OVER ROAD〜すべてが〇〇だったはず〜 作:ニコラス―NICORUTH―
時は、我々の世代より、一と四半世紀ほど前。すでにインターネットが普及し、経済のサイバー化が進んでいた頃に、あるミームがネットに流布、爆発的に広がっていった。
真夏の夜の淫夢。COATという会社の発売した、同性愛者向けのアダルトポルノを起源とし、よくも悪くも印象に残る男優たちの熱演や気合の入っていない棒読みに、多くの者たちは魅了され、その言い回しが真似られ、ネットで使われるようになった。
俗にいう、淫夢語録である。
この語録群は世代を超えて愛され、多くのサブカルチャーが歴史の闇に埋もれていった2130年代でもそれは変わらないどころか、大きく蔓延していった。アジア圏を中心に広がり続けていった淫夢は、複合企業すらも抑え込めぬものとなってしまった。
オレがこれを知ったのは、ネットを漁っていたところ、ドラゴン田中なる人物のことを知ることとなった時だった。ドラゴンというから調べてみれば、拒むことを知らぬクッソ汚い種壺野郎だった時の絶望は、モモンガやたっち・みーには、理解できまい。
思えばその時期だった、ユグドラシルで彼と出会ったのは。
廃棄都市ヴリヒルドリア。ファンタジーとスチームパンクの混じったような街の中、オレの前であの頃に会った彼が、漆黒の鎧の暗黒騎士と対峙、そのまさしく野獣の如き眼光を突き刺していた。
「 ALBDぉ、ここは退いてくれよな。頼むよ〜。 」
「 残念ながら、そうはいきません。 」
「 どうして?(素朴な疑問)」
「 私は貴方がたの、至高の御方々の捜索チームの指揮を任されています。貴方を見つけた以上は、力尽くでも連れ帰らねばなりません。 」
アルベド。この黒い鎧のNPCの名だ。ペロロンチーノがいうには守護者統括。察するにナザリックのNPCのリーダー格なのだろう。捜索チーム。きな臭いな。だとしたら何故ペロロンチーノが逃げねばならない。それも一週間も追い回して。
「 なら、なんでRBDを駆り出す必要があるんですか? 」
タドコロの疑問はごもっともなものだった。ルベドというのは、クックルがいっていた特機戦力のことだろう。オレ以外の出撃しているメンバーたちが全員で対処に当たっている存在。
曰くワールドチャンピオン、あのたっち・みーすらもさしでは太刀打ちできない相手。AOGのメンバーの捜索には、過剰すぎる戦力だ。
「 以前、第一〜三階層守護者が、ワールドアイテムによる精神支配を受けた事例がありました。同様のことが、至高の御身にも起きている可能性を考慮して・・・ 」
「 この世界、というより、このあたりのレベル水準はユグドラシルよりも遥かに低いんだよなぁ。もしそのワールドアイテム、或いは似たようなのがどっかの国にあって、ギルドメンバーの誰かを操れたら、今より魔導国の統治は進んでない・・・進んでなくない?でも、そうはなってないんだよなぁ・・・ 」
「 なるほど、たしかにそうだ! 」
オレの隣には、いつの間にか昼間にパンダで考察していた二人が立っていた。
「 スネークさん!烈怒さん! 」
「 向こうの人員が間に合ってるからこっちに来た。聞いてくれ。ヤツのいう洗脳されたプレイヤーというのは、存在しない。 」
「 なんだと?つまりどういうことだ?」
「 ワールドアイテム自体希少。ユグドラシルでも二百種程で、ギルドでも一〜三つ持ってるのが精々。そこら中に転がってるとは考えにくい。
そしてなにより、ワールドアイテムで洗脳されてるにしては、連中が大人しいというのが理由に挙げられる。 」
「 大人しい?」
「 もし仮に、AOGのメンバーたちに限らず、プレイヤーが操られていた場合、どこかの勢力が、彼らを兵器として扱うだろう。 」
「 なにせレベル100だからな。この世界じゃ、向かうところ敵無しだろう。新しいオモチャを手に入れたら、試したくなるのが、人間というものだ。組織、それこそ国家ぐるみならばなおさら。 」
「 あ、そうか、確かに!だがクモンガは・・・! 」
「 そう、魔導王は力で多くの国や勢力を傘下に置いたとアンティリーネはいっていた。だが・・・ 」
「 裏を返せばやつが幅を利かせられたのは、同格クラスの敵がいなかったからだ。
仮に誰か操られていれば、魔導王を快く思わない連中がヤツにぶつけた筈だ。なにせ生者の敵、アンデッドだからな。アイツのいうように魔導国だっていわれるほどデカくなってない。つまり・・・ 」
「 それが起きてないということは、だれも彼らを、操れていないということ。そんな事象、何処にも起きていないということだ。 」
「 そうだよ!(肯定) 」
元気な印象の聞き覚えのない少女の声がした方向を向くと、彼女は黒い狼に乗っていた。
アレは、神喰狼か。
その子はボーイッシュな印象を受ける、茶肌のダークエルフだった。のだが、格好があまりファンタジーしてないな。「 ISLANDER 」のシャツ着てるヤツ他にいないだろう。
「 タンクと声の仕事しかできないBKBKCYGM様が操られたら、とっくにAINZ様の前にでてるってハッキリわかんだね。 」
「 アウラ! 」
「 貶す気は、ないです。でも実際そうなんだよなぁ・・・ね、SYRTIA? 」
「 お、そうでありんす。あ、そうだ(唐突)。おいALBDォ(豹変)! 」
「 シャルティア、貴女まで! 」
「 よくもPRRN様を殺そうとしやがったなぁ!
もう許せるぞ!オイ! 」
アウラと呼ばれた少女の隣に立つ、ドレス姿の女は許せるとはいいつつも、凄まじい怒気を見せていた。この色白具合、おそらく吸血鬼か。
どうやら彼女はペロロンの手がけたNPCらしい。
「 RBDまでだしやがってよぉ!みろよなぁ、あの無残な姿をよぉ!PRRN様が死にかけてんだよなぁ、お前のせいでよぉ!! 」
偉く淫夢語録がキレキレだな、この子。
ペロロンは彼女に淫夢語録を話すとでも設定を盛り込んだのか?
「 お嬢さん方、この世界にワールドアイテムというのは? 」
スネークさんはこの二人に、試しに聞いてみることとしたようだ。
そして、彼女たちは元気に答えてくれた。
「 ありますねぇ! 」
「 でも、私を洗脳した奴以外見当たらないんだよなぁ・・・ 」
「 だそうだ。つまりお前は、ギルドメンバーを探す為じゃない、消す為に、あの化け物を持ち込んだ。 」
「 こ、このぉぉおおおおおお!! 」
ヤケになったかアルベドはその戦斧を振り下ろす。
「 暴れんなよ、暴れんなよ・・・ 」
タドコロはそれを槍で受け止め、続く第二、三撃も受け切る。彼もオレと同じ、テイマー職を兼任するシャーマンだ。接近戦もこなすことができる。
「 槍増すねぇ!(〈バイキルト〉) 」
補助魔法によって、攻撃力をあげた。タンクのアルベドに対して、有効打になりうるだろうが、アイツの真価はオレと同じく、モンスターの使役にこそある。攻勢に出始めるタドコロであるが、それをしないうちは本気ではないな。
「 ほぉ~らホラホラホラホラホラホラ! 」
ブッチッパと流れる滝の如き怒涛のラッシュを、アルベドはひたすらに防ぎ、捌いている。この物理も強いっていうのが信仰系魔法詠唱者の強みなんだよなぁ・・・
「 そうでありんす(便乗) 」
おや、あの吸血鬼も、似た感じかな?お、こっちに来た。あのダークエルフの子もだ。
「 私はPRRNCN様に創られし者、シャルティア・ブラッドフォールン。信仰する神は、太陽神GO。彼はアポロンでありんした。 」
「 私はアウラ・ベラ・フィオーラ。ビーストテイマー。76歳、第893階層守護者です。 」
「 ユグドラシルの神に、GOはいなかったと思うんだが・・・ 」
「 淫夢民ならば、GOと野獣先輩を崇拝する。当たり前だよなぁ? 」
「 ペロロンというのは・・・ 」
「 別腹でありんす。生みの親なんだしまぁ、多少はね? 」
NPCな彼女たちとの談笑を他所に、アルベドとタドコロの戦いが続いている。
「 くぅッ!一声一声が汚すぎる! 」
「 申し訳ないが、至高の御方への侮蔑は宗教上NG。 」
「 黙んなさいヤツメウナギ! 」
シャルティアの一言の横槍に気を取られた隙に、タドコロは距離を取った。
「 ALBD硬いっすね。このままだとグダグダになるんだよなぁ・・・しょうがねぇなぁ。
じゃあ、少し本気だしてやるか。 」
おお、どうやらやる気になったらしい。
「〈 魔法最強化LV8魔獣召喚 〉!」
魔獣専用の召喚魔法。オレがドラゴンシャーマンならば、タドコロはビーストシャーマン。
召喚した魔獣に、オレがドラゴンを召喚した時と同じ数値の補正がかかる。
こうして、呼び出されたのは、ティガレックスと同じくMHに起源をもつ、青毛の巨大なマンモス。
「 巨獣ガムート!ほらいくどー! 」
山麓の守護神ガムート。現在レベル83。元の作品ではティガレックスと雪山で鎬を削っていたらしく、その巨体でもって、轟竜の攻撃を寄せ付けなかったのだとか。
タンクであり、攻撃力や火力がそこまでないアルベドはガムートに有効打を与えられない。突進を諸に受けて、ふっ飛ばされる。
「 クソ!クソぉぉ!! 」
「 押してるな、タドコロ。プリケツだぁ・・・がしかしだ。 」
「 ALBDホント硬いッス。 」
「 ビーストテイマーだからわかるんだけどあの子じゃ打点不足なんだよなぁ・・・
ALBD硬くてお偉いよ耐え忍ぶ心守護者統括の装い(TNTN亭) 」
「 (火力は)だそうと思えば。ホラホラ、もう一体いくど〜!
〈 LV9魔獣召喚 〉! 」
タドコロは新たに魔獣を召喚する。牛とゴリラの合わさったような、黒い体毛は黄色い電気を帯びて、逆立ち金色に輝く。怒髪天を衝くという言葉を体現したように。その姿は当時の人たちに、友を殺され、その死を嘲笑われた男の怒りを彷彿とさせたのだという。
「 金獅子ラージャン! 」
『ヴァゥゥゥウウウウ!!』
突進してきたガムートを吹っ飛ばすアルベドに、ラージャンはラリアットを喰らわせる。このモンスターを知らぬものも、かなりのパワーがあることがこの時点でもわかる。
体勢を立て直すアルベドに対して、金色の雷光線が口から放たれる。
間一髪飛翔して回避して見せたところを、
「〈ウッドランドストライド〉!」
この男は逃さない。
「 お前のここが隙だったんだよ! 」
暗黒騎士の手前に迫ったタドコロの両腕に収束するエネルギー。
ビーストシャーマンが会得する、数MPに依存せぬ攻撃スキルだ。
「〈獣王激烈掌〉!」
かつて、DQには、獣王と呼ばれた勇者の仲間モンスターがいたらしい。彼は如何なる強敵を前にしても、決して引き下がらなかったのだという。
この技は、そんな彼の必殺技なのだそうだ。
両腕から放たれる螺旋は、アルベドの鎧を打ち砕き、その身を地に落とした。
タドコロの、勝利だ。
「 ぬわぁぁぁあん、疲れたもぉぉぉん! 」
「 この御方いつも疲れていらしてるでありんす。 」
「 実際きつかったすよホントぉ・・・それはそうとALJNTォ! 」
ガムートとラージャンを引っ込めて、タドコロはオレと顔を合わせる。
「 久しぶりっすねぇ! 」
「 元気してたか? 」
「 大丈夫ッスよ。バッチェ元気にしてますよ! 」
相変わらずのこの男に、オレはホッと息を撫でおろす。
「 ウルベルトはいないようだが・・・ 」
「 あぁ、ウルベルトはんはね、当日にぃ、デカい仕事があったらしくって、ユグドラシルにいなかったみたいっすね! 」
「 そうか・・・ 」
「 生きて帰れるかどうかわかんないっピ!BLRBR絡みらしいし・・・ 」
そうか、ウルベルト。この分では、彼にはもう会えそうにない、か。それは残念だ。生きていてほしいところだが。
「 それよりも、コイツだな。 」
オレは地面に横たわるアルベドに目を向ける。身につけていた漆黒の鎧兜は砕かれ、その素顔は顕になっていた。黒い長髪を散らした絶世の美女である。意識を失っているようだが、こうしてみれば、先の残虐性を感じさせる言動など嘘のようだ。
「 ふつくしいか?(KIBST) 」
「 あぁ。 」
「 TBLがMMNGの好みに合わせたからま、多少はね? 」
「 タブラ?タブラ・スマラグディナだよな。彼が、彼女をデザインしたのか? 」
「 これの他にRBDもるし★ふぁーさんっていう新しい人との合作っすねぇ! 」
タドコロの口から、聞き覚えのない名前がでてくるが、以前に聞いたことがある。
「 前いってたゴーレム職工の人か? 」
「 そうだよ(肯定)あの人のゴーレムやナザリックの内装のデザイン、ホントに綺麗なんだよなぁ・・・誇らしい・・・誇らしくない?(称賛) 」
そういうくらいならば、一度はいってみても良かったかもしれんな。
「 おい、生きてるか〜! 」
声のした方向をみると、何人もの人影。異形種だが。そこにはルベドと戦っていたメンバーに加え、見知らぬ男たちが混じっている。おそらくタドコロの連れだろう。
「 MURはん、バッチェ生きてますよ〜! 」
「 向こうも済んだようだな。 」
「 で、この女はどうする? 」
「 それはおいおいでありんす・・・PRRN様〜! 」
「 嘘だろ・・・ 」
シャルティアの顔を見て喜ぶどころか、ペロロンチーノはどこかげんなりしていた。
後に聞いたが、自身の黒歴史を目の当たりにしたがゆえの反応だったらしい。
「 それじゃ、始めるよ。 」
「 よろしくお願いします。 」
その後、公民館に移ったオレたちは、拘束したアルベドからモモンガ側の、現在ナザリック及び魔導国の情報を引き出すこととなった。のだが、彼女は状態異常の耐性がバッチリだった為、アンティリーネのように魅了魔法で喋らせたりするよりも効果的であるということで、記憶を操る魔法である〈記憶操作〉で、直接彼女の記憶を覗く事となった。廣井三十六景さんがタドコロの連れの魔法詠唱者、KMRさんにそのやり方を教えてもらうついでに実践することとなり、オレたちはその現場に立ち会っている。
この場には二人の他にオレとタドコロ、それからペロロンチーノの三人がいる。
「 なぁ、タドコロさんにあるじぇんとさん。本当にこんな事する必要あるのか?情報ならシャルティアやアウラから聞けばいいじゃないか。 」
ペロロンさんのこの一言は一理あるが、こうせねばならぬ理由はアルベドの立場にあった。
ナザリックは現在全十階層あり、階層ごとに守護者たるNPCが守りについている。シャルティアは一〜三、アウラは893・・・じゃなくて第六階層を彼女の弟と一緒に守護していたらしい。アルベドはそれらを纏める守護者統括である為、二人が知らない事を知っている可能性が極めて高く、実際彼女がAOGメンバー捜索チームとは名ばかりの私兵部隊を持っていることを、シャルティアたちは知らなかった。勿論、あのルベドなるNPCまで動員していることもだ。タドコロがいうには、このルベドはタブラ・スマラグディナとるし★ふぁーとかいう知らない人が特殊な製法で創ったらしく、アルベドとは姉妹の関係らしい。
「 第八階層のアレラ持ってこないといけなくなるくらいの奴駆り出すのは尋常じゃ、ないです。 」
「 噂の、アレラをか? 」
「 ワールドアイテムまで使ってようやく互角なんだよなぁ・・・間違っても人探しに使うものじゃないってハッキリわかんだね。 」
仲間たちがルベドに勝てたのは、数によるものが大きく、特にデビルサマナーであるタダノさんがルシフェルやサマエル、ベルゼブブといった最上級クラスの悪魔を動員したことと、七八銀さんが五大明王コンボを決めたのが大きかったのだという。
武人武御雷も得意としたこのスキル群は、相手のカルマ値が低いほどに威力を増す。悪役ギルドのナザリックのNPCらしく、ルベドのカルマ値が低かったのが幸いし、被害は最小限、ヴリヒルドリアの一区域が破壊されるくらいに抑えられた。これは後々修復することとなるだろう。しかし・・・
「 そんなものを駆り出すとは、モモンガもとうとう頭がイカれたか? 」
「 あのモモンガさんだぞ。俺たちメンバーを大事にしてくれてたんだぞ。そんなのあり得るのかよ。 」
「 だがよペロロン。十年以上も経てば、人は変わってくるものだ。ましてこの世界に来て、価値観が変わったのならなおさら。
国を興すくらい前からいるんだ。もう、お前たちの知ってるモモンガじゃなくなってるかもしれない。 」
「 そんな・・・! 」
「 あ待ってくださいよぉ。オレも結構前からこの世界に来てるんだけどさ、中々変わった実感沸かないんだよなぁ・・・ 」
「 タドコロ、お前はいつからこの世界に? 」
「 丁度MMNGがカッツェ平野で、〈黒き豊穣への貢〉をブッチッパした辺りすかね。初めて聞いたとき、怖すぎィ!と逝きすぎぃ!って思いました(小並感) 」
「 カッツェ平野? 」
聞き慣れぬ地名がでたので、聞いてみることとした。ペロロンもたぶん知らないだろうし。
「 魔導国、帝国、そしてスレイン法国に囲まれてる平野っすね。そこら中アンデッド塗れや。
大虐殺のあとはその数が増えたらしくって、帝国とかに近づいた個体がデスナイトにやられるっていうのが多くなってるみたいっすね。 」
「 デスナイト?中級アンデッドのアイツか? 」
ペロロンが頭を傾げる。デスナイトといえば、モモンガが愛用していた召喚アンデッドだ。ここでも使っているのか?
「 そうだよ。なんでも魔導国はアンデッドを労力に使ってるらしくって、デスナイトはセキュリティと軍事面で役立ってるらしいっすね。
たぶんMMNGさんが創ってるんだよなぁ・・・
そこは素直にやりますねぇ!(称賛) 」
「 なるほど・・・それはそうと向こうも滞ってんな。 」
「 そうっすねぇ・・・KMRァ、どう?(情報)でそう? 」
「 だそうと思わなくても、ドバドバ出てきます・・・先輩、彼女の凶行の原因が解りました。 」
お、早速結果がでたらしい。魔法陣を消していったん魔法を解除した廣井さんとKMRさんはその場に立ち上がった。
「 おぉ、わかったか。 」
「 ハッキリいえば、MMNGさんとTBLSMRGDINさん、両者がことの原因です。 」
「 ファッ!? 」
タドコロは驚いた素振りを隠さなかった。
「 TBLさんは引退前に、アルベドにあのワールドアイテム、真なる無を持たせていたらしいんだけど、なんかそん時にすっげぇ酷いこといってたの。あれ傷つくよ。 」
「 クゥ~ン(子犬) 」
「 TBLさんはNPCはNPCだと割り切ってたからな、意図せず種を蒔いちゃったか。 」
「 あのドザエモンめ。ルベドといいコイツといい、なんで碌な者を残してかないのか。 」
思えば、タブラ・スマラグディナというブレインイーターは、趣味趣向以外は恐ろしくつまらない男だったと思いだすオレだった。
その後、二人はアルベドが本来ビッチの設定だったのを、あの日のナザリックでモモンガが遊び心から「 モモンガを愛している 」と書き換えたのが、ペロロンチーノが狙われた理由の一つであると教えてくれた。モモンガを愛するが故に、アルベドはギルドメンバーを探す為に、彼がアインズ・ウール・ゴウンを名乗ることに不満を感じているのだという。リエスティーゼ王国のラナー王女にシンパシーを感じて、彼女と共謀して王国を滅ぼしたのも、アルベドであった。が、当初はバカな若手貴族を丸め込んで、裏切らせる算段だったようだが、予想外のハプニングによって、滅ぼす路線にシフトせねばならなくなったそうだ。このあたりはアウラが教えてくれたとタドコロは語る。
で、一番気になるところだが・・・
「 何故にポルンガはルベドの捜索チーム加入にオーケーしたんだ? 」
「 ロマンだってさ。ナザリックの最強チームとか何とかって。 」
・・・はぁ、最強チームねぇ。ロマンねぇ。そんなガキみたいな理由でペロロンは死にかけたのか。一週間も追い回されたのか。
仲間たちが生命がけで戦うハメになったのか。
―― バカじゃねぇの、魔導王様よぉ。
呆れて激しく怒る気にすらならなかった。それでテメェが必死こいて探してる仲間が危険に晒されると考えもしなかったのか?
これは、一つ痛い目見せねぇとわからねぇらしいな。
「 タドコロ。 」
「 んにゃぴ。 」
「 アイツのしてる指輪。あれでナザリックに自由に行き来できるんだったな。 」
「 そう、ですねぇ。それがどうし・・・ファッ!? 」
「 安心しろよ、レアアイテムをくすめにいくわけじゃねぇ・・・ペロロン。シャルティアとアウラはアイツがナザリックのNPCを大事にしてるって言ってたよな? 」
「 あるじぇんとさん、もしかして・・・ 」
「 お前が今想像していることと少し違う。〈記憶操作〉はKMRさん曰く、ユグドラシルと使用が変わっているとか。でしたよね? 」
「 は、はい。 」
「 フレンドリーファイアも実装されてる。ならば、他に変わったものがあってもいい。 」
「 ・・・なにがいいたいんすかね?(疑問) 」
「 廣井さん、悪魔合体の用意をするように、タダノさんに後でいっておいてくれ。あと・・・ 」
オレは鎖に繋がれたアルベドに視線を飛ばす。
「 コイツの頭ん中、弄れそう? 」
「 や、やろうと思えば。 」
「 なら、コイツをビッチの淫夢厨にでもしといてくれ。 」
「 あるじぇんとさん、アンタ、いつもより怖いぞ。なにをするつもりなんだ。 」
「 初歩的な事だよ、友よ。 」
オレはペロロンチーノから目を離さない。ペロロンも、オレから視線をずらせないようだった。
ヘビに睨まれた、カエルのように。
「 アイツは、オレのドラゴンが死んだ時、金で弁償しようなどと抜かした。その報復を、させてもらう。勿論、アウラやシャルティア、そしてタドコロの奴は除外して。 」
「 ちょ、ちょっと待ってく・・・ 」
「 解れペロロン、そしてタドコロ。アイツは、人の心を知ってるようで、まるで知らんのだ。
それに・・・ 」
これも後で聞いたが、二人や廣井さんとKMRさんには、この時のオレの目は、この世のものではなかったそうだ。
まるで、悪魔に見られているようだったのだという。
「 所詮、連中の生命は金で買えるだろう? 」
NPCは、ユグドラシルコインでこの世に戻ってこれるが、オレはもう、あのドラゴンたちに会えない。
ならば、連中には新たなる、まだみぬドラゴンの生贄になってもらおうじゃないか。