異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第17話
幽霊船、霧より現る
「使用済み魔導池の取り外し、開始!」
「各部、点検開始!」
機動実験が終わり、マカロンティーヌちゃんからケイリーたちが降りると、何十人もの整備員たちが群がる様にマカロンティーヌちゃんへ取り付いて各部の点検を開始しはじめた。
「お疲れ様です、ケイリー主任。」
「ありがとう。でも、ヒュージとキリコにも言ってあげて。」
「ヒュージ、キリコもお疲れ様。」
タラップを歩くケイリーに、部下らしき兵士が労いの言葉をかけてきた。ケイリーの後ろを歩く二人にも声をかけると、2人は軽く会釈で返す。ケイリーはため息を1つつくと、マカロンティーヌちゃんを見上げた。
「エンジンのギアを交換して回転数を上げたのに、あれしか出力がでないなんて………」
「エネルギーの消耗も大きいですね………操縦性の複雑さもありますし、課題がまだまだ多いです………」
ケイリーの呟きにヒュージも続く。どうしたものか、とケイリーが頭を抱えていると、ミケに連れられてデュランたちがやって来た。
「なんというか、見てもらった通りマカロンティーヌちゃんの完成度はあまりにも低くて………」
「そうですね。「何とか動く程度」とは聞いていたけれど………」
「はっきり感想言っていいなら、思った以上に動く程度だったアル。」
恥ずかしそうにするケイリーたちに、草介は苦笑いしながら答え、レイェンがはっきりと感想を言った。レイェンの感想が刺さったのかケイリーたちが顔を引きつらせる。すると、レピオが前に出てケイリーに話しかけてきた。
「なあ、エンジンって見せてもらえるか?」
「え?」
「さっきの試験の時に聞いたエンジンの音が、ちょっと気になってな。もしかしたら、出力が上がらない原因が分かるかもしれねーぜ。」
レピオの申し出にケイリーは一瞬どういうことか分からなかったが、後ろにいる部下たちとアイコンタクトを取ると、承諾の意思を返した。
「………分かりました。少しお待ちください。」
ケイリーはそう言うと、マカロンティーヌちゃんの胸部辺りにいた整備員に声をかけた。整備員たちは胸部装甲のハッチを開くと、マカロンティーヌちゃんに搭載されたエンジンが顔を見せた。
「これが、機怪魔獣のエンジンを元にマカロンティーヌちゃん専用に開発された魔導エンジンです。分析と開発に1ヶ月、搭載する機体の設計と開発に2ヶ月、計3ヶ月かかりました。」
「魔王軍が機怪魔獣を投入してから半年と聞いていましたが………」
「出来はどうあれ、3ヶ月でここまでこぎつけたのは普通にスゴイ技術力だな………」
全高が5m近くあるエンジンを見上げて、アルスとフローが感心したように呟く。それを聞いたケイリーたちは、誇らしげに胸をそらした。
「それは当然です!カマリサの科学力は世界一ィィィ!!たとえ未知の技術であっても、解析して自国の技術として取り入れることが『可能』なのです!!」
「そ、そうか………」
妙なテンションで力説するケイリーに、草介は若干引きながら答えた。デュランたちも引いていたが、レピオは睨みつけるようにエンジンを観察していた。
「やっぱりそうか………」
「レピオ?」
「どうしたネ?」
レピオの様子にハバキリとレイェンが気づいて話しかけるが、レピオはそれに構わずにケイリーに話しかけた。
「出力が上がらなかった原因は、エネルギー不足だな。」
「え?」
「この魔導エンジン、機怪魔獣に使われているやつと構造がほぼまんまみたいだな。マナで動かせるようにする程度の設計変更しかしてないだろ?」
「ええ、まあ………」
「機怪魔獣のエンジンのベースになってるハーキュリー重工業の『サーペント0-Ⅹ』は、『フレアタイト』っていう高エネルギー物質を使用する前提だ。あの大型魔導池だとフレアタイトレベルのエネルギーが供給できなくて、エンジンが十分に動かせていないっていうのが原因だな。さっきのエンジン音から察するに、20%くらいってとこか………」
「そ、そんな……」
レピオに言われて愕然とするケイリーたち。その様子を見て、ロンが口を開いた。
「レピオくん、随分と機怪魔獣に詳しいんだな?」
「え?あ、まあな………」
「あー、私たちは、機怪魔獣との戦闘を主にしているからな………」
「そうなのか………」
少し口篭もるレピオに、デュランがフォローを入れる。その説明で納得したのか、ロンたちはそれ以上何も聞いてこなかった。レピオは少し申し訳なさそうにデュランに視線を送る中、草介やハバキリは不思議そうな顔になっていた。
「それだと、エンジンの設計からやり直さないといけないのか………」
「ようやくここまでこぎつけたって言うのに………」
レピオの説明を聞いて、肩を落とすケイリーたち開発チーム。そんな彼女たちを、レピオは物思いに見ていた。
†
1時間後、良ければ昼食をと誘われて、基地内の食堂にやって来た草介たち。テーブルの上にはサンドイッチをはじめとした軽食が並び、他の兵士たちも同じ空間で食事を取っていた。
他の兵士たちが物珍しそうにチラチラと視線を送る中、草介たちはケイリーたちとテーブルを囲んでいた。
「そういえば、先ほどの話にあったハーキュリー重工業というのは……?」
「えっ………」
ふと、気になったのかケイリーが話を振って来た。レピオは少し気まずそうにするが、ハバキリが話を始めた。
「ハーキュリー重工業というのは………拙者たちの故郷で
「特に、『オフューカス』っていう覆面天才メカデザイナーが設計した、画期的な新型エンジン『サーペント0-Ⅹ』は、従来のエンジンの常識を覆して業界に革命を起こしたアル。」
「そんなスゴイ企業があったのか………」
ハバキリは、まだ自分たちの正体を明かすべきではないと考えて言葉を選びながらの説明にレイェンも続けた。すると、その話を聞いたフローが疑問を口にした。
「しかし、そのエンジンが何故機怪魔獣に………?」
「うむ、数年前、社長であるケイオンが犯罪組織にエンジンやロボットの設計図を横流しして裏金を捻出していたことが内部告発によって発覚してな、ケイオンをはじめとした幹部は逮捕され、会社は業績不振に陥ったのでござる。」
「その犯罪組織って、まさか………」
「魔王軍と繋がっている『ワルンダイツ』、という事であります……」
「そうだったのか………!」
ハバキリとアルスの説明に、草介たちは息を呑んだ。
「魔王軍と繋がっている組織だと?」
「デュランさんたちが、その組織の事を知っているという事は………?」
「デュランさんたちはその組織、『ワルンダイツ』を追っていた?」
「………まあ、そんなところだね。」
「なるほど、どうりで機怪魔獣に詳しいと思ったら………」
一方、ロンたちは今の会話からデュランたちの目的を察した。デュランが肯定すると、ケイリーも納得したように頷いていた。草介はデュランたちの正体がバレたら少し面倒そうだなと思っていたが、ふと、レピオの方に視線を移すと、食べかけのサンドイッチを手に顔に影をさしていた。
「レピオ、どうかしたのか?」
「……いや、何でも……ちょっと考え事を」
草介が声をかけるが、レピオは首を横に振って答えた。草介は、1週間程度彼女たちデュランダー隊と過ごしていて、こんな顔のレピオを初めて見たためか、少し心配になった。草介はレピオに聞こうとしたが、彼女は卓上に置かれていた紙ナプキンを2,3枚手に取ると、サンドイッチを左手で食べながら右手に持ったペンでさらさらと何かを書き始めた。
「ほれ。」
「へ?」
レピオはサンドイッチを食べ終えると、何か落書きのようなものを書いた紙ナプキンをケイリーの目の前にポイっと投げた。ケイリーはそれを手に取って見てみると、読み進めているうちに目を見開き、次々にナプキンに書かれたメモを読み込んだ。
「こ、これって……!?」
「とりあえず、オレが思いついた改善案をいくつかメモったから。参考にでもしてくれ。いらないなら捨てちゃってもいいから。」
メモを見たケイリーが驚きと感動等、様々な感情の混じった声を漏らす。レピオはそう言い捨てると、草介やフローは意外そうな顔で彼女を見ていた。
「意外だな、レピオがそんなにメカに詳しいなんて………」
「レピオは、オート主任が驚くほどにメカの知識に詳しいのでござる。」
「アタシらのトライメイルの構造やチューニングにも、レピオのアドバイスが活かされてるアル。」
「そうだったのか………」
(インテリ系ヤンキーだったのか………)
(しかし、それにしたって機怪魔獣の構造に詳しい気がするが………)
ハバキリとレイェンが説明をすると、感心したように草介が頷いた。一方で、フローは疑問を抱いていたが、デュランとレピオの様子から何か訳ありなのだろうと思って、心に留めておくことにした。
「こんな手法があるなんて………!」
「こ、この式と設計があれば………!」
一方で、ケイリーやヒュージたちは、レピオから渡されたメモをのぞき込むように見ていた。メモを手に、マカロンティーヌちゃんの機能は数倍にも跳ね上がる。先ほどまで意気消沈していた彼女らの瞳に『やる気』と『期待』の炎が燃えているのを見て、デュランたちはホッとしていた。
「ん?」
ふと、シャスティは食堂の窓が視界に入り、そこで異変に気が付いた。外の景色が真っ白になっていたのだ。見てみれば、いつの間にか濃い霧が基地を覆っていた。
「あれ?いつの間に霧なんて………」
シャスティが隣にいる草介に話しかけようとした、その時である。
ウーーーー!
「「「「「!?」」」」」
突如として、基地内にけたたましいサイレンが鳴り響いた!
「警報!?」
「敵襲か!!」
警報が鳴った瞬間、食堂の兵士たちは一斉に立ち上がり、慌ただしく持ち場に戻っていく。
「デュラン!」
「ああ!我々も行くぞ!!」
デュランがそう言うと、草介たちも走り出した。
基地の建物の外に出ると濃い霧が立ち込めており、周囲の様子を視認することは難しくなっていた。
「何だ、この霧は?」
「いつの間にこんな霧が………?」
「分かりません。突然、このような霧が………」
「この辺は、こんな風に霧が立つことなんて滅多にないのに………」
デュランとロンが霧に驚く中、近くにいた兵士が困惑気味に答えた。その時、ニールは基地の正門の上空に、巨大な影を見つけた。
「あれは!?」
「え!?」
草介たちもそちらを見ると、段々とその影が近づいて来る。そして、それの姿が十分に分かるまで近づいて来て、その全貌が明らかになる。
それは、巨大な帆船だった。何年も手入れされていないかのようなボロボロの甲板と黒い帆が揺れていて、船首から船底にかけて巨大な人骨が胸で手を交差させた姿勢で埋め込まれている。そのおどろおどろしい見た目に、草介やアルス、周囲の兵士たちは顔を引きつらせた。
「な、何アルかアレ!?」
「幽霊船……!?」
「まさか……!!」
同じころ、基地の司令塔に上がったケイリーは、基地に近づいてくる幽霊船の姿を視認して、基地の司令官と共に驚きの顔となった。
「あれはまさか、『フライング・ダッチマン号』!?」
「間違いない………魔族の幽霊船だ!!」
「この霧もあれの仕業か………!!」
「機怪魔獣投入前の海戦で、幽霊船艦隊もろとも壊滅したと聞いたが………」
「新造されたのか!?」
司令塔の兵士たちがざわつき始める。地上の兵士たちも、幽霊船の姿に動揺しているようだった。
『モルホン基地にいる者たちに告ぐ。』
その時、フライング・ダッチマン号から響くような恐ろしい声が響いて来た。
『我らは『霊族長バルベエ』率いる、魔王軍幽霊船艦隊である。この度は、お前たちに『立ち退き要求』に参った!』
「立ち退きだと!?」
「ふざけやがって!」
フライング・ダッチマン号からの『立ち退き要求』に、兵士たちが怒りを露わにする。そんな中、ケイリーを追って来たデュランとレピオも驚きの顔を見せた。
『まずはその件について、直接話をしたい。話し合いの場を設けてはもらえないだろうか?』
しかし、続いて幽霊船から聞こえてきた話し合いの申し出に、兵士たちの怒りは困惑に変わった。ケイリーと司令官は顔を見合わせていると、兵士の1人が声を出した。
「司令官!連中の申し出なんて聞く必要はありません!攻撃の許可を!」
「向こうに魔法障壁があっても、「障壁貫通弾」なら問題ありません!」
「だ、だが………!」
司令官は少し戸惑っている様子だった。ケイリーにはそこまでの権限がないのか、歯痒い表情を見せていた。しかし、そこでデュランが進言をしてきた。
「いや、ここは交渉に応じるべきだ。」
「何を!?」
「向こうは話し合いを希望しているんだ。それを無視して攻撃をしてしまっては、こちらは「卑怯者」の烙印を押されてしまう。それが魔王軍を通じて世界中に伝わってしまっては、国の恥になってしまうと思うが?」
「そ、それは………!」
デュランの冷静な言葉に、兵士たちは言葉を詰まらせる。司令官はケイリーと顔を合わせて頷きあうと、決定を下した。
「………分かった、向こうの要求に応じよう。拡声器の用意をしてくれ。」
「は、はい!」
司令官の命令に、兵士は慌てて司令塔から降りていく。
(流石は隊長だ。無駄な争いを避けるように助言をするんだからな………)
デュランの隣にいたレピオは、デュランの行動に感心していた。
†
十数分後、交渉を承諾した司令官の言葉を聞いた幽霊船は、船底の骸骨の手足を伸ばして四つん這いのような姿勢で基地前の地面に着地した。デュランや兵士たちが後ろで控える中、司令官とケイリーは、幽霊船からの交渉人を出迎えるべく待ち構えていた。
「安心してくれ。いざとなったら、私も手助けする。」
「は、はい………」
緊張するケイリーの後ろから、デュランが耳打ちをする。隣のロンや草介も頷いた。
すると、船首の骸骨の口が大きく開いたかと思うと、スロープが地面まで伸びて中からスケルトンやリビングアーマー、ゴースト等の幽霊系魔族がぞろぞろと出てきた。
「あれが幽霊船の船員か………結構な数がいるな………」
「噂通り、幽霊系の魔族で構成されている………」
草介の後ろで、カールとドラムが小さく呟いた。スケルトンたちはスロープの左右に規則正しく整列をして道を作ると、骸骨の口から3つの人影が出てきた。
左右には忍者めいた男とモヒカンの筋肉質の大男、そして中央には、モヒカンの男よりも頭2つ以上大きく、1.5倍もの横幅を持った巨大な褐色の鎧騎士であった。右手に頭蓋骨を抱え、動くたびにボロボロのマントが翻り、ガチャガチャと鎧の擦れる音がしている。鎧騎士の姿が見えた瞬間、スケルトンたちは片膝をついて跪いた。
「あ、あいつがさっき話に出ていた、バルベエか………!」
「何と恐ろしい出で立ち………!」
スケルトンたちの様子から、その場にいた全員は鎧騎士がバルベエだと察した。鎧騎士は歩みを進めて、草介たちの目の前で立ち止まったかと思うと、右手に抱えていた頭蓋骨をそっと地面に下ろした。
何をしているのだろうと思っていると、頭蓋骨から手足がにょきにょきと生えて、懐から小さな王冠を取り出して頭に被った。よく見れば、それは大分デフォルメされた下あごのない、1.5~2頭身の骸骨であった。骸骨はトコトコと司令官の目の前まで歩いてきた。
「おみゃーが、ここの司令官だがや?」
「え?あ、はい、そうですけど………」
骸骨は甲高い声でそう聞いてきた。呆気にとられた司令官が困惑気味に答えると、骸骨は胸もないというのに「エッヘン」と胸を張る様にして、名乗った。
「わしがこの幽霊船艦隊を率いる、バルベエだがや!今回は交渉に応じてくれて、感謝するだがや!」
「「「え、こっち!?」」」
「にゃ?」
バルベエと名乗った骸骨に、思わず草介たちはツッコミを入れてしまった。兵士たちもズッコケる中、バルベエらしき骸骨は、そのツッコミをキョトンとした顔で反応してきた。
「あっちのデカい鎧じゃなくて、こっちの骸骨の方なの!?」
「え、じゃああの鎧騎士は?」
「アイツはワシの右腕、リビングアーマーのフォウリーだがや。」
「あ、よろしくお願いします。」
「あ、いえ、こちらこそ………(意外と丁寧………)」
頭を下げて挨拶をしてきたフォウリーに、デュランたちも思わず頭を下げた。
「ほ、本当にお前、この中で一番偉いのかよ?」
「いくら何でも、流石に信じられないな………」
レピオや草介は、バルベエの見た目と地球の名古屋弁に似た口調故に半信半疑だった。それを聞いたフォウリーは、立ち上がって抗議をしてきた。
「何を無礼な!こちらの“
「四族長……?」
聞きなれない単語に草介が首を傾げる。バルベエはそれを見て、口を開いた。
「その見た目………おみゃーが姫様の言っていた『勇者』だにゃー?異世界から来たんなら、知らんのも無理はにゃーな。他にも知らん者もいるみたいだし、特別に教えてやるだがや。」
バルベエはそう言うと、フォウリーの用意した台に乗って説明を始めた。
「ワシら魔族は、大きく分けて5つの種族に分けられておる。
竜人、リザードマン、ラミア等の爬虫類系が属する竜族、
オーガ、ゴブリン、オーク、ドワーフ等の亜人系が属する鬼族、
ワーウルフ、セイレーン、ミノタウロス等の獣人系が属する獣族、
スライム、シルフ、ドロタボウ等の自然系が属する精族、
そして、スケルトン、リビングアーマー等の幽霊系が属する霊族だがや。」
バルベエの説明に、草介やデュランたちに加え、ロンたちも納得したように頷いた。
「この内、竜族は魔王であるダインズ様が頂点として君臨し魔族全体を束ね、他の4種族をそれぞれ束ねるのが、ワシら四族長!ワシはその内の1人にして霊族全体を束ねる『霊族長』っちゅう訳だがや!!」
「そ、そうだったのか………!」
「勉強になった。ありがとう。」
バルベエが説明をすると、デュランや草介だけではなく、魔帝国や魔族の内情にそこまで詳しくなかったらしいロンやフェイも興味深そうに聞き入っていた。草介は「いわゆる『四天王』みたいなものか」と内心解釈していた。
「てことはお前、この幽霊船の連中だけじゃなくて、霊族全体で偉いのかよ………?」
「そんな小学生の落書きみたいな見た目で?」
「実際、ワシは作者が小学生の時に考えたキャラが元だがや。」
「小学生の落書きだった!?」
バルベエのメタな裏事情を聞いてしまい、少し申し訳ない気持ちになるレピオ。すると、司令官がおずおずと手を上げてきた。
「そ、それで、その霊族長様が直々に立ち退き要求とはいったい?」
「あ、そうだったがや。それじゃ、本題に入るだがや。」
バルベエはそう言うと、コホンと咳払いをして、話し始めた。
「この基地を作る際に、廃村を潰したじゃろ?その廃村は、ゴーストを始めとした魔族が住み処としていたんだがや。」
「え………?」
「た、たしかにそのような記録があったような………?」
バルベエの言葉に、その場にいた者たちがざわつき始めた。
「おみゃーらがそこにある基地を作るのに廃村を潰したせいで、そこにいた魔族は追い出されて住む場所を失った挙句、周囲の森に隠れて住んでも工事や訓練の際の騒音に悩まされとったがや。その後に抗議しようともしたが、おみゃーらは聞く耳を持たんかったがや!」
「そ、それは………!」
「それでどうすることもできないっちゅう訳で、ワシがこの『フライング・ダッチマン二世号』で出向いたんだがや!」
司令官とケイリーは、バルベエの抗議に狼狽える。
これには、流石にデュランたちも対応に困った。向こうの話を聞く限りでは主張は正当なものである。しかし、だからと言って無条件に受け入れる訳にもいかないだろう。これは話が拗れてしまうだろうと思っていると、バルベエは右手の指を3本伸ばして話を続けた。
「いきなりこんな事言われて「はいそうですか」とおみゃーらが聞き入れて基地を放棄してくれるとは、流石にワシも思っていないだがや。『3日』の猶予をやる。その間、ワシらは少し離れた場所で待つ。おみゃーらは上と話し合ったりするといいだがや。」
「え?」
バルベエの言葉に司令官とケイリーは呆気に取られ、デュランたちも驚く。
「3日の間に何の返答も行動もなければ、容赦なくこの基地を破壊させてもらうだがや!」
「そ、そんな!?」
バルベエはそう言うと、フォウリーに顎で合図をする。するとフォウリーは頷き返し、スケルトンたちと共に幽霊船へと戻って行った。
「3日後!またここに来るがや!!」
最後にバルベエはその一言を残すと、幽霊船へと乗り込んで行く。程なくして、幽霊船フライング・ダッチマン二世号は、空へと飛び立っていった。
幽霊船がいなくなると、基地の周囲を取り囲んでいた霧が晴れて、日の光が差し込んできた。
「これは、厄介な事になったな………」
「どうしますか、司令官………?」
デュランが困ったように呟くと、ケイリーが司令官に指示を仰いだ。司令官は頭を抱えながらも、判断を下した。
「とにかく、上と相談するしかないだろう……3日後までに、何とかなればいいが……」
司令官はそう言うと、兵士たちに基地に戻るよう指示を出した。
「デュラン、さっきの連中………」
「ああ、ワルンダイツの六魔獣将と見て間違いないだろう。」
兵士たちと一緒に戻る中、ニールとデュランは小声で話していた。
先ほどの一団の中に、明らかに幽霊系の魔族とは違う姿の2人がいた。考えるまでもなく、六魔獣将の一員であろう。
「何か、胸騒ぎがするな………何も起こらなければ良いのだが………」
デュランは、幽霊船の飛んで行った方の空を見上げながら、そう呟いた。
†
同じころ、飛び去った幽霊船の中では、ウルフとバッファローが話し合っていた。
「どうする気だ、ウルフ?」
「………向こうの返答を待っている気はない。今夜、奇襲を仕掛けるぞ。」
「けど、そんなことしたらバルベエに申し訳なくないか?」
バッファローは、バルベエが今回攻めてきたのは話し合いで解決を図ろうとしていたからだと知っていた。しかし、ウルフはギロリと彼を睨んだ。
「それは向こうの都合、俺たちの目的はあくまで機動兵器の破壊だ。」
「けどよ………」
「なに、連中には事故で爆発した、とでも言えば良かろう。」
ウルフが冷酷にそう言うが、バッファローは少し不安そうな顔になっていた。
モルホン基地にいたケイリーや草介、デュランたちは、そして攻め込んできたバルベエたちは、気が付いていなかった。
基地の周囲に、何体もの機怪魔獣が隠れており、モルホン基地への襲撃命令を今か今かと待っていることを―――
【つづく】
・マカロンティーヌちゃんの欠陥と改善案。「世界一ィィィ!!」は入れない選択肢はありませんでしたw
・四族長の設定と、霊族長バルベエ登場。作中にある通り、小学生の時に考えた「ドクロキング」というキャラの見た目と喋り方をほぼそのまま使っています。異名の“髑髏王”もそこから。
・という訳で次回、ウルフやらかすの巻にご期待ください。