異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第10話
嗚呼、その領地に涙あり②
草介たちがデュランダーを発見する十分ほど前―――
『くっ!』
周囲で爆発が起きる中、デュランダーは円盤を見上げて睨んだ。
『仕方がない………ブレイバード!!』
デュランダーが叫ぶと同時に、天に向かって額から光が放たれた!
†
デュランダーからの発信信号を受信したブレイベース内では、ブレイバードが起動し、発進位置への移動が開始された。
「ふーむ、少し休憩でも………」
モルデュア城内で、書類仕事の合間に休憩をしようと紅茶の入ったカップを手に一口飲んだ。窓から、平和そうな王都の様子を眺め、一口飲んだ。
「しかしクシーフのやつ、何を考えているのだ………?」
そうつぶやいた瞬間、城全体が揺れ始めた!揺れに驚いて、王は紅茶を床にぶちまけてしまうが、まさかと思いながら外の様子を見た。
そこには、城の東西の塔が地響きを立てて移動を始めており、城の中央部分までもが後方へスライドし、壁が変形し始めていた。
唖然とする中、壁が45度に傾き滑走路が伸びると、城と壁の間に顔を出したハッチが開き、ブレイバードがせり上がってきた。
壁がなくなりがらんどうになった城の空間を透明な防御防音遮光シャッターが塞ぐと、目の前でブレイバードのジェットエンジンが火を吹いて、轟音を立てながら発進していった!
「あの列車で運べばよかったのに………」
城が元の姿に戻り始める中、発進を見届けた王はそうボヤくと、近くにいたメイドに掃除道具を持ってくるよう頼んだ。
†
発進から2,3分後、ブレイバードはデュランダーの元へ飛来した。デュランダーは飛び上がると、ブレイバードの上に飛び乗って円盤に向かっていった。サイズ的に合体するまでもないと考えての事であった。
ブレイバードの機動力を生かして円盤に追いつくと、アームシューターとブレイバードのビームバルカンで円盤を攻撃し始める。しかし、円盤はあっさりと回避してしまう。
『そこだ!!』
その瞬間、デュランダーは円板の動きを読んで飛び上がると、Dブレードを引き抜いて振り下ろした!円盤は剣の一線を受けて斬り裂かれると、デュランダーはそれを足場に飛び上がると同時に爆散!次の円盤に向けて剣を振りかざした!
ガバッ
『!?何!?』
だが、剣を振り下ろそうとしたその瞬間、円盤が焼かれた二枚貝のように開き、鋭い牙と舌を思わせる無数のマジックハンドを持った『口』のようになった!
デュランダーが驚く間もなく、マジックハンドが伸びてデュランダーを捕らえてしまった!
『し、しまった!!』
デュランダーは振りほどこうともがくが、マジックハンドはびくともしない。そうこうしている間にマジックハンドが円盤に引き寄せて行き、デュランダーはその『口』に咥えられ、牙で噛みつかれてしまった!
『う……うわぁあああああ!!』
デュランダーは悲鳴を上げながら、牙で何度も噛まれて全身に傷を負う!手からDブレードが離れてしまい、何度も噛みつかれてデュランダーは動けない。
『う……あぁ……』
全身から火花とオイルを流しながら、デュランダーは円盤の口の牙に咥えられたまま、ダランと手足を垂らしてしまう。
「完全に噛み砕くなよ、アダムックD2。」
デュランダーが力なくうなだれる中、建物の屋根に立つイーグルがそう言うと、円盤型機怪魔獣『アダムックD2』は口を開いてデュランダーは町の中央に降ろされると、他のアダムック複数機が用意したX字の台座にデュランダーを縛り付けると、上下逆さまに磔にしてしまった。
「さて、これで準備は整った。後は―――」
イーグルがそう言うと、町の中央に誰かがやって来るのに気づいた。バレないように身を隠すと、その場に草介たちがやって来た。
†
「デュ、デュランダー!!」
「こ、これは………!!」
磔にされたデュランダーの姿に、草介とニール、ハバキリは驚きを隠せなかった。上空には吊り下げている以外にも複数機の円盤が旋回しており、見張っているかのようであった。
(気絶して、フュージョンアウト(分離)できないのか………バトルトレインを呼んで、撤退をするべきだな……)
現状を把握し、ニールが撤退をすべくバトルトレインを呼び出そうとしたが、その時、
「そこまでじゃぞ!」
「何だ!?」
気が付けば、草介たちの周囲を取り囲むように兵士たちが集まり、更にデュランダーの前にも兵士が立ちふさがった。草介たちが驚いていると、兵士たちの先頭に、ナマズを思わせる顔立ちの太った中年男性が立っていた。
「領主様!?」
「あいつが「クシーフ」か!?」
ラナシィがクシーフの姿を見て思わず声を上げる。疑惑の人物が目の前に現れた事に少し戸惑っていると、クシーフはラナシィに気づいたのか、話しかけてきた。
「おぬし、第3詰所のラナシィ隊長か。そこのデカブツは、機怪魔獣をこの街に招き入れた曲者なのじゃぞ!」
「何だと!?」
突然身に覚えのない罪を着せられて、草介達は困惑の声を上げた。ラナシィも戸惑っていたが、クシーフは続けた。
「わしらが秘密裏に用意した防衛兵器があったから機怪魔獣は追い返したが、コイツは何とか捕らえることが出来たのじゃぞ!機怪魔獣をこの街に招き入れた罪は重いじゃぞ!」
「そ、そんな……」
ラナシィがショックを受けたが、隣の草介たちを見ると「何を言っているんだ?」という顔をしているのを見た彼女は、領主への疑念が強まった。
(まさか領主様、本当に………!?)
「貴様らはソイツの仲間である可能性が高いじゃぞ!さあラナシィ隊長、捕らえるのを手伝うじゃぞ!」
内心迷いを見せるラナシィに気づいていないのか、クシーフは冷酷な命令を下した。兵士たちの後ろでは、少ないながらも住民が複数人様子を伺っており、半信半疑の様子であった。
「アイツらが機怪魔獣を?」
「それであれだけの税を………?」
「だからってあんな額はないだろ!」
「けど、あれって機怪魔獣じゃないのか?」
「いや、逃げるのに必死でよく見てなかったし………」
住民から聞こえてくる声。草介やラナシィはその声を聞いて困惑するが、エルティゴは冷や汗をかきつつも内心でクシーフの狙いに気づいた。
(成程、私たちに罪を被せることで増税の説得力を持たせ……住民を納得させる気か……!)
「さあ、何をしているのじゃぞラナシィ隊長!そこの仲間も捕らえるのじゃぞ!」
「し、しかし………」
ラナシィは強張った表情で一歩前に出るが、すぐに足を止めた。背後からは住民たちのざわめきが広がり、視線はデュランダーの磔姿と、捕縛されかけている草介たちの間で揺れていた。
ラナシィは悩んだ。自分はこの領地の兵士である以上、領主の命令に従わなければならない。だが、先の詰所での出来事がどうしても過ってしまう。周囲にいるほかの兵士も、もしかしたらゾロゾロイドやアシガロイドなのかもしれない。そう考えてしまうと、クシーフの発言に素直に従う気にはなれなかった。
「ラナシィ隊長、早くするのじゃぞ!」
クシーフが急かすように言うと、草介たちは困惑していた。
(どうする……!?)
ラナシィと草介たちが焦りながら動きが取れず膠着してしまう。どうすればいいのか悩んでいたその時、何かに気が付いたのか、ぐったりしていたハバキリが口を開いた。
「い、今の、内だ………!!」
「何?」
ハバキリの言葉にエルティゴが小首を傾げていると、その時、民衆の後ろから何者かが兵士たちの頭上を飛び越えて、草介たちの元に着地した!
「はっ!?」
「な、何じゃぞ!?」
現れた人物は、功夫服を着た女性と、黒いタンクトップとジーンズの女性であった。その背中には、黒いマントと帽子をした少年・シャスティがしがみついており、杖を構えていた。
「
「「「!?」」」
呪文が唱えられた瞬間、杖の先端から大量の白煙が吹き出し、辺り一帯を包み込んだ。
「な、何じゃぞ!?」
「ニールさん、今の内アル!」
「こっちだ!!」
「レイェン!レピオもか!!」
白煙があたり一帯を包み込み、視界が奪われる。クシーフが狼狽えている間に功夫服の女性、レイェンがニールに声をかけた。ニールはその声を聴くと、GPデバイスを操作した。
「今の内だ!急げ!」
「あ、ああ!!」
「ま、待つのじゃぞ!?」
ニールの言葉に草介は頷くと、煙幕に戸惑う兵士や住民たちの間をすり抜けると、煙幕に紛れて走り出す。
だが、そこでハッとした様子で振り返った。
「デュランダーは……!?」
草介が振り返ると、煙の向こうに逆さに磔にされたままのデュランダーの影が見えた。その周囲を円盤・アダムックD2の群れが取り囲み、威嚇するかのようにグルグルと旋回をしていた。
「ダメだ、今は手が回らない!」
ニールが鋭く告げる。
「この状況で無理に助ければ、全員ここで潰される………!」
ニール自身も、下唇を噛んで悔し気に言い放つ。彼女も苦渋の決断をしたのだろうと分かる。草介は悔しげに歯を食いしばるが、仲間の視線に押されるように前へと駆け出した。
「……待ってろ、デュランダー!必ず助けに戻る!」
白煙の中へと消えていく草介たち。
背後では、デュランダーがなおも逆さに吊られたまま、微かに火花を散らしていた―――
†
数分後、町の入り口にまでバトルトレインを到着させると、煙幕から出た草介達はすぐに乗り込み始めた。
「レピオ、ハバキリをチャージマシンに!お前らも回復しておけ!」
「分かったっす!」
「アイヨ~!」
レピオはハバキリを受け取ると、後部車両のチャージマシンの元に急いだ。草介がため息をついてふと隣を見ると、ラナシィが頭を抱えてうずくまっているのが見えた。
「な、何ということだ………状況が状況とはいえ、領主様に歯向かってしまうなんて………」
「真面目なんだなー、アンタ………」
経緯はどうあれ、まだ『疑惑』の段階である領主の命令に背いてしまったことには変わりない。頭を抱えるラナシィに、草介は同情するように言う。その後ろでは、エルティゴがシャスティに向き直った。
「ところでシャスティ、『アレ』は?」
「あ、ああ、それなら問題ないべ。」
「そうか。後は………」
「いタゾ!!」
と、エルティゴが言いかけたその時、追いついてきたのか、または別動隊がいたのか、兵士10名ほどが、一糸乱れぬ動きでこちらに向かって走って来た。
「もう来やがった!」
向かってくる兵士たちを見た草介が思わず声を上げる。エルティゴは腰の剣を抜こうとしたが、その時、路地裏から小さく丸い木の実のようなものがばら撒かれ、兵士たちはそれに足を取られて次々に転倒した。草介たちが驚いていると、路地裏からフードで顔を隠した2人組とアルスが姿を現わした。
「何だ!?」
「君たち、逃げるのなら案内するよ!!」
「え!?」
「君たちは……?」
「話は後であります!早く!」
フードの人物がそう言うと、アルスと共に客車に乗り込んだ。エルティゴとニールは少し困惑したが、アルスの「早く!」という声に押され、客車のドアを閉じて、レーザーレールを伸ばして発車した。
「何とかなったな………」
遠くなっていく町を後ろに見ながら、草介が小さくつぶやいた。エルティゴがアルスの方を向き直った。
「それで、その2人は……?」
「あ、はい。この人たちは………」
「我々は、ベロースリット領の者だよ。」
アルスが説明をしようとすると、ローブの2人がフードを下ろしながら言った。
1人は赤っぽい茶髪を三つ編みのおさげにして、顔にはそばかすがある少女、
もう1人は、くすんだ金髪を短く切りそろえ顎髭を生やした、大分鍛えられた体躯の中年男性であった。男性の顔を見て、ラナシィが驚いた声を上げた。
「え!?ティッケインさん!?」
「知り合いか?」
「え、ええ。第1詰所の隊長だった人なんだが、私が入る前に辞めちゃってて………」
ラナシィが説明をすると、ティッケインは苦笑気味に答えた。
「クシーフのやり方に嫌気がさしてね。ヤツも俺を毛嫌いしていたみたいだし、これ幸いにって思ってな。だが、クシーフの行動が更に悪化したと聞いてな。」
「で、私たちに協力してくれるようになったってワケ。」
ティッケインに次いで、少女も説明してくれた。
「私はセツィア。この領地で農家をやってたんだけど、クシーフの圧政のせいで家がひどくひもじい目にあっていてね………両親が少し文句言ったら反逆だって言って、酷い目にあったのよ………」
「そのようなことが………」
ラナシィが思わずつぶやいた。セツィアは一瞬ラナシィを睨むが、何も知らない様子の彼女に、呆れたようにため息をついた。
「アンタ、本当に何も知らないのね………」
「そ、それは………」
「彼女、数年前にこっちに来たからなー………」
セツィアの発言にラナシィが言葉を詰まらせる。ティッケインがフォローするように補足すると、セツィアはフンと鼻を鳴らした。
「ま、いいわ。とりあえず私たちの隠れ家に案内するわ。そこで話し合いましょう。」
「わかった。」
セツィアの提案にニールが頷く。案内をしてもらおうと操縦室に向かうと、アルスが草介に聞いてきた。
「そういえば、お兄ちゃんは?」
「ああ、クシーフに捕まってしまった………けっこうボロボロになってたけど、作戦は『続行可能』だ………」
「そ、そうでありますか………」
アルスは少し不安そうな顔をしていたが、草介とエルティゴの返答に小さく頷く。その様子を見て、ラナシィとティッケインは小首をかしげていた。
†
『グ………』
デュランダーが目を覚ますと、蝋燭の揺らめく火だけが灯るどこかの薄暗い地下室と思わしき場所にいた。
『こ、ここは………?』
「気が付いたか。」
『!?』
デュランダー周囲を見渡して現状を把握しようとしていると、鉄製のドアが軋みながら開き、イーグルとコボレーを引き連れたクシーフが入ってきた。デュランダーは動こうとするが、手足を拘束されているうえに全身にダメージを負っていたため、身動きが取れないでいた。
「無理はせん方がいいじゃぞ?無理をして傷を広げたくはあるまい?」
『くッ………!』
「随分と醜い姿だな、銀河連邦警察のブレイバーよ。」
小馬鹿にしたようなクシーフの態度にデュランダーは歯ぎしりをするが、鼻で笑うイーグルに視線を移し、何かに気が付いて口を開いた。
『!………お前は………!?』
「ああ、私としたことが、自己紹介が遅れたな。私はワルンダイツ六魔獣将がひとり、美しき男、空のイーグルだ。」
髪をかき上げながら名乗るイーグル。その名を聞いて、デュランダーはクシーフの方に視線を戻した。
『ワルンダイツ………まさか、人間でありながら魔王軍と手を組んだのか!?』
「フン、だったら何だと言うのじゃぞ?こ奴らに協力をすれば、ワシは1億Gの報酬がもらえるのじゃぞ!」
フン、と鼻を鳴らしてクシーフが答える。デュランダーは驚いたように目を見開いた。
『か、金のために、魔王軍に協力したというのか……!?』
「そうじゃぞ!金は良いじゃぞ?地位!名誉!女!金さえあれば、何でも手に入るじゃぞ!」
爛々とした目で、クシーフはデュランダーに告げた。その姿にデュランダーは困惑した顔になり、味方であるはずのイーグルは汚いものでも見るかのような目でクシーフを睨んでいた。
(醜い豚め……)
『そんな事のために………まさか、重い税金を領民に課したのも………』
「フン!馬鹿な領民どもは、テキトーな理由を言えば渋々といえど金を出すじゃぞ!ワシの懐に金が入れば良いのじゃぞ!」
『貴様!!』
嘲笑うクシーフに怒りを露わにするデュランダー。怒りのあまり飛びかかろうとするが、拘束されて動けない。その様子を見て、イーグルは鼻で笑った。
「フン、醜く無様だな……」
「さて、お前にはワシの役に立ってもらうじゃぞ。お前には、機怪魔獣襲来の罪を被り、処刑されてもらうのじゃぞ。」
『何!?』
「ワシの懐のために、領民どもの見せしめにして処刑されるのじゃぞ!これで防衛費徴収を口実に増税したのを正当化できるじゃぞ!ジャーゾジャゾジャゾ!」
クシーフは高笑いをしながら部屋から出て行った。鉄製の分厚い扉が音を立てて閉まった。
『………笑い方のクセが強いな………』
閉まったドアを見ながら、呆れたようにデュランダーは小さく呟いた………
†
日も暮れたころ、草介たちは町から離れた場所にある森の奥の小屋に案内されていた。
小屋の中には、セツィアやティッケインの同志であるという10人程度の男女が集まっていた。
「人数は、これだけか?」
「ああ。今となっては数少ないベロースリットの住人………その一部さ。」
思わず聞いたエルティゴの言葉に、ティッケインが答えた。
「他の領民たちは、領主に逆らうわけにはいかないって、諦めた連中ばかりだ。だけど、私たちは諦める気はない。」
セツィアの言葉に続くように、他のメンバーも頷く。
「クシーフが領主になってから、ここは変わってしまったよ。」
「前はのんびり農作業していればよかったのに………」
「ほとんど人もいなくなってしまったし………」
「ッ………!」
メンバーが口々に言っているのを聞いて、ラナシィは複雑そうな顔でうつむいた。
「その………私、何も知らなくて………」
「いや、さっきの兵士たちを見る限り、君と同様に何も知らされていない人間の兵士もいる様子だった。最低限の人間を隊長にして、残りの兵士を戦闘員タイプの機怪魔獣で構成させていたのだろう………」
「そ、そんな……」
ニールが推測すると、ラナシィは絶句した。ティッケインが続ける。
「となると、魔王軍対策の増税ってのも………」
「魔王軍から機怪魔獣を安く手に入れて、浮いた分を懐にってトコか………」
「何ともあくどい、というか、セコいというか………」
クシーフのあくどさに、エルティゴと草介は呆れてため息をついた。
「ま、これで大分動きやすくはなったな。」
「実は、私たちはクシーフの不審な動きを聞きつけた国王からの密命を受けて、調査のためにこの領地に来たんだ。」
「国王から!?」
「さすがに、魔王軍とつながっていたのは想定外だったがな………」
草介とエルティゴの告げた事を聞いて、ティッケインら一同は驚いて声を上げた。
「やっと王都に伝わったのか!」
「苦労して、情報を流した甲斐があったな!」
「これで苦労が報われる………!」
「いや、喜ぶのはまだ早い。」
セツィアらは浮足立って喜びの声を上げ始める。しかし、ティッケインだけは難しそうな顔をして、声を上げた。
「確かに王都からの使者は来たが、クシーフの違法な増税や、魔王軍と繋がっている証拠はまだ掴めていない。それがないと、クシーフを弾劾することは難しい……」
「そんな!」
「クシーフが領主になってから、もう1年も経つんだぞ!?いつになったら……!」
「そうは言っても、証拠がないんじゃどうしようもないだろ?」
ティッケインの言葉にセツィアや他のメンバーが声を上げる。セツィアは、難しそうな顔をしていたラナシィに聞いた。
「なあ、アンタは何か証拠を持ってないのか?」
「い、いや………私も何も知らなくて……」
「そうか……」
「まあ、ラナシィは見ての通り実直な性格で隠し事下手くそだからな………俺もコイツに内情捜査をこっそり依頼しようと考えたけど、断念したし………」
「うぐっ!?」
ティッケインが苦笑気味に言う。ラナシィは痛い所を突かれたかのように、痛そうな顔になった。
どうするべきか一同が考えていると、草介やエルティゴ、ニールが少し笑っていた。
「ああ、それなら問題ないぞ?」
「すでに、私たちの『作戦』は順調に進んでいる。」
「「「え?」」」
草介とエルティゴが口を開くと、一同の視線が一斉に草介に集中した。草介が悪戯っぽく笑っていると、セツィアとラナシィが問いただした。
「ど、どういうこと?」
「君、えっと、ソウスケ君、だっけ?何か、企んでいるのかい?」
「まあな。今アルスが確認している最中だ。出来次第、国王に速攻で報告をするからな。」
草介が2人に答えたその時、小屋のドアが開いてシャスティが入って来た。
「勇者さまぁ、色々集まったから、王さまへ報告しただよぉ!」
「おお、そうか!」
「ゆ、勇者?」
シャスティの報告を聞いて草介とエルティゴは笑みを浮かべた。ラナシィたちは、草介が『勇者』と呼ばれたことに更に驚いていたが、ティッケインが草介に聞いた。
「ソウスケ君、きみ、何をしたんだ?」
「ああ、実はな―――」
ティッケインの問いに、宗助は腕のGPウォッチを操作し始める。すると、画面から光が放たれると、ある映像が投影された。
「なっ………!?」
「これって………」
それを見た一同は、息を呑んだ。
「これと同じものを、王都に送ってある。明日までに決定が下されるぞ。」
「と、とんでもないな、君たちは………!!」
草介の作戦を聞いて、ティッケインは素直に驚き、感心した。その時、小屋のドアが勢いよく開いて、男が1人入って来た。
「おい!今町で発表されたんだけど、あの人型機械、明日の正午に処刑されるって!」
「何!?」
「デュランダーが!?」
男が告げた言葉に、ティッケインと草介が思わず声を上げた。
「決戦の場は、明日の正午のようだな………」
「ああ。それまでに、王都からの令状が間に合うか………」
草介とエルティゴが不安そうにしていたが、そこにアルスが話しかけてきた。
「あの、私、王都に戻るであります!」
「王都に?」
「はい!幸い、ブレイバードは回収してあるであります。私のライセンスなら手動操縦で王都に戻って、令状を受け取って戻ってこれるであります!」
「なるほど!」
アルスの申し出に、エルティゴは納得した。
「よし、頼んだぞ、アルス!」
「了解であります!!」
アルスは力強く頷くと、小屋を飛び出していった。
†
バトルトレイン内の簡易チャージマシンから電子音が鳴ると、上部に配置されたランプが赤から緑に代わり、ハッチが音を立てて開いた。
「ふぃー!アバター越しとはいえ、1週間ぶりのチャージは効くなぁ!!」
「五臓六腑に染み渡るネ。まあ、アタシ達『本体』には内臓ないアルけど♪」
「ないの?あるの?どっち?」
マシンからレピオとレイェンが出てくると、軽口を言い合った。一番端のマシンからハバキリも出てきたが、悔し気な顔をしていた。
「拙者とした事が……隊長の危機を前に力が出せぬとは………!」
「まあまあ、オレ達でもあの場は逃げるしかなかったし………」
落ち込むハバキリをレピオが慰める。しかし、レイェンは呆れたように言った。
「そもそも、ハバキリはペース配分が下手っぴアル。すぐに大技を出すクセは直した方がいいネ。」
「ぐっ………不覚………!」
「お前も追い詰めるなよ………」
更に落ち込むハバキリに対して、呆れたようにレイェンにツッコミを入れるレピオ。レイェンが少し不思議そうな顔をしていると、客車のドアが開いて草介とニール、エルティゴ、シャスティが入って来た。
「チャージは済んだようだな、お前たち。」
「ニールさん!」
「心配させてすまないです………」
3人は立ち上がって、頭を下げた。
「改めて、ハバキリ、」
「レピオ、」
「レイェン、」
「以上3名、これより原隊に復帰いたします。」
「ああ、無事で何よりだ。だが、その言葉は隊長であるデュランに行ってくれ。」
ニールは頭を下げる3人に、少し笑いつつ言った。
「その通りでござるな……」
「早く助けねぇとな………」
「ところで、そっちは誰アル?」
デュランの救出を改めて誓う3人。すると、レイェンが草介とエルティゴに気づいて聞いてきた。
「ああ、この人たちは、現地の協力者と、色々巻き込まれちゃった人であります。」
「初めまして、勇薙草介だ。」
「あ、シャスティです………」
「ドン・エルティゴ・ティリメンヤーだ。」
「1人スゴいのがいるんだけど?」
簡単に自己紹介をする草介とシャスティ、にエルティゴ。ドヤ顔で名乗るエルティゴにレピオが思わずツッコミを入れるのを見て、草介は内心(今は正体明かしても良くね?)と思っていると、ニールが咳払いを一つすると、3人に話しかけた。
「まあ、彼らの事はまた後でするとして、お前たち、マシンメイルは?」
ニールが問いかけると、3人は懐からジップレートを取り出して見せた。
「この通り、拙者たち3人の『トライメイル』は回収済みでござる。」
「先にコイツだけでも回収しておかないとって思ってな。」
「準備万端アル♪」
3人は口々に答えた。草介は効きなれない単語を聞いて、首を傾げた。
「トライメイル?」
「ハバキリたち3人に与えられた、新型マシンメイルのプロトタイプだ。今回の作戦、デュランダーの救出にはお前たちのトライメイルが適任だ。正確には、ハバキリとレピオだけだけど。」
「アタシは!?」
ニールの発言にレイェンが思わずツッコミを入れる。ニールは少し呆れたように言った。
「仕方ないだろう?お前のトライメイルは使える場所が限られているんだから………」
「た、確かにそうアルけど………何でアタシのは、あんなタイプアルか………」
しょぼくれるレイェンのつぶやきに、草介は少し気の毒に思った。
「デュランダーのダメージは、バトルトレインのキャリアで応急処置が出来る。頼んだぞ『トライヤーズ』!」
「はっ!!」「オウ!!」「合点アル!!」
ニールの号令に、ハバキリ達『トライヤーズ』は力強く応えた。
【つづく】
ブレイバード発進時の王様のボヤきはお気に入り。
デュランダー達に濡れ衣を着せるクシーフは本当に悪い奴。ぶっ飛ばすなら、これくらいあくどくないとね。
次回、大逆転です。お楽しみに。