異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第14話 シンナセンという世界

デュアルブレイバー 第14話

シンナセンという世界

 

 

 

 

 

シンナセンの衛星軌道上に浮かぶ『マッドアドワーズ』

巨大な窓の傍で、眼下の惑星を見下ろすように、全高35mのデスダイトは静かに立っていた。

 

『―――』

 

何も喋らず、微動だにしないまま、ただ静かに惑星シンナセンを見つめるように佇むデスダイト。すると、背後の自動ドアが開き、ティラノが入室してきた。

 

「失礼します、デスダイト様。」

『―――ああ、ティラノか。』

 

ティラノが声をかけると、デスダイトは振り返って答えた。ティラノはお辞儀をすると、口を開いた。

 

「イーグルからの報告です。ベロースリット領での作戦は失敗、例のブレイバー『デュラン』の仲間と合流されてしまったとのことです。」

『なるほどね。まあ、合流される前に叩く作戦の前に合流されたら、元も子もないからね………』

 

ティラノが空中に投影した画像を見たデスダイトはそう言うと、ため息を一つついた。画像では、ベロースリット領でゾロゾロイドやキャノンシャと戦うデュランダー隊のマシンメイルの画像が表示されていた。

 

『イーグルはまた、独断で撤退したみたいだけど、まあ、合流してしまったものは仕方がないね。』

「申し訳ありません。イーグルの独断を止められませんでした。」

『いや、いいよ。彼が勝手に動くのは、いつものことだからね。こだわりが強いというか、何というか……む?』

 

デスダイトがそう言うと、ティラノは恐縮した様子を見せた。ふと、デスダイトは画像の1つが目に入った。そこには、トータスドリルから降りた日焼けした少女の姿であった。

 

『この少女、どこかで………?』

 

その少女・レピオの顔を見て、デスダイトは小首をかしげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝物庫の見学から2日後。草介とデュランたちデュランダー隊は、再びモルデュア城に来ていた。

 

「今回はありがとうございます、レヴァンティさん。」

「いや、構わぬ。」

 

青や緑の薬品や材料と思われる乾燥した植物や切り落とされた根が机に並べられ、分厚い本がいくつも収められた本棚、壁には魔法陣の描かれた大きなタペストリーがかけられているモルデュア城のとある一室。レヴァンティにこの部屋へ招かれると、デュランはレヴァンティに挨拶をした。

 

「ここは、わしが使わせてもらっている研究室じゃ。普段わしはここで、この国に伝わっている魔法や歴史、新しい魔法の研究や、シャスティへの指導をしておる。」

 

草介やレピオが興味深そうに部屋の中を見渡していると、レヴァンティが簡単に説明をした。

 

「さて、色々とバタバタしていたから後回しになっていたが、デュランの仲間が揃った良いタイミングではあるし、此度はおぬしらが『異世界』、或いは『別の惑星』と呼ぶこの世界『シンナセン』について、このロコロ王国王宮魔導師レヴァンティが、色々と教えようと思う。」

『よろしくお願いします。』

 

部屋に設けられた椅子に草介たちが座ると、助手役のシャスティと一緒に黒板の前に立ったレヴァンティが指示棒を片手に口を開く。草介たちが一斉に頭を下げると、レヴァンティは頷いた。

 

「今回の授業内容としては『シンナセンについて』と『魔法』、それとこの世界の広域言語である『オーヒン語』について、じゃな。まずは、『シンナセンについて』じゃ。」

 

レヴァンティがそう言うと、黒板に大きな紙を貼った。それは、中央の大きな大陸の東西に1つずつ、そして北に2つの大陸のあるシンナセンの世界地図であり、国境を現す線で区切られ、各国の国章と国名と思わしきオーヒン文字が描かれていた。

 

「シンナセンには5つの大陸と7つの国がある。この真ん中にある大陸が、ロコロ王国とサンルスター魔法国のある『センオウ大陸』じゃ。」

 

レヴァンティが中央の大陸を指示棒で指して説明をした。センオウ大陸の北側には太陽と剣を背にしたライオンを国章とするロコロ王国、南側にはサンルスター魔法国の六角形の星の魔法陣と下弦の月の国章が描かれている。

 

「そして、ロコロ王国から見て西にあるサイスト大陸を統一しているのが、軍事国家である『カマリサ帝国』じゃ。」

 

そう言って西側にある縦長のサイスト大陸に描かれた、3つ並んだ稲妻と菱形を組み合わせた国章を指した。

 

「カマリサ帝国は軍事国家ゆえに、シンナセンのどの国よりも技術力が高く、大砲や戦車、軍艦を多く持っておる。それらをもってしても、機怪魔獣には敵わなかったがのう………あの国の連中は傲慢だからわし嫌いじゃったけど、ちょっぴり気の毒じゃったな……」

 

レヴァンティが少し残念そうに言うと、今度は東側の大陸の北の先端にある六角形のナットと舵輪の国章のある国を指した。

 

「で、そのカマリサ帝国の属国で工業が盛んな『クリファート公国』があるのが、東側にあるトウスト大陸じゃ。元々この大陸はエルフ発祥の地である森や自然が豊かな地であったのじゃが、わしが生まれる前に起きた『北森大戦』のせいでエルフが大陸北部を追われてしまってのお………鉄鉱石とか色々取れるらしくてな………」

 

少しだけ忌々しそうにレヴァンティが言うと、今度は西側の大陸の南側にある大樹と遺跡の国章を指した。

 

「それでも、トウスト大陸の北の端のみで済んだため、残りは人間の手が入りつつも国土の8割以上を手つかずの自然が占めている『マカグレロー共和国』が自然を守りつつエルフと共存しておる。また、国内にはエルフが太古(いにしえ)から守る遺跡群がある『イシュマーウ エルフ自治区』もある。」

 

マカグレロー共和国の東の端にある自治区を指して説明をする。そして、とレヴァンティは、北にある大きな大陸の楯とドラゴンの国章を指した。

 

「北の最果てにある魔族の国である『レイヴン魔帝国』のあるティダマ大陸と近い、ホクース大陸を収めていた『リグーン王国』………半年前の魔王軍進撃の数日前に幼い女王が即位したばかりとは言え、機怪魔獣を導入した魔王軍によって占領されてしまい、国民の一部はこのロコロ王国や、同盟国のカマリサ帝国に亡命したが、それでも大半の国民は国内で魔王軍の作った収容施設で強制労働をさせられていると聞いている。おまけに、女王とその側近数名は、未だに行方不明と聞いておる………」

 

レヴァンティが少し悲し気に目を伏せて言った。リグーン王国の更に北にあるティダマ大陸には、『レイヴン魔帝国』の国章である翼を広げた三本足の鴉と二本の角の紋章が描かれていた。

 

「我々がこの星に来る前に、国が1つ占領されていたとは………!」

「リグーン王国と同盟を結んでいたカマリサ帝国の在中軍も奮闘したそうだが、それでも侵略を許してしまった………今、帝国内では機怪魔獣の対抗兵器を開発中と噂されているがのう………」

 

デュランが悔し気に言うと、レヴァンティも悲し気に頷いた。草介たちも俯いて暗い空気が部屋に流れるのを感じ取り、レヴァンティは咳払いをした。

 

「まあ、気を取り直して………次は、『魔法』についてじゃな。その前に、まずは『魔素(マナ)』について説明が必要じゃな。」

 

レヴァンティがそう言うと、黒板に貼られていた地図をしまうと、今度は六角の星の魔法陣の描かれた紙を貼り、チョークを手にすると人の形を描いた。

 

「この世界には、『魔素(マナ)』と呼ばれる力が満ちておる。マナとは大地から生まれる『命の源』とも呼ばれており、生きとし生けるものは、息を吸うたびマナを取り込み、言の葉と共にそれを吐き出す―――その共鳴が“魔法”を生むというのが、“魔法”の仕組みというわけじゃ。『魔力』とは、『体内に蓄積できるマナの量』を指す。杖などの媒介を用いれば、もっと確実に発動できるぞ。」

「なるほど………」

 

レヴァンティは色の違うチョークに持ち替えて、マナが体内に溜まる様子を描きながら説明をする。

 

「おぬしらがシンナセンに来てから1週間以上たっておる。すでに体内にマナが蓄積されている頃合いじゃ。ただ、単に言葉を出せばいいという訳ではなくての。魔法の発動に必要な呪文は、ここ千年程で世界に広まった『オーヒン語』ではなく、元々古くから存在していた『古代エルフ語』が必要となるのじゃ。それゆえに、魔法使いを目指すものは古代エルフ語が必修科目となっておる。手本を見せよう。」

 

そう言ってシャスティに目配せをすると、シャスティは杖を構えた。

 

「今から見せるのは、魔法使いが一番最初に学ぶ、初心者向けの初級呪文じゃ。」

「ん、闇夜を照らす(ンチモニンラテラカイスチトナ)光よ(クニノチスニンラ)灯れ(カラモラスイ)!“トーチ・ライト”!!」

 

シャスティが呪文を唱えると、手にした杖の先端に光が灯り、辺りを明るく照らした!

 

「うおっ眩しっ」

「明かりを灯す魔法か………」

「まあ、ランプ代わりになる程度の魔法じゃ。だが、この程度の魔法も使えなければ、魔法使いにはなれないと言われるほどの基礎的な魔法じゃ。魔力をこめる量を調節すれば、光を強弱できるぞ。」

 

なるほど、と草介が頷くと、シャスティは光を消して杖を下げた。レヴァンティは傍に置いてあった30cm程の長さの杖がささった小さな樽を持って、1人に1本ずつ渡し始めた。

 

「さて、さっそく今の魔法を使ってみてもらおうか。」

「おお、いよいよ実践か………」

「呪文が結構難しいかったけど、大丈夫かな………?」

 

杖を受け取り握り心地を確かめながら少し不安そうにするデュラン。それを聞いたレヴァンティは、ふっと笑って答えた。

 

「まあ、始めは誰もそう言うものじゃ。最初はゆっくり唱えればよいからな。」

「分かりました。」

「では、まずは呪文の発音から始めようかの。わしの後に続いて唱えてみよ。」

「はい!」

 

レヴァンティがそう言うと、草介たちは杖を構えて返事をした。

 

「では行くぞ。ンチモニンラテラカイスチトナクニノチスニンラ。」

「んちもにんらてらかいすちとなく………」

「んちもにんらてら………やっぱ言いづらいな………」

「『ン』から始まっている時点でな………」

「アタシ、口が回る方アルけど、これは言いづらいネ………」

「よく見る光景じゃな………」

 

レヴァンティに続いて呪文を唱えようとする草介たちであったが、なかなか言いづらそうにしている。レヴァンティはその様子を見て苦笑いをしていた。

 

「な、何回か練習すれば、直ぐに言えるようになるだよ。」

「そうだよな……よし、頑張るか!」

 

シャスティの励ましもあって、草介は奮起をして発音練習を再開させた。

 

「ンチモニンラテラカイスチトナクニノチスニンラ、カラモラスイ………」

「ンチモニンラテラカイスチトナクニノチスニンラ、カラモラスイ………」

「そうそう、大分言えるようになって来たのう。」

 

しばらく練習しているうちに、草介たちはだいぶ発音が出来るようになってきた。レヴァンティはそれを見ると、そろそろ本番をしてみようと言い出した。

 

「では、本番じゃ。皆、杖を構えよ。」

「はい!」

「行くぞ、闇夜を照らす(ンチモニンラテラカイスチトナ)光よ(クニノチスニンラ)灯れ(カラモラスイ)!」

「「「「「闇夜を照らす(ンチモニンラテラカイスチトナ)光よ(クニノチスニンラ)灯れ(カラモラスイ)!」」」」」

「「「「「「”トーチ・ライト”」」」」」」

 

一斉に呪文を唱えた瞬間、全員の杖の先端に光が灯り、辺りを明るく照らした!

 

「おお!」

「やった!」

「意外と出来るものでござるな………」

「かかか♪やはり初めて魔法が成功した者の喜ぶ顔は良いのぉ♪」

 

杖の先端に光が灯ったのを見て、魔法が成功したと確信し、喜びではしゃぎだす草介たち。レヴァンティはその光景を見て、思わず笑みを浮かべた。

 

「さて、他にも初心者向けの魔法はいくつかあるが……今日のところは“トーチ・ライト”のみにしておこうか。」

「そうですね。一度にいくつも学ぶと、少し混乱しそうだ………」

 

レヴァンティの提案に、ニールも頷いて同意する。草介たちも、レヴァンティの意見に賛同した。

 

「さて、次はオーヒン語についてじゃが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん………」

 

正午となり、レヴァンティが昼になったからと今日の授業を終えて、昼食のために食堂に来た草介たち。サンドイッチと紅茶を受け取り席に座ると、草介は小首を傾げていた。

 

「どうかしたでありますか、ソウスケくん?」

「いや、さっき習ったオーヒン語の事で、ちょっとな………」

 

アルスが尋ねると、草介はサンドイッチを頬張りながら答えた。

 

「ソウスケどのも、違和感が?」

「ハバキリもか?」

「うむ。少しな。」

「?どうかしたのか?」

 

ハバキリも何か気づいていたのか、草介に同意する。デュランも気になったのか、2人に尋ねた。

 

「いや、このオーヒン語の文字なんだけどさ………」

 

草介はそういいながら、先ほどレヴァンティから配られたオーヒン文字の一覧表をテーブルに広げた。表には、一見すると何かの記号にしか見えない文字が、一覧表の形式で書かれていた。

 

「このオーヒン文字って、形こそ違うけど俺のいた日本の日本語と発音が似ているんだよ………」

「うむ、拙者の師匠も地球の日本に暮らしていた時期があった故、拙者も日本語には精通しているから分かる。この文字の読みは、確かに日本語の五十音にそっくりでござる。」

「何だと?」

 

草介がそう言うと、ハバキリも頷いた。それを聞いたデュランたちは静かに驚いていると、草介は続けた。

 

「よくよく考えてみれば、異世界なのに俺の日本語とオーヒン語が普通に通じてることが、おかしかったんだよな………今まで気になる暇もなかったけど……」

「確かに、言われてみればそうだな………」

「オレたち銀河連邦警察は、複数惑星の言語を一通り習得はしているから、特に気にしてはいなかったな………」

 

草介の言葉にデュランとレピオも頷いた。ニールも考え込むように手をやる。

 

「妙だな………単なる偶然にしては、あまりにも出来過ぎていますな……」

「気になるな………とはいえ、この表だけ見ても、詳しく調べることは出来なさそうだな………」

 

アルスとデュランも考えを巡らせるが、材料が少なく結論は出そうになかった。

 

「それなら、レヴァンティさんに聞いてみるか?」

「………それが確実かもな。言語の歴史書とかあれば、何か分かるかもしれないし。」

 

草介の案に、デュランが同意した。

 

「そうと決まれば、さっさと昼飯食べて、早速聞きに行こうぜ!」

「ああ、そうだな。」

 

レピオがそう言うと、昼食を食べ終えた後レヴァンティの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なるほど、『オーヒン語』と、ソウスケの故郷の『ニホン語』とやらが、のう………」

 

昼食後、さっそくレヴァンティの元に戻った一同。紅茶を飲みながら話を聞いたレヴァンティは、カップを置いて少し考え込んだ。

 

「それで、何か知りませんか?」

「うーむ……さっきも言ったが、『オーヒン語』はここ1000年程で広まった言語じゃが、発祥はかつて存在した『オーヒンの街』という程度しか、今は分からんのう………」

「そうですか……」

 

レヴァンティは草介の問いに、申し訳なさそうに首を振った。次いで、ニールが問いかけた。

 

「では、何か文献はないだろうか?」

「うーむ、今この城にある本では、あまり詳しいものはなかったと思うな………どこか良い場所は………?」

 

レヴァンティが考えていると、何か思い出したのか「あ。」と声を上げた。

 

「一応、『文献のある場所』に心当たりはあるな………」

「え、どこっすか?」

 

草介が聞くと、レヴァンティは杖を手に取って壁にかけられた地図を指した。そこは、サンルスター魔法国の南の沖に浮かんだ島であった。

 

「『カシンバルト魔法学園都市』。サンルスター沖に浮かぶマスポー島に作られた魔法学園を中心に作られた都市じゃ。そこにある『アメモウ図書館』は、魔導書や伝記、歴史書等を多く蔵書している。もしかしたら、関係する書籍もあるだろう。」

「なるほど!」

「………じゃがのう………」

 

レヴァンティの説明に草介やデュランは納得した。しかし、告げたレヴァンティは少し気まずいというか、嫌そうな顔をしていた。

 

「あそこの図書館を利用するには、学園関係者の紹介が必要でのう………わしは数年前までそこで教鞭をとっておったのじゃが、色々と揉めたりして辞めてしまったから、わしも直接行きづらいわ………」

「そ、そんなことが………」

 

頬を掻きながら気まずそうに言うレヴァンティ。草介たちは気づいていなかったが、シャスティも顔を曇らせて俯いていた。

 

「………まあ、学園にはわしの知り合いも何人かいるからのう。一応、関連した本を何冊か持ち出せないか、手紙を出してみよう。」

「お願いします………」

 

苦笑いしつつ答えるレヴァンティに、草介は頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、「オーヒン語」に関してははレヴァンティさんにこの後の事は任せるとして………俺たちはどうする?」

「そうだな………」

 

部屋を後にして廊下を歩きながら、草介がデュランたちに聞いた。

 

「とりあえず、冒険者ギルドで依頼を受けながら魔法と文字を学んでいく、といった感じかな?」

「やっぱそうなるか………」

「今のところ、明かりを点ける魔法くらいしか使えないでありますからね………」

 

デュランがそう言うと、草介とアルスが頷いた。

 

「アタシらは魔法無くてもそこまで困らないケド、ソウスケとかは覚えておいた方が良さそうアル。」

「自衛の意味もあるが、拙者たちの中で遠距離攻撃が出来るのは、ニールどののみでござるしな………」

「確かにな………」

 

レイェンとハバキリがそう言うと、レピオも頷いた。草介は確かに、と頷いた。

 

「これからは、日課の剣の修行に加えて、魔法の練習もしないとな………」

「覚える事いっぱいだな………」

 

少しうんざりした表情の草介に、デュランは苦笑いをした。ふと、城の正門付近まで歩くと、外が随分と賑やかであることに気が付いた。

 

「何だ?」

「随分と賑やかだな?」

 

気になった草介たちが正門から外を覗くと、道の左右に人だかりができているのが見えた。

 

「あの、何かあったのですか?」

 

気になったデュランが近くにいた兵士に聞いてみると、兵士は振り返って答えた。

 

「ああ。メンパロンって漁村を占領していた魔王軍を討伐した、騎士団たちが凱旋してくるんだよ。」

「騎士団が?」

「今回向かったのは若手の中でも一番の有望株って連中だったからな。みんな大盛り上がりってわけさ。」

「へぇ………」

 

兵士の話を聞いた草介が相槌を打つ。ちょうどその時、馬に乗った騎士の集団が正門から入ってくるのが見えて、周囲が歓声に包まれた。

 

「おお、噂をすれば!」

 

草介たちが目線を向けると、小隊長らしき口ひげを生やした男性を先頭にした騎士団の小隊が、歓声の中を進んでくるのが見えた。すると、小隊長の後ろから4人の若者の姿が見えると、歓声は更に大きくなった。

 

「ほら、あれが今言った有望株の4人組パーティさ!」

「あれがそうか………」

 

兵士が指さした先の4人組は、草介と歳も変わらないほどであった。

 

「ロンさまーーー!」「カールさーん!」

 

中心人物と思わしき切りそろえた金髪と青い目を持ち、青い鎧を身に着けた青年は、黄色い声に対してキザなほど爽やかな笑顔で手を振り返していた。

 

「真ん中の彼が『ロナルド・ゴミニアト』、通称『ロン』!下級貴族の出身ながら入団2年目で剣術訓練において優れた成績を残し、魔法も中級まで扱え、将来有望と目されている!ルックスもイケメンだ。」

「何かこの人、急に解説始めた!?ありがたいけど………」

 

突然実況風に解説し始めた兵士に困惑してツッコミを入れるレピオ。

ロナルドと紹介された騎士の右隣には、腰まである銀髪を中ほどで縛った、ロナルドよりも少し背が低く銀色の軽装タイプの鎧を着けた青年が、不敵な笑みで手を振っていた。

 

「隣の彼がカール・テイカー!素早い剣術と雷系の魔法を操る魔法騎士だ!同年入隊騎士最速と評判だ!」

 

更に、ロナルドの後ろには、背中にタワーシールドを2つも背負ったこげ茶色の髪を刈り上げた糸目で大柄な筋肉質の男がゆっくりと歩いていた。

 

「後ろの大男はドラム・ハブアー!防御魔法と反射魔法を得意としたタンク騎士だ!あらゆる攻撃を防ぎ、時にはその怪力で殴り飛ばす!」

 

そして、ロンの左隣には、薄い茶髪をボブカットにしてジト目で大きな丸い眼鏡をかけた少女が、弓矢を背負って無表情で歩いていた。

 

「そして彼女が、フェイ・ル・ノート!百発百中の魔法射手で、索敵魔法と分析魔法、遠距離狙撃魔法を得意としている!ポーカーフェイスで淡白ながら、男性人気もトップクラスだ!」

 

兵士が紹介を終えるのと同時に、4人は歓声の中を進みそのまま入城をしていった。

 

「………」

「?」

 

入城する寸前、笑いながら手を振るロンが鋭い目で草介とデュランの2人を見ていたような……そんな気がした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――見たか、みんな?」

 

城の中に入ったロンは、小声でカールとドラム、フェイに話しかけた。

 

「ああ、あの見慣れない格好の一団だろう?」

「見たこともない真っ黒な髪と、紫や緑の派手な髪色で目立っていたな。」

「恰好からして、恐らくあの人たちが、『聖剣の勇者』一行。」

「だろうな………」

 

3人の意見を聞いて、ロンは小さく頷いた。他の兵士やメイドとは全く異なる、見たこともないような服装と髪色の男女の一団………『異世界』から来るという、『聖剣の勇者』とその仲間たちと考えれば、あの格好も説明が付く。

 

「『聖剣の勇者』……か……はたして、どれほどのものなのか………」

 

そう呟くと、ロンは不敵な笑みを浮かべた。この後の国王との謁見、その後に勇者と会える機会はあるだろうか?そう考えながら、一同は歩みを進めた。

 

 

 

 

 

【つづく】




・今回はお勉強回。世界のつくりと魔法、言語のお話。

・シンナセンの言語であるオーヒン語の謎。異世界なのに言葉が通じている理由が日本語と同じだから、という展開。ゲームとかだと「形が違うけど実は日本語」って、よくあるので。

・ロンのパーティの紹介。漫画とかだと、妙に詳しいモブキャラっているよねw

・次回は、ロンとひと悶着ある予定です。
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