OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜 作:ニコラス―NICORUTH―
「 うわっなにこれ、きったねぇ紫色。 」
「 とうとう過労のあまり吐瀉物か穴からでた下痢と融合したか。 」
「 酷くないですか?それ。 」
「 そうだよあるじぇんとさん。この人は前からこんな色だったじゃないか。 」
オレは今、ヴリヒルドリアにいた。さっきまでは竜王国で射撃をしてたんだが、MURから緊急の呼び出しがすぐそばのタドコロに届いたので〈 転移門 〉で戻り、今こうしてこのスライムと対面している。
他にいるのはエレン、タドコロ、そしてこのエルダーブラックウーズのことを聞いて飛んできたペロロンチーノである。
ちなみに源次郎は帰した。
「 おおHRHR、(身体は)大丈夫か大丈夫か? 」
「 身体ですか。すげぇツヤツヤですよ。今医者にかかったら文句無しでグリーンだと思います。
・・・ここまで来るのは骨でしたが。 」
「 すっごい具合悪そうな色してっけど。 」
「 体色は問題じゃないんです。肝心なのは心の持ち様です。 」
「 そうだそうだ。大事なのは心だ。 」
「 黙れキモヲタ。今晩の飯にすんぞ。
ヘロヘロ、オメェはもう仏壇に飾られてるもんだと思ってた。小汚え紫色じゃなくて、哀愁漂う灰色で。 」
「 やっぱり、私は死んだものだと思ってたんですね? 」
「 はっきりいえば、そうだな。お前は過労でぶっ倒れて三途の川を渡ったとみんな、ていうかオレは思っていた。しかし、今こうしてお前はここにいる。お前はあの日、サービス終了間近にログアウトしたと聞いた。だからオレたちのように、この世界にいるもんだとは考えてもいなかったよ。 」
「 そのことなんですが、本当に、奇妙なことが起きまして。 」
こうしてヘロヘロはこの世界に来た経緯を語った。ユグドラシルサービス終了後、コイツは勤め先で馬車馬のように身体に鞭打って無理していたらしいが、とうとうそれも限界が来て、街のど真ん中でぶっ倒れたらしい。
身体が動かず、体熱は失われていき、口からは血反吐が出る。末期症状そのものだ。
力の抜ける感覚を覚え、自分が死にゆくものだと感じ取ったコイツは、最後に思ったのは、これまでの人生の事だ。特に色濃く覚えているのは、初めてテストでいい点を取った時。
それを親に見せようとした時に、既に事切れていた時だそうだ。曰く、両親も職場に恵まれず、日に日に身体を壊していったのだとか。まさしく、それが脳裏に浮かんでいたその時のヘロヘロも、同じように最期を迎えようとしていた。
周囲の者たちは救急を呼ぼうとしてくれたようだが、時すでに遅く、彼の意識は喪われ、心臓はその鼓動を止めてしまう。男は、二度と目覚めることはなかった。
・・・かに思われたが、気づけば、見知らぬ地でこの男は目覚めることになったそうだ。
自身の半身と呼べよう旧き黒い粘体、「 ヘロヘロ 」となって。
ヘロヘロ自身は、自分の身になにが起こったのかは知らずとも、あの時確かに、人間としての自分は死んだことを自覚しているようだ。
「 つまり、マジモンの異世界転生ってこと!? 」
「 騒ぐな。しかし摩訶不思議なものだな。一世紀前の下手なライトノベルじゃあるまいのに。 」
「 転生、ですか。そういう意味では、ペロロンチーノさんも皆さんも同じだと思います。 」
「 ・・・どういうことだ。 」
「 これはぶくぶく茶釜さんから聞いたのですが、ペロロンチーノさんが音信不通になってしまい、様子を見に行ってみたところ、亡くなっていたそうです。ケーブルや機械系が頭にくっついたまま、全裸の状態で。部屋は対魔忍とかいうアダルトコンテンツのヒロインや茶釜さんのキャラクターのエロフィギュアやらポスターやらが飾られ、棚からはその手の同人誌が見つかったそうです。
・・・あまりいい趣味とはいえませんね。私がいえたものではありませんが。 」
「 ・・・え、え!?オレ死んだの!? 」
ペロロンチーノは恐ろしく動揺している。この姿で意識そのままにこの世界に転移したということは、そういうことなのか。ぶくぶく茶釜さんはあの日ユグドラシルに入っていなかった。だから元の世界に残っている。それで、弟の異変に気づいたんだろう。
「 ってことはオレたちも死んでるんすかね。多分同じ日に複数人が、逝きスギィ! 」
「 まじかよアタシも墓の下か。マジモンのヴィジャシャークなのかよ。ていうかさ、キモヲタ。 」
「 ・・・オレのこと? 」
「 なんで全裸で死んでんの? 」
エレンは率直な疑問をペロロンチーノに投げかける。その声色はやはりお冷めだが、何処か侮蔑というか軽蔑というかそんなものが含まれているような気がした。
「 いや、それは・・・ 」
「 当ててやろうかペロロン。お前もしかしてユグドラシル入る前にシコってたろ。下着がイカ臭くなるのが嫌だから脱いでたんだろ? 」
「 うぅ・・・ 」
「 やっぱりな♂(レスリング)。 」
「 ペロロンチーノさんの性事情は一度置いておいて、皆さんに、知っておいておかねばならないことがあるんです。 」
ヘロヘロの声は、一気に緊張感のあるものに変わる。どうやら、コイツはなにか面倒に巻き込まれて、ウチに駆け込んだみたいだ。一
「 ほう、それは? 」
「 きくところによれば皆さん、ユグドラシルからこの世界に来たようなのは確かです。私もこの身体はユグドラシルで使っていたアバターそのものの性能です。しかし・・・ 」
「 別のとこから飛ばされた奴がいる? 」
「 知ってたんですか。 」
「 前に似たようなのに出くわした。ポケモンらしい。 」
「 ポケモン・・・はぁ、なるほど。でもポケモンってしゃべるドラゴンいましたっけ? 」
「 喋るドラゴン。多分いないな。喋る猫ならいるらしいが。そいつはどんな姿で、なにかいってたのか? 」
「 黒い鎧を着た二刀流の竜人で、私のことをレアモンと呼んでいました。私をレアだと思ってたわけじゃなくて、彼のいた世界にそんな名前のモンスターがいたみたいです。 」
「 なるほど。 」
そうか。そういうことか。オレの冒険は、"進化"するらしい。ご機嫌な蝶になりそうな気分だ。歌を歌いたくなる。
「 彼に追われて、なんとかここに逃げてきたんですが、ご存じなんですか、彼のこと。 」
「 面白くなってきたな。デジモンがいるだなんてな。 」
「 ・・・デジモン?それってアンタが前いってたポケモンのパクリみたいなヤツ? 」
「 貴様ァ!デジモンを愚弄するかぁ!! 」
「 ファッ!? 」
「 なに急に叫ばないでよ! 」
「 ・・・エレン、お前今、聞き捨てならんことを口にしたな。オレは酒や食い物を頭からぶっかけられようが、つばを吐きかけられようが、たいていの事は笑って見過ごしてやる。その後に殺すけど。・・・だがな、どんな理由があろうとデジモンをポケモンのパクリという間違った解釈で語ることだけは許さない。
いや許されない。」
「 いやデジモンのことだけで大げさだろ。ていうかなんでシャンクスなんだよ。 」
というわけで、エレンやヘロヘロ、そしてラーナモンとリリモンと、八神ヒカリがダゴモンに○されてるエロ絵で抜いたことがあるってだけのペロロンチーノの為に、丁寧丁寧丁寧に説明してやることにした。
正式名称デジタルモンスター。略称、ならび通称はデジモン。元々たまごっちとかいう女児向け携帯ゲームから派生する形で誕生したコンテンツだ。モンスターを育成、徐々に強くしていき進化させ、友だちの育てたモンスターと戦わせる。このシステムが人気を博して、テレビゲームや、アニメーションとして派生、22世紀の現在においても、コアな人気を持つシリーズである。
なんでオレがこれを良く知ってるか?勿論、このコンテンツもドラゴン、いやドラモンを厚遇しているからであろう。
歴代主人公の相方は大概竜系統。進化先は大抵恐竜みたいなのから一旦メカメカしくなった後、引き締まってスタイリッシュな竜人とかになる。のだが、勿論、ちゃんと化け物然としたドラモンもでてくる。ムゲンドラモンやメギドラモンはその最たる例だ。
オレはこっちのほうが好きだ。アニメもそんなに好きじゃない。
電子書籍になるが、「 DIGMONSEAKERS 」みたいなのが好きだ。あれの主役ドラモンじゃないが。
激甘のショートケーキより、ビターチョコの入ったチョコレートケーキの方が好ましい。そんな感じかな。
で、だ。ヘロヘロが出くわしたやつのいうレアモンとは、そんなデジモンの一種。思っきしハズレキャラである汚物系デジモン。まさにヘロヘロのように汚い色合いのドロドロしたヤツ。身体のサイボーグ化に失敗して、身体が溶解したゾンビになってしまったという気の毒な設定のキャラクター。なんだが、コイツもやはりデータによって進化する生体を持つ電子生命体、デジモンだ。磨けば光る。それに例えた竜人型。
黒い鎧。二刀流。
・・・なるほど。そいつまさしくレアモンからも進化できるやつじゃないか。
しかもかなり手強いであろう種だ。
「 レオモォン!アオォン!! 」
タドコロが勝手にたまげずに慟哭している。レオモンっていえばいつもいつもでてきたら死ぬやつだな。コイツレオモンが好きなのか。多分デジモンテイマーズ辺りのことを思い出してるのか?
野獣先輩加藤樹莉説か?
「 で、知ってるの?その黒い鎧のデジモン。 」
「 あぁ、めちゃくちゃ強い奴だ。そいつが追ってきてるんだろ? 」
「 はい。私と闘いたがっていたので仕方なく1戦しました。ユグドラシルとほぼ勝手が同じだったお陰で、なんとか一度は隙をみて逃げおおせたんですが、それでも追いかけて来て・・・ 」
「 それで、このヴリヒルドリアに逃げてきたわけだ。 」
「 はい・・・ 」
と、するとその拒むことを知らない脳筋野郎は、ここに逃げ込んだヘロヘロを狙って来るだろう。まあ、そいつは間違いなくデジモンの最終段階、究極体だろうから、侵入を許すとウチは間違いなく、多大な被害を被る。
それを許せば、オレのドラゴンたちがまた死にまくり、さらにはあのモモンガというスペアンデットが、
「 センパイ隙っす!( RPSRGN ) 」
と押し寄せてくるに違いない。
そうなる前に、そいつを迎え撃つしかない。勿論、一目見てみたいというオレ自身の願望もあるが。
「 早急に対処しよう。オレが行く( HRMGNT )。 」
「 本当にドラゴン絡むと躊躇しないよね、アンタ。 」
「 当然だ。あのモモンガのカス野郎にこれ以上台無しにされてたまるか。 」
「 そんなに嫌いかよそのイキリガイコツが。 」
「 ああ、嫌いだよ。反吐が出るほどに。 」
顔が引きつるようだ。オレの青春の一助たるデジモンと会える、それまでとは違うドラゴンと相まみえるという、こんな時にまで、あのクサレ髑髏が出てきやがる。
ほんと不愉快な奴だなモモンガよ。
「 あるじぇんとさん、未だあの日のことが・・・ 」
「 それはある程度呑み込んてるみたいっすよ。 」
「 では、何故モモンガさんを? 」
「 PRRN、(こうなった経緯を)教えてやって、どうぞ。 」
「 え、オレ!? 」