異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第16話 西より来たる帝国の使者

異世界勇者ロボ 第16話

西より来たる帝国の使者

 

 

 

 

 

日の光が殆ど入って来ない森の中、ハバキリは鋭い目線で周囲を見渡すと、気配のした一点を睨んで声を上げた。

 

「ソウスケ、レピオ!10時の方向!木の陰にござる!」

「「おう!」」

 

ハバキリの指示を聞いた草介とレピオは目的のものに向けて走り出す。2人ははさみ打ちの形で「それ」に飛びかかるが、「それ」は飛び退いて2人の攻撃を避けた。

 

「そっち行ったぞレイェン!!」

「あいあい~!!」

 

しかし、飛び退いた先にレイェンが現れると、「それ」はレイェンの両手に収まるように捕らえられた。

 

「捕まえたネ!!あれ?」

 

しかし、レイェンは高く飛び上がりすぎてしまい、着地の姿勢を取るのが難しい姿勢で落下し始めてしまう。

 

柔らかな風よ(ンチテチスチノチミチノチツインラ)集いて優しく(カナシラニカインチトチトニノナ)受け止めよ(ナノイカラモインラ)。“エアロ・クッション”!!」

 

しかし、草介が腰の剣を手にして呪文を唱えると、レイェンの落下地点に風が集まりクッションとなってレイェンを受け止めた

 

「あ、ありがとネソウスケ………」

「にゃ~~~………」

 

レイェンは無事に着地し草介にお礼を言うと、両手の中の「それ」―――茶色い毛並みの猫は、観念したように脱力した。草介たちはレイェンの下へ駆け寄ると、懐から1枚の紙を取り出して捕らえた猫と見比べた。

 

「うん、茶色い毛並みで右前脚が白い毛並みで赤い首輪のメスの猫………3日前に森で逸れたっていう『キャロちゃん』に間違いないな!」

「よっし!後は依頼人のところに連れて行けば、依頼完了だな!」

「キャロちゃ~ん、ご主人さまの所に連れて行ってあげるヨ~♪」

「にゃ~」

 

レイェンの手の中でもがいていたキャロちゃんだが、レイェンが優しい声で話しかけながら喉を撫でているうちに気持ちよさそうな声を上げて、すっかり大人しくなった。

 

「みんな、今の連携良かったぞ!」

「デュラン!」「デュラン隊長!」

 

すると、4人の背後からデュランが笑いながら話しかけてきた。

 

「いやあ、ソウスケも大分戦い以外のことにも慣れてきたなー!」

「まあね。でも、まだデュランやハバキリみたいには出来ないよ……」

 

レピオとソウスケが笑いながら話し合う。デュランはそんな草介たちを優しい目で見つめていた。

 

(やはり、ソウスケをトライヤーズと共に行動させたのは正解だったな。互いに良い刺激を与え合っている。ソウスケの成長にも繋がるし、良いチームになりそうだ。)

 

デュランは数回、小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草介とロンの決闘から1週間。

草介やデュランたちは剣と魔法の訓練と冒険者ギルドでの依頼を受けつつ、魔王軍の情報を収集していた。

今回も、チームワークの訓練も兼ねてギルドに寄せられた迷い猫探しの依頼を引き受けていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう勝手に飛び出して、ご主人様を心配させるんじゃないぞ~?」

「にゃ~」

「ありがとうございました~!!」

 

数十分後、飼い主である初老の女性にキャロちゃんを受け渡すと、飼い主の女性はキャロちゃんを抱きしめて感謝の言葉を口にした。別れ際に草介がキャロちゃんの頭を撫でながらそう言って飼い主と別れた。

 

「しかしソウスケ、魔法の使い方が大分上手くなってきたでござるな。」

「そうか?」

「そうネ。さっきはソウスケのおかげで助かったアル♪」

「ソウスケは風系統の魔法に適正があったからなー」

 

トライヤーズの3人と草介は、駄弁りながら王都までの道を歩いていた。

 

 

 

先日、レヴァンティの魔法の授業でそれぞれの魔法適性を調べた結果、草介は風系統の魔法に適性があると判明した。

 

魔法の系統は大きく分けて火、水、土、風、雷の5つ。他にもこの五属性に含まれない回復魔法等が属する無もある。

 

デュランダー隊の魔法属性適性は以下の通りである。

火:ハバキリ、ニール

水:レイェン

土:レピオ

風:草介

雷:デュラン

無:アルス

 

 

 

王都の入口が見えてくる距離になると、門の前で黒っぽい緑色の車のようなものが停まっているのが見えた。

 

「何だあれ?」

「馬車、とは違う車だな………昔の自動車っぽいけど………」

 

停まっている車を、通りすがった人たちと同じように少し物珍しそうに見る一同。草介はその車が、教科書やテレビで見た昔の自動車に似ていると思ったが、車体の後ろに設置された装置を見て、少し違うなと感じた。

その自動車の後ろには、150cmほどの円筒状の透明なカプセルのようなものが2つ並列してはめ込まれた装置があり、カプセルには緑色の半透明の結晶体が入っていた。

 

「変わった車だな?今までシンナセンでは、馬車くらいしか見たことがなかったが………」

「おや、ソウスケくんにデュランさん。」

「あ、ボウィーさんたち。」

 

草介たちが不思議そうに車を見ていると、ちょうど通りかかったらしいボウィー、ケント、シャーロットのパーティーが話しかけてきた。何かあったのか聞きたそうにしていたシャーロットだが、停まっている車に気づいて声を上げた。

 

「あれ?あれってもしかして、『魔導車』じゃない!?」

「お、本当だ!」「初めて見た!」

「「「「「マドウシャ???」」」」」

 

3人が声を弾ませて車を見つめている中、聞きなれない単語に草介たちは首を傾げた。それに気づいたのか、シャーロットが説明を始めた。

 

「魔導車はね、今けっこう噂になっているカマリサ帝国で開発された車なんだよ。馬を使わないで、『魔導池(まどうち)』っていう装置をエネルギーにして動くって話だよ。」

「魔導池というのは、マナを蓄える性質のある『バッテライト』という鉱石を原料に作られたエネルギー装置だそうだ。それを動力に『魔導エンジン』を稼働させて走らせる、とのことだ。カマリサ帝国では、魔導車以外にも魔導池を利用した街頭や鉄道の普及が始まっているそうだ。」

「へぇ~………」

「あの後ろの装置が魔導池なのか………」

 

シャーロットとケントの説明を聞いた草介たちは、興味深そうに魔導車を眺めていた。

 

「カマリサ帝国は軍事国家故に技術力が高いと聞いていたが、魔力で動く機械を開発できるほどとは思っていなかったな………」

「待てよ?という事は、あれにはカマリサ帝国の人が乗ってるのか?」

 

デュランがカマリサ帝国の技術力に感心をしていると、レピオが気づいて疑問を口にした。すると、門の前で兵士と話をしていたらしい緑色の軍服らしきものを着用した女性に気が付いた。

 

「あれは、カマリサ帝国軍の軍服だな。帝国軍が何の用だ?」

 

女性の服装を見たボウィーが呟くと、話を終えたらしい女性が振り返る。薄い茶髪をツーサイドアップにしてサイドキャップを被り、丸い眼鏡をかけたその女性は、こちらの視線に気づいたのか一瞬目が合うが、直ぐに魔導車に乗り込むと馬車の停留所に向かって走り出した。

 

「カマリサの軍人が魔導車で来訪か………」

「ただの観光、って事はなさそうだな………」

 

走っていく魔導車の後ろを見つめながら、デュランとレピオは一抹の不安を覚えて呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後、ギルドに依頼完了の報告を済ませた草介たちは、モルデュア城に呼ばれていた。

 

「すみませんね、ギルドでの依頼を終えたばかりだというのに………」

「いや、構わないですよ。思ったよりも早く済んだし。」

 

案内するリジルに草介が笑いながら答える。一方、デュランやハバキリは内心考え事をしていた。

 

(カマリサ帝国の軍人が現れた直後に呼び出し………)

(十中八九、先ほどの軍人絡みの件でござろう………)

(だが、だとしたらなんの用だ?)

 

そう考えるのは、草介も同じであった。考えながら歩いている内に、一行は会議室の前までやって来た。リジルはドアをノックすると、中にいる人物に声をかけた。

 

「陛下、ソウスケさんたちをお連れしました。」

『うむ、入れ。』

 

中から返事があり、リジルがドアを開ける。草介たちは部屋の中に入ると、そこには国王とフロー、そして、先ほどの軍服の女性と部下らしき2人の男女の姿があり、女性は眼鏡の奥の鋭い緑色の目でこちらを見ていた。

 

「呼び立ててすまないな、ソウスケにデュラン。」

「いえ、構いませんよ。それより……」

「さっきの……あなた達がそうでしたか………」

 

草介が軍服の女性に目を向けて首を傾げると、少し驚いた顔になっていた彼女は椅子から立ち上がり、部下と共にビシッと姿勢を正して敬礼をした。

 

「お初にお目にかかります。カマリサ帝国第4開発師団所属のケイリー・ウェイガー中尉です。こちらは部下の、」

「ヒュージです。」「キリコです。」

 

ケイリー達3人が自己紹介をすると、草介たちもそれぞれ自己紹介を返した。

 

「さて、自己紹介はこれくらいにして、さっそく本題に入らせていただきます。」

 

ケイリーはそう言うと、草介とデュランの前にまで行き、深々と90度のお辞儀をしてきた。突然頭を下げるケイリーたちに草介たちが戸惑っていると、ケイリーは口を開いた。

 

「単刀直入に言います。我々に協力をしてほしいのです。」

「きょ、協力………!?」

「はい。」

 

ケイリーたちは頭を上げると、説明を始めた。

 

「私は、対機怪魔獣兵器の開発チーム主任を務めています。破壊された機怪魔獣数機を鹵獲し、分解、解析を進めて、それを元に対抗起動兵器、仮称『パンツァー』の開発を進めていたのですが………」

「開発に行き詰ってしまい、何とか完成した一号機も『何とか動く』程度の出来で、実戦投入には程遠い状態です。」

「そんな時に、ロコロ王国で機怪魔獣をバッタバッタとなぎ倒す機動兵器が複数機確認できたという報告を受けまして、あなたたちがその機動兵器と深く関わりがあることも掴んでいます。」

(デュランたちがマシンメイルと一体化していることまでは、知られていないのか………」

 

ケイリーたち3人が話す内容を、戸惑いながらも草介は聞いていた。

 

「そこで、可能であれば参考のためにあなたたちの持つ機動兵器を見せていただきたいのです。本来であれば、我々だけの力で開発をしたかったのですが、我が国の『パンツァー』開発のために、是非ともご協力をお願いします!」

「「お願いします!!」」

 

ケイリーたちはそう言うと、再び深々と頭を下げた。

デュランは、困った顔になった。彼女らの言う機動兵器、マシンメイルの内部機構は、銀河連邦警察の機密情報だ。おいそれと外部の人間に見せるわけにはいかない。しかし、ここで協力を断ってしまってロコロ王国とカマリサ帝国の国交に亀裂が生じてしまう可能性もある。シンナセンの外から来た自分たちのせいで王やフローに迷惑を懸けてしまうのは、デュランとしても避けたい所だった。

 

「う、う~ん……」

 

デュランが唸りながら考えていると、隣にいたレピオが口を開いた。

 

「えーと、オレたちとしても出来る事なら協力はしたいよ。だけど、オレたちのマシンメイル、機動兵器は元々所属している組織の機密事項でさ、勝手に見せられるものじゃあないんだよ………」

「レ、レピオ………!」

「そう、ですか………」

 

デュランがレピオを止めようとするが、その前にケイリーが明らかに落ち込んだ様子を見せた。それを見たデュランは慌てて声をかけようとするが、レピオは続けた。

 

「その代わりと言っちゃあなんだけど、おたくで開発したっていう機動兵器を見せてくれないか?アドバイスとかなら、出来るかもしれないから。」

「本当ですか!?」

 

ケイリーが顔を上げると、レピオは笑って頷いた。その会話を聞いたデュランと草介は、なるほどと頷いた。

 

(なるほど、下手に断らずに妥協案を提示したわけか。)

(レピオのやつ、なかなかやるな……)

 

デュランと草介が感心する中、ケイリーは部下とも確認を取り、レピオの提案を承諾した。

 

「分かりました。では、明日にでも王都の北東にあるモルホン基地に来てください。そこの倉庫に、パンツァー一号機を保管しています。」

「ああ、分かったよ。」

 

デュランが承諾をすると、レピオや草介も頷いた。すると、王が提案をしてきた。

 

「騎士団からも、護衛を着けよう。」

「え、良いんですか?」

「ああ。他国からの客人だ。君たちがいるとはいえ、護衛はいた方が良いだろう。」

「ありがとうございます!」

 

草介は王にお礼を言うと、デュランたちと共に会議室を出た。ケイリーたちも、今日は基地に戻ると言って会議室を出て行った。

 

「………(機怪魔獣を参考にした機動兵器、か………)」

 

会議室を出たレピオは、表情に影を落としながら考え込んでいた。しかし、それに草介たちは気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼前、草介とデュラン、シャスティは、護衛の騎士と落ち合うために王都の中央広場で待ち合わせをしていた。

 

「………で、護衛の騎士っていうのは………」

 

待ち合わせの時間になり、草介たちの前に護衛の騎士が4人、フローと共に現れた。それは―――

 

「やあソウスケ!1週間ぶりかな?」

 

爽やかな笑みを浮かべフレンドリーに話しかけてきた金髪の騎士、ロナルド・ゴミニアトの笑みを見て、草介は少し呆れた顔になった。その後ろではカール、ドラム、フェイの姿もあった。

 

「お前らかよ!?」

「僕たちだよ!!」

 

思わずツッコミを入れる草介に対して、どこか誇らしげなドヤ顔で答えるロン。そんなやり取りを苦笑交じりに見ていたデュランは、ロンに話しかけた。

 

「君たちが、護衛をしてくれるのかい?」

「ええ。先日、ソウスケの強さはこの身で感じ取りましたが、他の方々、特にデュランさんの力を見てみたいのもありましてね。志願をさせていただきました。」

「というか、半分以上ゴリ押しだったけどね。後半はほとんど駄々こねる勢いだったし………」

 

ロンに続いてフローが呆れ気味に付け加える。カールとドラム、フェイは慣れているのか、呆れた様子でやれやれとため息をついていた。

 

「それで、モルホン基地までは馬車で行くのかい?」

 

ロンは草介にそう聞くと、フローは首を横に振った。

 

「いや、ここからモルホン基地までは、馬車を使っても時間がかかる。」

「では………?」

 

フローの言葉にフェイが聞き返そうとしたその時、城下町に軽快なメロディーが鳴り響き、人々がそれを聞いて周囲を見渡し始めた。

 

[間もなくー、1番線からバトルトレインが発車いたしまーす。危険ですので、白線の内側に下がってお待ちくださーい。]

「な、なんだ!?」

 

アナウンスが聞こえるとロンたちが戸惑ったように周囲をキョロキョロと見渡した。すると、城下町の円形になった中央広場のレンガ造りの地面が少し下がって左右に開き始める。間もなく、空いた穴の地下から、転車台に乗ったバトルトレインがせり上がって来た!

 

「こ、これは!?」

「もしかして、「機関車」って乗り物………!?」

「カマリサ帝国内で走り始めたっていう、あれか!?」

「初めて見た………!!」

 

突然現れた機関車に驚くロンたち4人。草介たちはそんな彼らを見て、少し笑いながら言った。

 

「バトルトレインだ。分かりやすく言えば、『異世界の乗り物』だな。」

「い、異世界の………?」

 

デュランが簡単に説明をすると、ロンは驚きと困惑、そして感動の入り混じった表情で眺めていた。

 

「ほら、こっちから乗れるぞ。」

「あ、ああ………!」

 

草介とデュランたちは客車に向かいながらロンたちを誘うと、少し戸惑いながらも乗車し始めた。客車には、先に乗っていたトライヤーズとアルスの姿があった。

 

「お、来たか………」

「って、護衛の騎士ってお前らかよ………」

「そのやり取りは、さっきやったから。」

「あ、そうなのネ………」

 

ロンの姿を見たハバキリとレピオが、少し意外そうな顔で言うと、草介が答える。アルスは全員が無事に乗り込んだのを見ると、運転席にいるニールに連絡を入れた。

 

「ニールさん、全員乗ったでありますよ~」

[了解した。発車準備良し、ゲート展開!]

 

ニールはその連絡を受けると計器を操作、広場を貫く大通りの地面が左右に跳ね上がり、その下からスキーのジャンプ台を思わせる巨大な橋が空に向かってせり上がり、空に向かう橋の様になった。

 

「レーザーレール、展開、よし!バトルトレイン、出発進行!!」

 

ニールの宣言と共にレバーが押し込まれると、橋の上を走るように緑色のレールが展開。バトルトレインのエンジンが唸りを上げて、煙突から黒煙を吐き出した。

巨大な鉄輪が回転を始め、バトルトレインがゆっくりと動き出す。地響きを響かせながら、バトルトレインは徐々に速度を上げ、線路を駆け上がっていく。

 

「す、すごい………!」

 

空に向かって走って行くバトルトレインの客車内で、ロンたち4人は感動の声を漏らしていた。

 

 

 

 

 

「やはり、あれで行くのか………」

「あそこまでされると、逆に清々しいですね。」

 

走っていくバトルトレインを城の窓から見ていた王とリジルは、呆れたように呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

標高235mのモルホン山の麓にあった廃村を解体して建設されたモルホン基地は、ロコロ王国内に作られたカマリサ帝国軍の駐留基地である。

ロコロ王国への技術提供と魔導技術の共同開発を条件に建設され、建設費や維持費の7割はカマリサ帝国側が負担している。

 

[―――で、その基地に例の『機動兵器』が運び込まれているんだね?]

「はい。偵察をしていたパパラッピーG1からの情報です。」

 

基地から離れた森林地帯に隠れて、通信をしている2人組がいた。忍者めいた格好の男とモヒカンの筋肉質の男、ワルンダイツ六魔獣将、影のウルフと地のバッファローだ。小脇には、頭部がカメラになった鳥のような姿の小型機怪魔獣『パパラッピーG1』の姿もあった。

 

「開発チームがGPと接触したという情報も掴んでいます。」

「連中の協力で兵器が実用化されたら、こっちの脅威になりますぜ。」

 

ウルフとバッファローの進言を聞いたデスダイトは「そうだねぇ……」と顎に手をやりながら呟いた。

 

[出来ることなら、今すぐにでも基地に乗り込んで兵器の破壊をお願いしたいんだけど、ちょっと待ってほしいんだよね………]

「何故です?」

[実は、魔王軍の一団が別件でちょうどその基地に向かっているらしくてね?君たちが行くって言ったら、手を貸してくれないかって………]

 

デスダイトがちょっぴり申し訳なさそうに2人に言う。ウルフとバッファローは顔を見合わせた後、デスダイトに向き直った。

 

「分かりました。その一団と共に基地を襲撃します。」

[よろしく頼むよ。]

 

デスダイトがそう言うと、通信は終了した。通信機を懐に入れたウルフは、やれやれとため息をついた。

 

「あの程度の基地、俺の隠密機怪魔獣軍団ならすぐに壊滅出来るというのに………目的のためとはいえ、同盟とは面倒なものだ………」

「ウルフ、あまりそう言うことは言わない方がいいぞ?」

 

ウルフの呟きに対してバッファローが注意をする。ウルフは少し抜けた性格の相棒に、内心呆れるのであった。

 

「………む?汽笛?」

 

その時、遠くの方から汽笛の音が聞こえてきた。ウルフは傍にいたパパラッピーを飛ばし手にしたスマートフォン型デバイスを起動させた。直ぐにパパラッピーからの映像が送られてきた。

 

「これは、GPのマシンメイルか……」

「やっぱり来やがったか!ウルフ、どうする!?」

 

映像に映ったバトルトレインの姿を見たバッファローが悪態をつくと、ウルフは忌々し気に画面を睨んだ。

 

「………本来なら今すぐにでも潰しに行きたいところだが、魔王軍と足並みを揃える以上、今は偵察に徹するしかあるまい………」

「そうだな。すぐ来てくれるといいんだがなー………」

 

ウルフの決定にバッファローは頷いた。目の前では、緑色に光るレーザーレールが基地の前にまで伸びて、バトルトレインが停車しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました、皆さま。」

 

モルホン基地に到着したデュランたちが出入り口で守衛に話を通すと、数分後にケイリーを筆頭とした開発チームらしき軍人たちが出迎えてくれた。

 

「早速ですが、これから向こうの運動場で『パンツァー』の運転試験を行います。着いて来てください。」

「わかった。」

 

デュランは返事をすると、ケイリーに案内されて運動場に歩き始めた。

運動場に向かう途中、フェイがケイリーに話しかけた。

 

「ケイリーさん、あなたに聞きたいことがある。」

「何でしょうか?」

 

ケイリーが歩きながらフェイに聞き返した。

 

「あなたの苗字、『ウェイガー』を聞いて、思い出した。リグーン王国の駐在軍の司令官も、同じ『ウェイガー』だったはず。」

「リグーン王国の?」

「知っていましたか………」

 

フェイの質問に草介たちも反応をした。リグーン王国は、カマリサ帝国の駐在軍の健闘むなしく魔王軍に占領されたと聞いていたが、そこの司令官も同じ苗字だったとは……そう思っていると、ケイリーたちは足を止めて話し始めた。

 

「………確かに、リグーン王国駐在軍司令官であったダンケッダ・ヴォ・ウェイガー将軍は、私の父です。」

「そうだったのか…………」

「父は、機怪魔獣による魔王軍の侵攻によって敗北し、苦渋の決断でリグーン国民や自軍を連れて撤退をする事となった事に心を痛め、対抗兵器である『パンツァー』の開発計画に力を入れています。私が開発チームの主任を務めているのは、父の無念を晴らすためでもあります………!」

「ケイリー………」

 

右手を握る力を強めて言うケイリーに、デュランは声をかけた。ケイリーはハッとした様子でデュランたちを見た後、少し恥ずかしそうに俯いてしまった。

 

「すいません……つい……」

「いや、いいんだ……君の思いは、よく分かったよ。」

「ありがとうございます。では、先に進めましょう。」

 

ケイリーは謝ると、直ぐに案内を再開した。デュランや草介は、ケイリーの後ろ姿を見ながら、彼女の父への思いを感じた。

 

「こちらが運動場になります。」

 

数分後、広い運動場に到着した一同。周囲をキョロキョロと見ていると、ケイリーは遠くの巨大な影を指さした。

 

「あちらが、我々の開発した『パンツァー』、その1号機になります。」

「あれが………?」

 

ケイリーが指さした方を見た草介が、驚きとも感嘆とも、唖然とも取れる呟きを漏らした。デュランやロンも、言葉が出ないようであった。

 

そこに立っていたのは、薄い緑色の四角い顔と胴体に太く大きい両足、腕はU字のマジックハンド型の20m前後のロボットであった。丸い目を思わせるランプと四角い口、肩や頭部、胴体に三連砲を搭載していた。

その出で立ちを見た草介は、祖父の家にあった、ブリキのロボットのおもちゃのようだと思った。

 

「そう、あれこそが我がカマリサ帝国が開発した対機怪魔獣用機動兵器『パンツァー』の1号機です!」

 

草介たちが言葉に詰まっていると、それに気づいているのかいないのかケイリーが口を開く。すると、機体の目の前になぜか白文字のテロップ(明朝体)がでかでかと現れた。

 

パンツァー初号機

正式名称:魔導式人型機動兵器試験機第一号

 

「え?何この字?どうやって出してるの?」

「どっかで見たことあるぞこの演出?」

 

突然現れたテロップの演出に戸惑う草介とレピオ。次いで、別の文字が現れた。

 

コードネーム:マカロンティーヌちゃん1号

 

「「「いや、見た目と名前のギャップ!!!」」」

 

あまりにも可愛らしい名前が表示されて一同がケイリーにツッコミが入る。

 

「何その妙に可愛らしい名前!?誰だよ名付け親!?」

「私です。」

「「主任です。」」

「「「お前かい!?」」」

 

名付け親と名乗り出るケイリーに、再び全員のツッコミが入る。ケイリーは少し恥ずかしそうに、頬を赤らめた。

 

「いや、見た目から市民に怖い印象を持たれないように、せめて名前を可愛くして和らげようかと………」

「そ、それなら仕方ない、のか?」

「だとしても、可愛らしすぎだろ………見た目も微妙だし………」

 

ケイリーの説明にデュランと草介は困惑しながらも納得した様子を見せた。すると、草介の「微妙」という言葉を聞いたケイリーが、少しムッとした顔で彼を見た。

 

「何を言っているんですか!?武骨でがっしりしたカッコいいデザインでしょう!!」

「デザインお前の趣味かよ!?」

「いえ、私の趣味なのもそうですが、機怪魔獣のエンジン等を参考、流用しようとしたら、あのような見た目になりまして………」

「ああ、なるほど……」

 

ケイリーの反論に草介がツッコミを入れると、彼女は少し気恥ずかしそうに答えた。デュランは彼女の答えを聞いて納得した様子を見せていると、ケイリーは少し恥ずかしそうに咳払いをして姿勢をただした。

 

「と、とにかく、これよりマカロンティーヌちゃんの機動実験を行います!ミケくん、皆様を見学デッキまでお連れして。」

「は!」

 

ミケと呼ばれた男性は草介たちを連れて、建物の屋上に案内した。フェンスから運動場を見ると、ケイリーたち3人がタラップを歩いて頭頂部のコックピットに乗り込む所であった。

 

「あれ、ケイリーさんたちが乗るのか?」

「開発したのは良いのですが、操縦の仕方が複雑でケイリー主任たちにしか操縦が出来なくて………」

「操縦性は武装や装甲以上に優先事項だろ………」

 

草介の疑問にミケが答えると、それを聞いたレピオが呆れたように呟いた。話している間にケイリーたちはコックピットに乗り込み終わっていた。

 

「エンジン、起動開始。」

「各部異常なし。いつでも行けます。」

「よし、マカロンティーヌちゃん、起動!」

「「了解。」」

 

ケイリーが号令号令と共に手元のレバーを押し込むと、けたたましいエンジン音が轟き、マカロンティーヌちゃんは両目のランプに光が灯り、ゆっくりと動き始めた!

 

「おお!」

 

動き始めたマカロンティーヌちゃんにロンが驚きの声を上げた。すると、マカロンティーヌちゃんは右足を上げて、小さいながらも一歩前進をした。

 

「歩き始めた………!」

 

歩き始めたマカロンティーヌちゃんに、感心した声を出すフロー。すると、マカロンティーヌちゃんは左足を出して、小さいながらも一歩前進をした。

 

「お、おお………?」

 

また一歩前進をするマカロンティーヌちゃんに、今度はデュランが声を上げた。マカロンティーヌちゃんは小さい歩幅で、数mずつ前進をする。

 

「………いやおっそ!?マカロンティーヌちゃんおっそ!?」

 

短い歩幅でゆっくり動くマカロンティーヌちゃんに、思わず草介がツッコミを入れる。草介のツッコミは全員の総意だったらしく、皆頷いていた。

 

「機怪魔獣から鹵獲したエンジンの設計を元にした専用の魔導エンジンを搭載し、大型の魔導池をエネルギー源にしているのですが、どうにも出力が上がらなくて………何度か改良して当初の3倍にはなったのですが………」

「あれで3倍………」

 

ミケの解説に、デュランが思わず呟いた。そうこうしているうちに、マカロンティーヌちゃんは定位置についたのか歩みを止めていた。遠くの方には、赤い的があった。

 

「目標確認、ターゲットロック!」

「右肩三連砲、発射!!」

 

ケイリーが手元のレバーを操作すると、マカロンティーヌちゃんは右腕に内蔵された三連砲を的に向けて発射!発射された砲弾は赤い的に命中し、爆発を起こした!

 

「うおっ!?」

「凄い威力だ!」

 

砲弾の威力を見たロンと草介が声を上げる。爆発の衝撃波がこちらまで届き、デュランやケイリーたちは思わず顔を腕で覆った。

 

「さ、流石は技術大国であるカマリサの大砲………!」

「すごい威力だべ………!」

「マカロンティーヌちゃんの低すぎる機動力を補うべく、三連砲をあれだけ搭載しています。」

「だが、現状ではあれだけ積んでいても撃つ前に狙い撃ちにされるでござろう………」

 

ハバキリが指摘をすると、ミケは「そうなんだよなぁ……」と頭を抱えた。

マカロンティーヌちゃんが元の位置に戻る中、レピオはその動きを睨んでいた。

 

 

 

 

 

【つづく】




魔導池とバッテライトは個人的にいい出来のネーミング。

ロンのパーティ再登場。準レギュラーとしては良い感じで盛り上げてくれると思います。

マカロンティーヌちゃんがブリキのロボットのおもちゃ風なのは他のロボットとの差別化を図っての事。白い明朝体テロップは言わずもがなw
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