OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜   作:ニコラス―NICORUTH―

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 淫夢要素、今回も殆どないです。


法 国 こ わ れ る

 スレイン法国。600年前、亜人種によって滅亡の危機に瀕した人類を救った、この世界に初めて転移したプレイヤーたちによって興され、彼らに治められた。六大神と呼ばれる彼らがいなくなった現代においても、国民たちは神に信仰を捧げ続け、国の英雄たちは人類の守り手であり続けた。しかし、ナザリックの転移と後の魔導王アインズ・ウール・ゴウンとの遭遇した陽光聖典の全滅。吸血鬼ホニョペニョコ、つまりシャルティアとの戦闘において、ワールドアイテム傾城傾国を扱える聖女カイレの戦死。エルフ王国のクーデター。そして竜王国付近の「 魔の都 」出現と、調査に向かった番外席次の失踪。

 

 決して無視できない損害やアクシデントに見舞われ続けながらも、彼らは人間種、というか人類の防波堤として、他種族の侵略を防ぐ礎であり続けていた。

 

 しかし、その六世紀に渡る歴史も、今ここに終焉を迎える事となる。

 

「 な、なんだアレは!? 」

 

 民衆たちは、それの出現を受けて混乱し始めた。巨大な翼で飛行するその存在。赤紫のそれは見るものに威圧感と恐怖を与える。

 

 ドラゴンだ。それも三つ首の。プレイヤーたちの血を引く神人を抱する故に、それらを敵視する真なる竜王を警戒していた法国をも知り得ぬ存在。

 

「 ―――――!! 」

 

 それがなんなのかを考える余裕は、彼らにはない。甲高い雄叫びが響き渡り、それの口から、金色の雷が放たれ、信心深き民たちを容赦なく焼き尽くす。兵士たちも、六色聖典の英雄たちも、六大神を祀った神殿も、その中にいた神官も巫女姫も、容赦なく轟雷に撃たれ、滅んでいく。この龍には、神などどうとでも良いのだ。当然である。彼が崇めるは、六大神などという、自分と同じ存在ではないからだ。その冒涜的かつ、圧倒的、破壊的な有り様はさながら異界の魔王の化身であるかのよう。ヨハネの黙示録に語られる、赤い竜を思わせる。

しかし、聖書と違うのは、これを討ち倒しうる天使、言い換えれば法国の味方はいないということだ。

 

 

 さらに追い討ちをかけんが如く、ドラゴンの背から放たれた光の矢たちが、広範囲の建物ごと民や戦士たちを滅ぼしていき、複数の影が、飛び降りてきた。

逃げ惑う兵士たちは斬り捨てられ、溶かされていく。

この世の地獄と呼べよう惨状の中、抗おうとするものがいた。

 

「 やってくれるな、化け物どもめ・・・! 」

 

 漆黒聖典。法国の最高戦力たち。この部隊に属する者たちは、みな英雄級以上の強者たちである。

その筆頭たる第一席次、「 隊長 」と呼ばれる男は、街並みを蹂躙する「 邪龍 」を鋭く睨見つける。

 

「 どうするの隊長。クアちゃんもみんなやられちゃったぽいけど? 」

 

 無限魔力はいつもと変わらぬ気だるげに、そして不安そうに隊長に問いかける。その周りには、ごく少数の兵士たち。どうやら彼らを除いては、漆黒聖典は全滅してしまったようだ。

 

「 勿論、あの竜を滅します。 」

 

「 どうやって? 」

 

「 それは・・・ 」

 

「 暴れんなよ・・・暴れんなよ・・・ 」

 

「 ・・・! 」

 

 その声にハッとなった隊長が後ろを振り向くと、その男の姿を確認することとなった。

色黒の肌をした、一見普通ながらもどこか印象に残る男。

彼は、この人物のことを知っていた。

 

「 お、お前は、都市国家連合の、野獣王タドコロ! 」

 

「 24歳、覚醒です。 」 

 

 なにをいってるのかわからずに、突如現れた人狼の槍の一閃によって、英雄たちは次々に地に伏していく。

彼らは確かに弱いことはないのだが、それでもこの世界基準で、である。

六大神や八欲王と同等の彼らには、文字通り雑魚敵程度のレベルの相手でしかなかったのだ。

 

 それを見た隊長は、御代怪我も立つような感覚を覚えた。

今宵、自分はこの男に殺されるのだ。

元々、この男は自分よりも格上がいることくらい、重々承知していた。自分の力を過信して番外席次に灸を据えられたこともあれば、自分と互角以上に渡り合う吸血鬼とやり合った事もある。

真なる竜王だって、自分ひとりでは到底敵わぬであろうことくらいは分かるくらい、この隊長という人物は愚かではなかった。

 

 それでも彼は、自身の誇りに誓ってこの状況下でも決して逃げを選ぶことはなかった。

この身は法国に、人類の繁栄に捧げた。

逃げるくらいなら、戦って死んでやろう。

それが六大神の血を引く自分の義務であるのだから。

 

「 うおぉぉぉぉぉぉおおお!! 」

 

 隊長は目の前の化け物に槍を携え突貫する。己の矜持を守る為に。法国の威信を守る為に。すべてを守る為に。

その様はまさにかつての救世主の血筋に相応しいものだった。

 

 しかし・・・

 

「 焼くときは( 迫真 )! 」

 

「 ああ嗚呼ああ!? 」

 

 突如降りかかる炎の矢によって、その身を焦がされる。空をみれば、鳥と人が混ざり合ったようななにかが、矢を構えていた。

バードマン。文字通り鳥人間というべき異業種。

そして、この男はかつての魔導王の友であり、法国の者たちがホニョペニョコと呼ぶ吸血鬼の生みの親である。

 

「 お下劣なアイテムでシャルティアを洗脳したな?反省のアクメをせよ! 」

 

「 な、なにいってんの・・・!? 」

 

 無限魔力には、一見このバードマンがなにをいいたいのかはわからなかった。しかし、自分たちが彼にとって大切なシャルティアなる人物を害して、そして今法国の危機を招いてしまったであろうことはなんとなく理解はできた。

 

「 そしてそこの巨乳! 」

 

「 わ、私? 」

 

「 そう。その交尾専用ボディで人類の守護者を名乗るだなんて各方面に失礼だよね? 」

 

「 そんなわけあるか!? 」

 

「 催眠!催眠解除!オラ催眠!! 」

 

「 私はトンボじゃない! 」

 

 人差し指をくるくると回して催眠術をかけようとするバードマンに、無限魔力は憤慨する。まるで緊張感がない。遊ばれているようだ。力の差は歴然であるのだ。

そう、それこそ、そこらの昆虫と人間という位の差だ。

昆虫が法国、人間が彼らだ。

しかしこの鳥人間、さっきから言動が可笑しい。

酔ってるのか?

なんということだ。ここまで舐められているのか。こんな奴らに、自分たちは追い詰められているのか。

 

 隊長は――――!?

 

 

「 ―――堕ちろ。 」

 

 突如新たに現れた、黒い着物の男の前に倒れ、こと切れていた。長髪に、どこか特徴的な眼鏡。そして東方の地で見るような、黒い衣服。

手に持った包丁のような形状の大剣に、鮮血が付着している。第一席次であった神人を仕留めたのは、あの武器か。

 

 

「 堕ちたな。 」

 

「 うわぁぁぁぁぁぁぁあああ!! 」

 

 無限魔力は、次の瞬間には逃げを選択していた。無理もない。自分より遥かに強い隊長ですら敵わなかった以上、自分に勝利などないことくらい、この女にも理解できたのだ。人間は極限状態においても、本能的に種を残そう、或いは生き延びようと考える。文明に生き、それを守る為にこれまで戦ってきた無限魔力であるが、今は、まるで狼に追われる野ウサギのように、己が身を守らんとするのに、抗いようのない脅威から逃れるのに必死だった。

もはや彼女に出来ることは、守る筈だった法国を捨てて、逃げ去ることだった。

最も、彼女が逃げ延びれるかどうかは別の話。

そのグラサンの男は、さっそく彼女に狙いを定めんとしていた。

 

「 逃げんじゃねぇよ! 」

 

 その大剣より放たれる風の刃が、女に襲いかかる。前衛職の攻撃スキル〈風斬り〉だ。

そこらの兵ならば、一度に数人以上死ぬだろうその斬撃が迫り、その豊満な身体を引き裂く。

 

 彼女にはわからなかった。自分には魔法の才能があって、スレイン法国の特殊部隊に誘われたというだけなのに、どうしてこんな目に遭わねばならないのか。

せめて、魔導国のように死体を利用されまいと彼女は、転移魔法を唱えて、法国から離れた位置に瞬時に移動した。

 

「 おうお前ら!あれ酒場じゃないか!! 」

 

「 ということはまた酒が飲めるじゃねぇかよ! 」

 

 男たちの口ぶりから、やはり彼らは酔っていたことを確信する。酔っ払い数人に滅ぼされる国など前代未聞だ。

そんなバカな話があってたまるかと女のうちになにかが込みあがるが、それを奴らにぶつける気力も度胸も、もはや無きにひとしかった。

 

 どことも分からない薄暗い森、彼女は草の少ない地面に倒れ込む。一応転移魔法は知ってる場所に飛ぶのが一般的なので、おそらく視察でいったことのあるエイヴァーシャー大森林辺りであろう。

 

 先の攻撃スキルであるが、偶然にも即死レベルの重傷には至らず、治癒魔法を一応かけて、なんとか止血程度の応急処置を済ませる。が、このままいけば、永くはないだろうことくらい、無限魔力にも理解できた。ここがエイヴァーシャーであるならば、ここの魔獣は勿論、エルフたちが自分を殺しにかかること位想像するに難くない。今の孤立無援かつ、心身ともにボロボロの彼女では、抗いきれずに命を落とすことになるだろう。このまま地面の肥やしにでもなった方が、幾分かましな最期かもしれない。

 

 薄れゆく意識の中、彼女は己の身にかかった理不尽の正体に気づく。それは、単純に自分たちが彼らより弱かっただけの事なのだ。思えば自分は、自身の才能に酔いしいれている節があった。だからあんな態度が許された。それより強い奴の存在といえば、それこそ隊長やとっちめられた番外席次くらいなものだ。それを優に超える化け物。

それはまるで・・・

 

「 八、欲、王・・・ 」

 

 かつて、500年前に降臨し、六大神最後の一人であった死と闇の神スルシャーナや、幾多の竜王を殺害した後、その欲深さ故の同士討ちの果てに滅んだという邪神。まさしく彼らは、その再来であるのかもしれない。

そう思いながら無限魔力の瞼は閉じられた。

 

 

 

 

 そんなエイヴァーシャー大森林。トブの大森林よりも広大な緑あふれる地である。ここは大陸西側において、人種の中でも人間より遥かに長寿で知られるエルフ種の生息域としても知られている。

そんな中に建つ、彼らの住居にしては近代的な施設。

マーズファクトリー。ある人物によって設立されたギルドの現在の拠点であり、ここで主に作られているのは、パワードスーツやゴーレムである。それらは労力や戦力として運用され、現在のエルフ王国の水準の高まった社会の基盤にもなっていた。

 

「 おや、珍しいね。君が来るなんて。 」

 

 所長、ガーネット。かつてのユグドラシルに存在した悪役RPギルド「 アインズ・ウール・ゴウン 」の元メンバー。種族はオートマタ。当ギルドにおいてはトラップギミックの考案を担当し、また当ゲーム衰退の要因ともされることの多いパワードスーツにも精通しており、ギルド脱退後は幅広いバリエーションを開発し、その発展に大いに貢献した。

 

 そんな彼と用心棒こと源次郎はある客人を迎え入れていた。スチームパンク風の黒山羊。元ギルドメイトのウルベルトだ。彼は普段、マーズファクトリーには立ち寄らない。現在はエルフ王国の暗部にて活動しているからである。

ここに来たということは、のっぴきならない事態になりかけている、或いは既になっているということだ。

 

「 ガーネットさん、不味いことになった。 」

 

「 なに?また真なる竜王? 」

 

「 いや違う。スレイン法国が滅亡寸前だ。 」

 

「 ・・・へぇ。どこのどいつに? 」

 

「 あるじぇんと。それにタドコロにペロロンにヘロヘロさん、他知らない3人だ。 」

 

「 ・・・え? 」

 

 ガーネットは耳を疑った。あるじぇんとはともかく、残り3人は彼の知る限りは好き好んでなにもされていないのにスレイン法国に乗り込もうとする性格ではないことを知っているからだ。

しかし法国は竜王国付近に転移した魔の都こと、廃棄都市ヴリヒルドリアを酷く警戒していると聞いたが、オイタが過ぎて逆鱗に触れたのだろうか。

いずれにせよ、彼らからみても、確かに異常事態である。

 

「 オレも何故そうなってるのか深くは知らないが、このままでは法国が滅びる他、奴らの持ってたワールドアイテムが奪われる。せめてそうなる前に彼奴等を止めて、アイテムを回収しないと。 」

 

「 面倒なことになったね。せっかく王様が上手いことバランスよく立ち回ってたのに。 」

 

「 安心しなよ。こんな事もあろうかと、新型のパワードスーツ、というか合体ロボット用意しといたよ。 」

 

「 そうかそうか。ではそれで法国に突っ込め。オレたちもすぐ向かう。 」

 

「 ―――! 」

 

 こうしてウルベルトは、どういうわけか暴れまわる旧友たちを抑えるべく、永い夜を過ごすこととなる。

が、彼らが酔っていて、偶々法国を通りがかって潰しにかかったというのを知るのは、人類の防波堤が瓦礫の山になった後だった。

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