異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第15話 勇者、決闘す

異世界勇者ロボ 第15話

勇者、決闘す

 

 

 

 

 

謁見の間に通されたロンたちは、クリセイ王とフローレント姫(ウィッグとドレス着用)の前で跪いていた。

 

「そなたたち、此度のメンパロンでの活躍は大儀であったぞ。」

「恐れ多きお言葉です。」

「ゴブリンの群れのみで、機怪魔獣がいなかったのが幸いでした。流石の私たちでも、機怪魔獣が相手では手も足も出せません。」

 

王の言葉に、ロンが恐縮したように頭を下げる。

 

「それはそうでしょうね………」

 

ロンの言葉に、フローレント姫は小さくつぶやく。

普段、デュランブレイバー達がやすやすと打ち倒しているため忘れがちだが、機怪魔獣は魔法が使えるシンナセン人であっても倒せる者は少ない。ロコロ王国ではレヴァンティくらいで、シャスティでも足止めが限界だろうから、若手の有望株であるロンたちでも、機怪魔獣相手ではかなわないだろう事は容易に想像できた。

 

「だとしても、よくやってくれた。褒美は期待して良いぞ。」

「は、ありがたき幸せ!」

 

王の言葉に、ロンは頭を下げた。

 

「ときに、国王様。」

「む?」

 

ふと、ロンは頭を上げると、王に尋ねた。

 

「噂に聞いたのですが、何でも『聖剣の勇者』を召喚したとか?」

「おお、おぬしも聞いておったか。確かに、勇者の召喚については多少のトラブルはありつつも成功し、こうしてフローレントを救い出してくれた。ただまあ、『聖なる石』は魔王軍に奪われてしまったがのう………」

「そうでしたか………!」

「おお………!」「噂は本当だったのか………!」

 

国王の答えに、ロンだけではなくカールとドラムが感嘆の声を上げ、フェイは無表情ながらも静かに目を輝かせていた。

 

(まあ、実際は多少どころじゃないトラブルが起こったんだけどね………)

 

その一方で、フローレントは内心で苦笑していたが、それは王も同じだったりする。

 

「して、その勇者は何処に?是非ともお会いしたいのですが………!!」

「まあ、落ち着け。長い遠征で疲れたであろう。今日はゆっくり休むがよい。」

「しかし……」

 

ロンが食い下がろうとした時、フローレントがロンをたしなめる。

 

「それに、勇者もいきなり見ず知らずの者に会っては、戸惑ってしまいますよ?」

「……分かりました。そうさせていただきます………」

 

ロンは少し不服そうであったが、フローレントの言葉に渋々頷いて謁見の間から出て行った。

ロンたちが出て行ったのを見送ると、フローレントは王に話しかけた。

 

「………父上、彼とソウスケを会わせて、大丈夫でしょうか?」

「ふむ………彼の性格を考えると、会わせて何か問題を起こすような事は無いと思うが……」

「ですが、彼の様子を見るに、何か胸騒ぎを感じてしまうのです………」

「うーむ………何事もなければよいのだが………」

 

フローレントの言葉に、王は顎に手を当てて考え込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、草介たちは、再度レヴァンティの研究室を訪れていた。

 

「昨日の件は、既に手紙を出しておいた。返事に1~2週間はかかると思うから、すまぬがそれまで待っていてくれ。」

「ああ、それは構いませんよ。」

 

レヴァンティがそう言うと、草介は頷いた。昨日のオーヒン文字の件は今すぐには解決できないとは思っていたので、そこまで落胆はしなかった。

 

「さて、今日はお前たちの魔法適正を調べて、それに見合った魔法を………」

 

レヴァンティが言いかけたその時、研究室のドアが勢いよく開く音がした。振り返って見てみれば、そこには昨日見た金髪の騎士ロンと、その仲間たちの姿があった。

 

「お邪魔するよ!」

 

先頭にいたロンが妙に爽やかな笑みで挨拶をしてきた。それを聞いた草介は、思わず反射的に声を出していた。

 

「邪魔するんなら帰ってー」

「「「はいよー」」」

「「「「!?」」」」

 

草介の言葉にロン、カール、ドラムの3人は踵を返して部屋から出ていき、デュランたちと1人残されたフェイは呆気にとられた。

 

「―――って追い返さないでよ!?」

「危ない危ない………」「普通に帰るところだった………」

 

で、5,6歩歩いてから正気に戻ったのか、速足で戻ってきてツッコミを入れるロンと、少し焦った様子のカールとドラム。戻って来た3人に、フェイは呆れた目で見ながらため息をついた。

 

「ご、ごめんなさい、つい状況反射で………」

「意外とノリがいいな、彼ら………」

「何じゃ今のは?」

「地球の伝統的なギャグ。」

 

両手を合わせて謝る草介にレヴァンティが聞くと、短く答える草介。意外にノリがいいロンたちにデュランが苦笑していると、気を取り直すように咳払いをしたロンが、草介に話しかけた。

 

「改めて、僕は騎士団所属のロナルド・ゴミニアトだ。君たちが、勇者様一行だね?」

「……まあ、一応は……」

 

ロンの質問に、草介は少し曖昧に答えた。フェイは(改めて見ると、見たこともない髪の色………ハデハデ………)と内心思っていた。

 

「それで、どちらが『聖剣の勇者』様で?」

「それは………」

「今はまだ、分からなくて………」

 

ロンの追加の質問に対して、草介とデュランは少し困惑というか、申し訳ない顔で答えた。その答えにロンは、訝しげな顔をした。

 

「分からない?」

「なるほど、本来1人だけしか召喚されない勇者が、2人召喚されたという噂は、本当だったようだな。」

 

ロンが小首傾げると、ドラムが納得したように頷いた。ロンは草介とデュランを見定めるように見比べると、ふーん、と呟くと、隣に立っていたフェイが、眼鏡のヨロイ(レンズとテンプルを繋ぐL字のパーツ)に手を当てて草介とデュランを見た。すると、レンズの辺りに小さな魔法陣が展開された。

 

「ユウナギ・ソウスケ、ちから20、まほう15、しゅび22、素早さ25、総合レベル8………」

「え?」

「デュラン、ちから48、まほう30、しゅび31、素早さ31、総合レベル15………」

「何だその眼鏡?」

「もしかして、ゲームのステータスみたいなのを出せるのか?」

 

フェイの発言に、草介は驚きと戸惑いの声で聞く。フェイは頷いて答えた。

 

「私オリジナルの『ステータス・オープン』魔法。目の合った相手の実力を数値化できる。体力や使える魔法を数値化する上位版も研究中。」

「能力の数値化か、便利ではあるでござるな………」

「でも、魔法協会に特許申請したけど、通らなかった………不服………」

 

不服そうなフェイの顔を見て、草介たちは苦笑を浮かべる。ニールは少し思うところがあるような顔をしていると、レヴァンティが口を開いた。

 

「あー、多分じゃが、数値化されたら困るのが魔法協会の上層部にいるんじゃろうなー………」

「その説はある。」

「話し戻していい?」

 

レヴァンティが慰めるように頷くと、ロンは話を戻すべく口を開いた。

 

「ソウスケのレベルは、駆け出し冒険者程度。一方のデュランは、そこそこの腕前。」

「それなら、彼が?」

「それだけでは断言はできないが………」

「それはどうだろうな?」

「え?」

 

フェイとドラム、カールが話し合う。ロンは少し考えていると、ニールが口を開いた。

 

「人の『本質』というものは、数字だけでは計り知れない所もある。たった今出会ったお前たちは誰一人として、ソウスケとデュランだけではなく、私たちの戦っているところを見たり、或いは実際に交戦したわけではないだろう?」

「それはそうだけど……」

 

ニールの言葉にフェイたちが言い淀んでいると、ロンは一理あると頷く。一瞬、ロンの青い瞳が『何か』を決意したかのように光を帯びた。

 

「なるほどな………それなら、手っ取り早い手段()があるな。」

「へ?」

 

ロンはそう言うと、キョトンとした草介が首を傾げる。何をする気だと聞く前に、ロンは腰に差した剣を抜いて、草介に切っ先を向けた。

 

「ユウナギ・ソウスケ、君に決闘を申し込む!」

「はあ!?」

 

ロンの突然の申し出に草介は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。デュラン達も困惑し、アルスも驚きの声を上げていた。

 

「あ、あの……いきなり何を……?」

「僕だって騎士のはしくれ。実戦を何度も経験し、相手の力量を測る事のできるフェイもいる。故に、実戦に近い形の決闘であれば、彼の実力も計りやすいというものさ。」

「それはそうだろうが………」

「だ、だけど………」

 

ロンのいう事も分かるが、いきなりの決闘宣言に草介は困惑していた。そんな草介の様子を見て、ロンは少し小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

 

「それとも、『勇者様』ともあろうお方が、まさか怖いなんてことはないだろうな?」

 

ロンの挑発じみたセリフを聞いて草介はカチンときたのか、少しムッとした顔でロンを睨み付けた。

 

「……分かった、受けてやるよ!」

「おい、ソウスケ!?」

「ほう?そうこなくてはな!」

 

草介の答えにデュランは驚くが、ロンは不敵な笑みを浮かべ満足そうに頷く。踵を返すと、今度こそ研究室から出て行こうとする。

 

「決闘は1時間後、場所は城の訓練場!そこで待っているぞ!!」

「ああ、分かった!」

 

ロンがそう言い残して去ると、草介も頷いて答える。そんな2人の様子を、デュランたちは心配そうに見ていたが、直ぐに草介に話しかけた。

 

「おい、ソウスケ!どうするつもりだ!?」

「お前、あいつに勝てると思ってるのかよ!?」

 

デュランとレピオが草介を問いただす。そんな2人に対して、草介は顔を引きつらせながら振り返った。

 

「ど、どうしよう………」

「案の定かよ!?」

「いやだってさ………あんなこと言われたら、なんかムカついちゃったし……」

「まあ、気持ちは分からなくもないが………」

 

草介の言い訳じみた言葉に呆れたのか、レピオたちは顔を引きつらせる。デュランはため息を一つつくと、草介に話しかけた。

 

「まあ、受けてしまったのであれば、仕方がない………」

「それに、流石の奴も命のやり取りをするような事はするまい。」

 

レヴァンティも呆れにも似た顔でため息をつくと、テーブルに置いてあった小箱を開けて中に入っていたアクセサリーのようなものを取り出した。青い宝玉のはまった銀色のブローチのような形になっており、4本の短い鎖と留め具が付いていた。

 

「これを持っていけ。」

「これは?」

魔宝珠(マジックオーブ)じゃ。剣を持ちながら杖を持つわけにもいかぬからのう。これを剣の柄や鍔に巻き付ければ、杖の代わりになるぞ。」

「なるほど。ありがとうございます。」

「なに、元々今日渡す予定であったからな。」

 

草介はレヴァンティにお礼を言いながら魔宝珠を受け取った。それを見つめながら、草介はクスッと笑みを浮かべた。

 

「………まあ、俺まだ明かりを灯す魔法しか使えないけど………ま、何とかするさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソウスケとロンが決闘!?」

 

執務室で一休みしていたフローは、慌てた様子のリジルから聞かされた事態に思わず声を上げた。リジルは汗を拭きながら、報告を続けた。

 

「ただ、決闘と言っても実戦形式の模擬戦に近いらしく………聞きつけた騎士や城の者が、一目見ようと訓練場に集まっています。何人かは「女房を質に入れてでも見逃せない一戦」と言っているとかなんとか………」

「まったく、嫌な予感は当たってほしくなかったな………私も見たいけど………」

 

フローは呆れと期待でぼやくと、立ち上がって足早に執務室を出る。リジルも慌てて後について行った。

 

「どうするのですか?」

「例の決闘を見に行くよ。いざとなったら、止められるようにね。」

 

歩きながらリジルに応えるフロー。本心を言えば、2人の戦いを見てみたいというものであったが。

 

城の裏手にある訓練場まで行くと、既に人だかりができていて、ガヤガヤと騒いでいた。人混みの後ろから様子を見ていると、フローに気づいた者たちが左右に道を開け始めた。フローはそれに対して申し訳ないと謝りながら最前列まで進む。

 

「フロー!!」

「あ、みんな。これはいったい……?」

「まあ、成り行きでね………」

 

最前列まで行くと、デュランたちの姿があった。フローは合流をすると、何事かと問いただした。

 

訓練場の一番広い場所、そこでは草介とロンが対峙していた。2人の間に立つ顎髭を生やした中年の騎士が、口を開いた。

 

「それでは、これよりユウナギ・ソウスケとロナルド・ゴミニアトによる模擬戦を行う!なお、此度の審判は私、王国騎士団教官のザックスが務めさせてもらう!」

 

ザックスがそう宣言をすると、周囲の者たちの歓声が沸き上がった。

 

「ロン様ーー!!」「頑張ってーーー!!」

「勇者の戦い、初めて見るな……」「どんな戦いを見せるんだ!?」

「どっちも頑張れーーー!」

 

歓声が沸き上がる中、草介とロンは互いに見合う。

 

「逃げずに来たようだね。失望しなくてすんだよ。」

「余計なお世話だよ。」

 

ロンが笑みを浮かべながら言うと、草介はムッとして言い返す。ザックスは周囲に静まる様にジェスチャーをすると、直ぐに周囲は静かになった。

 

「今回の模擬戦は、我が騎士団伝統の『ブザーオーブ・デュエル』で行う。」

 

ザックスがそう言って合図をすると、2人の兵士が兜と胸当ての乗った四角い盆を持って来た。兜の頭頂部と胸当ての前後には、それぞれ赤と青の宝石のようなものがはめ込まれていた。

 

「では、ルールの説明をしよう。2人にはこの防具を装着して戦ってもらう。防具にはめられたオーブは、強い衝撃を受けると大きな音が鳴り、そこの掲示板にある同色のオーブが連動して光る魔法がかけられている。互いにこのオーブを狙って、相手のオーブの内どれか1つを先に打った方が勝利となる。無論、魔法の使用は自由だ。」

 

ザックスが説明を終えると、草介は赤い方を、ロンは青い方の兜と胸当てを装着しはじめた。

 

「カール、フェイ、この戦いどう見る?」

 

2人が防具を着けるのを見ながら、ドラムがカールに話しかけた。

 

「どうだろうな………レベルだけ見れば彼、勇者ソウスケの実力はロンに遠く及ばない。」

「ロンの総合レベルは19。勇者との差は歴然。」

 

カールは前髪をいじりながら、フェイは淡々と答えた。隣でそれを聞いたニールはチラリと見て何か考えている間に2人は防具の装備を終えたらしく、剣と盾を装備して一定の距離を取って向き合っていた。

 

「さて、準備はいいかな?」

「こっちはいつでもいいぜ?」

 

ロンが余裕たっぷりに聞くと、草介は挑発的に返す。ザックスは頷くと、右手を高く上げた。

 

「それでは……始め!!」

 

ザックスが手を下ろした瞬間、草介はレオに向けて走り出す!

 

生命の根源たる水よ(トイニモイニミラノラミキイミカチスナ)ここに集いて(ノラノラミニカナシラニカイ)我が敵を撃て(テチキチカイノニテラナカイ)!」

「!!」

 

対してロンは剣を構えて呪文を唱え始めると、周囲に『水の球』がいくつも現れ、浮遊しはじめた。

 

「“アクアバレット”!!」

 

次いで、呪文を唱えた瞬間、草介に向けて『水の弾丸』が一斉に放たれる!

 

「う、お、お、お!?」

 

草介は慌てて盾で防ぎながら、急いで距離を取った。しかし、ロンは一気に草介との距離を詰めると、手にした剣を袈裟懸けに振り下ろして来る!

 

「はあっ!」

「う、おっ!!」

 

草介は剣の一撃を盾で防ぐと、続けて来たロンの蹴りに慌てて横に飛んで躱した。

 

「ちいっ!」

 

草介が舌打ちをしてロンを睨むが、ロンは少し感心したように笑った。

 

「よく防いだな。ならば、これならどうだ!」

 

ロンはそう言うと、再び水弾を周囲に浮遊させると、上空に浮かべて落下させるように放った!

 

「うおおお!?」

 

文字通り雨あられのように降り注ぐ『水の弾丸』に、草介は防戦一方になって足を止めてしまう。その隙にロンは再び急接近すると、今度は横なぎに剣を振るう!

 

「!?うおっと!?」

 

草介はロンに気づき、咄嗟に剣で防ぐが、衝撃で横に吹き飛ぶ!

 

「出た!ロンの得意とする戦法!ロンが特に得意とする水系の魔法で相手を追い詰めて、一気に攻め込む!その名も『ダンシング・イン・ザ・レイン(雨に踊れば)』!!」

「あ、昨日の兵士さん…」

 

その様子を見た兵士の1人が、声高に解説をする。レピオはそれを聞いて振り向くと、昨日隣にいて解説をしていた兵士だと気づいて、少し呆れていた。

 

「ぐあ!?」

 

草介が地面に倒れてしまう。ロンはその様子を見て、少しだけ呆れたような顔になった。

 

「呆れたな。レベルのわりに実は強いのかと思っていたが、この程度とは……」

「くっ……」

 

草介は剣を杖代わりにして立ち上がる。ロンの活躍に周囲が歓声を上げる中、デュランとニールは小声で話し合っていた。

 

「思ったよりもやるな。」

「ええ。ソウスケはゾロゾロイド程度ならば多少苦戦する程度ですが、あのロンという少年、思った以上にできるようだ………」

「勇者様………」

 

隣でシャスティが不安そうに呟く。トライヤーズも心配そうな顔をしていた。

 

(アイツ、魔法の使い方も剣の腕もソウスケ以上、対してソウスケが使えんのは明かりを灯すだけの魔法………さて、どうする?)

 

レピオが草介を心配していると、その時、ロンを睨んでいた草介が『何か』に気づいたのか、ハッとした顔になった。

 

(そうだ、『この手』なら………イチかバチか、やってみるか………!)

 

草介は何か決意をしたのか、キッとロンを見据える。

 

「お、何か思いついたみたいだな。」

「うむ。」

「何かしでかす気アルね~」

 

そんな顔を見たレピオとハバキリ、レイェンが呟く。ロンはそんな草介を見て、フンと鼻で笑った。

 

「何か秘策でも思いついたか?なら見せてみるがいい!」

 

そう言ってロンが剣を構えると、再度“アクアバレット”の発射体制に入り、草介に向けて一斉に放つ!

 

「うおおおおおおおお!!」

 

草介は盾で防ぐのではなく、剣を振るって水弾を弾く!ロンは少し意外そうにするも、草介に向けて剣を振り上げ走り出す!

 

闇夜を照らす(ンチモニンラテラカイスチトナ)光よ(クニノチスニンラ)灯れ(カラモラスイ)―――」

 

しかし、ロンが接近してくる中、草介は呪文を詠唱していた。周囲に弾かれた水弾と水飛沫が飛び散る中、ロンが自身の剣の間合いに入った次の瞬間―――

 

「『トーチ・ライト』!!」

「「「「「!?」」」」」

「ぅう!?」

 

草介が呪文を唱えた瞬間、周囲を強い閃光が包み込んだ!

あまりの強い光にロンは手にした剣と盾を手放してしまい、両手で目を庇う!

 

「今だ!!」

 

草介はその隙を逃さず、一気に駆け出す!そして、ロンの背中にあるオーブ目掛けて剣を振り下ろし、見事命中したオーブから「ビーーー!!」という大きな音が鳴った!

 

「な………!?」

 

甲高い音と、掲示板の青いオーブが光ったのを見て、観客たちは一瞬何が起こったのか分からず静まり返る。閃光で目が眩んで数回瞬きをしたザックスは、ようやく回復した視力で掲示板と草介を見ると、右手を上げて宣言した

 

「そ、そこまで!勝者、ユウナギ・ソウスケ!!」

 

ザックスがそう宣言すると、観客たちは歓声を上げて騒ぎ始めた。

 

「やったな!ソウスケのやつ!!」

「あ、あの勇者が勝った!」

「まさか、あのロンを負かすなんて………!」

「ロン様が負けるなんて………!?」

「だがあの勇者、何をしたんだ!?」

 

草介の勝利にデュランたちは喜びの声を上げ、周囲は草介の勝利に喜ぶ者とロンの敗北が信じられない者の声が入り混じっていた。そんな中、デュランたちは勝利に笑う草介に駆け寄った。

 

「ソウスケ!」「やったな!」

「ああ、ありがとう!!」

 

レピオが兜を外した草介の背中をバシバシと叩き、草介はそれに笑顔で応える。

 

「ロン!」「大丈夫か!?」

「う、うう……」

 

同じようにロンに駆け寄ったカールが呼びかけると、ロンは呻きながらゆっくりと目を開けた。そして立ち上がると、草介の方を悔しそうに見た。

 

「ま、まだやる気か?」

「………いや、敗北は敗北だ。それに文句を言う気はない。」

 

だが、とロンは草介を見据える。

 

「あの時、一体何をしたんだ?それだけ、教えてほしい。」

 

ロンがそう言うと、草介は頭を掻きながら答えた。

 

「………いや、大したことはしてないよ。ただ、『トーチ・ライト』の魔法を唱えただけだ。」

「『トーチ・ライト』?あの、明かりを灯すだけの初心者魔法をか?」

 

草介の答えに、ロンは訝しげな顔になる。カールとドラムは顔を見合わせて首を傾げていると、フェイは信じられないという声を出した。

 

「ありえない……『トーチ・ライト』は魔力で光量を調整できるけど、勇者の魔法力ではあれだけの強い光は出せないはず………?」

「ああ、だから『工夫』をさせてもらった。」

「工夫?」

 

フェイの疑問に、草介が答える。

 

「さっき、弾いたロンの水弾が、ゆっくり落ちていくのを見て、気づいたんだ。魔力のこもった水は、ある程度浮かぶ時間が長いってな。」

「水弾が?」

「なるほど、そういう事か。」

 

草介の言葉を聞いたロンが聞き返すと、ニールは草介のした事に気づいたのか、納得したように頷いた。

 

「ソウスケは、弾いた水弾に光を当てたんだ。それをレンズ代わりにして、強い光にしたんだ。」

「な!?」

「そんな使い方が………!?」

 

ニールが草介のした事を説明すると、ロンとカールが驚きの声を上げる。草介は照れ臭そうに頷くと、ロンに向き直る。

 

「まあ、そういう事だ。俺は昨日から魔法を習い始めて、それしか使えないからな。今ある手札でどうやって戦うかって考えたら、それが思い浮かんだんだ。」

 

草介はそう言うと、改めてロンは驚きと感心の混ざった顔で草介を見た。

 

「すごい発想だな………そんなことを考える人なんて、初めて見たよ………」

「そりゃどうも。」

 

草介はそう返すと、ロンは頭を下げた。

 

「先ほどの無礼、すまなかった。」

「あ、いや……そんな気にしてないし………」

 

謝罪するロンに対して、草介は逆に申し訳ない気持ちになって慌てる。周囲ではまだ、草介の勝利に歓声が上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、未だ熱気の冷めない訓練場を後にして、レヴァンティの研究室に戻った草介たちとロン一同。

 

「改めて、今回の騒動について、謝罪させてほしい。」

「いや、本当に気にしてないから………」

 

改めて頭を下げるロンとその仲間たち4人。草介は頭を掻きながら、ロンに顔を上げるように促す。ロンは頭を上げると、語り始めた。

 

「僕たちは昔から、『聖剣の勇者』の伝説に憧れていたんだ。騎士団に入ったのも、その影響があったところもあるね。」

「そうなのか………」

「それで、実際に『聖剣の勇者』が召喚されたと聞いて会いに来てみれば、僕と同世代

の、剣を握ったこともなさそうな少年だったからね……どうしても確かめずにはいられなかったんだ………」

「そういう事だったのか………」

 

ロンから今回の騒動の真相を聞いて、草介たちは納得した。

 

「と言っても、まだ私とソウスケのどちらが『聖剣の勇者』なのかは、未だに分からないのだがな………」

「そうなんだよなー………」

「何か、見分ける方法はないのでござるか………」

 

少し困った様子のデュランと草介の呟きにハバキリも同意する。すると、フム、とロンが顎に手を当てて考える仕草をした。

 

「それならば………」

 

そう言って懐を探ると、山積みになった本をドサッとテーブルの上に置いた。

 

「僕の持っている、『聖剣の勇者』に関する書籍だ。」

「どっから出したんだこんな大量の本!?」

「そこは置いといてくれれば………」

「この本は図解もあって分かりやすくて、こっちはエルフの著者が書いているから信憑性は高いね。こっちは子供向けの絵本なんだけど、エルフの里にある壁画がほぼそのまま描かれているんだ。それとこっちは………」

 

レピオのツッコミをスルーしつつ、ロンはそれぞれの本について説明をし始める。草介たちはそれに少し呆れて引いていたが、フェイたちは慣れているのかやれやれとため息をついていた。

 

「だが、多くの書籍において、共通する記述がある。」

「共通する記述?」

 

ロンはそのうちの1冊を草介に突き付けるように見せながら告げてきた。

 

「ああ。伝承によれば、『聖剣の勇者』が『聖なる石』に触れると、石は光り輝くとされている。魔王軍に奪われたという『聖なる石』を取り戻す事が、勇者を見分ける事にも繋がる事になるね。」

「『聖なる石』を………」

 

ロンからの話を聞いて、考え込む一同。フローの所有していた『聖なる石』は、現在魔王軍、正確に言えば手を組んだワルンダイツの一員であるポーラが所有している。

 

「どちらにしても、聖剣を探すには魔王軍を追うしかないって事か………」

「我々も、可能な限り協力するよ。騎士として魔王軍は許せないからね。」

 

ため息交じりに草介が呟くと、ロンが強力を申し出ながら手を差し出した。草介はそれを見ると、笑いながら堅く握手をした。

 

「勇者ソウスケ、予想外の戦いだった………」

 

そんな2人の様子を見ていたフェイが呟いた。すると、それが聞こえたのか、ニールがフェイに近づいて話しかけた。

 

「フェイ、お前の『ステータス・オープン』魔法は確かに便利だし、自身がどれだけ強くなったかの指標にはなるだろう。だが、特許が取得できなかったのは、上層部の思惑以外にも、『欠点(デメリット)』があるからだと私は思う。」

「デメリット?」

 

そうだ、とニールは頷いた。

 

「先ほど、お前たちはソウスケのレベルを見て彼の実力を決めつけて、ロンとの決闘の勝敗を予想した。だが、ルールの関係もあるが、ソウスケはレベルの差を機転で乗り越えてみせただろう?」

「それは………」

「これはあくまで私の個人的な見解だが、レベルが可視化されたら、先ほどのお前たちのようにそれで実力を決めつけて危険に遭うというデメリットがあるから、特許が通らなかったんじゃあないかな?」

 

ニールの諭すような口調に、フェイは何かに気づいたようにハッとした。

 

「……確かに、そうかもしれない……」

「まあ、これからはあまり数値に惑わされないよう、気をつける事だな。」

「そうする……」

 

フェイが頷きながら答えると、ニールはクスリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロコロ王国の西にあるカマリサ帝国の首都『エデキン』は、ミカノ山山頂にあるシンナセン最大の湖『シアノ湖』の畔にある要塞都市である。

エデキンの中央にそびえ立つ城『ローン・キータ城』の施設の1つでは、1人の女性が執務室で報告書を読んでいた。

 

「―――なるほど、機怪魔獣を破壊する機械兵器ですか………」

「はい。ロコロ王国に潜入中の兵士・カッセイからの報告です。」

「いかがなさいますか、主任?」

 

緑色の軍服を着て眼鏡をかけた女性は、眼鏡をかけ直すと立ち上がって窓の外を見ていた。

 

「確かに、我が国では機怪魔獣への対抗兵器の開発は行き詰っている。何か参考になるかもしれない………」

 

女性はそう呟くと、報告をしてきた部下2人に向き直って告げた。

 

「ロコロ王国に向かいましょう。件の『勇者』とやらに協力を要請できないか、交渉をします。」

「「はっ!」」

 

 

 

 

 

【つづく】




『ブザーオーブ・デュエル』は、バラエティ番組でよく見る紙風船チャンバラを異世界ファンタジー風にした形です。決闘とはいえ命のやり取りをさせるわけにもいかないと考え、思いつきました。

次回はカマリサ帝国からやって来る軍人さんのお話になると思います。
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