OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜   作:ニコラス―NICORUTH―

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 今回も淫夢要素なし。そしていつもより短めでございます。


なぜ、女なんだ?

 

「 て、ことがあったわけ。 」

 

「 なるほど。事情は分かった。しかし驚いたぞ。お前がアレを持ってくるなんてさ。 」

 

 二度言うようだが、本当におったまげた。彼女がまさかドラゴン、それも真なる竜王の死体を持って帰ってくるとは。

 

 エレンは我がギルドのメンバーの一人だ。この世界に転移した直後はヴリヒルドリアにいたんだが、いつの間にか行方不明になっていた。

探そうにも魔導国への対処で手一杯で、まるで手が付けられない状態だった。

 

曰く、彼女は転移したあと、海が近くにあったから調べて歩き回っているうちに、その先にある海上都市に行き着いたらしい。そこで、これまで数日間過ごして戻ってきたのだとか。

んで、今竜王国の近場に、オレの目の前にいる。

なにかデカいものが浮いてると思ってみたら、ドラゴンで既に死んでいて、サメが空飛んでそれを運んでくるんだからそれはそれは凄まじい光景だった。

 

 本当になんでもできんだな、サメ。正直インパクトやそういうとこはドラゴンに勝るかもしれん。

 

「 んで、アレを仕留めたのはお前でいいんだよな? 」

 

「 当たり前でしょ。この通り、噛み跡塗れじゃん。いつだったか、アンタが酔いつぶれたアタシと一晩過ごした時みたいにさ。 」

 

「 あの時は酷かった。いろんな意味で。あのあと歯形が消えるまでみんなに笑われたんだぜ? 」

 

 

 オレは彼女の持ってきた、竜王の遺体を見てみる。確かになにか、とは言うまでもなくサメに噛まれた跡が痛々しく残っている。そして首が特に、同じくらいのサイズにやられてるな、これ。そして、そこら中には火傷の跡。

〈 大顎台風 〉に〈 炎の嵐 〉、それからこの首のやつは・・・

 

 

「 首噛んだのはメガロドン? 」

 

「 いんや、悪霊鮫。 」

 

「 ああ、アイツか。ミスティックシールドのヤツ。 」

 

 いくらかコイツからサメ映画のうんちくを聞かされるし、実際に見せられたので、ある程度わかる。

のだがまさかユグドラシルがあのB、Z級映画群のネタを取り入れるだなんて当時は思いもよらなかったな。

 

 制作スタッフにエレンと似た類の趣向の奴がいるなとも。

 

 

「 んじゃ、コイツも弔ってやるか。 」

 

「 埋めんの? 」

 

「 ああ、そこのデカい湖にな。タドコロが仕留めたゲーミング竜王もそこに沈めた。 」

 

 

「 水葬なんだ・・・てかタドコロってあのステハゲいんの? 」

 

「 なんでも都市国家連合って国の長なんだとさ。

・・・仕事はいい加減らしいが。 」

 

「 ふーん、アイツがね。 」

 

「 確かお前、2ch連合祭り以来だったな。 」

 

「 うわなっつ。そういえばいたよね、野郎ばっかのギルド。 」

 

「 ホモの団な。今うちはあそこと連合組んでんだ。 」

 

「 ふーん、その心は? 」

 

「 ここから西と北西に目障りな連中がいてな。西のスレイン法国はなんでも洗脳できるワールドアイテムを持ってるし、北西の王は、あのモモンガのくそったれだ。連中に対抗するには、手を組んだ方が効率的なんだよ。 」

 

「 モモンガってPVP勝率5割の? 」

 

 

「 そう。そのモモンガ。あのガイコツ野郎、寂しさのあまりにとうとう心にまで肉がなくなったらしくてな、戦争とはいえばんばん必要以上に殺しはするわ、非戦闘員まで容赦なく殺しやがるわ、とんでもないキルリーダーになりやがった。国は栄えるが、その裏はマッチポンプだらけだ。特に聖王国が酷くてな。あそこのバカ共は、一連の出来事がやらせだとも知らぬまま、アホみたいにアイツを崇めてんのさ。

魔導王陛下バンザーイってな。バカらしいったらありゃしない。なにもしらねぇエテ公どもがよ。

・・・バカって二回もいっちゃった。 」

 

 正直、事実が公になっていないとはいえ、モモンガを拝めている奴らには、心底腹が立ってくる。

なにも知らぬが故に、嘘を嘘とは見抜けずに、自分たちの身に起こったことに偽りなしとなんの疑いも持たない。

父母兄弟の犠牲から何からなにまで、ナザリックのドブカスどもの謀だと、誰も気づかない。

正義感とかそんなものではないが、それがどうも気に入らん。

 

 こんなんで誰がナザリックに、本物の悪党になったAOGに戻りたがるんだろうな。

 

 

「 例の教団、向こうでも噂は立ってたんだけどさ、いってること自体は悪くないけど、崇拝対象の印象が悪すぎてね。 」

 

「 なんだ、お前もそう思うのか? 」

 

「 えらく人相悪く、ていうかやべーやつに思えてさ。それにあまり良く知らないけど、ナザリックそのものも、昔から世間体はよくなかったらしいじゃん。アンチスレすげぇ立ってたし。 」

 

「 "あれら"の時のか。 」

 

 そもそものこと、AOGは進んでPKを行う性質故に、そこそこの数のギルドやプレイヤーからは目の敵のように扱われていた。その果てが、あの1500人のナザリック突入である。タドコロやガーネットはよく、他所に移れたもんだと思う。話は弾むところだが、とっとと竜王を、時代の敗北者を葬ってやらないとな。

 

「 さて、埋めるか。 」

 

 オレはドラゴンたちを呼び出し、真なる竜王の死体を運搬させる。かなりのサイズだ。八欲王から逃れて生きてきたということは、やはり歳を重ねてそれだけでかくなっていったのだろう。

 

「 そこでいい。」

 

 オレのこの一言の後、ドラゴンたちの手を離れた青白い竜は湖へと浸水、どんどんと沈んでいき、やがて見えなくなった。

せめて、この湖の肥やしとなって、生命の循環に貢献してほしいものだ。

 

「 虚しいものだ。かつては栄華を極めた竜王も、死んでしまったらただの肉と骨の複合物か。 」

 

「 諸行無常ってやつ?そんなもんでしょ。てかさ・・・ 」

 

「 なんだ? 」

 

「 あのドラゴン、アタシにすっげぇ敵意向けてきたんだけど。酷くない?なんもしてないのにさ、竜帝の汚物がーって。 」

 

 そうか。そういえば、彼女はその辺りをよく知らなかったな。ということで、何故奴らが、オレたちを敵視するのかを教えた。

 

「 八欲王ね。あんなの殺しまくるなんて、ワールドチャンピオンかなんかなの? 」

 

「 さあな。だが確かなのは、それ以前には、奴らはもっといた。この世界の頂点で、好き勝手に暴れ回っていたことだろう。それこそ、堂々とナニをしごきはじめて、それを見せ合うくらいにはな。 」

 

「 ドラゴンオナニーの見せ合いとか見て喜ぶのアンタくらいでしょ。 」

 

「 オレはこの世界でまだ見たこともないドラゴンを見たかった。だがな、真なる竜王は積極的にとは云わなくても、向かってきたら潰すべきだと思ってる。こちらを殺しにかかるなら、抗わなくてはね。」

 

「 へぇ、そこ淡白なんだね。アタシはてっきり、そいつらを保護しようとかっていいだすもんだと思ってた。 」

 

「 人里に降りてきたクマを保護しようなんて抜かす奴がバカなのは、二十二世紀になっても変わらんさ。ドラゴンは実際にいれば、やはり脅威だからな。スレイン法国がファヴニールを恐ろしく警戒していたのが、なによりの証拠。その反応が、正しいものだ。

故に、オレも真なる竜王と戦わねばならない。 」

 

 ポケットスペースから、タドコロから返されたあの黒い杖を取り出した。

 

「 それ何? 」

 

「 真なる無。オレたちの街を荒らしやがったナザリックのNPCが持ってたワールドアイテムだ。奴らの始原の魔法は、ワールドアイテムを持っていると無効化できる。 」

 

「 へぇ。 」

 

「 奴らは同族以外には、まともな反応を取らない。この湖に沈めた竜王、ああタドコロが仕留めた方な。やつは竜王国の建国者でありながら、国民を巻き添えにしてでもアイツを殺しに掛かろうとしたらしい。

タドコロが早期に始末できなければ、被害はデカくなってたろう。 」

 

「 で、それくらい強いのがわんさかいるわけ? 」

 

「 そうなるな。だからオレたちは真なる竜王とモモンガ。この二つを相手取ることを念頭に置かねばならない。竜王国を魔導国から引き離したのだってその一環だ。 」

 

「 やけに目の敵にしてんね、モモンガ。 」

 

 

 

「 当然さ。あんなことがあったらねぇ・・・ 」

 

 唐突に聞こえた、懐かしい声。後ろを向けばそこにいたのは、蟲が合成したような、凄まじい外見の和服の男だ。

手には得物の杖が握られている。

 

「 源次郎。 」

 

「 え、知り合い? 」

 

「 ナインズオールゴール時代の仲間だ。 」

 

「 え、マジ? 」

 

「 マジだよ。久しぶり、あるじぇんと。 」

 

「 お前も。元気してたか? 」

 

「 うんうん。してたとも。それよりもさ・・・ 」

 

「 う、うえ!?何あれ!! 」

 

 エレンは、思わず空を指さした。その方向をみると、驚きの光景があった。

 

 

 ―――蟲だ。デカい蟲の群れが、羽音を撒き散らして、三頭程のドラゴンの腐乱死体を運んでいる。

ドラゴンたちはどれもエレンが持ってきたものよりも状態が悪い。これは源次郎の蟲たちにそこら中喰われまくったのだろうな。

 

 

「 これも、供養していい?大森林だと大きすぎて邪魔になっちゃうんだ。 」

 

「 ・・・ああ、いいぞ。 」

 

 オレの返事のあとに、蟲たちはドボンと竜王だった腐肉を同じように湖に沈めた。




 次回、エレンと源次郎の竜王国観光。
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