OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜   作:ニコラス―NICORUTH―

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すべてが詰みかけた国

 

「 なぁ、MUR。 」

 

「 あ、多分オレも同じこと思ってるゾ。 」

 

「 恐ろしいほど、何もないな。 」

 

 広場にファヴニールとタドコロを置いて、オレとMURで女王と謁見することとし、あの女性に教えて貰った道なりに進んでいくが、その中で通ってきた街並みをみた感想は、これだった。長年、ビーストマンという脅威に晒され続け、その防衛費によって疲弊した竜王国には、産業らしい産業が見受けられない。これ自体は他の国の大半も変わらない。バハルス帝国が魔法に力を入れているくらいしか目立たない。

 

魔導国?あれはスケルトンでズルしてるべ?ノーカンだよノーカン。

 

 だが、ここまで酷いとは。武力もなければ、他の強みもない。今のこの国にはそれは余りに致命的である。こればかりはこちらがどうにかする他無い。魔導国もできそうなもんだが、その場合モモンガは確実に、何らかの対価を要求するだろう。それが交易というものだ。

問題なのは、それがきっかけで今以上に魔導国との関係がより深まった場合、奴らがヴリヒルドリアに干渉しやすくなってしまう。立地上ここからすぐ近くの我がギルド拠点。

そこが危険に晒される頻度が激増することとなる。

それこそ竜王国が必要以上にこちらに興味を惹かれても、魔導国とズブズブであっても困る理由だ。

 

 そうなれば、ギルド崩壊まったなしだ。そのためドラウディロン女王には、是が非でも魔導国との関係を絶ってもらう。タドコロは竜王国も、都市国家連合の管轄に置く気満々だ。同じプレイヤーの息がかかっているとあれば、あの慎重なモモンガは迂闊に手出しできなくなる。

こちらのやり方が通しやすくなるわけだ。

 

 仮に無理だったら?強硬策に出ることになるだろう。

そうでもしなけりゃ、ウチは、千年王国は守れない。

ま、具体的にどうするのかは聞いてなかったので、MURにこれから聞いてみるか。

 

「 お、そろそろみたいだゾ! 」

 

 城が見えてきた。もうすぐだ。兵士たちも事情を知ってか素通りさせてくれた。

とうとう、女王陛下とご対面というわけか。

 

「 MUR、一つ聞き忘れていた事がある。 」

 

「 だいたい察しがつくゾ。もし、女王がこちらの要求を呑まなかったら、だな? 」

 

 流石。察しが早いな。オレが一番懸念してることを見抜くとはな。

 

「 そうだ。そうなったらどうするんだ? 」

 

「 そうなったら女王が謀殺されたとかって体で拉致、或いは抹殺するゾ。その後は、オラたちの内から良い人材を王として添えて、めでたく竜王国は都市国家連合の仲間入りゾ。 」

 

「 上位二重の影にすり替えるじゃ駄目なのか? 」

 

「 それだと魔導王にすぐバレて、二重の影がぶっ殺されて、竜王国があちら側の手に落ちるゾ。

なにせ自分たちも使ってる手段だからな。影武者なんてすぐ見透かされる。同様の理由で精神操作も駄目ゾ。

それくらいなら、王様取っ替えるのと、国力を上げるための策を一辺にやった方がいいゾ。どのみちこちら側についたのは、あちらにも知れ渡るんだしな。 」

 

 段々もある階段を足を進めて上がっていく中、オレとMURの会話を続いた。

 

「 ・・・ 」

 

「 といっても、そうはならないと思うゾ。前もいったが、ドラウディロンは王としては優秀な部類だ。ちょうどすぐ近くに、魔導王に匹敵する勢力がいて、自分にそいつらと縁を切れといわれる。これにノーといえばどうなるか分からないほどバカでもないゾ。

リ・エスティーゼ王国が滅亡した今なら、尚更ゾ。 」

 

 リ・エスティーゼ王国。またこの名前がでてきたな。こないだモモンガが潰したとこ。しかし、この国に関してまだよく分かってない事があったな。

 

「 ラナーとかいうアバズレが、アルベドと組んでたのはわかるし、犯罪組織と貴族が国を腐らせたのはわかるが、実際のところ、王国が滅んだ直接の理由ってなんだ? 」

 

「 詰まるところ、王様が優しすぎたんだゾ。 」

 

「 優しすぎた? 」

 

「 そうゾ。リ・エスティーゼ王国の国王だったランポッサ3世は、確かに人徳があった。王国最強の戦士だったガゼフ・ストロノーフも、そんな王の人柄に惚れ込んで軍に入ったんだゾ。ところが・・・ 」

 

「 それが仇になった? 」

 

「 そうだよ(肯定)。若手のバカ貴族が、魔導国の馬車を襲撃し、輸送していた食糧を奪うという命知らずにも程がある行為を取ったゾ。 」

 

「 んで、ランポッサはそのアホをどうしたの? 」

 

「 あろうことか庇ったんだゾ。バカな貴族でも国民だって。 」

 

「 それは悪手じゃろう(ネテロ)。 」

 

「 本当にそう思うゾ。実際これが元で王国は滅んだゾ。優しいだけじゃ、王様は務まらないわけだな。

これが帝国のジルクニフ帝だったらとっとと下手人を始末して首差し出して土下座くらいはしてるゾ。 」

 

 話をしているうちに、階段を登り終え、目の前には、王城がそびえ立っていた。いやぁ、立派なものだ。ホグワーツみたい。

 

「 門を開け! 」

 

 木製の扉が開く。如何にも中世ヨーロッパ、ファンタジーの城である。

 

「 行くゾ。 」

 

 MURに続いて、オレも城の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

「 よくぞ来た。 」

 

 王宮は、王の間。小さい少女が玉座に座っている。

身なりをみるに、彼女が女王であるらしい。

その側には、宰相らしき男性が控えている。

この踏まえたような感じ、同じ宰相でもアルベドとはまるで違うな。あれに比べて、我がでてない感じだ。

 

「 竜王国女王、ドラウディロン・オーリウクルスである。 」

 

「 廃棄都市ヴリヒルドリアより参りました、あるじぇんとと申します。 」

 

「 都市国家連合、連合国のMURゾ。 」

 

 オレもMURも、ドラウディロンと挨拶を交わすが、お辞儀をしたりはしないし、傅かない。マナーを知らないわけではない。あくまで同等か、或いはこちらの方が上だと示す為だ。

 

「 して、此度は妾になにようか? 」

 

 

 

「 先日、そちらの冒険者が、我が街に許可なく土足で入り込みましてな。 」

 

「 ヴリヒルドリアは、うちの保護下にある都市ゾ。そこに無断で入り込んだとあってはこちらも黙ってはいられない。

陛下には、此度の責を問うたく、参上いたしましたゾ。 」

 

「 そうか。それは済まなかったのう。言っては悪いが妾とて、そなたらの街が怖くて堪らんのだ。スレイン法国から、竜王クラスのドラゴンがでたと聞いた時からな。 」

 

「 それは心配いりますまい。我らの要求を呑んでいただければ、我が龍の暴威は向きますまいて。 」

 

「 ・・・要件とはなにか。と、問う前に・・・ 」

 

「 件の冒険者であれば、こちらで身柄を預からせてもらっています。一人だけならば、要求を呑んでいただければ、開放いたしますゾ。 」

 

「 なぜ、一人だけなのだ? 」

 

「 ご理解頂きたい。そのまま返しては、我が街は面目が立たんのですよ。あのセラブレイトとかいう冒険者、人の都市に勝手に入り込みながら、私のことをオッサンなどと愚弄いたしましてな。

私もあの街を守る者として、左様な輩を帰すわけにはいきません。

立場ある者が舐められるということは、共同体そのものが軽んじられる。貴方も、存じておられる筈だ。 」

 

 

「 その一人とは、セラブレイトではないと? 」

 

「 その通り。あの賤しい俗物めのアンデットを黙らせてすぐに、善良な幼子に、父を帰してほしいと頼まれましてな。その思いに報いてやろうとしたまで。

いうなれば、妥協案にございます。 」

 

「 魔導王を賤しいとな? 」

 

「 私はあの骸骨とは違う。血が通っているのだ。しかして己等が侮蔑されるようなことも、我慢ならない。と、皆に示しとうございます故に。

かの王は長年続いた国を瓦礫の山へと変えました。陛下も、彼の力と、その危険性を知り得た筈です。 」

 

「 そこで、要求の一つとして、魔導国との縁を切って頂くようお願いいたしますゾ。 」

 

 MURから、その提案をされた時、ドラウディロンの様子がどこか変わったような気がした。さながら、怖いものを見たような。MURも、それに気づいているようだ。

やはりな、こいつモモンガを恐れている。

 

「 縁を切れ?あの魔導王と? 」

 

「 そうだよ。そして、こちら側に鞍替えしてほしいんだよなぁ・・・ 」

 

「 都市国家連合には、魔導王に比肩しうる者たちが大勢います。我が都市もお力添えをいたしましょう。

どうですかな?ドラウディロン陛下? 」

 

「 だが、魔導国からはアンデットを買っておる。急に縁切られれば、魔導王だって怒り狂おう。 」

 

「 その点は我々に任せて頂きたい。むしろ、魔導王とは距離を取るほうが無難だと存じております。

ビーストマン亡き今、もはや上位アンデットを売る意義も薄い。そうあれば魔導王は、この国の本格的な侵略に打ってでるでしょう。

必要とあればあの男は、御身すらも殺めんと致しまする。如何に良君と讃えられようが、何処までいこうが、アンデットはアンデットに過ぎません。

己らが為あれば、他をどこまでも傷つけ、踏みつけにする。それが、魔導王アインズ・ウール・ゴウンの本性ですよ。

端的にいえば、やつは他者を下にしか見れないんですよ。

チェス駒か、それ以下の石切れにしか思っていない。

そんな輩に何故己の身を預けられようか。 」

 

「 今みたところ、この国はビーストマンのせいで疲弊しきってるゾ。はっきりいえば、魔導国にとっては数合わせにしかならない存在が、今の竜王国ゾ。

このままいけば、リ・エスティーゼ王国のようにとはいかずとも、緩やかに滅びる可能性があるゾ。魔導国はアンデットのレンタルをしているようですが、これに頼っても結局金は掛かるばかりか、こちらの国力が却って衰える可能性も御座いますゾ。 」

 

 

「 ・・・ときに聞きたい。かの都市の者よ。 」

 

 かの都市。ヴリヒルドリアの事か。なら、オレだな。

 

 

「 なんでありましょうか。 」

 

「 酷く、魔導王を恨んでいるような口ぶりだが、アヤツがそなたになにかしたのか?

アンデットは生者の敵であるとはよく聞くが、それを踏まえてもそなたの魔導王への見解には、憎しみを感じる。 」

 

 なるほど。オレがアイツを憎む理由を知りたいわけだ。

 

「 かつては私も奴も同じ共同体の中にいた同士でありました。が、ある理由で袂を分かつことになりましてな。

それ以降、関わりを持つことがなかったのですが、こないだあろうことか我が都市に、兵を送り込んできたのですよ。

あの淫魔と、その姉妹を。 」

 

「 ・・・淫魔とは、魔導国の宰相のことか? 」

 

「 左様に御座います。彼奴めは我が都市を荒らし回り、一区画を潰されました。現在は復興しておりますが、我らとしては許し難く、魔導王へは配下の血肉をはじめとしてそれ相応の代償を支払ってもらう所存にございます。

 

そればかりにございません。」

 

 

「 我が都市はこの国や飛竜騎兵部族の里の近くに御座います。里が襲われた以上、魔導国のものがまたいつ攻めてくるかも分かりません。

もちろん、そうなれば、竜王国も危うくなりましょう。 」

 

「 これを踏まえて陛下、どうか賢明なご判断をお願いいたしますゾ。 」

 

 

 これを聞いたドラウディロンは、一度目を瞑った。彼女の中では、二つの道の間で、その意志は揺らいでいる。

こちらへの従属か、敵対か。といっても、どちらを取るべきかはもうわかり切っている筈。

それでも答えをだしかねるのは、やはり魔導王への恐怖ゆえか。ビーストマンたちも恐れるソウルイーターを、数百も保有しているのだ。十数万もの命を一度に奪ってみせたのだ。

リ・エスティーゼ王国の民のほとんど、800万以上もの人命を消してみせたのだ。

 

 そんな魔導王と、あの死の支配者との縁を切れとは、リスクの大きすぎる話だ。だがしかし、断れば、竜王国の未来はない。滅びるだけだ。

 

 少女、厳密には魔法で若く見せてるだけらしいが。その目が開かれ、重い口が続いて空いた。

 

 

「 わかった。そなたらに従おう。 」

 

「 ご理解頂けて光栄ですゾ。 」

 

「 これにて竜王国の繁栄は確約された。あとは、我らがそれを実行に移すまでにございます。 」

 

 賢明な判断だ、黒鱗の竜王。

 広場で待っててくれてるタドコロや廃棄都市のみんなに、いい報告ができそうだ。

 

 

 

 その頃、何処かの場所。

 

「 おのれぇ、オレが、このような・・・

竜帝と竜母の糞どもめぇ・・・!! 」

 

 真なる竜王が一人、断絶され、廃れゆくばかりの原初の魔法である始原の魔法の使い手。

八欲王から逃れ、力をつけながら生きながらえていた彼であるが、とうとう往生の時を迎えようとしていた。

 

 その深紅の刃物のごとく鋭利な視線の先にいる相手は、プレイヤーと、彼の知らぬ、異形の竜である。

長く太い白と黒の身体に金の外殻が助骨のように備わっている。

しかしやはり、特に目を引くのは、その黒い爪のような翼の形状だろう。

 

「 どうだ竜王?屈辱に塗れる気分は!?

気の毒だからもう、終わらせてやろう。 」

 

 山羊頭の男は叫び、彼の持ちうる、最大最強の一撃を放つ。

 

「 〈魔法最強化大厄災〉! 」

 

 超位魔法をも凌駕する、ユグドラシルでも最高の威力を誇る最強の範囲攻撃魔法。

それが、ワールドディザスターのクラススキルに加え、〈魔法最強化〉によって、よりその破壊力を増していた。

凄まじい爆発が、辺りの自然ごと竜王を吹き飛ばす。

 

「 ぐわぁぁぁあ!そんな、そんな・・・!

死にたくない!死にたく・・・ 」

 

 そんなみっともない断末魔をあげながら、その竜は果てる。己の研鑽に抜け目がなかった彼であるが、その最後は余りにも呆気がなかった。

 

――朽棺の竜王、キュアイーリム=ロスマルヴァー、死亡。

 

 かつてインベリアやその近況の人々から魂を奪いゾンビの群れへと変え、「深淵の躯」を率いて暗躍した邪竜の命運は、ここに潰えたのだった。

 

 それを知るのは、この先ごくわずかになることだろう。

彼に引導を渡したこの魔法詠唱者と、彼と気が合った稀龍、

「 叛逆の竜王 」を初めとして。

 

 同様のように、あるじぇんとやタドコロ、そして魔導王の預かり知らぬうちに、世界は、変容し始めていた。




 次回、オバロ世界こわれる。にご期待ください(昭和ライダーとかのやつ)。
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