異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第1話 二人の勇者が大地に立った

異世界勇者ロボ 第1話

二人の勇者が大地に立った

 

 

 

 

 

草介とデュランの2人が召喚されてから数十分後。

クリセイ王とレヴァンティ、ガラティンは他の騎士達を退室させると、混乱していた2人が落ち着くのを待ってから、状況の説明―――シンナセンのこと、魔王軍の侵攻、王女の誘拐―――をする事にした。

 

「―――つまり、ここはシンナセンって世界のロコロ王国ってところで、俺か、このデュランさんのどちらかは勇者召喚の儀式でここに呼び出された、ってことか………」

 

草介がまとめた言葉にレヴァンティが頷く。デュランは顎に手を当ててふむ、と何か考え込むような素振りを見せると、口を開いた。

 

「そちらの事情と、私達がここにいる理由は分かりましたが………いくら世界の危機だからといって、勝手に異世界の人間を呼び出して、戦わせるっていうのは……いかがなものか?」

 

デュランの冷静な指摘に、一瞬場の空気が張り詰める。レヴァンティやガラティンは反論しようとするが、王がそれを制した。

 

「その通りだ。我らは、己の都合で君たちを召喚した。異世界から来た君たちにとって、この戦争は無関係なものかもしれん。それでも、我々は藁にもすがる思いで召喚を決行したのだ………」

 

王は深く頭を下げた。

 

「どうか世界を、娘を救うために手を貸してほしい……!」

 

堂々たる王が必死に懇願する姿に、草介とデュランは顔を見合わせる。

 

「……困ったな。俺は剣道をやっているとはいえ、実際に戦ったことはないし……でも、放っておくのも気が引けるし……」

 

草介がぼそっと呟く。デュランは少し考えた後、ため息をついた。

 

「……まあ、ここで断ったとしても、すぐに元の世界に戻れるわけでもなさそうだ。やるだけやってみるか」

 

草介も同意する。

 

「分かったよ。俺も手伝う。でも、いきなり戦えって言われても無理だから、少しずつ慣れさせてくれよ?」

 

王は安堵した表情を見せ、レヴァンティとガラティンも頷いた。

 

「時間がない。早速ですまないが、まずは戦いに備えよう」

 

ガラティンがそういうと、2人は彼について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草介とデュランは城内の訓練場にガラティンに案内されると、訓練用の木刀を受け取ってガラティン相手に打ち込みや防御の練習をした。

 

「はあっ!」

 

草介は木刀を振りかぶると、ガラティンに『面』の要領で思い切り叩きつけた。激しい金属音が鳴り響き、ガラティンの手にした盾が弾き飛ばされて宙を舞う。

 

「ふむ、ソウスケは筋がいいな。剣の訓練をしていたのか?」

「い、いえ、中学から剣道やってたから。去年の県大会は、4位だったけど……」

「なるほど、それならば基礎はしっかりしているな。」

 

ガラティンが草介の剣術をそう評価する。その話を聞きながら素振りをしていたデュランは、木刀を下ろして少し不安そうな顔をしながら、服の袖で額の汗を拭っていた

 

「では、次はデュラン殿の番だな。」

「うーん、私は、あまり剣は得意ではないんだけどなぁ………」

 

そう言いながらも、木刀を構えてガラティンと向き合うデュラン。

 

「では、どこからでもかかってきて構わないぞ。」

「ああ、では、行くぞ!」

 

デュランは走り込むと、ガラティンの懐に潜り込もうとするが、ガラティンは盾でその攻撃を受け止める。

 

「なかなかの動きだ、デュラン殿。だが……!」

 

ガラティンは盾を押し出し、デュランの体を突き飛ばす。デュランはその衝撃に耐えながら数歩後退するも、すぐに体勢を立て直して剣を振りかぶる。

 

「せやぁっ!!」

 

デュランの鋭い一撃を盾で受け止めると、ガラティンはそのまま押し返す。

 

「ふむ……デュラン殿、言うほど悪い腕ではないですな。」

「ありがとう、ガラティン。しかし、やはり剣は向いてないな………」

 

ガラティンの評価にデュランは苦笑しながら後頭部を掻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度稽古をした2人は、ガラティンに案内されて武器庫に案内された。

 

「お二人に合う防具と剣を選んでいただきたい。私も手を貸そう。」

「ありがとうございます。」

 

草介は礼を言いながら倉庫に入る。中には、様々な武器や鎧が並んでいた。

 

「ガラティン。」

「む?」

 

草介とデュランが鎧を見ていると、ガラティンの後ろのドア越しにレヴァンティが小声で話しかけてきた。ガラティンは振り返らないまま話を続けた。

 

「あの2人、ソウスケとデュランのどちらかが勇者ではあると思われるが、勇者は本来1人じゃ。それを見極める必要がある。2人に同行し、それを見極めて来てほしい。」

「承知しました………」

「頼んだぞ、ガラティン。」

 

レヴァンティはそういうと密かに部屋を出て行った。

 

「デュランさん、これとかどうですか? 動きやすそうだけど……」

 

草介は、鎧を1着手に取りデュランに見せていた。ガラティンは草介の手にした大きめの鎧を見て、少し眉をひそめた。

 

「ソウスケ殿の戦い方を考えると、もう少し軽量な防具の方が良いかもしれませんな。」

 

ガラティンがそう指摘すると、草介は手にしていた大きめの鎧を戻し、もう少し動きやすそうな軽装鎧を手に取った。

 

「確かに、剣道の防具も重くて動きにくい時があったし……こっちの方が動きやすいかも。」

「うむ。それが良いでしょう。」

 

一方で、デュランは軽めの革鎧を選んでいた。

 

「……やっぱりこれくらいの軽装の方がしっくりくるな。」

「デュラン殿は機動力を活かす戦い方をするのですね。」

「ま、そんなところだ。」

 

デュランはさらりと流しながらも、ガラティンの観察する視線に気づいていた。

 

「武器の方はどうする?」

 

草介が剣を選びながらデュランに尋ねる。

 

「俺は、剣よりも……できれば銃火器が欲しいところなんだけどな。」

 

デュランが冗談めかして言うと、ガラティンが怪訝な顔をする。

 

「銃火器……? それはどのような武器なのですか?」

「ああ、こっちの世界にはないか。まあ、簡単に言うと遠距離攻撃ができる道具だよ。」

「なるほど、魔法のようなものですか。」

「……まあ、そんな感じだな。」

 

デュランは苦笑しながら、比較的軽めの片手剣を手に取った。

 

「ま、しばらくはこれで頑張るか。」

 

一方の草介は、試しに何本かの剣を持ち比べた後、自分の腕力に合いそうな一本を選んだ。

 

「……よし、これにする!」

 

ガラティンは2人が武器を選ぶ様子を見つつ、レヴァンティからの言葉を思い返していた。

 

(この2人のどちらかが、本物の勇者……か。)

 

彼は深く考えながらも、心の中で決意する。

 

(見極めなければならない……責任重大だな………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装備を整えた草介とデュランは、ガラティンと共に王都の出入口前にある馬車の停留場に来ていた。

 

「情報によれば、姫はこの王都ロシロから西にある、ズンケート砦に捕らえられているとのことだ。」

 

馬の準備をしている最中、ガラティンは地図を開いて草介とデュランに見せながら説明する。

 

「砦は1週間ほど前に魔王軍によって奪われてしまい、現在は魔王軍の拠点と化している。」

「砦か……」

「砦までは、ここから馬車で大体1日半はかかる。今から出発すれば、姫が別の場所へ連れて行かれる前に、ギリギリ追いつくだろう。召喚して直ぐですまないが、直ぐにでも出立するとしよう。」

 

デュランと草介が頷いた。2人の準備が終わったことを確認したガラティンは、2人を馬車に乗るよう促し、自身も乗り込んだ。

 

「リジル、私が乗ったら出してくれ。」

「分かりました。」

 

従者のリジルはガラティンが乗ったのを確認すると、馬車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都を出発してから、数時間が経った。

草介は馬車の荷台に揺られながら窓の外の景色を見ていたが、不意にガラティンがデュランに話しかける声がした。

 

「デュラン殿、それは何ですか?」

 

草介がそちらを見てみると、デュランは青く少しゴツめのカバーのスマートフォンを手にしていた。デュランはガラティンに何て説明をすればいいか少し考えた後、

 

「これか? これはスマートフォンといって、うーん………遠く離れた相手と会話をしたり、連絡を取ったりするために作られた道具なんだ。」

「ほう、私たちも遠距離通話の魔法装置がありますが、ここまで小さくはないし、場所も取るから村に1つ、大きな町でも10個くらいしか置いてありませんからね。」

 

ガラティンが興味深そうにデュランの手の中のスマホをまじまじと見る。デュランが苦笑していると、草介が話しかけてきた。

 

「それで、スマホいじって何していたんだ?」

「ああ、通信ができないかと思ってね。ここに来る前に、妹や仲間と一緒だったから、連絡が出来ればと思ったのだけど……」

「あ………」

 

それを聞いて、草介もズボンのポケットからスマホを取り出して操作してみるが、『圏外』の表示を見て肩を落とした。

 

「ダメみたいだな……母さん、心配してるだろうな………あ、父さんも」

 

2人ががっくりと肩を落としていると、ガラティンが申し訳なさそうな顔をして謝罪する。

 

「す、すまない……我々の都合で、君たちを巻き込んでしまった……」

 

しかし、デュランはそれを聞いて、軽く手を振った。

 

「いや、謝らなくていい。俺たちはもうここに来てしまったんだ。戻れないなら、どうにかするしかない。」

 

草介もそれに同調するように頷く。

 

「まあ、戻れなくても、なんとかするしかないよな。」

 

そう言いつつも、草介の目には一瞬、不安の色がよぎった。馬車の中が重苦しい空気に包まれそうになり、ガラティンは話題を逸らそうと、夕日に染まり始めた外の景色を眺める。

 

「そ、そろそろ日も暮れてきましたな。もうしばらく行くとユーアという農村があるので、今夜はそこで休みましょう。」

「そうだな………」

 

ガラティンの提案にデュランは頷き、草介も同意する。

馬車は日暮れの草原の中を、ユーアの村に向かって走って行く。数十分後、手綱を握るリジルが馬車内に話しかけてきた。

 

「ガラティン様、ユーアの村が見えて来ました。」

「ありがとう。」

 

ガラティンがリジルに礼を言う。草介とデュランは興味深そうに窓から外を見ると、遠くの方に家屋が10件程度の小さな農村が見えて来た。

 

「あれがユーアの村か……」

 

デュランが小さくつぶやいた。このペースであれば、後10分もかからずに到着するだろう。そう思っていた次の瞬間、村から爆発音と共に炎が吹き上がった。

 

「!!」

 

草介とデュランは驚いて立ち上がる。さらに、次々と爆発音が響き、村のあちこちから炎が噴き上がった。

 

「何事だ!?」

「リジル、速度を上げてくれ!!」

「は、はい!!」

 

ガラティンが鋭く指示を出し、御者のリジルが手綱を強く引く。馬車は激しく揺れながらも、燃え盛る村へと向かって加速した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の入り口に到達すると、燃え盛る村から人々が逃げ惑っていた。ガラティンが馬車から降りて彼らの元に駆け寄る。

 

「一体どうしたというのだ!?」

「ま、魔王軍が!突然攻めて来たんだ!!」

「何だと!?」

 

ガラティンが驚きの声を上げる。馬車から降りてきた草介とデュランもその惨状に驚愕と困惑の表情を浮かべた。

 

「魔王軍だと!?」

「まさか、さっそく対面することになるとは……!」

 

その時、村の炎の奥から十体以上の黒い影がユラユラと揺らめいたかと思うと、炎の向こうから150cm前後の小柄な身体に皮鎧を付けたゴブリンの集団が現れた。

 

「ゴブリンか………!」

「ギヒヒ……何か強そうな人間がいるなぁ……!」

「ただの村襲うだけじゃあ、手ごたえがねえからなぁ!」

 

ゴブリン達は、棍棒や短剣を手に、歪んだ笑みを浮かべる。ガラティンは険しい顔をしていると、デュランが彼に聞いた。

 

「奴らが、魔王軍か?」

「ああ。ゴブリンだ。小柄ながら悪知恵が働く、厄介な相手だ。」

 

ガラティンが説明をすると、草介はゴクリと息を呑んで腰に差した剣に手をかける。しかし、デュランは草介の手が震えているのに気が付くと、優しく手で制した。

 

「草介、君はリジルと一緒に住民たちの避難を誘導してくれ。奴らは我々がどうにかしよう。」

「で、でも……」

「まだ戦いの覚悟の決まっていない君では、かえって危険だ。」

「わ、わかった……」

 

草介は少々不満そうだったが、小さく頷き、リジルとともに住民達の避難誘導に向かった。ゴブリンたちがそれに気づいて襲い掛かろうとしたが、デュランとガラティンが立ちふさがってその行く手を阻む。

 

「さて、早速の初陣で申し訳ないのだが、行けますかなデュラン殿?」

「ああ、問題ないさ。」

「邪魔するな人間!!」

 

デュランとガラティンが不敵な笑みを浮かべると、ゴブリン達は再び歪んだ笑みを浮かべ、飛び掛かってきた。2人はゴブリンの集団と戦闘を開始した。

ガラティンは鋭く剣を振るい、次々と襲いかかるゴブリンを切り伏せていく。一方、デュランは軽やかな身のこなしで敵の攻撃をかわしつつ、要所要所で的確に急所を狙う。

 

「やはり、良い腕をしているな、デュラン殿!」

「それはどうも!ガラティンさんも、流石だな!」

 

2人は背中合わせに剣を構えて、互いに称え合う。ゴブリン達は2人の剣技に怯んでいた。

 

「つ、強い……」

「ひるむな!!相手は2人だ!かかれぇ!!」

 

一頭のゴブリンの掛け声で、他のゴブリンが再び襲い掛かってきた。2人はその場から左右に飛び退くと、ゴブリン達は地面を打った衝撃で動けなくなってしまう。その隙を突いて、デュランとガラティンの2人はゴブリン達を次々と切り伏せていった。

 

「すごいな、デュラン殿………(やはり、彼が『聖剣の勇者』なのか?いや、まだ結論付けるには早い………)」

 

ゴブリンを斬り捨てながらも、横目でデュランの様子を見ていたガラティンは、彼の戦いぶりを見て心中で独りごちる。一方、生き残ったゴブリン達は、2人の圧倒的な力の前にたじろいでいた。

 

「な、なんという奴らだ………!!」

「う、狼狽えるな!もうすぐ()()()()が来てくださる!それまで持ちこたえるのだ!!」

「お、おう!!」

(『あのお方』………?)

 

ゴブリン達の会話が聞こえたデュランが疑問に思うが、直後にゴブリン達が向かって来たため、その考えは頭の片隅に追いやられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ユーア村から数百mほど離れた森の中に隠れるように、魔王軍の部隊が陣取っていた。

 

「何?人間の抵抗に?」

『はい、村の外から来たと思わしき剣士2人に、ゴブリンの部隊をほぼ壊滅状態にされてしまい………』

「2人だけで、か?」

 

サッカーボール程ある水晶型の携帯用通信装置で、2人の魔族が少し驚いた様子で部下のゴブリンから報告を受けていた。

1人は、ブタ鼻と牙を持ったスキンヘッドで緑の肌の大柄なオークの男で、金属製の鎧を着た戦士の装備をしている。

もう1人は、尖った耳と鼻を持った青い肌の背の高いゴブリンの男で、杖やローブといった魔法使いの装備をしている。

 

「ふーむ、これは少し予想外だな……」

「いかがいたしますダスか、姫様?」

 

オークが振り返って背後の椅子に座る人物に問いかけた。

そこにいたのは、炎のように真っ赤なロングヘアに黒い角を頭の左右に生やし、髪と同じ色のドレスを着た、サファイア色の切れ目の魔族の美しい少女であった。スタイルもモデル並みであり、その胸は豊満であった。

姫と呼ばれたその魔族はため息を一つつくと、口を開いた。

 

「小さな村の侵略と思い、少し油断していたかしらね………仕方ないわね………」

 

彼女は立ち上がると、2人に命じた。

 

「私も出るわ。ランダート隊と私の『()()()()()()』の準備をしてちょうだい!」

「「は!!」」

 

ゴブリンとオークが返事をすると、姫はテントから出て行く。

 

ガッ

「ふぎゃんッ!!」

「「姫様!?」」

 

が、出て行こうとして躓いて、思いっきり地面にダイブしてしまった。

オークとゴブリンはその様子に思わず声を上げるが、姫は赤くなった鼻を抑えつつ再び立ち上がると、ドレスの埃をはたいて落とした。

 

「い、行って来るわね!」

「は、はい!」

 

恥じらいから顔を真っ赤にしながらも、彼女は部下を連れて急いで森から出て行く。

 

 

 

 

 

出て行った先には、巨大な人型の機械兵器が、片膝をつくようにして待ち構えていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだ!」

「慌てないで!!」

 

避難誘導をしていた草介とリジルは、住民たちを安全な場所へと急がせていた。あちこちから火の手があがる村の中を走り回り、逃げ遅れや取り残された人がいないか確認していくが、ほとんどの住民は避難できている様子だった。

 

「デュランさんたちがゴブリンを引き付けてくれているおかげか、火事の割に人の被害は少なそうだな……」

 

リジルが倒れた老婆に手を貸す後ろで、草介は小声で呟く。周囲に気を配っていたその時、甲高い叫び声が右の方響いた。

 

「きゃあああっ!!」

「!?」

 

草介が目を向けると、1人の少女が転倒し、その頭上にゴブリンが棍棒を振り上げて迫っていた。

 

「くっ………!」

 

リジルは老婆に手を貸していて動く事ができない。草介は咄嗟に飛び出すと、ゴブリンの元へ突っ込んで行った

 

「間に合えっ!」

 

ゴブリンがこちらに気付くが、その瞬間、草介が剣を抜いて横なぎに一閃――。

 

ズァッ

「ぐぎゃっ!」

 

ゴブリンは悲鳴を上げて後方に吹き飛び、地面に転がっていった。

 

「あ、………?」

「ぎ………がぅ」

 

草介が気付いた時には、ゴブリンは血を流して倒れ、動かなくなっていった。草介の手は震え、目の前で起きたことが現実とは思えなかった。

 

「た、倒した……? 俺が……?」

 

草介は思わず剣を見つめた。剣に付着したゴブリンの血が垂れて、剣を伝っていく。草介が呆然としていると、リジルが慌てて駆け寄ってきた。

 

「ソウスケ殿!お怪我はありませんか!?」

「え?あ、ああ……大丈夫……」

 

草介は我に返ると、剣を鞘に納める。リジルが安堵をすると、倒れていた少女が立ち上がって草介の方に駆け寄ってきた。

 

「あ、あの!助けてくれてありがとうございますであります!」

「あ、ああ……大丈夫?」

「は、はい!大丈夫であります!」

 

草介は少し変わった喋り方をする少女だなと思った。先ほどはそこまで気が回らなかったが、改めて少女の姿を見た。

見た所、草介と歳は変わらない程だろうか。ケープの付いた白い服にベレー帽を被り、薄ピンク色の髪と金色の瞳に丸い眼鏡をかけていた。リジルや先ほどの村人たちとは異なる服装の少女に少し違和感をおぼえた。

 

「君は……?」

 

草介が首を傾げて少女に聞こうとしたその時、ズシン、ズシン、という地響きが近づいてくるのが聞こえてきた。

 

「な、何だ……?」

「まさか……」

 

草介と少女が何事かと思い周囲を警戒していると、地響きはどんどん大きくなっていく。リジルが何かに気付いたようだが、草介は村の入り口に巨大な影を複数見つけた。

 

「な、何だあれは………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ゴブリンと戦っていたデュランとガラティンは、目の前に向かって来る10体近い巨大な人型兵器を見て、驚愕した。

 

「あれは………!!」

「き、機怪魔獣(きかいまじゅう)!?何故こんなところに………!?」

 

現れたのは、全長が15メートル程もあるカーキ色の武骨な人型兵器であった。首の埋まったドーム状の頭部にレンズのような単眼(モノアイ)のカメラアイが赤く光り、右手には大型の拳銃を持ち、腰にはメイスがマウントされていた。

デュランが驚く中、ガラティンは驚愕の声を上げる中、ガラティンが機怪魔獣と呼ぶ人型兵器の後ろからカラーリングが赤く肩の形状が異なる額に一本のアンテナが付いた、上官機と思わしき機体が前に出てきた。

 

『あらあら、ゴブリン達を一網打尽にしたからどんな奴らかと思えば、ただの人間じゃないの。』

 

赤い機怪魔獣のスピーカーを通して女性の声が聞こえてきた。2人が見上げると、腹部にあるハッチが開いて赤い髪に黒い二本角の魔族の少女が姿を現した。

 

「ごきげんよう、人間の戦士さんたち。私は『レイヴン魔帝国』魔王・ダインズ・レイヴンが娘、キアラ・レイヴンよ。以後お見知りおきを。もっとも、恐らく会うのはこれが最後になるでしょうけれど。」

「何!?」

「魔族の姫が、自ら………!?」

 

自ら魔王の娘と名乗ったキアラに、デュランとガラティンは目を見開く。まさか、魔王の娘である姫が直々に戦場に出ていたとは思ってもみなかった。キアラは目下の2人を見下ろしながら不敵な笑みを浮かべる。

 

「一介の冒険者や傭兵にしては質が良さそうね。だけど、流石に機怪魔獣の相手にはならないでしょうね。」

 

キアラはそう言ってコックピットに戻ると、機器を操作しながら通信機に向けて告げた。

 

「ボルグ、カラ!ランダートG3隊に命じて、そこの人間達に我らの力を見せてあげなさい!」

[[御意!!]]

 

通信機越しに指示を受けたオークのボルグとゴブリンのカラが返事をすると、周囲にいた無人陸上型量産歩兵型機怪魔獣・ランダートG3部隊のカメラアイが赤く光り、デュラン達に狙いを定めて銃を突き付けた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村の入り口まで走っていた草介たちは、銃声に驚いて足を止めて家屋の向こうに見えるランダートに驚愕の声を上げた。

 

「な、何だあのデカいの!?」

「あれは機怪魔獣……魔王軍がここ数ヶ月の間に導入した、巨大兵器です………」

「巨大兵器!?」

「機怪魔獣を導入されたせいで、我々人間は追い詰められているんです………」

 

ランダートの姿に唖然とする草介にリジルが説明をすると、草介はゴクリと息を呑んでランダートを凝視する。が、そこである事に気がついてリジルに振り返った。

 

「………ちょっと待って、あんた達、俺たちにアレの相手をさせようとしてたの?」

「あ、いえ、その………」

 

こっち生身だぞ?と草介がジト目で問い詰めると、リジルがちょっと目をそらしながらしどろもどろで言い返す。少女だけはランダート隊を見て険しい表情になっていたが、その時、銃撃で起きた土煙により標的を見失ったのか銃撃が途切れると、土煙の中からデュランとガラティンが草介たちの目の前に飛び出してきた。

 

「あ、デュランさん!」

「!お兄ちゃん!!」

「「え!?」」

 

デュランの姿を見た少女が声を上げる。草介とリジルが驚いて彼女を見ると、少女は2人の間を通ってデュランに駆け寄った。

 

「アルス!無事だったのか!!」

「はい!何とか………!」

 

デュランも駆け寄って来た少女・アルスに気がついて驚いた顔になるが、直ぐに安心した顔になる。デュランとアルスが再会を喜ぶのを見てガラティンや草介も思わず微笑ましい顔になっていた。

 

「そ、それよりもお兄ちゃん!あの機怪魔獣は!」

「ああ、これはいよいよ、()()()()()なんだろうな………」

「え?」

『そこにいたのね!』

 

デュランとアルスの会話に草介が思わず声を出す。草介がデュランに聞こうとしたその時、こちらに気が付いたらしい赤いランダートが、睨み付けるかのようにカメラアイを光らせてきた。

 

「ヤバ………!!」

 

草介がその場にいては駆けだそうとしたその時、アルスがデュランに何かを渡した。

 

「お兄ちゃん、これを!」

「これは………!!」

 

デュランの手に渡されたそれは、5cmにも満たない大きさの銀色のプレートであった。

 

「転移の時に、私の手元にあったであります!今は、これが必要であります!!」

「分かった!ありがとう!!」

「デュラン殿、それは………?」

 

ガラティンが問いかけるが、キアラ機の指示を受けてかランダート隊が銃口を向けてくる。草介たちが慌てるが、デュランはスマートフォンを取り出してアプリケーションの1つを機動させると、受け取ったプレートを本体上部のコネクターにセットした。

 

[ジップレートのセットを確認しました。]

「デュランカー、解凍!!」

[デュランカー、エクストラクト!!]

 

デュランの宣言と共に電子音声が鳴り響くと、スマートフォンから光が放たれる!

 

「うわっ!?」

『な、何!?』

 

眩い光に草介やキアラが目を覆う中、光は数百m先の地面に着弾すると、爆音と共に1台の白いスポーツカーがこちらに向かって走ってきた。

 

「な、何だあれは!?」

「あの車、どこから………!?」

 

ガラティンや草介が驚いている中、デュランはスポーツカーに向かってボンネットの上に飛び乗るように高く飛びあがった!

 

「フュージョイン!!」

 

デュランの掛け声と共に、彼は着地をするように吸い込まれるように一体化する!

 

「デュ、デュランさんが車と!?」

 

草介が驚きの声を上げている内に、デュランと一体化した車は高くジャンプをした!

 

『チェーンジ!!』

 

車からデュランの声が響くと、前半分が反転するように下半身に変形、空中で車体が反転すると、後部が変形して肩と両腕に変形、着地と同時に胸部が反転して獅子の顔が現れると、額にV字の角が光る、白い顔に緑の目を持ったロボットとなった!

 

『デュランダー!!』

 

変形したロボット・デュランダーは着地と同時に名乗りを上げた。

 

「デュ、デュラン?デュランなのか!?」

「もう、何が何だか………!?」

 

変形したデュランダーを見上げる草介が困惑しながらも問いかける。隣でガラティンは頭を抱えていた。

 

『ああ、そうだ。だが、今の私は『デュランダー』だ。』

「デュランダー……」

『な、何なのよアンタ!?ええい、ランダート隊!相手は1体よ!さっさとやっちゃいなさい!』

 

慌てた様子でキアラが指示をする。ランダート隊は銃を構え、デュランダーに狙いを定めた。

 

『ここは私に任せて、みんなは下がっていてくれ!!』

「わ、分かった!」

 

デュランダーがランダート隊に目を向けたまま声をかける。草介達は戸惑いながら、だがすぐに返事をして、アルスと共に後退していく。デュランダーは草介たちが下がったのを見届けたその瞬間、ランダート隊は手にした銃を発砲した!

デュランダーはその場で飛び上がって回避をすると、ランダート達に両腕を向けた。すると、前腕部が上にスライドして銃口が姿を現した。

 

『アームシューター!!』

 

デュランダーが叫ぶと、銃口からエネルギーの弾丸が連続して発射された!弾丸はランダートの手足や頭部、胸部に着弾し、次々に倒れて爆発していく!

 

『な………!!』

 

あっさり破壊されたランダートにキアラが声を上げる。残ったランダートは動きを止めるが、着地をしたデュランダーに視線を向けた。

 

『くっ、遠距離からでは不利だわ!接近戦を挑みなさい!!』

 

キアラの指示にランダート隊は銃を腰にマウントすると、メイスを手にしてデュランダーに接近戦を仕掛けて来た。デュランダーは両腕のアームシューターを格納すると右脚の一部がスライドして剣の柄が出てくると、それを手に取って抜刀した。

 

『Dブレード!!』

 

手にした剣・Dブレードの切っ先を向かって来るランダート隊に向けると、デュランダーは先頭のランダートが振り下ろしてきたメイスを避けて胴体を斬り裂くと、ランダートは爆発を上げて崩れ落ちる。デュランダーは爆発するよりも先に後続するランダートに向かって駆け出し、次々に斬り裂き爆散させた!

 

「つ、強い!!」

「機怪魔獣を、あんなにアッサリと………!!」

 

離れた場所から戦いの様子を見ていた草介とガラティンが感嘆の声を漏らす。デュランダーは残った2機のランダートも斬り捨てると、周囲にはランダートの残骸だけが残った。

 

[ま、まさかランダートをいとも簡単に……]

『いいえまだよ!まだ私のグランダートF2が残っているわ!』

[姫様!これ以上は………!]

 

ボルグとカラが止めるのも聞かず、キアラは自身が駆るグランダートF2は腰から長剣を引き抜くとデュランダーに向けて駆け出した!

 

『はあっ!!』

『!』

 

デュランダーはDブレードでグランダートF2が振り下ろす長剣を受け止めると、そのまま鍔競り合う。

 

『くっ……!』

『結構強いみたいだけど、所詮ランダートは無人の量産機!私の駆るグランダートF2はそれ以上の性能に加えて私の操縦!無人機の簡単な思考回路とは、訳が違うのよ!!』

 

キアラは叫びと共に鍔迫り合いの状態のままDブレードを弾くとデュランダーは距離を取る。グランダートは左腕にマウントされた2門の機関銃を向けると、デュランダーに向けて発砲する!

 

『アームシューター!!』

 

デュランダーは左腕を向けてアームシューターを展開、飛来する弾丸が空中で相殺されて爆炎が上がる!

 

『きゃっ!?』

 

爆炎に驚き思わず悲鳴を上げるキアラ。その一瞬の隙を突いて、デュランダーはグランダートに接近、手元の剣に向けて右脚でハイキックを放つと、グランダートの手から剣が宙を舞い、数百メートル先の地面に突き刺さる。

 

『あっ!し、しまった……!?』

『フウっ!!』

 

デュランダーはDブレードを構えると、横一線にグランダートの胴体を両断した!

 

『きゃあああああッ!!』

 

胴体を斬り裂かれたグランダートはコックピット内で爆発を起こしながら倒れ込み、デュランダーが飛び退いた瞬間に爆散!爆炎の中から丸いカプセルのような物が飛び出してくると、地面に2,3回バウンドしてから転がって止まり、ガシャと音を立ててハッチが開き、黒煙と一緒に煤まみれでボロボロになったキアラが這い出てきた。

 

「お、おのれぇ~………!」

「姫様!!」

「大丈夫ダスか!?」

 

よろよろと立ち上がりながら悔し気にデュランダーを睨むキアラ。駆け寄ってきたボルグとカラはキアラを心配しつつ、怪我がないか見ていた。

 

「何てヤツなの……機怪魔獣相手にここまでやるなんて……」

「姫様、ここは一旦退くダス!」

 

キアラが唇を噛む中、ボルグがキアラに撤退を提案する。ガラもそれに頷いた。キアラは悔しそうにするが、仕方がないとばかりに肩を落とした。

 

「仕方ないわね………そこのあなた!デュランダーとか言ったわね!次はこうはいかないわ!覚えておきなさい!!」

 

キアラがそういうと、カラの持っていた杖が光を放つ。すると足元に魔法陣が現れて、次の瞬間には3人は光と共に姿を消していた。

 

『消えた……』

「おそらく、転移魔法を使ったのでしょう。」

 

草介が声を漏らすと、ガラティンが推測する。警戒を解いたデュランダーはDブレードを納めると、未だに火が残る村に目を向けて、両腕を伸ばした。

 

『アームシューター、消火モード!』

 

そう言うと展開したアームシューターから青い光弾が放たれ、空中で破裂して消火剤が村全体に行き渡り、炎は鎮火していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ロコロ王国領土内 とある森

 

「―――ふむ、デュランダーが起動したか。」

 

森の中でスマホを見ていた人物は、画面に表示された情報を見て小さく呟いた。

 

「ここから近いな。通信ができないが、早く合流した方が良いな………」

 

そう呟くと、その人物は森の闇に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ロコロ王国の南に位置する『魔法国サンルスター』のとある町

 

魔王軍に乗っ取られた町で、ミノタウロスの群れと3人組の人間による戦闘が繰り広げられていた。

 

「お!隊長さんのマシンメイル、起動したっぽいぜ?」

 

襲い掛かって来るミノタウロスの棍棒を手斧で受け止めながら、スマホの画面を見ていた1人の少女が仲間に告げた。もう1人の少女がミノタウロス3体を峰打ちで昏倒させて、その少女に振り返った。

 

「そうでござるか。位置は?」

「こっから結構離れてるなぁ。直ぐには迎えそうにないぜー?」

「アチョーーーッ!!」

 

少女はミノタウロスを斧の腹で殴りつけながら答えると、今度は別の方向から怪鳥めいた奇声と共に10体近くのミノタウロスが吹き飛ばされた。

 

「今すぐに無理なら、コイツらぶっ飛ばしてからでも無問題(モーマンタイ)アルね~♪」

 

吹っ飛ばした張本人であろう少女は手に付いた血を拭いながら、事も無げに呟く。2人はそれを聞いて頷くと、その場でミノタウロスたちに拳を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

ロコロ王国の北東に位置する『クリファート公国』

 

城壁に囲まれた要塞都市の塀の上でスマホを見ている者がいた。その者はスマホをしまうと、肩にかけた弦楽器を手に空を見上げた。

 

「到着したようだけど、何だかトラブルに巻き込まれたみたいだね………まあ、あの人なら大丈夫だろうね。」

 

そう呟くと、奏者は地球の『三味線』に似た弦楽器を「べべん」と鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これで一件落着だな、ひとまずは。』

 

デュランダーがそう言うと、『チェンジ』の掛け声と共にデュランカーに変形、運転席側のドアが開いて、デュランが姿を見せた。

 

「デュランさん!!」

 

デュランの姿を見せた草介達が彼の下に駆け寄る。

 

「草介、怪我はないか?」

「うん、まあ大丈夫だけど………」

 

デュランが微笑みながら草介に問いかけると、草介は苦笑いで答えた。草介の後ろからアルスがデュランの元に駆け寄り、ガラティンとリジルも合流すると、少し困惑した表情で問いかけた。

 

「それでデュラン殿、あなたは一体………?」

「………そうだな。では、改めて自己紹介をさせてもらおう。」

 

デュランとアルスはスマホを取り出すと、アプリの1つを機動させて画面を草介たちに見せた。それはデュランの顔写真と2つの環が交差した惑星のようなエンブレムが表示された、身分証明のようなものであった。

 

「銀河連邦警察所属、『ブレイバー』デュランです。」

「同じく、刑事のアルスであります!」

 

2人は、それこそ警察手帳を提示した警察のようにそう名乗った。ガラティンとリジルはいまいち理解していない様子であったが、草介は驚きでデュラン達の顔を交互に見ていた。

 

「そ、それってつまり………2人は宇宙人、ってこと!?」

「まあ、分かりやすく言えば、そういうことだね。」

「えええーーーーーーーーー!?」

 

夜の帳が訪れる中、草介の驚きの叫びが村に響いた。

 

 

 

 

 

【つづく】




今作は、「異世界から勇者を召喚したら、勇者ロボも付いてきちゃったでござる。」という出オチみたいな発想から始まりました。デュランカー解凍シーンと変形シーンは頑張りました。

正直、「あれ」っぽいとは思いましたが、そう言われるのも承知の上です。
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