える。

 

「 行くぞ、ドランゴ。 」

 

「 グァアウ! 」

 

「 スキル〈異端断罪〉!〈異端判決〉! 」

 

 やはり使えるか。だが異端とは。聞いたことがないスキルだ。

 

「 武技〈 疾風超速化 〉!〈流水加速〉! 」

 

 目にも止まらぬスピードで、少女とオレの距離が急速に縮まる。素早い斬撃をひたすらに捌いていく。なるほど、やはり見たことないスキルだ。武技といったか。

ここまで速いとは。

 

「〈ボミオ〉・・・!?」

 

 相手の素早さを下げる魔法を使用しようとした時、なにも起こらなかった。詠唱失敗。それにいつもよりMPの消費が多く感じる。さっき使ったスキルか。ならば・・・

 

「 スキル〈いてつく波動〉! 」

 

 相手のバフを解除するスキル。これは問題なく発動した。オレの身体から発せられる冷気の如き波が、彼女にかかった効果を打ち消す。

 

「 !? 」

 

 その反応、そちらもこれを知らなかったようだな。だが、立ち止まってる場合じゃないぞ。

キミが相手してるのは、オレ一人だけじゃない。

 

「 ドランゴ!〈魔神斬り〉! 」

 

 オレが下がると緑色の恐竜が、手に持った戦斧の渾身の一撃を叩き込む。が、彼女はスッと飛んで回避した。

 

「 逃がすな。〈蒼天魔斬〉! 」

 

 ドランゴは続いて、青白い斬撃波を放つ。これは見事に彼女に命中した。さらに追加効果によって、彼女は麻痺して身動きが止まる。

 

「〈魔神斬り〉!」

 

 再度放たれたこの会心の一撃。間違いなく命中し、彼女を吹き飛ばす。

 

「 う、うぅ・・・! 」

 

 横たわっている彼女は、先の一撃がかなり効いていて、悲鳴をあげているであろう自身の身体を鞭打って立ち上がる。いいねぇ、そういうの悪くない。

 

「 〈 重傷治癒 〉・・・ 」

 

 回復魔法か。妥当な判断だ。彼女の身の傷が癒えていく。

 

「 辛そうだが、どうだ?人類の為に、オレを仕留められそうか? 」

 

「 はは、難しいかな。でも、算段はあるよ。 」

 

 そういう彼女から発せられた白い光が、隣に並んで、まったくうり二つの姿を象る。

ああ、これ掲示板を読み漁ってる時に聞いたことがある。

会得条件が難しい職業「ワルキューレ」を修めて習得できるスキルだったな。

確か、〈死せる勇者の魂〉といったか。

ニブルヘイムの災難関ダンジョンの第一階層のNPCがこれを覚えているらしい。

魔法詠唱者の中でも、雷魔法を愛用することで知られた「雷帝」なる異形種プレイヤーが、何度もあのダンジョンに入っては第四階層までで引き返していたらしい。

そんな彼女そっくりのコンストラクトはオレに襲いかかるが、〈死せる勇者の魂〉はあくまで自身の複製を創るスキル。これだけではオレへの回答にはならない。

 

「 ドランゴ!〈煉獄火炎〉! 」

 

 相棒の口から炎のブレスを吐かせ、コンストラストごと後方の彼女を焼く。しかし、彼女はそれでも構わず、虎の子を披露した。

 

「 スキル〈あらゆる生あるものの目指すところは死である〉! 」

 

・・・!ほぉ、それを使ってくるか。

アレは人種の使えるスキルではない。が、からくりはどうあれ、目の前で巨大な時計のオブジェクトが

でている彼女は特別なことに変わりないわけだ。

 

 

「 ドランゴ、下がれ! 」

 

「 グゥウ・・・!? 」

 

「 オレなら大丈夫だ。 」

 

 オレを信じてくれたか、ドランゴは後方に下がり、 オレはこの絶死絶命と相対する。

 

「 おや、あのドラゴン後ろにやってよかったの? 」

 

「 ああ。それのことはよく知ってるからね。召喚! 」

 

 オレは、新たなドラゴンを呼び出すこととした。あのスキルに、本来ならば「死の支配者」でなければ使えぬ奥義ともいえる技に、有効打を持つ奴をだ。オレの前方、絶死絶命の前にそれは現れた。

 

「 へ? 」

 

 大鎌を構えた彼女は豆鉄砲を撃たれたような表情を浮かべていた。そらそうかもな。急に目の前に、オレンジ色の亀とドラゴンの間の子みたいなやつがでてきたら、ね。こういう見た目の奴を、オレは母ちゃんから聞いたことがある。吉弔という、龍の亜種だ。万病に効く、薬の元になるとか何とか。だからなんだって話しだが、おそらく彼女が撃ってくるであろう魔法に対して、コイツは最高の回答を持っているのだ。

それは、今にわかるだろう。

 

「 で、でもアンタをやれば、先ずは良しよね。

〈死〉! 」

 

 コイツがデカいから跳躍しながらだが、やはり、撃って来たか、即死魔法。〈心臓掌握〉でも、〈真なる死〉でもなく、〈死〉か。

まぁ、それ使うんだったら十分だよな。

 

 

 

 

 

「 ヤッチェ、〈マホカンタ〉だ! 」

 

 目の前のガメゴンロード、ヤッチェが魔法を唱え、不可視のバリアを展開、それに〈死〉で放たれた負の瘴気が接触すると跳ね返り、彼女に命中した。時計の針が進み始める。十二秒たって、蘇生アイテム、魔法を撃たねば、彼女の負けだ。

 

「 な、なにが・・・? 」

 

「 見ての通り、反射したのさ。絶死絶命。 」

 

 唖然として、立ち竦む彼女を他所に、秒針は無情に進んでいく。この分だと、回答はないらしい。

そして、針は十二を指すと、彼女はその場に倒れ、動かなくなった。

オレの勝ちだぜ、パンダちゃん。

 




 ガメゴンロードはバトルレックスより少し小さいサイズで横にデカい設定です。イルルカなんかだとガメゴン系はMサイズですが。
絶死ちゃんを相手にする上で勿論イズデスを破って終わり!という流れは最初から構想してましたが、原作よろしく蘇生魔法それこそザオリクとかだと面白くないので、マホカンタに致しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。