異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第9話
嗚呼、その領地に涙あり①
城下町に突然、軽快なメロディーが鳴り響き、人々がそれを聞いて周囲を見渡し始めた。
[間もなくー、1番線からバトルトレインが発車いたしまーす。危険ですので、白線の内側に下がってお待ちくださーい。]
アナウンスが聞こえると、住民や冒険者たちは何事かと困惑していた。すると、城下町の円形になった中央広場のレンガ造りの地面が少し下がって左右に開き始める。それを見て、住人たちは家の中や道の端に下がっていく。間もなく、空いた穴の地下から、転車台に乗ったバトルトレインがせり上がって来る。
「発車準備良し、ゲート展開!」
運転席のニールが計器を操作すると、広場を貫く大通りの地面が左右に跳ね上がり、その下からスキーのジャンプ台を思わせる巨大な橋が空に向かってせり上がり、空に向かう橋の様になった。
「レーザーレール、展開、よし!バトルトレイン、出発進行!!」
ニールの宣言と共にレバーが押し込まれると、橋の上を走るように緑色のレールが展開。バトルトレインのエンジンが唸りを上げて、煙突から黒煙を吐き出した。
巨大な鉄輪が回転を始め、バトルトレインがゆっくりと動き出す。地響きを響かせながら、バトルトレインは徐々に速度を上げ、線路を駆け上がる。空に向かって走って行くバトルトレインを、住民や冒険者たちは呆然と見送る事しかできなかった………
「………街中にあんなものを仕込んでいたとはのぉ………」
「出来れば、目立たない形で出発してほしかったな………」
城から街の様子を見ていたレヴァンティとクリセイ王は、空に向かって走って行く汽車を見ながら呟いていた。
†
ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン……
心地の良い揺れが、客車内に響く。バトルトレインは王都を出発した後、草原の線路を駆け抜けて行く。
「こういうのって、なんかいいなぁ………」
窓の外を流れる景色を眺めながら、ドン・エルティゴがポツリと呟いた。同じく景色を見ていた草介は、異世界の自然豊かな景色を物珍しく見ていいたが、ふと思ったことを口にした。
「しかし、ロボットが造れる宇宙人の技術なら、わざわざレール作らなくても走れる列車とか作れると思うんだけど?擬態するって理由もあると思うけど………」
「あー、そのことか………」
反対の席に座っていたデュランが、少し呆れた様子で答えた。
「マシンメイル開発者の『オート』っていう人がいるんだけどね、その人が、そこだけは譲れないって………本来、レーザーレールにはこういう揺れは生じないのだけど、これがないと機関車じゃないって聞かなかったそうで………」
「あー、そういう事か………」
「どこにでもいるんだね、そう言うこだわりの強い人って………」
呆れつつも納得をする草介。エルティゴやシャスティは少し分からないでいたが、こだわりの強い職人は世界どころか宇宙共通なのだな、と思っていた。そんなデュランの隣では、アルスが外の景色を眺めながら、何やら歌を口ずさんでいた。
「~♪~~〽~~~」
(スリーナイン?)
草介はその歌に聞き覚えがあって不思議そうにしていると、興味を持ったのかシャスティがアルスに聞いてきた。
「それ、何の歌だべ?」
「あ、これ、幼馴染に教わった、地球の鉄道の歌であります♪」
「あーそうなんかぁ………」
(昨日の出所もそこか………)
シャスティに答えるアルスの話を聞いて、草介は呆れながらも少し納得した。(草介は母の趣味でよく聞いていた。)
「ベロースリットの中心街まで1時間だが、一番近い森にバトルトレインを隠しておく。歩いて30分くらいだな。」
「分かった。」
自動操縦にしたのか、運転席から客室に入ってきたニールが報告をすると、デュランが頷いた。
「さて、問題があるとすれば………領主のクシーフが悪事を働いていたとして、その証拠を残すのかって事だ。」
顎に手をやりながら、エルティゴが疑問と不安を口にする。デュランやニールも同じことを考えていたのか小さく頷いていると、草介が話しかけた。
「それなら、いい手があるぜ?」
「え?」
一同が草介に視線を移すと、当の本人は左腕を見せつけるようにしてニッと笑った。
†
バトルトレインがその身を隠すべく森に入った頃、ベロースリット領の最奥にある大きな屋敷では、茶髪をオールバックにして口髭を左右に伸ばした太った中年の男が、受け取った書簡を読んでいた。
どことなくナマズのように見える顔のこの男こそ、ベロースリットの領主であるウォヤコッス・クシーフ(57歳、独身)である。
「フーム………」
椅子でふんぞり返り座っていたクシーフは、読み終えた書簡を机に放り投げると、小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。書簡を渡した男が、クシーフに話しかけてきた。
「それで陛下、王都からは何と?」
「うむ………先日の監査で不審な点があったから、再度行う旨の通達だった。」
「ええ!?」
クシーフが答えると、書簡を持ってきた男は驚きの声を上げた。
「だ、大丈夫なのですか!?」
「慌てるでないコボレー、いつも通り隠し通せば、問題ないじゃぞ。」
「し、しかし………」
コボレーと呼ばれた男は慌てていたが、クシーフは余裕の表情を崩さずにいた。すると、部屋の隅から声が聞こえて来た。
「そちらの問題は対応してもらうとして、私の邪魔者がこの領地に入ったと報告があった。」
「む、そうか………」
部屋の隅には、青と緑の混じったくせ毛を肩まで伸ばした青年・イーグルが腕を組み壁にもたれかかっていた。イーグルは手にしたスマートデバイスに視線を落とすと、森から出てきたデュラン達の姿が映っていた。どうやら偵察用の小型機怪魔獣からの映像らしい。
「約束通り、こちらの手伝いをしてもらうぞ?」
「それは分かっているじゃぞ。そちらこそ、例の『報酬』はちゃんと用意しておくのじゃぞ?」
「ああ、もちろん。成功報酬1億Gは、ちゃんと用意してある。」
イーグルが頷くと、クシーフは再びふんぞり返り椅子にもたれかかった。コボレーは少し不安そうではあったが、クシーフはニタリと笑みを浮かべていた。
†
ベロースリット領は、小さいながらも豊かな領地だった。各所に森や畑が広がっており、主な農産物は小麦や野菜。今の季節では種まきや苗の植え込みをする農民が風物詩になっている。
「―――はずなんだけど、ねえ………」
「人、あんまいないな………」
領地に足を踏み入れた一同は、周囲の様子を見ながら率直な感想を口にしていた。周囲に甲冑を纏った兵士数人が一糸乱れぬ動きで見回りをしてはいるものの、畑に人は殆どおらず、畑は作物がほとんどなく、土が露出していた。
民家の方に目を向けると、人の気配はするものの、出てくる様子はなかった。
「なんか、寂れた領地って感じだな……」
「兵士は何人もいるみたいだけどね………この規模の領地では、多すぎるくらいだけど……」
農民の姿がなく、兵士の数が多い光景に首を傾げる一同。いくら魔王軍対策だとしても、この状況は異様であった。
「とにかく、まずは情報収集だ。手分けして聞き込みをしていこう。」
「ああ。」
デュランが指示をすると、一同は手分けして聞き込みをする事にした。
†
「―――とは言ったものの………」
30分後、共に町に入った草介やエルティゴ、そしてニールであったが、町に人の姿がぜんぜん見当たらなかった。
「こうも人がいないと、聞き込みのしようがないな………あ。」
エルティゴがぼやきながら周囲を見渡していると、第一町人を発見した。さっそくエルティゴは、近くの井戸で水を汲む女性に話しかけた。
「ちょっといいかな?」
「はい………ひっ!?」
女性は振り返るが、仮面で顔を隠した怪しい人物であったため、短く悲鳴を上げた。
「ご、ごめんなさい!!」
「あっ!?」
女性は怯えた様子で水の入ったバケツを持って、そそくさと走り去ってしまった。エルティゴは追いかけようとするが、その背中は直ぐに見えなくなってしまった。
「行っちゃった……」
「こうも話を聞いてくれないなんて、少しおかしいな………」
草介が眉をひそめていると、エルティゴは自分の被った仮面に手を当てた
「この仮面のせいだろうか………?」
「それもあるかもな………」
エルティゴの呟きにニールも呆れ気味に腕を組みながら頷いた。エルティゴはやっぱり?と少し複雑そうにしていた。身分を隠すためとはいえ、この仮面は流石に怪しすぎただろうかと、今更ながら後悔していた。
「仕方ない……ほかに人がいないか、少し歩いてみるか。」
「そうだな……」
ニールの提案にエルティゴと草介は気を取り直して、再び歩き始めた。すると、背後から声をかけられた。
「オイ、ソコの3人、何をしてイル?」
「え?」
振り返ると、そこには数人の兵士が立っていた。甲冑を着てバイザーをさえているためその表情は分からないが、2人を怪しんでいるのは見て取れた。
(なんだ?人の気配はしなかったのに……?)
「えっ、と………特に何も……」
エルティゴは突然背後に現れた兵士たちを訝しんだ。草介は何とか誤魔化そうとするが、兵士はギロリと睨んできた。
「怪しいヤツらめ………特にソッチの、仮面のヤツ……」
「え?いや……」
エルティゴは動揺していると、他に数名の兵士も合流してきて、3人は完全に囲まれてしまった。
(何だコイツらは?妙な感じだな………)
「とにカク、詰め所マデ来てもらオウか。」
「え、ちょ……」
腕を掴んで無理やり連れて行こうとする兵士に草介は反抗しようとした。しかし、エルティゴはそれを制した。
「待て、ソウスケ。」
「けど………」
「今は耐えるんだ。逆らってしまえば、面倒なことになりかねない……」
「そ、そうか………」
ニールにも耳打ちされて、草介は渋々抵抗を止めた。兵士たちは3人が大人しくなったのを見て、そのまま3人の兵士が3人をそれぞれ捕縛すると、兵士たちは足音が1人分に聞こえる程揃った足並みで3人を連行した。
「………」
その様子を、建物の物陰から見ている者がいた。その者は草介たちを………厳密に言えばその『左腕』と『足元』を見て察すると、こっそり連行される2人の後をつけて行った。
†
同じ頃、デュランとシャスティ、アルスの3人は、町を歩きながら周囲で遠巻きに見ている視線を感じていた。
「雰囲気が妙であります………」
「デュ、デュランさん、これって………」
「歓迎、されている訳ではないようだな………」
不気味な雰囲気に訝しむアルスと怯えるシャスティに、デュランは苦笑気味に答えた。すると、そんな2人にマントとフードで顔を隠した人物が話しかけてきた。
「あんたたち、旅人かい?」
「ああ、そうだが……」
デュランは警戒しながら答えた。声からして若い女性である事は分かったが、マントの人物はフードに隠れた目でデュラン達をジロジロと見ていた。
「だったら悪い事は言わない、今すぐにこの町を出るんだ。」
「え?」
「この町は今、色々と物騒でね……特に、あんたらのような余所者は狙われやすいんだよ………」
「そ、そうなのか?」
デュランは首を傾げると、マントの人物は頷いて背を向けた。
「忠告はしたからな。ただ、この町で『余所者』が自由に動ける時間は、そこまで長くはないってことは、覚えておくことだ………」
「あ、ちょっと………」
デュランがマントの女性を追いかけようとするが、女性は路地裏に入ってしまい見失ってしまった。妙な感じにデュラン達は首を傾げるが、その時、遠くの方から爆発音と悲鳴が聞こえてきた!
「何だ!?」
デュラン達は爆発音のした方、町の外側に向けて走り出した。走る最中、上空を複数の影が通り過ぎるのをデュランは見た。
「あれは!?」
通り過ぎたのは一瞬であったが、それは円盤型の飛行物体である事は分かった。それが複数機の編隊を組んで飛行しており、機体下部から稲妻状の光線を地上に向けて放ち、爆発を起こしていた!
「飛行円盤!?」
「アルス、シャスティ、住民の避難を!」
「了解であります!」
「分かっただ!!」
2人が住民の避難誘導に走る中、デュランは光線を躱しながらGBデバイスを操作する。
†
それとほぼ同じ頃、森の中に隠していたバトルトレインのキャリアに格納されていたデュランカーが起動、キャリアの側面が開きスロープが伸びると自動で走り出し、緑色の光に包まれて飛び上がった!
「こんな所に隠していたのね………」
だがその時、森の木々の間から、魔王姫キアラとそのお目付け役ボルグとカラ、更には複数のゴブリン達が姿を見せた。
「連中と一体化していないマシンメイルなんて、パイロットのいない機械にすぎないわ。誰もいない内に、破壊してしまえば連中は無力よ。」
「流石は姫様ダスな。」
「さっきの車は発進してしまいましたが、このマシンメイルだけでも破壊してしまいましょう。」
キアラ達は不敵な笑みを浮かべながら言う。カラは周囲のゴブリン達の方を見ると、彼らの内数人は、大きな爆弾を持っていた。
「では、手はず通り爆弾を設置するダス!」
「「「はッ!!」」」
ボルグの命を受けたゴブリン達は、返事と同時に爆弾を運び始めた。
(作戦とはいえ、人間共の助けをするのは不本意だったけど、勇者達を倒すためなら、この状況を利用しない手はないわね………)
キアラがそんな事を考えていたが、ちょうどその時、ゴブリン達がバトルトレインに接近したところであった。
ヴィー!ヴィー!ヴィー!
「「「!?」」」
「ぅえ!?」
「な、何事!?」
突然、甲高い警告音がバトルトレインから発せられ、戸惑うキアラ達。次の瞬間、バトルトレインと連結された全ての客車の屋根の1部が跳ね上がり、二連装のビーム砲が展開された!
[警告!警告!自動迎撃装置が作動しました!ID登録者以外の人物は、直ちに離れてください!離れない場合、ビーム砲を放ちます!発射まで30秒、29、28―――]
「何ダスと!?」
「お、お前たち!早く戻るんだ!」
「「「ひ、ひえーーー!?」」」
ビーム砲がぴったりとゴブリン達を狙い、電子音による警告を聞いたキアラ達は、慌ててゴブリン達に命じた。ゴブリン達は悲鳴を上げると、爆弾を捨ててバトルトレインから離れた。
「し、失念していたわね………」
「対策を練っていない訳がなかったか………」
木の陰に隠れてバトルトレインの様子を伺うキアラ達。すると、バトルトレインのビーム砲が捨てられた爆弾に狙いを定めていた。
[危険物確認、処理をします。]
「「「え?」」」
次の瞬間、ビーム砲は爆弾に向けてビームを発射!直撃を受けた爆弾は一斉に爆発し、キアラ達はその衝撃波を受けて吹っ飛んでしまった!
「「のわ~~~!?」」
「何でこーなるのよ~~~!?」
悲鳴を上げながら宙を舞い、キアラ達は森の外まで吹っ飛んで行ったのであった。
†
町で円盤からの光線を避けながら走っていたデュランは、遠くから飛んできたデュランカーが着地して走ってくるのを見ると、デュランカーに向けてジャンプをした。
「フュージョイン!!」
それと同時にデュランカーとフュージョインすると、なおも降り注ぐ光線を避けながら走り、高く飛び上がった!
『チェーンジ!デュランダー!!』
空中でデュランダーに変形をすると着地をして、上空の円盤に向けてアームシューターを発射した。しかし円盤はひらりと回避すると、再度光線を放ってきた!
『くっ!』
周囲で爆発が起きる中、デュランダーは円盤を見上げて睨んだ。
†
「なんだか、外が騒がしいような………」
同じ頃、街にある兵士の詰所に連行されたエルティゴ、草介、ニールの3人。出入り口には室内だというのに兜を外さない兵士たちが立って塞いでおり、椅子に座られた目の前の事務机には真面目そうな顔の若い女兵士が座っていた。
(こいつら、なんか変なんだよなー………)
「おい、話を聞いているのか?」
「あ、すいません………」
周囲の兵士と外の様子が気になっていた草介が振り返ろうとすると、目の前の栗色の短いポニーテールの女兵士が注意をしてきた。少しつり目の濃い灰色の目で睨まれて、草介は委縮してしまった。女兵士はため息をつきながら、机に並べられた3人の冒険者タグを見て言った。
「まあ、君たちのタグを確認したが、怪しい点は見られなかったな。仮面の君、えーと………」
「謎の冒険者、ドン・エルティゴ・ティリメンヤーです。」
(なんだかんだ言って、気に入ってるのかその恰好………?)
女兵士に問われて、改めて凛とした声で答えるエルティゴ。その様子に若干引きながらも、彼女は続けた。
「そう、えーと、エルティゴ君も、すまなかったね。正式な冒険者だとは知らなくて………仮面も理由があっての事だろう………」
3人にタグを返しながら女兵士は言った。(エルティゴのタグは、王が用意させたものだ。)そのまま帰らせようとすると、兵士の1人が進言してきた。
「ラナシィ隊長、まだ駄目ダ。ちゃんト、調べるベキダ。」
「いや、だが………」
「調べるベキダ。」
「………」
兵士が威圧的に言うと、ラナシィ隊長と呼ばれた女兵士は黙るしかなかった。
「……わかった。それじゃあ、後は私がやっておくから、君たちは持ち場に戻っていいよ。」
「大丈夫だ。ココにいる。」
ラナシィはそう言うが、兵士たちは出入り口を固めて出られないようにしていた。
「不気味な奴らだな………」
草介が思わずそう呟くと、ラナシィは振り返ってきた。草介はまた睨まれるのかと思ったが、彼女はキリッとした眉を下げて困ったような顔をした。
「やっぱり、そう思う?」
「え?」
「ずっと同じこと思っててさ………私、今年から兵団に入ったんだけど、いきなりここの隊長を任されちゃって………」
「新兵で、いきなり隊長を?」
「うん……魔王軍の侵攻に備えて兵士を増やしたことは知ってたけど、それでも人手が足りないって………」
困ったように笑うラナシィに対して、エルティゴとニールは怪訝な様子で聞いていた。
「やる事多いし、おまけに部下の人達があんなだから、本当に参っちゃって……」
「た、大変っすね………」
「うん………彼らが変なのは、私も思ってた事だし。お昼や仕事終わりに食事に誘っても断られるし、休憩時間をとっているようにも見えなくて………ああ、ごめんね、こんなこと愚痴っちゃって………」
ラナシィは苦笑して、再び3人に向き直った。
(やはり妙だな………こんな新兵に隊長を任せるなんて………)
「さてと、調べるにしても、何から聞くべきか………?」
エルティゴが兵団の奇妙な配置に首をかしげる中、ラナシィは椅子に座りなおして、質問を考えた。
「―――それならば、拙者から聞きたいことがあるでござる。」
「「「「!?」」」」
その時、出入り口の方から声が聞こえてきた。一同が振り返ると、兵士たちが固めていた出入り口に、1人の小柄な少女が立っていた。
藍色の長い髪を後ろで束ね、赤い着物と黒い袴を着て、腰には黒い鞘に収まった刀が携わっていた。
「だ、誰!?」
「侍………!?」
「ハバキリ!?」
少女の出で立ちにラナシィと草介が驚いていると、ニールも驚いて声を上げた。
それを聞いて、エルティゴと草介は気づいた。この少女は、以前顔写真を見せてもらったデュラン達の仲間の1人、ハバキリだ。
「すまぬ。異様な状況ゆえに聞き耳を立ててしまった。悪気はないでござる。」
ハバキリは小さく謝るが、兵士たちは警戒していた。ハバキリは兵士たちに目を向けた。
「聞きたいのは、おぬしたちだ。先ほどから気になったのだが、何故室内で兜を外さない?」
「お前にハ、関係ナイ。」
「そうか、ならばこの問いはどうだ?何故先ほどから、
「「「!?」」」
「何?」
「言われてみれば………!?」
「そうか!さっきから何か変だって思ったら………!」
ハバキリの問いに、一同は気づいた。先ほどから、兵士たちの呼吸音が一切聞こえなかったのだ。
「キサマ………!!」
「ま、待て!!」
兵士たちが剣を抜いてハバキリに迫る!ラナシィは止めに入ろうとするが間に合わない!
「遅い!」
ハバキリは腰に携えた刀に手をかけ、抜き放つと一閃した。すると次の瞬間、兵士の1人の兜が宙を舞った!
「グゥ………ッ!!」
「なっ!?」
ガランッ、と音を立てて、兜が床に落ちる。兜の下から露になった兵士の顔を見た一同は驚愕し、息を呑んだ
『ギ、ギギィ………!!』
その顔はガンメタの仮面のようになっており、球型のカメラになった双眼は赤く光り、カメレオンのようにギョロギョロと周囲を見回していた!
「な、なんだ、お前………!?」
「こいつ、この間のゾロゾロイドに似てる……!?」
今まで自分の部下で会った兵士の素顔を見たラナシィが困惑の声を漏らした。一方の草介は、その顔が前日ホパクに現れたゾロゾロイドに似ている事に気づいた。
「こいつは、アシガロイドG2!ゾロゾロイドの上位互換機だ!」
「やはり、機怪魔獣でござったか!」
「機怪魔獣だと!?」
ニールがその名前を告げると、アシガロイドの正体を聞いたラナシィが驚いて声を上げる。アシガロイドはハバキリを睨んだ。
『バレては、仕方がなイナ………ヤレ!』
アシガロイドが合図をすると、周囲の兵士たちが兜や鎧を脱ぎ捨てた。その素顔は、いずれもゾロゾロイドのものであった!
「まさか、全員機怪魔獣だと!?」
「道理で、王都に派遣の記録がないはずだ!!」
困惑するラナシィを余所に、エルティゴとニールは得物を手に臨戦態勢となった。草介も慌てて健を抜くと、ラナシィに声をかけた。
「ラナシィさん!機怪魔獣とはいえ、アンタの部下斬っちまうけど、問題ないか!?」
「あ、………」
ラナシィは一瞬迷ったが、さっきまで部下であったゾロゾロイドとアシガロイドを見た。
(確かに、彼らはわたしの部下だった………だが、その正体が機怪魔獣で、彼らに襲い掛かって来ている………それならば!)
ラナシィはゾロゾロイドとアシガロイドをキッと睨むと、意を決したように言い放った。
「………ああ!そいつらは機怪魔獣、魔王軍だ!」
「そう来なくっちゃ!!」
それを聞いた草介は、切りかかってきたゾロゾロイドの剣を避けると、その身を袈裟懸けに斬り捨てる!
ラナシィも参戦しようと剣を抜こうとしている間に、エルティゴはサーベルを素早く振るい、甲高い金属音がなったかと思うと次の瞬間にはゾロゾロイド3体が地に伏し、アーミーナイフを持ったニールが剣を受け止めつつ、左手のオートマチック銃の弾丸を腹部にお見舞いして機能を停止させた!
「な!?(こ、これほどの手練れとは………!!)」
ラナシィが呆気に取られていると、目の前の机の上にハバキリが飛んで着地をした!
「きゃあ!?」
「すまぬ!流石は上位機………一筋縄ではいかぬでござる!」
ハバキリが苦笑気味に笑う。目の前には剣を構えたアシガロイドがカメラアイをギョロギョロと動かしながら赤く光らせていた。
『ギギィ、今ノ感じ、そコマで強クはない………』
「くッ………!!」
肩で息をして冷や汗をかくハバキリは、悔し気にアシガロイドを睨んでいた。
「まさか………もうエネルギーが………!!」
その様子を見た草介は、先日のデュラン達との会話を思い出し、ハバキリが既にエネルギー切れ間近である事を察した。少しまずい状況であると草介が考えていると、アシガロイドはハバキリに向けて剣を振り下ろす!
「ぐっ………!!」
「ハバキリ!!」
『コノまま、オ前らヲここに、足止メ………!』
「何?」
ハバキリが刀で受け止め鍔迫り合いになる。ハバキリが苦し気な声を上げる中、アシガロイドの口走った言葉に草介が一瞬気を取られていると、アシガロイドはさらに強く押し込む!
「ウォッチャー!!」
『何ィ!?』
その時、咄嗟に草介が叫ぶと、天井の方からウォッチャーが飛んできて、アシガロイドの脳天目掛けてかかと落としを食らわせた!アシガロイドがひるんでハバキリから離れた隙に、ラナシィはその首元に剣の切っ先を突き刺した!
『グぁ!?ギ、ゴガガ………!?』
「勝機!!」
剣を突き刺されてもなお向かって来ようとするアシガロイドだが、ハバキリは刀を持った右手をさながらビリヤードのキューを突くような構えを取り、間合いの外にいるアシガロイに狙いを定めた。
「流星一刀流剣術 序段伍剣が一つ―――」
次の瞬間、ハバキリは刀を超高速で突き出すと、その衝撃波がアシガロイドの胸に突き刺さり、胸を貫いて大穴を開けた!
「ギ、ガガ―――」
「壱ノ太刀
ハバキリが告げた瞬間、破壊に遅れて風を切る轟音が響く!アシガロイドは動きを止めて、胸に空いた風穴から火花と煙を吐き出しながら仰向けに倒れた!
「な!?何だ、今の一撃は………!?」
「すごい………!」
「これが、デュランの仲間………!!」
ハバキリの放った強烈な一撃にラナシィと草介、エルティゴが驚く。アシガロイドは完全に機能を停止して、傷穴から飛び出たコードから火花がバチバチと散っていた。
「流石だな、だが………」
ニールが静かに称賛をしたその時、ハバキリがその場に膝をついてしまった。
「ハバキリ!」
草介が駆け寄ると、ハバキリは汗まみれで青い顔をしており、荒く息をしていた。
「はぁ、はぁ……すまぬ……拙者、エネルギーが……」
「やっぱりか………」
先ほどの技で、残りのエネルギーの大半を使ってしまったのだろう。エルティゴは苦しそうにするハバキリに肩を貸して立ち上がらせた。
(今の一撃、あんなに体力を消耗するほどの技だったの!?そうまでして彼女は………!!)
一方、ハバキリたちの事情を知る由もないラナシィは勘違いをしていたが、草介たちもそれを知る由もない。
「あの、あまり得意ではないけど、回復魔法をかけるか?」
「いや、それには及ばぬでござる………」
「そうだな。回復魔法でどうにかなるかわからないしな………」
「え?」
ラナシィの申し出を断るハバキリと、同意するニール。ラナシィが理解できない表情で機微を傾げていると、草介はウォッチャーを腕に戻していた。
「大丈夫かハバキリ?他の2人は?」
「な、なんとか………先ほど、隊長が戦闘をしているのが見えて………」
「デュランが!?」
「さっきの音、やはり戦闘の音か……」
ハバキリが告げた事に思わず声を上げた。それと同時に、ある事に気づいて足元に横たわるアシガロイドに目を移した。
「さっきアイツの言っていた「足止め」って、この事か………」
「不味いな、奴らの目的は、我々を分断する事だ!」
「拙者はニールどの達が兵士たちに連行されるのを見て追いかけるべきと考え、レピオとレイェンに隊長の方に向かうよう頼んだでござる………」
「そうだったか………」
ハバキリの言葉に少し焦りを見せる草介とニール。
「………」
ニールたちが話し合う中、ラナシィは状況が理解できないながらも考えていた。
(部下たちは、領主様が連れてきた連中だ。この事を領主様は知っていたのか?知っていて私に預けていたのだとしたら、あの人は魔王軍とつながっていた事になる………それならば………!!)
「バトルトレインを呼ぶ。チャージマシンでコイツを補給させよう。」
「かたじけない………」
ニールがGPデバイスを操作しながらそう言うと、ハバキリは小さく謝った。草介たちは詰所から出ようとするが、その時、彼らの背中にラナシィが声をかけてきた。
「待ってくれ!私も一緒に行こう!」
「ラナシィさん!」
「兵士は他にも何十人もいるが、機怪魔獣はこいつらだけじゃあないかもしれない。それならば領主様は魔王軍と繋がっている事になる。その疑惑を晴らしたいんだ!頼む!」
頭を下げて頼み込んでくるラナシィ。草介はニールとエルティゴと目を合わせると、小さく頷いた。
「わかった!一緒に行こう!」
「ありがとう!」
草介の答えに、ラナシィは力強く頷いた。一同は外に出てバトルトレインを待とうとしていたが、その時、大きな爆発音が聞こえてきた。
「!?」
「何だ!?」
「街の中央からだ………」
「見に行った方がよさそうだな……」
「こっちだ!」
草介の言葉に、ニールは頷いた。ラナシィが先導し案内し、草介たちは爆発音のした街の中央の方へと向かっていった。
「!?」
「な、なんだと!?」
『グ、グゥ………!!』
そこには、複数の円盤に吊るされた、X字型の巨大な器具に上下逆さまに磔にされた、ボロボロのデュランダーの姿であった!
【つづく】
仲間と合流できたものの、大ピンチのまま次回に続く。
キアラたちは完全にコメディリリーフですが、今後はちゃんとした活躍をさせてあげるのでご安心を。