異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第18話 影に隠れて、牙剥く狼

異世界勇者ロボ 第18話

影に隠れて、牙剥く狼

 

 

 

 

 

霊族長バルベエ率いる幽霊船の襲来から数時間後、カマリサ帝国本国とロコロ王国王都に通信用魔導装置それぞれ連絡をした司令官とフローは、基地の会議室に集まって会議が始まった。

 

「カマリサ本国の軍司令部に報告はしたが、そうとうお怒りの様子だった。一応向こうでも話し合いはするそうだが………あの様子だと「徹底抗戦せよ」って言われる気がするな………」

「王都の軍にも連絡したけれど、確認と会議をして折り返すって………」

「そうか………」

 

司令官とフローが頭に手を当ててため息をつく。草介が肩を落として頷くと、ロンが口を開いた。

 

「魔王軍め………確かに魔族の住み処を奪ったのは人類側の落ち度ではあるが………!」

「だからと言って、魔族の要求においそれと応じるわけにはいきません………今は、上の判断を待ちましょう………」

 

ロンの呟きに応えるように、ケイリーも口を開いた。ふと、何か気になったのか、アルスが口を開いた。

 

「あの、そもそもその村って何で廃村になったのでありますか?」

「記録には、原因不明となっていまして……おそらくですが、作物の不作による飢饉ではないかと………」

 

アルスの質問に、司令官付きの秘書官らしき兵士が手元にある記録の束をめくりながら答えた。それに対して、カールが口を開いた。

 

「まさか、魔族の襲撃によるものじゃないか?」

「いえ、村に争った形跡はないと………」

「もし魔族によるものなら、人の住み処を奪ってのことなんじゃないのか!?」

 

秘書官は少し困った様子で答えるが、遮る様にドラムが声を上げる。しかし、そこでシャスティがおずおずと控え気味に手を挙げた。

 

「あの、それはねぇと思うだよ………」

「え?」

 

その発言に、一斉に視線がシャスティに集中した。シャスティはビクッと怯えたように震わせたが、おどおどしながらも説明を続けた。

 

「お、お師匠さまに聞いたことあんだけど、幽霊系の魔族ってのは、元は人間って説があるらしいだよ………」

「何だって?」

「ひ、人が死ぬと、体に蓄積されてたマナが体の外に出んだけど………それにはその人の生命力とか記憶が結びついてて、その人の写しみてぇなモン、いわゆる「魂」だそうだべ………その魂がゴーストになったり、骨だとか鎧とかに取り憑いたりしたのが、幽霊系の魔族らしいだよ………」

「じゃあ、その村にいた魔族って………?」

「元々その村の住人の魂、って可能性があるのか………」

「だとしたら、本当にこっちが悪いじゃんかよ………」

 

シャスティの話を聞いて、会議室には重苦しい空気が立ち込めて静まり返る。

 

「………それを加味した判断を、上がしてくれることを祈りましょう。今は、どんな判断をされてもいいように、準備をするしかないでしょう………」

 

司令官がそう言うと、資料をまとめて会議室を後にした。草介たちも、少ししてから会議室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンナセンでも、地球と同じように太陽は東から登り、西に沈む。

夕日が地平線に沈み夜の闇の足音が近づいてくる頃―――モルホン基地の周囲にある草むらの陰から、ドロリと湧き出るように真っ黒な影が浮かんできた。それはうねうねと蠢いたかと思うと、段々と人型になっていく。

 

「魔獣忍法『影渡りの術』!」

 

ほどなくして、そこには黒っぽい藍色の短い髪に黒いマスクで口元を隠し、黒いアンダースーツの上から緑色のジャケットを着た男性―――影のウルフの姿となって立っていた。

 

「今宵は三日月、我が隠密機怪魔獣軍団が動くには、うってつけの夜!」

 

不敵な含み笑いをしたウルフがそう言うと、右手の人差し指と中指を伸ばして顔の前で「印」を結ぶかのように構えると、同じように周囲の陰の中から無数の人影が出現し、更に夜の影の中に、巨大な影がいくつも浮かび上がった。

 

「では、手筈通り行くぞ。シンパンジャンD3部隊、基地に向かえ!」

 

ウルフが手を伸ばして命じると、巨大な車輪のような影が、いくつもモルホン基地の方に静かに転がり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になっても格納庫には明かりが灯り、マカロンティーヌちゃんの調整が行われていた。

 

「B班、膝関節のモーターの調整、D班はコックピット配線C1からF3の交換!」

「「「はい!!」」」

 

設計図とレピオから渡されたメモを手にケイリーが指示を飛ばすと、整備員たちは持ち場に走っていく。ケイリーは息を吐いて肩の力を抜くと、後ろから声をかける者がいた。

 

「夜遅くまで、ご苦労だな。」

「あ、皆さん………」

 

ケイリーが振り返ると、そこにはデュランと草介の姿があった。さらにその後ろでは、アルスとレピオがサンドイッチを乗せたカートを押しながら、格納庫にやって来た。

 

「お疲れ様であります。差し入れであります!」

「少し休憩にしたらどうだ?」

「あ、ありがとうございます……では、お言葉に甘えて……」

 

レピオの進言を受けたケイリーは頷くと、周囲の整備員に声をかけて休憩を取ることにした。

 

「あれからずっと作業しっぱなしだな。」

「ええ、レピオさんからもらったメモにあったエンジンの改良点は部品が足りないので行えなくて………一部は新しく部品の設計も必要ですし。だから、他の点だけでも改良しておきたくて………」

 

サンドイッチを手に草介とケイリーが話していると、レピオが口を開いた。

 

「無理に作業を進めても、普段通りの作業パフォーマンスは発揮できないぞ?それに美容にも悪いし………」

 

レピオの指摘にケイリーは「ありがとうございます。」と小さく言うが、その表情は暗くしていた。

 

「ですが………何かしていないと、さっきの件で色々悩んでしまって………」

「だよなー………」

(無理もない。先住民との軋轢は、どこの国でも星でも起こる。自分たちの『正義』が揺らいで、不安になるのも無理はないだろう……)

 

俯くケイリーを見て、デュランは内心そう思いながら、少し心配した表情でケイリーを見ていた。その時、意を決したように草介が問いかけた。

 

「………ケイリー、お前はどう思っているんだ?」

「え?」

「上層部とか周りとか関係なくさ、「ケイリー自身の意見」はどうなのかなって………」

 

草介の問いに、ケイリーはきょとんとした表情で彼を見つめた。そして、少し考えた後、口を開いた。

 

「……私は……こちらに非があるとはいえ、基地の放棄には反対です。なので、向こうと話し合って妥協点を見つけるのが得策であるかと………」

「うーん、それができるといいんだけどなぁ……」

「だけど、できればそれが一番の最善策ではあるな。」

 

ケイリーの答えを聞いて、草介とデュランが考え込んだ。しかし、それを言ったケイリーは、なんだかすっきりしたような顔を見せてきた。

 

「………ありがとうございますソウスケさん。なんだかスッキリしました。」

「そうか。」

「軍人ってのは上の命令には絶対で、下の兵隊の意見は殺されちまうのが常ってもんだ。上に通らないからって、自分の意見を押し殺す癖がついてたのかもな………」

 

ケイリーの様子を見たレピオが、少し安心したようにそう呟いた。

 

 

 

ウーーーー!

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

しかしその時、突如として基地内にけたたましいサイレンが鳴り響いた!

 

「警報!?」

「またか!?」

 

昼間に続いて警報が鳴り響いたことに、草介たちは驚きながらも外に飛び出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした!?」

「き、基地の周辺に機怪魔獣が!!」

「何!?」

 

同じころ、基地の建物から飛び出したニールが近くの兵士に聞くと、塀の向こうに見える十数の影が迫ってくるのを見た。

それは、スパイクの付いた直径30mの車輪を横に2つくっつけたような外見をした機怪魔獣であった。それが十数機、モルホン基地に向けて暴れ牛の群れの様に迫ってきている。

 

「あんな数の機怪魔獣が、何故ここまで接近されるまで気づかなかった!?」

「魔王軍め!昼間の約束を無視して夜襲を仕掛けてくるとは!」

「………いや、バルベエは問答無用で攻撃できるにもかかわらず、交渉という手を打って来た男だ。約束を無下にするとは思えない。」

「そ、それはそうだが………だとしたら、アレは………!?」

 

兵士の悪態に対して、ニールは冷静にそう返す。しかし、その間にも機怪魔獣は迫ってくる。

 

「司令官!」

「くっ………『魔導戦車隊』を出せ!迎撃準備だ!」

「「「はッ!!!」」」

 

苦い顔をしていた司令官が周囲に指示を出すと、兵士は一斉に駆け出した。

 

 

 

 

 

「あれは!?」

 

それから5分もしない後、飛び出したロンたちの目の前を十数台の車両が列をなして走っていく。それは金属製の堅い装甲で作られた四角い車体を持ち、上部には大砲、後ろには魔導池を装備した戦車であった。

 

「魔導戦車隊!敵襲か………!」

 

魔導戦車隊を見たケイリーが声を上げる。カマリサ帝国の最新鋭魔導戦車『シュピールツォイク二五式』の部隊は基地の外に陣取ると、隊長機らしき車両から隊長が顔を出して指示を飛ばした。

 

「目標、前方の機怪魔獣!撃て!!」

 

隊長の号令で、魔導戦車の大砲が一斉に発射された!砲弾は機怪魔獣に着弾すると爆発を起こし、機怪魔獣は爆煙の中に消えた!

 

「撃て!撃てぇー!連中に我々の底力を見せてやれぇー!!」

 

隊長が叫ぶと、魔導戦車隊は何発もの砲弾を機怪魔獣に向けて浴びせる!

 

「す、スゴイ威力だ………!!」

「流石はカマリサの最新鋭戦車………!」

 

魔導戦車の砲撃を目の当たりにしたカールとドラムが、思わず感嘆の声を上げた。次第に戦車隊は砲弾を撃ち尽くしたのか、砲撃の手を止めた。

 

「やったか!!」

 

隊長が爆煙の向こうを睨みながら叫ぶ。その時、煙の中で何かが光ったかと思うと、煙の中からほとんどダメージのない機怪魔獣たちの姿があらわとなった。

 

「無傷だと!?」

 

驚くのもつかの間、機怪魔獣のボディが左右にスライドしたかと思うと、その間から蛇か竜を思わせる長い首のようなアームと上下に並んだ2つの砲門が伸びてきた!

 

「あれが真の姿か!?」

 

変形した機怪魔獣を見たロンが叫ぶ。機怪魔獣シンパンジャンD3の軍団は、目前の魔導戦車たちを赤く光るカメラアイで睨んだかと思うと、二連砲の狙いを定めた!

 

「ま、マズい!退避だ退避ー!!」

 

隊長が叫ぶと、魔導戦車に乗っていた兵士たちが次々に飛び降りて基地に逃げていく。逃げたその次の瞬間にはシンパンジャンの二連砲が火を噴いてビームを発射、魔導戦車を爆散させてしまった!

 

「うわああ!?」

「そ、そんな……カマリサ帝国の魔導戦車が全滅………!?」

 

魔導戦車が一撃で爆散し、逃げていた兵士が爆発の衝撃波に吹き飛ぶのを見たロンが愕然とした。

この世界(シンナセン)で最高峰の技術力と軍事力を持つカマリサ帝国の最新鋭魔導戦車を持ってしても、機怪魔獣には太刀打ちできない。話には聞いていたものの百聞は一見に如かず、実際にその目にして、震え上がった。しかし、吹き飛んで倒れた兵士のうめき声がロンの耳に届くと、ハッと我に返った。

 

「と………とにかく!兵士たちが退避するのを、手助けするぞ!」

「あ、ああ!!」「おう!」

 

ロンの呼びかけに、カールとドラムも我に返って返事をして、フェイも頷いた。逃げ遅れた兵士たちを誘導して基地内へと避難させていく中、フェイはふと何かに気が付いてシンパンジャンの方を見た。

 

「?追撃してこない………?」

 

魔導戦車隊に攻撃をしてから、シンパンジャンたちは首をこちらに向け、牙を見せつけるように口を開くだけだった。何かがおかしいと思っていると、後ろからデュランとニールたちが駆けつけてきた。

 

「ロン!」

「あ、ソウスケにデュランさん!」

 

ロンが草介たちに気が付いて声をかけると、草介も同じようにシンパンジャンたちが攻撃をしてこない事に気が付いた。

 

「あいつら、何で何もしてこないんだ?」

「そ、そういえば………!」

「やっぱり、気づいてた。」

 

草介の発言に、レピオ達も気づいてシンパンジャンを見る。フェイも同意したように呟くと、デュランは考えを巡らせた。

 

「まさか、アイツらは陽動か!?」

「何だと!?」

「だとしたら、連中の目的は………!?」

 

デュランが呟くと、レピオと草介も考えた。そこで、レピオはハッとした顔になった。

 

「隊長、ニールさん、連中を頼めるか!?」

「何?」

「お前たちは?」

「格納庫に戻る!連中の目的は、マカロンティーヌちゃんの破壊だ!」

「「「!!」」」

 

レピオがそう言うと、ロンや草介もそれに気づいてハッとした顔となる。

 

「てことは、こいつらはバルベエとは別の部隊か………」

「報連相のミスか、あるいは「関係ない」って考えでの行動か………」

 

草介とロンがシンパンジャンを見上げて呟く。デュランとニールは顔を見合わせて、頷きあった。

 

「………分かった!私たちの他に、レイェンも頼む!」

「分かったネ!」

「ソウスケ、ロン、お前たちも来い!」

「わ、分かった!」

「おう!」

 

デュランとレピオが指示を飛ばすと、草介とロンは頷き、フェイたちと共に格納庫に向かって走り出した。

 

「行くぞ!」

「ああ!」「合点アル!」

 

デュランが叫ぶと、ニールとレイェンはGPデバイスを操作すると、基地内に停車していたバトルトレインが起動、自動で走り出すと、デュランたちの元にやって来た。

目の前にバトルトレインが停車すると、ニールはバトルトレインに飛び乗り、キャリアに格納されていたデュランカーが起動、キャリアの側面が開きスロープが伸びると自動で走り出し、レイェンはキャリアの上部に格納されたタイガーアクアに飛び乗った。

 

「「「フュージョイン!!」」」

 

3人はそれぞれ飛び乗ると同時にフュージョインをすると、それぞれ変形をした!

 

『チェンジ!デュランダー!!』

『チェンジ!バトルパンサー!!』

『轉換!トライタイガー!!』

 

3体のマシンメイルがシンパンジャンの目の前に着地をして構えると、シンパンジャンたちは一斉に首を伸ばして牙を剥き、唸り声を上げた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、マカロンティーヌちゃんの収められた格納庫。

非常事態となって整備員たちが疎らとなった格納庫内の物陰に、整備員ではない者の姿があった。

 

「え?うわ!?」

 

整備員が人の気配に気が付いたが、反応をする前に背後に回られて気絶をしてしまう。

 

「どうした!?ぐあ!?」

「ぐげっ!?」

 

物音に気が付いた別の整備員が駆けつけるが、背後から忍び寄った人物に気絶させられてしまう。次々に整備員たちは、地面に倒れて気絶していく。

 

「よし、これで機動兵器への道は開けた。」

「ウルフよお、わざわざこんなことしないで、真っ向から突入すればいいんじゃねーのかよ?」

 

整備員たちが全員気絶させたウルフが、マスクの下で不敵な笑みを浮かべていると、同じようにバッファローが物陰から出てきて指摘をしてきた。彼の背後からは、ガンメタの仮面のような頭部に狼の顔のようなペイントを持ち、カメラアイが赤く光らせる黒いボディのドロイドが十数体現れていた。

 

「何を言う、「無益な殺生をせずに目標だけを破壊する」、それが俺の流儀であると、お前も知っているだろう?」

「そーだがよー………」

 

ウルフが「何を可笑しなことを聞いているんだ?」と言いたげに問いかけると、バッファローが頭を掻いて呆れた。ウルフはそれに構わず目前にそびえ立つ機動兵器を見上げると、ドロイドたちに指示を出した。

 

「『群狼衆(ぐんろうしゅう)』、機動兵器へ爆弾の設置に入れ!」

『『『御意!』』』

 

ウルフの指示を受けたドロイドたちは、機動兵器に向けて身軽に走っていく。

 

『ぐゥギ!?』『ギょげヘ!?』

「何!?」

 

しかしその時、ドロイドたちに向けて『水弾』と『矢』が飛んできて命中、ドロイドたちは地面に倒れた。

 

「何奴!?」

 

ウルフが驚いて叫ぶが、ウルフとバッファローに向けて2つの影が飛んでくると、手にした得物を振り下ろしてきた!ウルフは苦無で、バッファローは右腕に装備したガントレットでそれぞれ受け止めると、弾くと同時に数m吹き飛ぶように後退した!

 

「何という見事な不意打ち(アンブッシュ)!!」

「誰だあ!?」

「やっぱり、本命はこっちか!!」

 

ウルフとバッファローが攻撃の飛んできた方を睨んで叫ぶ。そこには手斧を振り下ろしたレピオが悪態をついており、草介やロンも集まって来ていた。

 

「例の勇者どもか………!!」

「気づかれちまったか!!」

 

ウルフは草介たちの姿を確認すると睨みつけ、バッファローが舌打ちをした。しかし、ウルフは姿勢を正したかと思うと、両手のひらを合わせて、お辞儀をしてきた。

 

「………ドーモ、はじめまして。俺は影のウルフ。ワルンダイツ六魔獣将のひとりです。」

「あ、俺は地のバッファローだ。」

「え?あ、ど、どうも………?」

 

突然、バッファローと一緒になって丁寧に挨拶をしてきたため草介たちは戸惑いながらも思わず挨拶を返してしまう。

 

「ワルンダイツ………さっき話していた、魔王軍と手を組んだ連中か!!」

「ああ、その幹部2人ってわけだ。」

 

一方のロンは、目の前にいるのがワルンダイツの幹部と知って警戒した。すると、ウルフの周囲にまだ動けるらしいドロイドたちが陣形を組むように集まって来た。

 

「2,3体潰したようだが、カスタマイズされたアシガロイド『ウルフロイド』で構成された群狼衆は、この程度ではやられはせん。さっさと貴様らを片づけて、機動兵器を破壊してくれる!」

「カスタム型戦闘員か………!」

「しかし、マカロンティーヌちゃんを破壊させるわけにはいかない!」

「「え、何その名前?」」

 

レピオが周囲のウルフロイドを睨んでいると、彼女たちに守られるよう後ろにいたケイリーが叫ぶ。しかし、そのファンシーな名前を聞いたウルフとバッファローがキョトンとした顔で聞き返してきた。

 

「お前らが『機動兵器』と呼んでる、あのロボットだ。」

「何でそんな名前を………」

「名前はこの際どうでも良い。どうせもう墓標に刻むくらいしか使い道もあるまい。行け!群狼衆!!」

『『『御意!!』』』

 

呆れた様子のバッファローに対して、ウルフは冷酷に吐き捨てると同時に、群狼衆へと命を下す。ウルフロイドたちは返答と同時に、草介たちへ一斉に飛びかかって来る!草介たちは迎え撃とうと剣を抜いて構えると、ウルフロイドたちは腰からクナイを抜いて、落下と同時に斬りかかった!

 

「ソウスケ!ケイリーや整備員たちを頼む!」

「ああ!」

「分かった!」

 

レピオが手にした盾でクナイの一撃を受け止めながら草介とロンに指示を出す。

レピオとハバキリ、ドラムの3人がウルフロイドを相手する中、草介たちは斬りかかって来るウルフロイドの攻撃を凌ぎながら倒れる整備員たちの元に向かい、ロンが気絶している整備員たちを抱えると、ケイリーと共に格納庫の角へと避難していった。

 

「よし、これで心置きなく戦える!」

「ハバキリ、お前の技は全部が必殺技!あまり前に出るな!」

「うむ!」

 

整備員たちが避難したのを確認したハバキリが、刀でウルフロイドを弾くと、レピオが叫ぶ。ウルフロイドたちはバックステップでレピオ達と距離を取ると、取り囲むように陣形を取った。

気絶をした整備員たちを庇うように草介とロンは剣を抜いたが、ふと、草介は周囲を見渡してある事に気づいた。

 

「!?ウルフとバッファローがいない………!?」

「何!?」

「いつの間に………?」

 

草介が口にした瞬間、出した言葉に、ロンやレピオも周囲を見回す。ウルフロイドたちがこちらを撹乱するかのように素早い動きで左右に動き回り気付きづらかったが、いつの間にか彼らの主たる六魔獣将の姿がどこにもなかった。

 

『きェええいッ!!』

「!?」

 

どこに行ったのだろうと周囲を見渡していたその時、ウルフロイドの1体がレピオに向けて高くジャンプして襲いかかって来た!

 

「!?くっ………!!」

 

レピオは盾で受け止めようとしたが、ウルフロイドの足元にある影が蠢いたかと思うと、レピオに向けて人型の影が飛びかかってきた!

 

「油断したな!」

「何!?」

「レピオ!」

 

人影はクナイを手にしたウルフの姿となって、レピオに斬りかかる!咄嗟にハバキリが割って入りウルフの攻撃を防ぐと、レピオもウルフロイドの攻撃を盾で防ぎ、手斧で頭をかち割って破壊した!

 

「わ、わりい!」

「こやつ、影の中を!?」

「ほう、我が魔獣忍法『影渡りの術』を所見で反応するとはな………だが!」

 

ウルフが2人の連携と反応速度に感心しながらも、マスクの下で不敵な笑みを浮かべた。次の瞬間、草介たちの近くにあったテーブルの陰から、大きな人影が飛び出してきた!

 

「どおりゃああッ!!」

「何!?」「しまった!?」

 

人影はバッファローの姿となり、手甲を着けた右手で殴り掛かってくる!レピオ達はそれに気づくが、距離があって間に合わない!2人がそう思った瞬間、草介たちとバッファローの間を分断するように、巨大なタワーシールドが飛んできて地面に突き刺さる!

 

「何だ!?」

 

振り下ろした拳がシールドに当たり、重い音が格納庫に響き渡る。バッファローが何事かと思うよりも先に、今度はドラムがその横っ面をもう1つのシールドで殴りかからんと飛びかかってきた!

 

「ぬうんっ!!」

「ぐうッ!?」

「バッファロー!?」

 

ドラムのシールドがバッファローの頭部に直撃!バッファローは吹っ飛ばされて、数m先の床に倒れこんだ。

 

「大丈夫か!」

「ああ!」

「ありがとうであります、ドラムさん!」

「なに、俺は自分の仕事をしたまでだ。」

 

突き刺さっていたシールドを引き抜くドラムは、シールドの殴られた箇所が凹んでいるのを少し気にしながらも笑いながら答える。ハバキリと鍔迫り合いをしていたウルフはハバキリから離れると、上半身を起こして頭を押さえるバッファローの元に向かい、影の中に沈むように消えていった。

 

「また消えたぞ!」

「全員固まれ!」

「おう!」

 

レピオの掛け声で全員が1ヶ所に固まり警戒をする。周囲ではウルフロイドたちが草介たちを取り囲むように陣形を取っており、いつでも襲い掛かれる体制となっていた。

 

「影から影へ自在に移動する忍法………かなり厄介だな………!」

「ニンポウ………魔法とは違うの?」

「多分違うと思う………」

 

警戒しながらフェイが疑問を口に出すと、カールが答える。「何で宇宙に忍者がいるんだよ……」と草介は言いたかったが、隣に侍(=ハバキリ)がいるので今更だと思い口に出さなかった。

 

「あのドロイドや物の影、全てがヤツの出入り口!どこから連中が出てくるか分からないぞ………!」

 

ドラムが警戒しながら呟くが、そう言っている間にもウルフロイドが迫ってくる!

 

「考えようにも、先ずはこいつらをどうにかしない事には!!」

「どりゃぁああッ!!」

「くっ………!!」

 

ウルフロイドを弾いたハバキリが呟くが、バッファローが再び影の中から飛び出してきて殴りかかってくる!咄嗟にレピオが前に出ると受け止めると周囲に重低音が響き、レピオは数十cm後ろに滑るも、踏みとどまった。それを見てバッファローは少し意外そうな、ドラムが驚いた顔になった。

 

「ほう、俺のパンチを受け止めたか………!」

「あのパンチを受け止めた………!?」

「盾で受け止めるより確実と思ったが、思った以上に重かったけどな………!」

 

レピオは笑みを浮かべるが、その手は衝撃で痺れていた。バッファローはバックステップで近くにいたウルフロイドの足元の影に沈む。すると、入れ替わる様に傍の影から腕が出てきたかと思うと、何かを投げてきた!ハバキリが咄嗟に刀で弾くと、地面に十字手裏剣が3枚突き刺さった!

 

「くっ………せめて、連中がもう少し動きが遅ければ………!」

 

弾き返したハバキリが毒づいた。どうにかせねばと考えていると、今まで黙っていたフェイが口を開いた。

 

「動きを止めるのに考えがある。」

「何?」

「ロン、私と一緒に相手を1ヶ所に誘導して。ドラムは防御に専念。」

 

フェイが冷静に指示を出す。草介やレピオは何を考えているのかと思ったが、ロンたち3人は目を合わせて頷きあった。

 

「………ソウスケ、僕たちに任せてくれ!」

「………分かった。俺も手を貸させてもらうぞ。」

「次に奴らが出てきた時が勝負。」

 

ロンが笑みを浮かべながら答えると、草介は頷いて答えた。ロンとカールはウルフロイドを睨むと、呪文の詠唱を開始した。

 

生命の根源たる水よ(トイニモイニミラノラミキイミカチスナ)ここに集いて(ノラノラミニカナシラニカイ)我が敵を撃て(テチキチカイノニテラナカイ)!」

我が身に(テチキチモニミニ)疾風の如き(クチンチカイミラキラカラノニ)速さを与えよ(クチンチトチテラチカチインラ)!“スピードアップ”!!」

 

ロンの呪文と共に周囲に水弾がいくつも浮遊し、カールが呪文を唱えると彼の身体を淡い光が包んだ。

 

「”アクアバレット“!!」

 

ロンの呪文と共に水弾はウルフロイドに向かって発射される!ウルフロイドの大半は回避をするが、数体に着弾をして動きが止まる!

 

「そこだ!」

『『『!?』』』

 

そこにすかさず、ロンと草介が駆けだして、動きを止めたウルフロイドに斬りかかる!ウルフロイドは反撃しようとするが、その前に草介とロンの刃がウルフロイドを斬り裂いた!残ったウルフロイドが着地と同時に反撃に転じようとするが、その内の1体の胸に高速で突っ込んできたカールの剣の切っ先が突き刺さり、穴を開けた!

 

「“ラピッドサーブル”!!」

『ギャご!?』

 

カールは剣を突き刺すと直ぐに後退し、ウルフロイドはこと切れたように倒れこみ機能を停止させる。カールは周囲で睨んでくるウルフロイドに目を向けると、動いていないかのような速度のヒット・アンド・アウェイで1体ずつ確実に仕留めていった!

 

『グぅ………!』

『手ごワイ………!』

 

ウルフロイドたちはじりじりと後退し、気づけば全員の背中が当たっていた。

 

「今だ!」

 

ウルフロイドがひと纏まりになって動きを止めているのを見たハバキリが勝機を見出した。次の瞬間、ハバキリの姿が消えたかと思うと、ウルフロイド達の後方数mに現れて、刀を鞘に納め始めていた。

 

「は、速………!?」

「流星一刀流剣術 序段伍剣がひとつ―――」

 

カールがその速度に驚く中、パチンッ、という音と共に納刀されると、ウルフロイドたちの胸や頭、胴体が甲高い金属音と共に斬り裂かれ、火花を散らした!

 

「肆ノ太刀 夜通(よっつう)!!」

「お、お見事………!!」

 

カールが思わずの声を上げる。ウルフロイドたちは火花を散らしながら、ゆっくりと崩れ落ちる。

 

「ヤロォオウッ!!」

「調子に乗るな!!」

 

その時、倒れかけたウルフロイドの影からウルフとバッファローが飛び出してくると、草介とロンに向けてクナイと拳を突き刺さんと突っ込んできた!

 

彼の者に(ノチミラモラミラミニモニ)見えざる盾を与えよ(イツチスナカチカイテラチカチインラ)!“シールド・アップ”!!」

 

そこにドラムが割り込んで呪文を唱えると、手にしたタワーシールドに光りが包み込む。そのシールドにウルフとバッファローの一撃が叩きこまれるが、盾は傷1つ付かなかった!

 

「何ィッ!?」

「防御強化魔法は得意なんでね!」

 

先ほどはへこみを作ったバッファローのパンチすら受け止めたことに驚く2人。

 

「くッ………!!」

 

ウルフは舌打ちをすると、バッファローと共に飛び退いて再び影に潜もうとした。しかしその時、ドラムの背後から弓を引いたフェイが現れると、ウルフとバッファローに矢を放った。

 

「嘗めるでないわ!!」

 

しかし、ウルフはクナイであっさりと弾き落とすと、矢は床に突き刺さった。ウルフはしたり顔で着地をすると、足元の影に沈み始めた。

 

カッ

「ッ!?」「何ッ!?」

 

だがその時、弾かれて床に突き刺さった矢から強い光が発せられ、2人が沈みかけていた影がかき消され2人は外に弾き飛ばされてしまった!

 

「し、しまった!?」

「「どりゃぁああ!!」」

「「!?」」

 

ウルフとバッファローが弾き飛ばされたその一瞬の隙を突き、飛びかかったレピオは斧の背で、ドラムがシールドで殴りつけ吹き飛ばした!

レピオとドラムは着地をすると、格納庫の外まで吹き飛んだ2人が地面に転がるのを見届ける。レピオは地面に刺さり、段々と光が消えていく矢を見下ろした。

 

「これは………?」

「矢に魔法が込められているのか?」

「魔弓術。矢に魔法を込めて放つ。発動のタイミングはこちらで決められる。」

 

レピオと草介が矢を見て疑問を口にすると、フェイが歩いて来ながら説明をした。

 

「さっきは、矢に“トーチ・ライト”を込めて放った。弾かれるのは計算済み。」

「“トーチ・ライト”を?」

「勇者ソウスケに教わった活用術。名づけるなら『ユウナギ式閃光術』。」

 

淡々と、それでいて少し得意げにフェイが答えると、草介は少し照れ臭そうにした。

 

「ぐぅ………!」

「やって、くれたなぁ………!」

 

その時、倒れていたウルフとバッファローが起き上がる。草介たちは睨んで武器を構えるが、ウルフは内心どうしたものかと考えていた。

 

(あの小娘の術……まさか俺の『影渡りの術』を破る策を思いつくとは………またやられては面倒だな………致し方ないか………)

「………バッファロー、作戦変更だ。」

「どうするんだ?」

「真っ向から破壊する!」

「最初からそうしようぜ………だが、それなら俺の得意分野だ!!」

 

バッファローは呆れながらも、その作戦に同意する。ウルフは顔の前で印を結ぶと、背後から巨大な2つの影が浮上してきた。

1つは深い紫色のパワーショベル、もう1つは濃いオレンジ色のダンプカーであった。

 

「何、あの車は!?」

「まさか、アイツらの!?」

 

草介たちが驚く中、ウルフはパワーショベルに、バッファローはダンプカーに飛び乗った。

 

「「フュージョイン!!」」

 

叫ぶと同時に2人はパワーショベルとダンプカーにフュージョイン・一体化をしてしまった!

 

「一体化しただと!?」

 

初めてフュージョインを目の当たりにしたロンやケイリーが驚く中、2機のランプがまるで生きているかのように光った。

 

『『チェンジ!!』』

 

掛け声と共にパワーショベルが飛び上がると、キャタピラー部分が分離、車体が左右に展開をすると、ショベル部分が後ろに回り、操縦席部分が前に倒れるように変形、狼の顔が現れると、分離したキャタピラーが4本の脚になって再接続された。

一方、ダンプカーのボディ(荷台部分)が分離するとタイヤが格納されて蹄を持った4本脚が展開、運転部分が後ろに倒れると大きな角を持った猛牛の頭部が出現、ボディが反転して背面に合体した。

 

 

 

 

 

影魔獣将(えいまじゅうしょう)!ウルフダイト!!』

地魔獣将(ちまじゅうしょう)!バッファローダイト!!』

 

 

 

 

 

狼と猛牛、2体のビーストメイルが、名乗りと共に格納庫の目の前に降り立った!

 

「き、機怪魔獣………!?」

「い、いや………それにしては、どこか違うような………!?」

 

ビーストメイルを初めて見たロンやケイリーが驚く中、草介やレピオ、ハバキリはビーストメイルを睨みつける。ウルフダイトとバッファローダイトは、遠吠えや雄叫びを上げて威嚇をしていた。

 

 

 

 

 

【つづく】




・霊族の魔族に関しての問題。大分面倒になっています。

・シンパンジャンD3は、蜃気楼を生み出す『蜃』という魔物とパンジャンドラムがモチーフ。蜃はハマグリが正体という説と竜が正体という説があったので、2つとも採用して貝から竜が出てくるイメージに。二連砲は貝の水管がモチーフです。

・ウルフとバッファロー本格参戦。バッファローは脳筋でウルフはそれを止めるキャラの予定だったんだけど、書いている内にウルフが突っ走りがちでバッファローが常識人寄りになってますね。
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