異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第13話 聖剣の鞘は静かに眠る

異世界勇者ロボ 第13話

聖剣の鞘は静かに眠る

 

 

 

 

 

ベロースリット領の事件解決から王都ロシロまでの道中、バトルトレインの客車ではトライヤーズの3人が、デュランやフロー、そして草介から、現状を聞いていた。

 

「………つまり、ソウスケどのがこの惑星へ召喚と拙者たちのワープがほぼ同じタイミングで行われたのが原因で、拙者たちはシンナセンの各地にバラバラに飛ばされてしまったわけでござるな?」

「そういう事だ。」

「そうだったアルか………」

 

ハバキリが確認するように言うと、デュランが静かに頷いた。レイェンが呆れたように呟くと、後頭部で手を組んでいたレピオが草介に同情するように言った。

 

「ソウスケ、お前大変だったな……いきなりこの星に転移させられた挙句、勝手に勇者になって冒険を始めさせられる羽目になって………オレだったら、とっくに投げ出してるぜ?」

「はは……まあ、最初は戸惑ったけど……」

 

レピオの同情に、草介は苦笑で返した。すると、フローが立ち上がって頭を下げてきた。

 

「その、改めてごめんなさい。私たちの都合でソウスケやデュランたちに、すごい迷惑を……」

「いやいや、気にしないでくれ………」

 

謝るフローにデュランが慌てて手を振ると、ハバキリたちも口を開いた。

 

「まあ、そちらも悪気がなかった、というよりも、切羽詰まっての行動でござろう………」

「オレもあまり気にしてはないからさ。」

「アタシも、この星を色々見れて楽しかったアル♪」

 

3人のフォローに、フローは申し訳なさの混ざった複雑な笑みを浮かべてもう一度「ごめんなさい。」と小さく言った。

 

「………さて、もうすぐ王都だな。お前たち、ブレイベースに帰ったら、チャージとアバターのメンテナンスをしておけよ?」

「む、そうでござるな………」

「ハバキリは応急チャージだったし、レイェンも大分パワー使ってたもんなー」

 

デュランが3人に言うと、レピオが笑って言う。すると、レイェンが茶々を入れるように口を開いた。

 

「レピオこそ、無駄に突っ込み過ぎネ。そのアバターレンタルなのに、無茶な使い方しすぎアル。」

「ま、まーなー………」

 

誤魔化すように笑い頬をかきながら視線を逸らすレピオ。それを聞いた草介とフローは関心を持ったのか声を上げた。

 

「有機アバターって、レンタルとかあるんだ………?」

「まあ、言ってみれば服とか鎧に近いもんな、それって………」

「レピオは見ての通り、真っ先に敵に突っ込んで行く猪突猛進な性格でござる。ゆえに、拙者たちの中でも大小の負傷が多いのでござる。」

「ここに来る前の任務で、本来のアバターをオーバーホールが必要なレベルで壊しちゃったからなー………修復には、この任務が終わるまでかかるって言われたよ………」

 

レピオがため息交じりに言うと、草介とシャスティは少し呆れていた。すると、レイェンがレピオの右腕のトライバル風のタトゥーを指さした。

 

「だけど、レンタル管理用のバーコード丸出しの服装はどうかと思うアル。」

「別にいいだろ、それくらい………」

「それバーコードなの!?」

 

レイェンから語られた衝撃の事実に驚いて、思わず聞き返す草介。ハバキリたち3人は少し驚いてキョトンとした顔を草介に向けた。

 

「なんだ、知らなかったのか?分かりやすいと思ったのだが………」

「あ、ソウスケはチキュウ人だから、バーコードって分からなかったネ?」

「てっきりオシャレなタトゥーなのかと思ってた………カッコよすぎだろ、宇宙人のバーコード………」

 

ハバキリとレイェンは何を言っているのだろうか、と思ったが、ここで草介が異星人であることを思い出した。

 

((ばーこーど??))

 

その一方で、フローとシャスティは『バーコード』が何か分かっておらず首を傾げていた。惑星間の文化の違いなのだろうか?と思っていると、窓の外から王都ロシロの象徴であるモルデュア城が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点にしている別荘に帰還した一同は、ブレイベースでマシンメイルとGPデバイスのメンテナンスと修復作業が行われていた。

 

[デュランカー、損傷率49%、修復完了までの予測時間、11時間。]

「またボロボロでありますな………」

「今回ばかりは、単独で動いていたのも原因だからな………」

 

整備ドックで修復を受けるマシンメイルを見ながら、アルスとニールがため息をつく。戦力が揃っていなかったこともあって、デュランダーはこれまで大きいダメージを受けてばかりであった。

 

「まあ、今度は私やトライヤーズがいるから………いや、私たちと同じくらい、心強い味方がいるからな。」

「………そうでありますね。」

「少し失礼な言い方かもしれないが、ソウスケたちがあれほど心強かったなんて、思ってもいなかった………」

 

ホパクやベロースリットでの出来事を思い出しながら、デュランはしみじみと呟く。その時、メインルームのドアが開いて、シャワーを浴びてきたらしい草介とシャスティが入って来た。

 

「お、2人とも。フローは?」

「王様に今回の事を報告するって、城に帰ったよ。」

「そうか……」

 

草介の言葉にデュランがそう言うと、デュランが頷く。ニールはそれを聞くと手元のコンソールを操作してモニターを確認した。

 

「ハバキリたちのチャージとメンテナンスも、後30分くらいで終わる予定だな。」

「チャージとメンテが終わって少し休んだら、ギルドに行って冒険者登録するって約束してるから。」

「そうだな。あいつらも登録しておいた方が、色々と都合がいいからな。」

 

草介の説明を聞いたニールが頷くと、何かを思い出したのかデュランに声をかけた。

 

「私たちも、後でチャージとメンテナンスしておこうか。」

「そうだな。」

「私も、大分疲れたであります………」

 

ニールの提案にデュランとアルスは賛同して頷いた。

 

その後、1時間ほど休憩をしてから、草介たちは冒険者ギルドに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒険者ギルド『シルバー・ジョーンズ』の前でフローと合流をした草介たちは、スイングドアを押し開けてギルドに入っていった。

 

「あそこの受付で登録が出来るよ。」

「忝いでござる。」

「隊長たちとの合流とジップレートの回収を優先させてたから、冒険者登録って発想はなかったなー」

「登録してれば、隊長たちの情報は早くできたかもしれないアルネー」

 

フローに説明を受けてハバキリ達3人は口々に言う。

 

「あ、君たちはこっち文字を書けるのかな?」

「うむ。ここまで来るのに人から聞いたりして、自分の名前程度なら書けるでござる。」

「そうなのか………」

 

フローの質問にハバキリが答えるのを聞くと、草介は少し羨ましそうにしていた。後でフローと相談して、教えてもらおうかと思っていると、カウンターからマスターが話しかけていた。

 

「やあ姫様。色々と大変だったようですね?」

「マスター?………まあ、色々とね。」

 

何故か知っているかのように話すマスターに、フローは何故マスターが今回の事を知っているのか、と思った。しかしよく考えてみれば、王が『存在しない冒険者(ドン・エルティゴ・ティリメンヤー)』の冒険者タグを用意するのに、ギルドのマスターに密かに依頼したのだろうと気づいた。

フローが答えると、マスターは何か思うところがあるのか、ガッカリしたように深いため息をついた。

 

「しかしクシーフのやつ………圧政なんかに手を染めちまうなんてな………」

「?マスター、クシーフの事を知っているのか?」

 

マスターの呟きを聞いた草介が聞くと、フローとデュランも興味を抱いたのか耳を傾けた。マスターは「まあな……」、と言って話し始めた。

 

「20年前まで、この国では1年に1度格闘大会が行われていたんだが、クシーフはその大会で、5年連続ベスト4の常連になるほどの格闘家だったんだよ。」

「クシーフが?」

「想像できないな………あの太った体格を見てるし………」

 

マスターの話を聞いたデュランと草介が信じられないといった風に驚く。フローも同じく驚いていた。

 

「ああ。昔は『ロコロの動きすぎるデブ』って二つ名で、有名だったからな。」

「太ってはいたのか………」

 

補足情報に苦笑いを浮かべる草介。しかしニールは、クシーフが見せた身軽で素早い動きを思い出して、どこか納得したように頷いた。

 

「当時の奴は下級貴族の若造だったんだが、格闘技の師匠に出会ってから格闘家の道に目覚めたそうでな。それで大会に出場したんだが、毎回準優勝で同じ格闘家と当たっていたんだ。そいつに負け続けているうちに自信が折れちまったらしくてな………20年前の最後の大会の後に故郷に帰ったと聞いたが………いつの間にか、金に執着するようになっちまったんかなぁ………」

 

マスターは話し終えると、残念そうにため息をついた。

 

「マスター、詳しいんだな。」

「俺も、その大会の常連でな。」

「え?」

 

そう言ってマスターは、棚に飾られたいくつもの銀色のトロフィーを親指で指さした。

 

「毎年、クシーフを破ったその格闘家―――金色の仮面を被った『マスクド・ダンテ』に敗れちまってな。3回くらい良い所までは行ったんだがな………毎回毎回2位ばっかりで、金色で1位のダンテに対して、付いたあだ名が『銀賞の(シルバー・)ジョーンズ』ってワケ。」

「そうだったんだ………」

「あ、ギルドの名前って、マスターのあだ名からなのか………」

 

懐かしそうに話すマスターに対して、デュランたちは納得したように小さく頷いた。同時に、フローがクシーフに伝えた王の伝言の意味にも合点がいった。

 

(父上は、過去のクシーフを知っていたから、あのような言葉を………)

 

フローがそう思っていると、受付の方から声が聞こえた。

 

「あの、ハバキリさんたち……この申込書なんですけど………」

「む?何か不備でも?」

 

受付嬢のケティが困ったような顔でカウンター越しにハバキリ、レピオ、レイェンに申込書を見せた。

 

「いえ、不備はないんですけど……その……この『年齢』の欄なんですけど……」

「……?」

 

ケティが言いにくそうにしているのを見て、ハバキリたちは首を傾げた。そして、少し間をおいてからケティは口を開いた。

 

「あの、年齢が1万7百歳とか9千3百歳って………なんの冗談ですか?」

 

ケティが申込書を見せながら聞くと、ハバキリたちはキョトンとした表情になった。後ろで聞いていた草介とフローもキョトンとしていたが、デュランとニールは慌てて3人に耳打ちをした。

 

「3人とも!この惑星(ほし)の人達に私たちの実年齢言ったら、色々と面倒になるだろう!」

「え?あ、そうか………!」

「迂闊でござった………」

「あいや~………」

 

デュランに指摘されて、3人はハッとした顔になった。少し慌てたが、3人はケティに向き直って答えた。

 

「あー、これはな……少し間違えちまったよ!」

「いや、間違いの範疇を超えてると思うんですけど!?」

「じょ、冗談が過ぎたでござる………」

「ゴメンねー!」

 

3人は引きつった笑みを浮かべながらケティに謝ると、申込書の年齢欄を訂正した。草介とフローは不思議そうに首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ハバキリたちの登録を済ませ別荘に戻った草介とフローは、デュランたちに質問をしていた。

 

「―――つまり、デュランたちが前に言っていた年齢は嘘、というか、この星に合わせたものだったんだな?」

「まあね………」

 

リビングで草介とフロー、シャスティがソファーに座り、ローテーブルをはさんでデュランたち銀河連邦警察組が座っていた。

 

「まあ、我々フューゾニアは宇宙全体を見ても『超長寿種族』な方でありますからね………平均寿命は数十万年とも言われてるし………」

「もしかして、アルスも?」

 

フローが聞くと、アルスは少し恥ずかしそうにした。

 

「こ、これでも7千3百歳の「うら若き乙女」でありますよ………」

「俺たちの感覚だと1ミリもうら若くないんだが?」

「お師匠さまでも730歳だのに、その10倍………すっげぇ長生きなんだなぁ………」

「エルフでも長くて1500歳って言うのに、それよりも長寿だなんて………想像もつかないよ………」

「それも十分スゴイけどな………」

 

アルスの答えに草介が呆れた顔で言うと、シャスティとフローも苦笑いを浮かべて言った。長寿で有名なエルフの寿命すら霞んでしまう異星人の寿命の長さに、3人は改めて驚いていた。

 

「改めて、私の年齢は1万3千歳。」

「私は2万5千歳。」

「拙者は1万7百歳。」

「オレ、9千3百歳な。」

「1万1千歳アル♪」

 

デュラン、ニール、ハバキリ、レピオ、レイェンの順で、実年齢を公表する。草介たちはそれを聞いて、宇宙人たちの『常識』に理解が追いつかずポカンと呆然とした顔になる。

 

「宇宙って、広いんだね………」

「んだな………」

「知らないことばかりだな………」

 

宇宙猫ならぬ宇宙勇者と宇宙異世界人と化した3人を見て、フューゾニアたち6人は少し困った顔になっていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『聖剣の鞘』を?」

「ああ。」

 

翌日、別荘の庭でフローとの特訓を終えた草介がベンチに座ってタオルで頭の汗を拭いていると、薪を切って来たらしいトライヤーズたちがやってきて、話をしてきた。

そこでふと、レピオがフローに『聖剣の鞘』が見たいと話を持ち掛けてきたのだ。

 

「ほら、ソウスケをここに喚んだのって、その『聖剣の鞘』がきっかけっていうか、媒介にされたんだよな?その鞘を調べたら、何か分かるんじゃないかって思ってさ。」

「なるほどね。」

 

レピオの説明に、フローは納得して頷く。少し考えてから、フローは口を開いた。

 

「分かった。だけど、『聖剣の鞘』は我が国の国宝だからね。父上の許可が必要だから、少し時間がかかるかも。」

「ああ、それで構わないよ。」

 

フローが言うと、一同は頷いて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、国王の許可を貰ったとフローから連絡を受けた草介たちは、モルデュア城にまで来ていた。

 

「王様、今回は許可をいただきありがとうございます。」

「いや、国宝とはいえ、勇者の頼みであるしな。」

 

城の廊下を歩きながら、デュランと王が話をしていた。ふと、フローが草介に聞いてきた。

 

「そういえば、アルスは?」

「ああ、本部への報告書まとめるってさ。」

「そうか。」

 

フローが頷いたちょうどその時、一同は大きな金属製の扉の前に着いた。黒光りする両開きの扉は鍵穴が3つもあり、見張りの兵が4人もついていた。

 

「ここがこの城の宝物庫の扉だ。『聖剣の鞘』はこの奥に納められておる。」

 

国王はそう言うと、兵士から鍵の束を受け取り、鍵穴に順番に差して回した。すると、ガチャン、という鍵の開く音の後に、扉が軋むような音と共に地響きを立てて開いた。

 

「いちいち音が大きいような………」

「万が一、賊が侵入した際の警報を兼ねてあえて大きな音がするようにしているのじゃ。開くと城中に分かる様にな。」

「なるほど、アナログだが効果的でござるな。」

 

国王の説明にハバキリが感心する。草介は「日本の城の『うぐいす張り』のようなものか……」と思った。

扉の奥は地下に続く階段に繋がっており、王が先導して降りていく。1歩ずつ降りていくのと同時に、暗い廊下に明かりが順番について、暗い階段を照らしていった。

そういえば、と、階段を下りながら草介が口を開いた。

 

「俺、あの時は急な事で混乱してて、鞘を見る余裕なかったな………」

「私もだな。あの時は、状況の把握を優先させていたからな。」

 

草介の言葉にデュランも頷く。しばらく階段を降りていると、金色の大きな扉のある階にたどり着いた。扉の前には3×3に並んだ正方形の赤い石畳の床があった。

 

「ここが宝物庫だ。この扉を含めた宝物庫は、あらゆる打撃も魔法も受け付けない。ゆえに、鍵と特定の方法をしなければ開くことはできない。」

 

そこで待っていてくれ、と王は言うと、真鍮製と思われる大きな鍵を扉に刺して赤い床の中央に立つ。すると、突然扉から妙に軽快な音楽が流れてきたかと思うと、王はその音楽に合わせて石畳をリズミカルに踏み始めた!

 

「ほっ!はっ!ふっ!それ!!」

「え?えええ!?」

 

草介たちが困惑する中、王は足を右へ左へ、前に右斜め後ろにと踊る様に石畳を踏み続ける。いつの間にかミラーボールまで下りてきて、王の舞いを盛り上げ始めた。

 

「そいやああッ!!」

 

最後の叫びと同時に音楽が終わり、フィニッシュとばかりに王が天を指さす決めポーズをとると、扉はファンファーレを鳴らして左右に開き始めた。草介たちが唖然としていると、王が爽やかな汗をかいた顔で振り返ってきた。

 

「さあ、行くぞ皆の衆。」

「いやどんな開錠システムだ!?」

「何でダンスするタイプのリズムゲームなんだよ!?」

 

良い笑顔で話しかけてくる王に対して、レピオと草介がツッコミを入れる。娘であるフローも苦笑していると、王は兵士から受け取ったタオルで汗を拭きながら説明をしてきた。

 

「いや、さっきと同様に音楽が流れれば兵が気づくし、それに曲は81曲あってそれぞれ踏む順番を覚えないといけない上、どの曲が流れるかはランダムだから、防犯にはもってこいなんだぞ?」

「無駄に曲多いアルな!?」

「開ける度に毎回これをやる必要があるのか………」

 

レイェンが驚きの声を上げ、デュランは呆れて呟いた。

 

「しかも、リズムに合っていなかったり、一度でも踏み間違えると別の曲で最初からやり直しだし、結構体力使うから宝を持って帰る気力がなくなるくらい疲れる優れた機能なのだぞ?」

「意外と理にかなっているでござるな………」

「ノーツもないから、難易度は鬼高いだろうしな………」

「結構考えられて作られてんだな、これ………」

「ついでに、ここの鍵を開けるだけで運動不足が解消されるおまけつきじゃ!わしは週に3回はここに来とるぞ!カッカッカッ!!」

「国の宝物庫をスポーツジム代わりにしていいのかよ………」

「どうりでキレのいい踊りだと思ったら………」

 

高笑いする王の説明に、一同は呆れと納得の入り混じった感情で冷や汗をかいていた。製作者に一度会ってツッコミを入れたいと思いつつも、いよいよ宝物庫に足を踏み入れる時が来た。

 

宝物庫の中は、先ほどまでの妙な賑やかさとは打って変わって、静寂に包まれていた。部屋の左右の壁際には棚が並べられ、金や宝石で作られた首飾りや腕輪、杖に剣、中には用途の分からないが鳥のような彫像も並び、歴代の王のものと思わしき肖像画や胸像等も飾られていた。

 

「ふむ、ブレイバードの発進で2回ほど大きく揺れたが、中は大丈夫そうだな。」

 

王が周囲の財宝等を見て呟く。それを聞いてデュランは少し申し訳ない顔になっていると、草介は宝物庫の天井に設置されたものを見た。逆さになったお椀のようなものに金色の装飾がされており、赤い結晶が中央に埋め込まれた装置のようなものであった。

 

「あれが宝物庫の守りとなっている結界装置だ。定期的に魔力を込める事で、ここの守りを行っている。」

「なるほど………」

 

王の説明を聞いた草介が頷く。そして、と王が宝物庫の最奥に指をさす。

 

「あれこそがロコロ王国の国宝、『聖剣の鞘』だ。」

 

そこには、台座に収められた『聖剣の鞘』が安置されていた。鞘の長さは目算で130cm、幅は30cm。素材は白い金属でできており、各部に金色の装飾が施され、中央に近い位置には鷲の頭のレリーフが彫られていた。

 

「これが『聖剣の鞘』か……」

「何人もの魔導士や武器職人が調べたが、使用されている金属は未知のもので、それでいて普通の鞘よりも少し重い程度の軽さという、謎が多い代物なのだ。」

 

草介は鞘の姿を見て呟くと、王が説明をした。デュランやレピオも、その美しさとも神々しさとも取れる存在感に声を失っていた。

 

「およそ1000年以上昔、悪鬼が世界に蔓延りし時、聖剣を携えし『剣聖』が現れ、これらを討ち滅ぼした。世界に平和を齎した『剣聖』は、『世界に邪悪な魔の手が迫りし時、聖剣に選ばれし勇者が光と共に現れ、それを斬り伏せん。』と言い残し、『聖剣の鞘』を残してどこかに消え去った―――この国に伝わる、『聖剣の勇者伝説』だよ。」

 

聖剣に見惚れる草介たちに、フローが説明をする。デュランやハバキリがそれを聞いて頷いていると、フローは鞘の上部、日本刀の鞘で言えば『鯉口』のあたりの装飾にある、丸いへこみを指さした。

 

「あのへこみに『聖剣の勇者』が聖なる石をはめ込むと、聖剣の封印された地がへの道が開くと言い伝えられている。」

「なるほどな。だけど………」

 

フローの説明を聞いた草介が、あることに気が付いた。

 

「この鞘、デカくないか?大きさ的に両手で持つ大剣になると思うんだけど………」

「確かに………」

 

草介の指摘に、デュランも「なるほどな。」と頷いた。草介の指摘の通り、『聖剣の鞘』のサイズ的には地球の武器であるツヴァイハンダーのような巨大な両手剣用のように思えた。

 

「その疑問に関しても長年調査を重ねているが、詳しくは分からなくてな。流石に分解するわけにもいかないしのぉ………」

 

国王の答えに草介は頷いた。デュランも顎に手を当てて考えていると、レイェンがポケットからGPデバイスを取り出しながら口を開いた。

 

「それなら、GPデバイスで内部スキャンしたらどうアルか?」

「なるほど、流石は宇宙の技術だな。」

 

レイェンの提案に草介が頷き、鞘をGPデバイスのカメラでスキャンした。

 

「……あれ?」

「どうした?」

 

しかし、スキャンをしたレイェンが、少し驚いたような声を上げた。

 

「鞘の内部がスキャンできないアル………」

「なに?どういうことだ?」

「何というか、スキャンの電磁波を弾かれてるネ……」

 

デュランが聞くと、レイェンは首を傾げながら答えた。どういうことかと思ったが、デバイスの個体差かと思いデュランやニールたち他のメンバーもGPデバイスを取り出してスキャンを試みるが………

 

「………ダメか。」

「こっちもだ……」

「拙者もでござる……」

「うーむ………宇宙の技術をもってしても、解析不能とはな……」

「宇宙規模でも未知の金属でできているのか………」

 

デュラン、ニール、ハバキリがスキャンをしようとすると、電磁波が弾かれて内部のスキャンができないようであった。その様子を見た王とフローは少し考え込んでいた。

 

「ブレイベースの装置でなら分かるかもしれないが、流石に国宝を持ち出す訳にはいかないからな………」

「結局、分からず仕舞いか……」

 

草介が残念そうに言って肩を落とす。デュランも残念そうにしていた。

 

「今日はここまでのようだな。」

「そうだな………」

 

デュランの言葉に草介が頷き、一同は宝物庫の出入り口に向かう。

 

「………?」

 

ふと、草介は誰かに見られているような気がして、足を止めて振り返る。しかし後ろには『聖剣の鞘』しかない。

 

「ソウスケ、行くよ?」

「あ、うん………」

 

フローに呼ばれて、草介は怪訝な顔になりながらも宝物庫を後にした。扉が閉まるのを、安置された『聖剣の鞘』はただ静かに見送っていた。

 

 

 

 

 

宝物庫の奥で、聖剣の鞘は静かに眠る。そして、目覚めの時はすぐそこまで来ていた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロコロ王国の西、海に面した漁村『メンパロン』。

数週間前に魔王軍に占領されたと聞きつけた王国の騎士団の若手の小隊は、最後のゴブリンを斬り捨てて、村を奪還した。

 

「おお……やったぞ!」

「ロンの奴の隊が、またやったぞ!」

 

村人の避難と護衛をしていた騎士が、若手小隊がゴブリンを掃討したのを見て歓声を上げた。とどめを差した若い騎士は血振るいをして剣を鞘に納めた。

 

「さすがだな、ロン!」

「いつもながら見事だ!」

「いやいや、みんなの助けあっての勝利さ!」

 

ロンと呼ばれた金髪の騎士は、爽やかな笑みで同じチームの騎士2人の称賛に答えた。すると、弓矢を構えていた少女が、眼鏡をかけ直しながら呆れたようにロンに話しかけた。

 

「ロン、調子に乗らない。」

「はいはい。ったく、フェイはいちいち細かいんだから……」

 

淡々と注意する少女・フェイに、ロンは肩をすくめて答えた。一同は村民にお礼を言われながら、村の中央にいた小隊長の元に合流した。

 

「お疲れ様だ、ロン。流石は若手のホープだな。」

「いえ、自分などまだまだですよ。」

 

小隊長に言われて、ロンは謙遜して答えた。小隊長はロンたちに後は自分たちに任せて休むように言って、他の騎士たちに指示を出した。

 

「お前たちは先に休んでいろ。後は任せてくれ。」

「はい、ありがとうございます。」

 

ロンたちは小隊長に敬礼をして、村を後にしようとした。ふと、仲間の1人の大柄な筋肉質の男・ドラムがロンに話しかけてきた。

 

「そういえばロン、聞いたか?例の『聖剣の勇者』の話。」

「ああ、国王が勇者の召喚を行って、2人召喚されたって話か?」

「ああ。」

 

ドラムの言葉に続いて、フェイが無表情のまま口を開いた。

 

「『勇者』は本来1人。言い方が悪いけど、どちらかが偽者。」

「攫われたフローレント様を救い出してくれたという話ではあるが………」

「ふーむ………」

 

2人の話を聞いて、ロンは少し考える素振りを見せた。少し考えると、ロンは3人に振り返って口を開いた。

 

「その2人の勇者は今、王都にいるのか?」

「そのはずだが…?」

「そうか………」

 

腰まである銀髪を中ほどで縛ってた男・カールが答えると、ロンはニヤリと笑みを浮かべた。

 

「それならば、確かめてやろうじゃないか。」

「確かめるって、何を?」

 

ロンの言葉にフェイが聞くと、ロンは笑いながら答えた。

 

「決まってるだろ?『勇者』の真贋をだよ。」

 

 

 

 

 

【つづく】




フューゾニアは超長寿設定。この作品の「異文化交流」を書くのって結構楽しいです。個人的にレンタル用有機アバターのバーコードはお気に入り。

踊る王さまは、ファンタジー世界の宝物庫のセキュリティを考えた結果このような形になりました。利点は意外とあるとおもいます。

『聖剣の鞘』登場。今作のキーアイテムの1つですが、今回は顔出し程度。

ラストは新キャラ登場。彼らの活躍にご期待ください。
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