異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

12 / 36
第11話 嗚呼、その領地に涙あり③

異世界勇者ロボ 第11話

嗚呼、その領地に涙あり③

 

 

 

 

 

翌日、ベロースリットの町の奥にあるクシーフの屋敷前では、逆さに磔にされたデュランダーが見世物の様に晒されていた。

 

「諸君!この者こそ、魔王軍を町に引き入れて、我が領地を混乱に陥れんとした大罪人である!よって、この場で処刑を行うものとする!」

 

デュランダーの前に設置された台に乗ったクシーフが、集まっていた民衆に向けて宣言をする。

磔にされたデュランダーには特注と思わしき猿轡で口をふさがれており、その意思を民衆に伝える事はできなかった。

 

「………」

 

その様子を、クシーフの屋敷の窓からこっそり見ていたキアラは、複雑な表情を浮かべていた。それに気づいているのかいないのか、カラとボルグが隣に立って口を開いた。

 

「これで、あの勇者も終わりですな。」

「まあ、他の連中もまだいるダスが………」

「そうね………」

 

キアラが適当に相槌を打つ。その様子に気づいてか、イーグルが声をかけた。

 

「まあ、あんな醜いブタに勇者を討たれるのは癪ではあるが………しかし、これで我らの敵が1人減るのは、喜ばしい限りだ。」

「ええ……でも、今まで煮え湯を飲まされた相手の最後がこんな形っていうのは、少し複雑ね……」

 

イーグルの言葉に、キアラは苦笑しながら答えた。ちょうどその時、クシーフが民衆に向けて言った。

 

「では、これより刑を執行する!」

 

クシーフが宣言をすると、巨大な槍を構えた兵士数人がデュランダーの目の前に現れて構えを正した。デュランダーが目を見開き少し慌て始めたが、クシーフは気にも留めず合図の右手を下ろそうとしたその時、

 

「ちょーーーっと待ったぁあああーーーッ!!」

「「「!?」」」

 

突然、民衆の後ろから大声が聞こえる。民衆が道を開けるように左右にずれながら振り返った先には謎の冒険者ドン・エルティゴ・ティリメンヤーを筆頭に草介にアルスとシャスティ、それにラナシィやセツィアたちが並び立ち、クシーフを睨みつけていた。

 

「フン!誰かと思えば、こやつの仲間と裏切り者のラナシィ隊長ではないか!探す手間が省けたじゃぞ!」

「者ども、ひっ捕らえろ!」

 

小馬鹿にするようにクシーフが鼻を鳴らすと、横にいたコボレーが兵士に命じた。しかし、兵士が動く前に草介が前に出て、叫んだ。

 

「ええい、静まれ静まれぃ!!」

「なぬ?」

「そ、ソウスケ?」

 

突然、芝居かかったように叫んだ草介に一同の動きが止まり、クシーフが訝し気な表情を浮かべた。隣のエルティゴもこれは少し予想外だったのか草介の方を見るが、草介は右手にした書簡の入った金色の筒を、全員に見えるように掲げた。

 

「この紋所が、目に入らぬか!!」

「「「!?」」」

 

草介が掲げた金色の書簡には、太陽と剣を背にしたライオンの紋章が刻まれていた。それを見たクシーフは、驚きの声を上げた。

 

「そ、それは王家の紋章!?国王直々の書簡ではないか!な、なぜお前がそれを!?」

 

クシーフが驚いていると、草介はニヤリと笑う。隣では、気を取り直したらしいエルティゴが、仮面に手をかけて外し始めていた。

 

「こちらにおわすお方をどなたと心得る!恐れ多くもロコロ王国第一王女、フローレント・モルデュア様にあらせられるぞ!!」

 

草介が高らかに告げると、仮面を外したエルティゴ―――否、フローレント・モルデュアが凛とした瞳でクシーフを見据えた。

 

「なぬぃいいい~~~!?」

「フローレント様!?」

「まさか!?」

 

クシーフが素っ頓狂な悲鳴を上げ、コボレーや兵士たち、そして民衆が驚きの声を上げる。隣で立っていたラナシィとセツィアも、同じように驚いていた。

 

「ま、まさか姫様だったなんて………!」

「ね、ねえ!私たち、姫様に失礼なことしてなかったよね?大丈夫だよね?」

 

またしても何も知らなかったラナシィ(24歳)に対して、セツィアが少し不安そうに聞いてくる。すると、草介は更に続けた。

 

「皆の者!姫様の御前である!頭が高い!控えおろう!!」

「「「は、ははぁーーーッ!!」」」

 

草介の号令に、民衆や兵士の一部、そして台から飛び降りたクシーフが跪く。隣にいたラナシィたちも跪いた。

 

「え、何あれ?」

(何をしているんだ、ソウスケは………?)

 

屋敷から一連の流れを見ていたキアラや磔にされたままのデュランダーは呆気に取られ、フローやアルスは目の前の光景に唖然としていた。

 

「………ソウスケ、何なのこれ?」

「………いや、日本人としてこの場面ではこれをやるしかないと思って………一度やってみたかったし。」

 

少し困ったようにフローが聞くと、草介は少し照れたように答えた。アルスは宇宙人やシンナセン人には分からない感覚なのだろうか?と内心思った。まあ、宇宙人や異世界人に水戸黄門が分かるわけがないのは、当たり前なのだが。

 

「それより、ほら。」

「あ、うん。」

 

草介に促され、フローは書簡を受け取ると民衆の前に出た。そして、クシーフを睨みつける。

 

「ウォヤッコス・クシーフ!」

「は、はい!」

「その方、違法な税を領民に負わせ私腹を肥やし、あまつさえ金のために魔王軍と結託し、勇者たちに無実の罪を着せるとは!!」

 

フローがクシーフを糾弾すると、民衆がひそかにざわめいた。フローは書簡を広げると、その文面を読み上げた。

 

「ここに、国王からの正式な令状がある!ウォヤッコス・クシーフ、並びにその配下数名を、国家反逆罪で逮捕する!」

「な、何だと!?」

 

フローが読み上げた内容にクシーフは驚きの声を上げ、民衆もざわめき始めた。

 

「お、お言葉ですが姫様!わたくしめが私腹を肥やし、魔王軍と結託したなどといういわれのない言いがかり、一体どこに証拠がおありでしょうか!?」

 

クシーフは頭を上げて、フローに反論をした。

 

(だ、大丈夫じゃぞ。証拠は残していないじゃぞ!王族が自ら動いたのは予想外じゃが、しらばっくれて、この場をやり過ごすじゃぞ!)

 

クシーフは内心、証拠はないとほくそ笑んでいた。しかし、フローは後ろにいる草介に目線を送った。

 

「証拠ならある!」

「えっ!?」

「はい、ポチッとな!」

 

フローの言葉にクシーフはぽかんと口を開ける。反論するよりも先に、草介の左手に巻かれたGPウォッチが光を放ち、空中に映像を投影し始めた。

 

『ああ、私としたことが、自己紹介が遅れたな。私はワルンダイツ六魔獣将がひとり、美しき男、空のイーグルだ。』

『ワルンダイツ………まさか、人間でありながら魔王軍と手を組んだのか!?』

『フン、だったら何だと言うのじゃぞ?こ奴らに協力をすれば、ワシは1億Gの報酬がもらえるのじゃぞ!』

『か、金のために、魔王軍に協力したというのか……!?』

『そうじゃぞ!金は良いじゃぞ?地位!名誉!女!金さえあれば、何でも手に入るじゃぞ!』

 

「!?」

 

それは、地下牢で会話をする、デュランダーとクシーフたちの映像であった。クシーフはそれを見て、驚愕の表情を浮かべ青ざめていた。

 

『馬鹿な領民どもは、テキトーな理由を言えば渋々といえど金を出すじゃぞ!ワシの懐に金が入れば良いのじゃぞ!』

 

「まさか……そんな……!」

「あのデブ!やっぱり騙してやがったのか!」

「しかも、金のために魔王軍と結託しただと!?」

「どんだけがめついんだよ!!」

 

民衆たちは映像内のクシーフの発言にざわめく。一方、屋敷内でキアラも息を呑んでいると、イーグルが驚きの声を上げた。

 

「あれは昨晩の………な、なぜあんな映像が!?」

 

イーグルも訳が分からず困惑をしていた。すると、膝をつくクシーフの足元を、小さなものがタッタッタッ、と小さな足音を立てながら通り過ぎ、シャスティの元にやって来た。

 

「な、何だ……?」

 

クシーフが困惑していると、小さな影はシャスティの元に飛び上がり、変形をして左腕に収まった。

 

「あれって、ホパクの時の?」

 

キアラは、それが以前見た小さなロボット『ウォッチャー』である事に気づいた。それを見たクシーフが、まさかと思いフローの方を向いた。

 

「まさか……その機械人形で!?」

「ああ。ソウスケのアイデアで、このウォッチャーでお前たちの悪事を記録していたのだ!同じものを、国王も見ている!」

 

フローが勝ち誇ったように告げた。後ろで草介は「してやったり!」とでも言いたげに、ニヤリと笑っていた。

 

「まったく、前もって打ち合わせはしていたからよかったぜ。デュランダーが予想以上にダメージ受けてたから、ちょっとヒヤヒヤしたけどさ………」

 

草介は、昨日の事を思い出しながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は1日前まで遡る―――

 

「ウォッチャーを使う?」

 

ベロースリット領に向かうバトルトレインの客車で、草介の案を聞いたエルティゴが聞き返した。

 

「ああ。ウォッチャーには、偵察用に録音と撮影の機能がついてるだろ?少しでも情報を映像や音声で記録すれば、向こうがしらばっくれても言い逃れはできないだろうからな。」

「なるほどね。」

 

草介の案にデュランが納得したように頷く。エルティゴとシャスティは、その横で感心したように頷いていた。

 

「仮に誰かが捕まったとしても、それは逆にチャンスだ。連中から情報を引き出して記録すれば、ヤツを追い詰める材料になるんだからな。」

「確かに、記録があれば言い逃れはできないね。」

「考えたな、ソウスケ!」

 

エルティゴとデュランが感心して頷く。草介は照れ臭そうに後頭部をかいた。

 

 

 

 

 

「ずっと同じこと思っててさ………私、今年から兵団に入ったんだけど、いきなりここの隊長を任されちゃって………」

「新兵で、いきなり隊長を?」

「うん……魔王軍の侵攻に備えて兵士を増やしたことは知ってたけど、それでも人手が足りないって………」

 

困ったように笑うラナシィに対して、エルティゴとニールは怪訝な様子で聞いていた。

その様子を、詰所の棚の上に隠れていたウォッチャーが、隠れて録画していた。

 

 

 

 

 

ハバキリが刀で受け止め鍔迫り合いになる。ハバキリが苦し気な声を上げる中、アシガロイドはさらに強く押し込む!

 

「ウォッチャー!!」

『何ィ!?』

 

その時、咄嗟に草介が叫ぶと、棚の上に隠れていたウォッチャーが飛んできて、アシガロイドの脳天目掛けてかかと落としを食らわせた!

 

 

 

 

 

「“スモーク・ヴェール”!!」

「「「!?」」」

 

呪文が唱えられた瞬間、杖の先端から大量の白煙が吹き出し、辺り一帯を包み込んだ。

 

「行くべ、ウォッチャー。」

 

煙幕で周囲の視界が遮られると、シャスティは左腕のGPウォッチを起動させた。変形したウォッチャーは、混乱する周囲に紛れて磔にされたデュランダーの元に向かい、ボディの隙間に隠れた。

 

 

 

 

 

「無理はせん方がいいじゃぞ?無理をして傷を広げたくはあるまい?」

『くッ………!』

「随分と醜い姿だな、銀河連邦警察のブレイバーよ。」

 

小馬鹿にしたようなクシーフの態度にデュランダーは歯ぎしりをするが、鼻で笑うイーグルに視線を移し―――その後ろの物陰から、ウォッチャーがこちらの様子を伺っていることに気が付いて口を開いた。

 

『!………お前は………!?』

「ああ、私としたことが、自己紹介が遅れたな。私はワルンダイツ六魔獣将がひとり、美しき男、空のイーグルだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(想像以上にダメージを負ってしまったが、私の誘導もあってかベラベラと喋ってくれたおかげで、ヤツを追い詰めるだけの材料が揃った訳だ………)

 

昨日のことを思い出し、デュランダーは内心考えていた。クシーフとコボレーが愕然としていると、兵士たちの間でも困惑の声が上がっていた。

 

「へ、兵士が機怪魔獣って………!?」

「まさか………!?」

 

10人程度の兵士たちは、映像を目にしてある事実に気が付いた。もしかしたら、隣にいる兜をかぶったままの兵士たちも、同じなのでは?そう考えて、彼らから弾かれたように飛び退いて離れた。しかし、他の大多数の兵士たちが微動だにせず棒立ちのままなのを見て、その疑惑が確信へと変わり始めていた。

 

「あの兵士たちも、ラナシィと同じように何も知らされてなかったみたいだな。」

「そうだな……(私だけじゃなくて良かった………)」

 

兵士たちの様子を見た草介が呟くのを聞いたラナシィは、内心ホッとしていた。

 

「さあ、これで言い逃れはできないだろう!!」

「グッ………!!」

「く、クシーフ様………!」

 

フローが力強く言い放つと、クシーフは忌々し気に唇を噛む。コボレーが不安そうに話しかけるが、クシーフは忌々し気にフローを睨みつけながら、勢いよく立ち上がった。

 

「ええい!ならば貴様らを亡き者にするじゃぞ!!やれ!!」

「何!?」

 

クシーフが叫んだ瞬間、兵士たちの兜が外れてゾロゾロイドやアシガロイドの素顔を露わにし、武器を構えて草介やフローだけではなく、領民たちにまで刃を向けた!

 

「どこまでも見下げたやつだ!」

「みんな、早く避難するんだ!」

「「「うわあああーーー!!」」」

「早く!市民を守るんだ!!」

「わ、分かった!!」「みんな、こっちだ!!」

 

民衆からゾロゾロイドを引き離しながら、草介が舌を打つ。セツィアが民衆に避難を促しラナシィが数体を斬り捨てながら周囲の兵士に叫ぶと、数少ない本来の兵士たちがゾロゾロイドに斬りかかっていった。

しかし、それでも敵の数は多い。民衆に多くのゾロゾロイドが迫る中、建物の屋根の上から2つの影が飛び出した!

 

「アチョーーー!!」

「「「!?」」」

 

影が着地と同時にゾロゾロイド十数体が吹き飛ばされて、スクラップへとその身を変貌させた!ゾロゾロイドが警戒の体制を取ると、背中の棍棒を引き抜いて振り回し、その先端をアシガロイドの1体に向けた!

 

(あれはレイェン!合流できていたのか!!)

 

レイェンの姿を確認したデュランダーが目を見開く。その時、レイェンと共に飛び出したニールが手にしたライフルをデュランダーに向けて引き金を引く!すると、放たれた弾丸が猿轡のベルトに着弾して、口から外された。

 

『ニールさん!レイェン!』

「大丈夫か!?」

『な、何とか………』

「フュージョンアウトする時間はない!すぐに助けるから待っていろ!」

 

ニールは叫びながら、手にしたサブマシンガンでゾロゾロイドを蹴散らしていく!

 

「ここは任せるアル!」

「はやく、デュランダーの元に!」

「ああ!」

 

レイェンとニールに背中を押されて、草介とフローはデュランダーの元に向けて走り出した。

 

「させん!!」

「「!?」」

 

しかし、2人の目の前に青と緑の混じったくせ毛を肩まで伸ばした青年・イーグルが、アシガロイド数体を引き連れて立ちふさがった!

 

「コイツ、映像に映ってたワルンダイツの!」

「六魔獣将、空のイーグル!」

 

イーグルは名乗ると、腰に差したサーベルを引き抜いた。

 

「クシーフ!早くそのブレイバーを殺すのだ!」

「じゃ、じゃが!」

「いくら連中が攻めて来ようとも、ブレイバーが死ねばこちらの勝ちだ!」

 

イーグルが後ろを振り返ってクシーフに向けて怒鳴りつけると、サーベルの切っ先を2人に向けた。

 

「さて、お相手願うぞ、剣を携えし姫と、人の勇者よ!この私の『美しき私流剣術』を、とくと味わうがいい!!」

「何だその頭の悪い恥ずかしい名前!?」

「無駄に恰好つけてるけど、要するに我流だよねそれ!?」

 

イーグルの流派名に思わずツッコミを入れる草介とフロー。そんな2人に構わず、イーグルは飛び上がって華麗に回り始めた!

 

「美しき私流剣術!『螺旋ノ調(しらべ)第一章第一節・虚空に散華し愚者への鎮魂歌(レクイエム)―死地に鮮血を添えて―』ーーー!!」

「「名前長!?」」

 

無駄に華麗に回転しながら斬りかかってくるイーグルの無駄に長い技名にツッコミを入れながら、普通に避ける草介とフロー。着地をしたイーグルは意外そうな顔をして振り返った。

 

「ほう?我が美しき剣技を回避するとは………なかなかやるな。」

「いや、あんな長ったらしい技名言ってる間に勢いなくなってたから、避けるの簡単だったぞ?」

「え?」

「気づいてなかったのか………」

 

キョトンとした表情のイーグルに呆れる2人。しかし、周囲を見るといつの間にかアシガロイドが包囲するように陣取っていた!

 

「まあ良い。私の美しき剣技に見とれている間に、包囲をさせてもらった。」

「何!?」

「コイツ………(勘違いした恰好つけのアホだが、変な所で頭が回るヤツだ………!!)」

 

目の前のイーグルについて、先ほどの剣技はともかく、侮れない相手であると認識する2人。アシガロイドたちは手にした専用の剣・アシガーベルを構え、今にも斬りかかって来そうな勢いである。

 

『みんな!!』

 

思わずデュランダーが悲痛な叫びを上げる。

周囲では民衆が逃げ惑い、アルスとシャスティは避難を誘導、ラナシィたち兵士やニールが護衛しつつ対処していた。

 

(人がまだ多い………シャスティは魔法を使う暇がないのか………!)

 

何とか状況を判断しようとしていた。しかし、そこでふとあることに気が付いた。

 

『(待てよ?レイェンだけで何故ハバキリとレピオがいないんだ?はぐれたわけじゃなさそうだし………!) そういうことか!』

 

デュランダーは草介たちの『作戦』に気づくが、その時、自身の周囲にゾロゾロイド数体が、バズーカ砲を構えていた。

 

「『そういうこと』が『どういうこと』かは知らないが、さっさと仕留めてやるじゃぞ!」

『ぐっ………!』

 

デュランダーが歯ぎしりするが、その時、上空からジェットエンジンの轟音が響いてきた。

 

「!……あれは!?」

 

見上げた先には、銀色のボディに赤いラインを走らせたジェット戦闘機であった!戦闘機は機首に搭載された機関砲を掃射発射して、地上にいるゾロゾロイド数十体を一層した!

 

「何ィ!?」

『隊長どの!!』

『フェニックスジェット!ハバキリか!』

 

戦闘機・フェニックスジェットから聞こえて来たハバキリの声を聞いて、デュランダーは声を弾ませた。戦闘機を見たクシーフが慌てつつも、懐から通信機のようなものを取り出して声を荒げた。

 

「ええい!アダムックD2を全機発進じゃぞ!あれを撃ち落とせ!!」

 

クシーフが叫んだ瞬間、屋敷の裏や建物の影から、十数機以上ものアダムックD2が次々と発進、変則的な動きでフェニックスジェットに接近をして稲妻状の光線を放つ!

しかし、フェニックスジェットは雨あられのように放たれる光線の間を小柄な機体を活かして針の穴を縫うように潜り抜け、逆にミサイルを放って数体を撃墜する!

 

「意外と小回りが利くようですな………」

「あの勇者の仲間みたいダスな………」

 

屋敷の外に出て、戦場を見ていたカラとボルグがフェニックスジェットを評価する。また2機ほどを撃ち落としたフェニックスジェットを見たキアラは、あることに気が付いた。

 

「………ちょっと待って、何で変形しないの?」

「え?言われてみれば………」

「勇者が捕らわれた仕掛を、警戒しているダスか?」

 

キアラの疑問にカラとボルグも気づいて呟く。しかし、キアラはニールたちがゾロゾロイドの軍団と戦っている様子とも合わせて、ある可能性に気づいてクシーフに向けて叫んだ。

 

「奴らは『囮』よ!機怪魔獣を戻して勇者を!!」

「え?」

 

キアラの叫びにクシーフはキョトンとする。しかしその時、地面が揺れ始め、段々と揺れは大きくなる!

 

「な、何だ!?」

「まさか!?」

 

クシーフは狼狽えていたが、次の瞬間、クシーフのいた近くの地面を突き破って、巨大な機影が飛び出してきた!

 

「ぎょへえ~~~!?」

「あれは!?」

 

飛び出してきた際の衝撃でクシーフとコボレー、ゾロゾロイドが吹き飛ばされる中、飛び出してきた機影は地響きと共に地面に着地した。

それは、2つ並んだ金色の円錐型の削岩機(ドリル)と無限軌道、機体上部が丸みを帯びたドーム状になったカーキ色の戦車、所謂『ドリル戦車』であった!

 

『トータスドリル!!レピオか!!』

「無事っスか、隊長!!」

 

トータスドリルの側面ハッチが開いて、レピオが顔を出した。

 

「ゾロゾロイドとアダムックを勇者から引き離して、あのメカで救出する作戦だったのね………!」

「マズい!勇者が解放されてしまう!」

 

キアラがニールたちの作戦に気づくと、カラは焦りの声を上げる。クシーフは倒れて直ぐには動けない様子であり、ゾロゾロイド達も吹き飛ばされた衝撃で大破しており、残りも草介たちの方に向かっているため、駆け付ける事ができない。

 

「今助けるっス!!」

 

そんな彼女らを尻目に、レピオは叫ぶと同時に飛び上がって背中の手斧を引き抜いた!

 

「ヘルクレス式戦斧術!剛力割りィ!!」

 

叫ぶと同時に、力強く斧を手枷と足枷に向けて振り下ろす!枷はあっさりと斬り裂かれ、デュランダーを自由にした!

 

『ぅおっと!?』

「し、しまった!?」

 

自由になったものの、地面に倒れるデュランダー。民衆は既に避難済みで、アダムックは全て上空のフェニックスジェットに翻弄されている。

 

「ニールさん、今がチャンスだ!」

「ああ!!」

 

草介が叫ぶと、ニールはGPデバイスを操作した。次の瞬間、イーグルが草介に剣を振り下ろし、鍔迫り合いとなった。

 

「ソウスケ!!」

「やってくれるではないか!この私を手の上で美しく躍らせるなんて!」

「踊りは炭坑節だけどな!」

「せめてバレエとかにしろ!」

 

草介の皮肉に怒鳴り返すイーグル。フローはアシガロイドを相手にしているため手助けができないでいたが、その時、後方からレイェンが飛んできた!

 

猛虎従風脚(もうこじゅんぷうきゃく)!アチョーーー!!」

「「「グげェ!?」」」「ぐぇ!?」

 

疾風怒濤の勢いの飛び蹴りでアシガロイド数体とイーグルをまとめて吹き飛ばすレイェン!イーグルはカエルが潰れたような声を上げながら倒れ、レイェンはその背中に着地をした。

 

「うごッ!?」

「だいじょーぶアルか、2人とも?」

「ああ、サンキュー!(アチョーって言うタイプのカンフーキャラの実物、初めて見たな………)」

「おい!美しい私を踏んでるぞ!?」

 

レイェンに感謝をする草介。イーグルが自分を踏むレイェンに抗議するが、その時、戦場に汽笛が響き渡り、バトルトレインが滑り込んで来た。

 

「デュランダー!キャリアに乗り込んで応急処置をしろ!」

『分かった!』

 

デュランダーが返事をすると、ふらつきながらもキャリアに乗り込んだ。

 

「レイェン、私たちも乗り込むぞ!」

「了解アル!」

 

レイェンは返事をすると、GPデバイスを取り出すとジップレートを挿入して操作をした。

 

[ジップレートのセットを確認しました。]

「タイガーアクア、解凍!!」

[タイガーアクア、エクストラクト!!]

 

レイェンが宣言をすると同時に電子音声が鳴り響くと、GPデバイスから光が放たれて、目の前に白を基調として、ボディの左右に大型のスクリューを持った潜水艦・タイガーアクアが降り立った!

 

「せ、潜水艦………」

「え、これって?」

「うん、水中を潜る乗り物。」

「水中を………」

 

タイガーアクアを見たフローが草介の説明を聞いて、今回の作戦でレイェンがマシンメイル組ではない理由を理解した。マシンメイルが潜水艦では、周囲に水場がなければ動くことすらままならない。「陸に上がった河童」とはこのことか。

 

「まったく、何でアタシのは、潜水艦ネ………」

「まあ、マシンメイルなくても普通に強かったからいいけど………」

 

ボヤくレイェンに、何とかフォローを入れる草介。レイェンは身軽にジャンプしてタイガーアクアに乗り込むと、同じくバトルトレインに乗り込んだニールから通信が入った。

 

「デュランダーの応急処置完了まで120秒だ!3人とも、フュージョインしてチェンジするぞ!」

「御意!」「オッス!」「アイアイ~♪」

「「「「フュージョイン!!」」」」

 

ニールの声に3人は返答すると、一斉に一体化をして、変形を始めた!

 

『変身!!』

 

フェニックスジェットの機首と尾翼部分が根元から分離すると、起き上がるように姿勢を正し、下部の赤いボディが見えるようになる。後ろ部分が伸びて両脚に、機体の下に折りたたまれていた両腕が伸びて頭部に翼の装飾を持った頭部が出現、背中の両翼がV字に跳ね上がると機首が下を向くように右肩に、尾翼部分が背中に装着されると、機首のキャノピー部分が反転して赤い鳥の顔が露わとなった!

 

『チェンジ!!』

 

トータスドリル上部のドーム部分が分離すると機体が立ち上がり、ドリル部分が左右にスライドして下部から両腕が伸び、額に亀の甲羅を思わせる六角形のマークを持った頭部が出現、両足が伸びて着地すると、分離したドーム部分から射出されたリクガメの頭部が右肩に合体、ドーム部分を左手に掴んだ!

 

轉換(ジュアンホワン)!!』

 

タイガーアクアの機首部分が射出されると、起き上がって左右のスクリューが前後に分離、機体の前半分が左右に開いて大きな肩アーマーとなって両腕が飛び出し、後ろ半分が反転するように変形して両脚となって着地をすると、機首が反転するように虎の顔に変形して、右肩と合体した!

 

『天空武士!トライフェニックス!!』

『剛力戦士!トライトータス!!』

『深海格闘士!トライタイガー!!』

『『『トライヤーズ!見参!!』』』

 

それぞれ胸に翼、甲羅、虎の額の模様のエンブレムが描かれた3機のトライヤーズが並び立ち、高らかに名乗りを上げた!

 

「あれが、3人のマシンメイルか!!」

『チェンジ!バトルパンサー!!』

 

並び立ったトライヤーズを見た草介が、感動にも似た声を上げる。すると、バトルトレインも変形して、3機と共に並び立った。

 

『処置完了まで、デュランダーに近づけるな!』

『『『了解!!』』』

 

バトルパンサーに3機が返答をしたその時、アダムックの編隊がデュランダーの乗ったキャリアに向けて光線を発射してきた!

 

『させるか!キッコウシールド!!』

 

トライトータスが全面に出て、左手に持ったキッコウシールドで光線を防ぐ!直ぐに、バトルパンサーがアーマリートレインからガトリング砲とガングパンサーのライフルモードを装着して迎撃をする。アダムックは回避をしたが、バトルパンサーがトライヤーズの3機に叫ぶ。

 

『連中をデュランダーに近づけるな!』

『『『はっ!!』』』

 

トライヤーズが叫ぶと、トライフェニックスは背中にマウントしてあった尾翼部分を手にすると銃口が顔を出し、トライトータスのキッコウシールドの一部が開いて二連砲が展開、トライタイガーの両肩に三門ずつバルカン砲が展開した!

 

『フェザーガン!』

『シェルバズーカ!』

『クローバルカン!』

 

3機はバトルパンサーと共にアダムックの編隊に向けて武器を構えると、一斉射撃を行う!大半は回避をしたが、何機かは撃墜される!

 

『全滅させようとするな!時間が稼げればそれでいい!』

『了解!』

 

バトルパンサーの指示に、3機は答えてアダムックの編隊を牽制する。アダムックたちは4機の猛攻によって下手に近づくことすらままならなくなっていった。

 

「まったく、勇者の仲間が集まる前に仕留める作戦だったのに………!」

 

戦況を見ていたキアラが歯ぎしりをしながら悔しがる。視線の先では、立ち上がったイーグルがクシーフとコボレーを流れ弾から守っていた。

 

「まったく!とんだ失態だ!」

「お、オイ!これ、どうするのじゃぞ!?」

「五月蠅い!貴様も同罪だ!」

「ひぃ~~!!」

 

イーグルがクシーフに怒鳴ると、コボレーが怯えた悲鳴を上げた。その時、キャリアのハッチが開き、応急処置を終えたデュランダーが姿を現した!

 

『みんな、すまなかった!』

「デュランダー!!」

『隊長!!』

 

姿を見せたデュランダーに、草介やトライヤーズが歓喜の声を弾ませる。イーグルはそれを見て舌打ちをするが、いつの間にかフローが草介とラナシィと共に駆け付けており、剣の切っ先を突き付けていた。

 

「さあ、今度こそ逃げ場はないぞ、クシーフ!!」

「ぐっ……!!」

 

イーグルは歯ぎしりをしながら、フローを睨み付ける。しかし、クシーフは諦めていないのか、歯ぎしりをしながらも立ち上がった。

 

「おのれェ!かくなる上はッ!!」

「何!?」

 

クシーフはコボレーを小脇に抱えるとその肥えた身体からは想像もつかないような素早い動きでその場を走り去ると、身軽な動きで屋敷の高い塀を飛び越えて、屋敷の中へと入っていった。

 

「逃げられた!?」

「あんなに太ってるのに、何だあの身のこなし!?」

(クシーフめ、あれを使う気か………ならば私も!!)

 

クシーフの予想外の身のこなしにフローたちは驚くが、イーグルは何かを察したのかその場からジャンプをして立ち去った。

 

「追うぞ!!」

 

フローが2人に言って屋敷に向かおうとするが、その時、屋敷の横にある倉庫が破壊され、中から30m程もある巨大な機怪魔獣が姿を現した!

 

『機怪魔獣だと!?』

 

現れた機怪魔獣にデュランダーが驚く。現れた機怪魔獣は、がっしりとした象の獣人のような姿をしており、鼻先や太い両腕にはビーム砲やガトリング砲が搭載されているのが見えた。見るからに、砲撃重視の機怪魔獣であることが分かった。

 

「こうなれば、この『キャノンシャD3』で貴様らを葬ってくれるじゃぞ!!」

 

機怪魔獣キャノンシャD3のコックピット内で、コボレーと共に搭乗したクシーフが叫んだ!

 

「クシーフ!」

「悪足掻きを………!」

 

キャノンシャから聞こえてくるクシーフの声に怒りを露わにする。デュランダーたちがキャノンシャに警戒をしていたが、その時、屋敷の敷地内の大きな幌がかけられていたものが起き上がると、赤いカラーリングのグランダートF2が出現した!

 

『また出た!?』

「あれって、もしかして………」

 

見覚えのあるカラーリングのグランダートを見た草介がまさか、と思っていると、グランダートから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『人間の手助けをするのは癪だけど、アンタを倒せるチャンスがあるなら利用させてもらうわよ!!』

『やはり君かキアラ!!』

 

キアラの声を聞いたデュランダーが呆れにも似た声で叫ぶ。魔王姫と面識のないトライヤーズが誰だろうと思っていると、今度は屋敷の裏から黒いデルタ翼の大型戦闘機が姿を現した!

 

『今度は何だ!?』

『銀河連邦警察の諸君!悪いが、私もこれ以上醜い失態を重ねたくないのでね!』

『イーグルか!!』

 

ステルス戦闘機から聞こえてきた声から、乗っているのがイーグルであることを知った察したデュランダーが声を上げた。

 

『チェンジ!!』

 

イーグルが叫ぶと、機体の下部から4本爪の脚が伸び、両翼が展開して鳥の翼のように変形、更に機首が反転して鳥の頭部が現れた!

 

空魔獣将(くうまじゅうしょう)!イーグルダイト!!』

 

イーグルダイトが名乗ると、威嚇か、あるいは己の力を誇示するかのように両翼を広げた!

 

『ビーストメイルまで………!』

 

デュランダーが驚く中、周囲にはまだ残っていたアダムック十数機が集まってきていた。

 

「まだ、こんなにいるのか………!」

「ゾロゾロイドは、もうほとんど残っていないが………」

 

アダムックの群れに草介とフローが苦虫を嚙み潰したような顔になる。トライヤーズも小さく息を呑んでいると、デュランダーが叫んだ。

 

『怯むな!!』

『!?』『隊長!』

『草介たちは下がっていてくれ!』

「わ、分かった!無理はするなよ、デュランダー!!」

『ああ!』

 

草介たちが避難を開始するのを見ると、メンバーに指示を飛ばした。

 

『トライタイガーは、そっちの赤いのを!トライトータスとバトルパンサーはクシーフを頼む!』

『分かったアル!』

『オッス!!』『分かった!』

『トライフェニックスは空中の連中を頼む!私はイーグルを相手する!』

『御意!!』

 

デュランダーの指示を聞くと、メンバーはそれぞれ返答をする。デュランダーは目の前の機怪魔獣とビーストメイルを見据えて、叫んだ。

 

『デュランダー隊、出撃!!』

『『『『了解!!』』』』

 

反撃開始だ!

 

 

 

 

 

【つづく】




実は今回のベロースリット編は、最初から水戸黄門オマージュとして書いていました。
「異世界ファンタジーらしく悪徳領主を懲らしめる話を書こう→パーティにフローがいるとややこしくなるのでは?→仮面を被せて正体を隠して、最後に正体を明かそう→水戸黄門やん」という流れでこうなりました。
サブタイトルも水戸黄門の主題歌からだし、エルティゴの服装も光圀公がモデルで名前は『越後のちりめん問屋』のアナグラムでした。(ドン・エルティゴ・ティリメンヤー→エルティゴティリメンドンヤー→越後のちりめん問屋)

ウォッチャー大活躍。実は読み返すとそれと思わしきシーン満載でした。こういう大逆転劇は結構好きなんだけど、映像と音声で証拠残す展開は、最近YouTubeでスカッと系の動画見てる影響出てるかも。

イーグルは阿呆のナルシストだけど、意外に侮れないタイプ。クールキャラがあっさり崩れるのは意外に好き。

デュランダー隊、ついに終結。次回、反撃開始です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。