異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


第21話 勇者一行、東へ

異世界勇者ロボ 第21話

勇者一行、東へ

 

 

 

 

 

草介たちがロンたち4人を別荘に招き入れた頃、衛星軌道上に浮かぶマッドアドワーズ内では、仁王立ちするデスダイトの前でウルフとバッファローが、沈んだ顔で跪いていた。

 

「デ、デスダイト様………」

「こ、此度の失敗は、その……」

『いや、いい。』

 

2人はデスダイトに謝罪をしようとするが、当のデスダイトはそれを制するように言った。

 

『ウルフはせっかちなのが玉に瑕だが、バッファローもちゃんと止めないとな。』

「も、申し訳ありません……」

 

ウルフとバッファローが謝罪すると、デスダイトは手で制した。

 

『しかし、流石は四族長………とんでもない実力だ………』

「はい、ダメージを負っていたとはいえ、我らのビーストメイルが容易く捕縛されるなんて………」

「俺たちのビーストメイルは、Aランクの機怪魔獣相当だっていうのに………」

『あの様子じゃあ、恐らくはG~Dランク程度の機怪魔獣じゃあ、相手にならないだろうねぇ………』

 

デスダイトの言葉に、ウルフとバッファローが悔しそうに歯嚙みした。

 

機怪魔獣の名称の末尾に付けられたアルファベットと数字は、その機怪魔獣の等級(ランク)を表している。アルファベットは性能のランクを表し、最高がSでそこからA~Gがあり、数字は馬力等の能力を表して1~3まである。つまり、最低がG1で、最高がS3である。

 

『同盟を組んだのは正解だったな。もしも魔王軍が敵だったら、とても恐ろしい敵になっていただろうよ。』

「デスダイト様………」

『まあ、これからは下手に刺激しないよう注意するようにね?ああ、それと、君らには何か処罰をしないと向こうに示しがつかないからね。悪いけど、1,2週間は謹慎してもらうよ?』

「は、はい………」

「申し訳ありませんでした………」

 

デスダイトの下した処罰を渋々受け入れるウルフとバッファロー。しかし、ウルフは顔を上げてデスダイトに進言をした。

 

「しかし、謹慎前に起動兵器破壊作戦の立案だけでもさせてください!」

『ああ、それは構わないよ。』

「はっ!」

 

デスダイトが承諾をするとウルフは頷き、懐から取り出したスマホ型デバイスを取り出して、どこかの地図と建物の外観の写真データを呼び出した。

 

「機動兵器のエンジンを始めとした部品の数々は、カマリサ帝国の属国であるクリファート公国のとある工場で製造されていると掴んでいます。そこで、その工場を襲撃し、部品の供給を断つのです。」

『なるほどね………』

 

デスダイトはウルフからデータを受け取ると、それを見て頷いた。

 

『分かった。例の機動兵器、ええっと、『マカロンティーヌちゃん』だっけ?変わった名前だよね………破壊、開発阻止作戦は、イーグルかティラノに任せることにするよ。』

「よろしくお願いします。」

 

ウルフは深くお辞儀をすると、バッファローと共にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンにデュランたち銀河連邦警察の件を伝えた翌朝。

草介は別荘であてがわれた部屋で目を覚ます。ベッドの中でまどろんでいると、突然、「ガシャンッ」と何かが衝突したかのような大きな音と地響きがした!

 

「な、何だぁ!?」

 

あまりの音と揺れに眠気も一瞬で吹き飛んだ草介は、慌てたように飛び起きた。カーテンと窓を開けて周囲を見渡すと、広い庭で仰向けや尻もちをついて倒れるトライフェニックス、トライトータス、トライタイガーの姿が見えた。

 

「おーい、大丈夫かー!?」

『あ、ソウスケ………』

『朝からすまぬでござる………』

『アイヤ~………』

 

痛がりながらも立ち上がり、少し恥ずかしそうに草介に挨拶をするトライヤーズ。何があったのかと草介は首を傾げていると、同じく庭に出ていたニールが声をかけた。

 

「おーい、そろそろ訓練は終わりにして、朝飯にするぞー!」

『承知したでござる………』

『うーん、朝一で広い外なら、上手くいくと思ったんだけどなー………』

『何がいけないアルかね~………』

 

頭をかきながら、地下に続くハッチに向かってぞろぞろと歩き出す3機。ニールは2階の草介を見上げて、話しかけてきた。

 

「おはようソウスケ。朝からすまないな。」

「いや、いいよ。それより、何をしてたんだ?」

「ああ、後で朝食の席で話そう。着替えて降りてきてくれ。」

「分かった。」

 

草介は返事をすると、窓を閉めて着替えを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合体!?」

 

その後、朝食を食べながらデュランたちから話を聞いた草介は、思わず素っ頓狂な声で聞き返してしまった。

それは、トライヤーズの駆る『トライメイル』の「三段変形」の他に搭載された新機能―――3体のマシンメイルによる合体であった。

 

「ああ。トライメイルには従来のマシンメイルにはなかった新機能として、複数人による合体機能が付いているんだ。」

「デュランブレイバーやアームドパンサーを見てもらうと分かると思うが、これまでの合体はマシンメイルとサポートメカによるもので、別々の者と一体化したマシンメイル同士の合体機構はなかったからな。今回、トライメイルに初めて搭載されたんだ。」

 

デュランとニールが補足するように説明をする。草介がそうなのか、と頷くと、ハバキリたち3人は少し気まずそうな顔になった。

 

「だが、今までと違って『別々の人格を持った者の駆るマシン』同士での合体のためか、なかなか上手くいかなくてな………」

「この星に来るまでの訓練でも、一度も成功はしておらぬ………」

「システムには何の問題もないはずなのに、どうしてできないアルかね~………」

 

うーむ、と頭を傾げて考え込む3人。草介も少し心配そうにしていると、デュランが手を叩いて注目を集めた。

 

「まあ、悩みすぎては上手く行くものも失敗してしまうだろう。それより、今日はロンたちと会うのだろう?」

「はい。」

「モルホン基地での拙者たちの戦いを見て、是非とも手合わせをと言われまして。」

「ちょっと楽しみではあるアルね~」

 

デュランの話題転換に、3人が頷いて答える。草介も頷くと、早く朝食を済ませようと、少し急いで食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴン魔帝国のリブアン城を守る要塞都市ミャキア。それを麓に置くツクパ山は休火山であるためか、この街の周囲では『灼熱地獄』と称されるほど温泉が採掘されるため、民衆向けに大衆浴場がいくつも設置されている。

更に、数代前の魔王の提案で温泉が通る温泉水道が町中に張り巡らされているため常に春の陽気程に暖かく、シンナセンの北の果てであるティダマ大陸であっても、この地に住む魔族たちは寒さに震える者は少なかった。

魔王ダインズ・レイヴンは近々、このシステムを帝国中に広めようと計画中である。

 

そんな街で生まれ育った影響か、魔王の娘キアラ・レイヴンは大の風呂好き、特に熱い湯に長く浸かるのが好みであった。

リブアン城の自室に設置された浴室、バスタブに熱い湯を張ると、キアラは日課である朝の入浴をしていた。

 

「ふぅ……♪」

 

たわわに実った肢体をバスタブに沈めながら、キアラは気持ちよさそうに息を吐いた。閉じていた目を開くが、頭に浮かんでくるのはベロースリット領での出来事、ソウスケと呼ばれていた人間の少年の事であった。

剣の腕はそこそこ、巨大な機怪魔獣を相手にすることすらできないというのに、機転を利かせて民衆を率い、デュランたちの勝利に貢献した、あの少年。ロコロ王国の姫であるフローレントや、姫に化けていたシャスティとかいう少女を除いたら、初めて直接目にした人間の少年が、本国に戻ってから2週間、何故だか頭から離れなかった。(※キアラ姫含めて魔王軍側はシャスティが男だと知りません。)

 

「………何なのよ………何であの人間の事なんか………」

 

もやもやした気持ちが豊満な胸の中で渦巻き、キアラは無意識に呟き、顔を半分湯船に沈めてブクブクと泡を立てた。

 

「姫様、よろしいでしょうか。」

 

その時、浴室の外からメイドの声がした。キアラはハッと我に返りバスタブ内で立ち上がると、慌てて返事をした。

 

「ど、どうかしたの?」

「それが、ブランドン様の使いだと言う者が、姫様にお会いしたいと………現在、応接室にてお待ちです。」

「おじいさんの………?」

 

メイドの話を聞いたキアラは、小首を傾げた。

 

「分かったわ。直ぐに出るから、待ってもらってちょうだい。」

「かしこまりました。」

 

メイドが離れていくのを確認すると、キアラは湯船から出てタオルで体を拭き始めた。

 

「おじいさんったら、何の用事かしら………?」

 

炎系魔法を応用した熱風で髪を乾かしながら首を傾げるキアラ。お気に入りの赤い下着を手にして身に付けドレスを纏うと、浴室から出た。

 

 

 

 

 

自室を後にしたキアラが応接室のドアの前まで行くと、何やら中から幼い話し声がする。その声に聞き覚えがあるなと思いながら、そのドアにノックをした。

 

「入るわよ?」

「ど、どうぞダス。」

 

中から聞こえてきたボルグの声に疑問を感じながら、キアラがドアを開けて応接室に入った。

 

「おじいさん、私に用があるって……」

 

キアラはそこまで言うと言葉を止めた。視線の先には、少し困った表情のカラとボルグと遊ぶ、1人の幼い少女がいたからだ。

 

「あ!ひめさまだ!」

「あ、おい!?」

 

長い灰色の髪をウルフカットにしたその少女はキアラに気が付くと、狼の耳をピコピコ、尻尾をブンブン振りながら、キアラに向かって走ってきた。キアラは驚きながらもその少女を腹部の辺りで受け止めると、少女の顔を見て尋ねた。

 

「あなた、ミュールじゃないの。」

「す、すみません姫様………」

「こら、ミュール!姫様に失礼ダスよ!」

「いいわよ、これくらい。それでミュール、どうしたの?」

 

ミュールと呼ばれた狼耳の少女は、キアラの顔を見上げると(と言っても、128cmのミュールの身長では豊満な胸が邪魔でほとんど顔は見えなかったが。)答えた。

 

「えっとね、おじいちゃんがひめさまにわたしてほしいものがあるっていってね、おつかいにきたの!」

「私に?」

 

キアラがそう聞くと、ミュールは彼女から離れて背負っていたバッグをゴソゴソと漁ると、目的のものがあったのか、「あった!」と声を上げた。

 

「これ!おじいちゃんからひめさまにだって!」

 

ミュールが差し出したのは、長編が20cm前後の四角い箱のような機械であった。赤いコードや黄色い回路らしきものが埋め込まれ、隅には赤と青のランプがついていた。

 

「これは?」

「なんかね、おじいちゃんがつくった、「さいしんのゴーレムのコア」なんだって!」

「ゴーレムのコア……」

 

ミュールの言葉に、キアラは受け取った機械をまじまじと見つめた。

 

ゴーレムというのは、魔力を糧に動く魔導絡繰り人形の総称である。『ゴーレムコア』と呼ばれる人工頭脳を土や木材、金属、陶器等を素材としたボディに組み込む事で動くようになる。用途によって専用のコアを作成する必要があるため、サンルスター魔法国には専門の職人が存在すると、キアラは聞いたことがあった。

 

「こんな機械製のコア、見たことがありませんな………」

「あのね、「たたかいをきおくして、てだすけできるようになるから、おべんきょうのために、ひめさまがきかいまじゅうにのるときに、いっしょにもってって」って、おじいちゃんが!」

「戦いを記憶する………?」

「あのじいさん、相変わらず変なモン作るダスな………」

 

キアラと一緒になって手渡されたゴーレムコアを訝しんで見つめるカラとボルグが、それぞれ感想を呟いた。

 

ここまで話に出てきているおじいちゃんことブランドンは、ドワーフの老人である。『魔族一の発明王』を自称して様々な発明品を制作してはダインズにプレゼントしているが、役立つものは片手で数えられる程度しかないため、ダインズ含めて周囲の者からはあまり期待はされていない。キアラは幼い頃から彼と会っており、昔から『面白い発明をするおじいちゃん』と慕い、彼の工房に出入りしていたのだ。

 

「おじいちゃんね、「きかいまじゅうにはまけたくないー!!」っていってね、これをもとにして『きかいまじゅうよりもつよくてかっこいいメカ』をつくるから、ひめさまにてつだってほしいんだって!」

「なるほど、そういう事ね………」

「機怪魔獣を見て、発明家の闘志に火が付いた、といったところダスか………」

「そのためのデータ収集か………」

 

ミュールの話を聞いたキアラたちが、呆れたように口にした。

 

「戦いを記憶して手助けするって、もしかしてAIか?」

「この星の文明レベルでAI自作するって、地味にスゴイわねー」

 

その時、背後から声がしたので振り返って見ると、そこではシャークとポーラが、ゴーレムコアを覗き込むように立っていた。

 

「あ、あんたたち………!」

「やっほー、キアラちゃん♪」

「ひゃっ!?」

 

突然の2人の来訪に驚きながらも少しうんざりした顔になるキアラだが、ポーラはフレンドリーに手を振る。すると、ミュールは2人の顔を見て驚いたのか、怯えたようにソファーの後ろに隠れてしまった。

 

「あらら、驚かしちゃった?」

「あんまり驚かさないでよ?あの子、意外と臆病なんだから………」

 

ソファーの影からこちらの様子を伺うミュールを見て、ポーラは少し申し訳なさそうにした。

 

「それで、何の用よ?」

「いやね、ティラノがクリファート公国に行くから付いてこいって言うからさー」

「もしかしたら、例の勇者一行(パーティ)も来るかもしれないから、戦力にって。」

「勇者が?」

 

シャークとポーラが事情を話すと、キアラは興味がわいたらしく2人の顔を見た。

 

「興味あるみてーだな?あのブレイバーにボッコボコにやられちまってたしなー」

「余計なお世話よ………!」

「どうする?キアラちゃんも行く?」

 

ポーラに誘われたキアラは、少しだけ考えた。もしかしたら、あの人間もいるかもしれない。彼を通じて、人間の事を知るのも悪くないと考えて、2人に応えた。

 

「………ええ、同行するわ。後でお父様にも話しておくわ。」

「そう来なくっちゃね♪」

「それじゃ、出発する時になったら呼びに来るから。」

 

そう言うと、シャークとポーラは応接室を出て行った。2人を見送ったキアラがソファーに座り込むと、カラが心配そうに尋ねた。

 

「姫様、本当によろしいのですか?」

「ええ。おじいさんの手伝いもあるしね。」

 

キアラは手にしたゴーレムコアを見せながら言った。

 

「それに………」

「「?」」

「バウ?」

 

キアラは小さく呟くが、カラとボルグ、それにミュールは、その真意を理解できず、首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、ここはロコロ王国のモルデュア城、そこの裏手にある訓練場。

 

「“ラピッド・サーブル”!!」

「おっと!」

 

カールの高速の突きを、対峙するレイェンは身体をひねって回避、棍棒を振るう前にカールは素早く後退する。

 

「思ったよりもよく見てますね!それなら!」

 

カールは連続で“ラピッド・サーブル”を仕掛けてくる!レイェンは回避しつつも、手にした棍棒を三節根に変形させて振るうが、カールは軽々と避けてしまい、大きく振るった隙を突くように仕掛けてくる!

 

「そこアル!!」

「え!?うわあ!?」

 

しかしその時、カールが足元に転がっていた三節根の先端を踏んでしまった瞬間、レイェンが三節根を引いた勢いで転んでしまった!

 

猛虎尾踏転(もうこびとうてん)!!」

「ぐげ!?」

 

レイェンが高らかに技名を言い放つと、仰向けに倒れたカールが潰れたカエルのような声を上げてしまった。カールは背中の痛みに耐えながらも起き上がろうとしたが、レイェンに棍棒の先端を突き付けられて動きを止めてしまった。

 

「ま、参った、降参だ………」

 

カールは剣を手放して両手を上げて降参した。レイェンは棍棒を下ろすと、カールに手を貸して起きるのを手伝った。

 

「くぅ………一本取られたな………!」

「キミは動きが直接的ネ。そこを突かれないよう、動きに工夫をするといいアル。」

「そうですね………ありがとうございます。」

 

拾った剣を鞘に納めるカールにレイェンはアドバイスを送ると、彼は素直に受け入れた。

 

 

 

 

 

「どりゃぁあああああッ!!」

「むん!」

 

レピオが飛び上がると同時に斧を振り下ろすが、ドラムはそれを難なくタワーシールドで防御、その瞬間、斧は弾かれたように跳ね返されてしまい、レピオはその勢いで後方に吹き飛んでしまった!

 

「今のは………!?」

「“リフレクト・ガード”だ。相手からの攻撃を反射し、攻撃に転用できる。」

 

何とか着地をしたレピオに、淡く光るタワーシールドを手にしたドラムが軽く説明をする。レピオはそれを見ると、斧を握る手に力を込めた。

 

「なるほどな………なら、こいつはどうだ!!」

 

叫ぶと同時に、レピオはサイドスローの要領で斧を投擲!ドラムはシールドで防ごうとしたが、斧はドラムの右数mを通り過ぎた。

 

「何?」

 

ドラムが斧の軌道に気を取られ後方を見たその時、拳を握ったレピオが飛びあがり殴り掛かってきた!

 

「うおりゃあ!!」

「!!」

 

ドラムが振り返った先にはレピオの右拳が迫って来ていたが、彼は直ぐに右のシールドで防御、直後に『ゴォンッ』という打撃音と衝撃がシールドから響くが、ドラムは怯むことなくレピオを振り払おうとした。

 

「戻れ………」

「む?」

 

しかしその時、背後からヒュンヒュンと風を切る音が迫ってきているのをドラムは感じ取った。

 

「旋風返し!!」

「何!?」

 

ドラムが振り返ると、そこには先ほど投げられた斧が、ブーメランよろしく回転しながらこちらに向かって飛んできていた!ドラムは驚いて目を見開くが、直ぐに判断を切り替えて斧の方向にシールドを構えた。

 

「このための2枚目ぇッ!!」

 

ドラムが叫ぶと、左手のシールドに斧が直撃し、金属音を轟かせた!

 

「なかなか考えた技だが………ッ!?」

 

ドラムは振り返ってレピオに言おうとしたその時、ドラムの頭部に強い衝撃と痛みが走った!視界の焦点が合わず、バランスを崩して片膝をついたドラムは何が起こったのか分からず混乱していたが、自分の横の地面に丸い盾が音を立てて落ちてきたのをようやく回復した視界で見て、ようやく理解した。

 

「お、斧を投げたのに気を取られた隙に………盾を上に投げて、前後の攻撃を囮に………!?」

「あー、悪い、大丈夫か?」

「いや、大丈夫だ……」

 

頭に直撃した盾にドラムが驚いていると、レピオが申し訳なさそうに声をかけてきた。ドラムはタワーシールドを杖代わりに立ち上がると、レピオが尋ねた。

 

「頭、傷大丈夫か?後で手当てするから………」

「まあ、このくらいは………中々の不意打ちだったな………」

「まあな。お前も、視野をもう少し広く持つべきだな。」

「むぅ……その辺は課題点か………」

 

レピオはドラムにアドバイスを送ると、彼はそれを素直に受け入れた。

 

「あ、さっきの反射魔法、後で教えてくれねーか?」

「ああ、それは構わないよ。」

 

 

 

 

 

我が力を(テチキチカニノチスチテラ)受けし矢よ(ナノイトニンチンラ)雨霰となりて(チモイチスチスイカラミチスニカイ)敵を穿て(カイノニテラナキチカイ)!“分身魔弓”!!」

「なんと!」

 

呪文を詠唱したフェイが矢を射ると、1本の矢は空中で無数の矢となりハバキリに迫る!ハバキリは何とか回避し、腰に差した刀に手をやるが、フェイは矢を射る手を緩めず近づくことが叶わない。

 

「矢が増える魔法とは、驚いたでござるな………!」

「あなたの剣は驚異的。でも技がすべて必殺技級で消耗が激しいなら、技を出す暇を与えなければいい。」

「なるほど………モルホン基地での戦いで、拙者たちの会話を聞いていた上での対策でござるか………」

 

フェイの言葉にハバキリは感心して呟く。それならば、と足を止めてフェイを睨むと、そこを彼女は見逃さなかった。

 

「隙あり………!」

 

フェイは矢を引く手に魔力を込めると、刀を握るハバキリに狙いを定めた。

 

「“分身魔弓・フレイムアロー”!」

 

フェイが矢を放つと、火炎をまとった無数の矢がハバキリに迫る!

 

「弐の太刀―――風断!!」

「え!?」

 

しかし、ハバキリは腰の刀を高速で抜刀!矢はその衝撃波を受けて跳ね返されてフェイの元に帰ってきてしまった!

 

「ひゃ!?ぅえ、ひぇえ~~~!?」

 

矢が逆に自分に迫ってくるという想定外の事態に、フェイは普段の様子からは想像もできないような悲鳴を上げて、逃げ回る羽目になってしまった!何とか回避できたものの、フェイが息を切らせて周囲を見た時には、ハバキリの姿を見失ってしまう。

 

「ど、どこに………?」

「ここでござるよ!」

「!?」

 

フェイが周囲を見回していると、彼女の背後からハバキリが声をかけ、刀の切っ先をフェイに突き付けていた。

 

「ッ………ま、参った………」

「ふむ。」

 

フェイの降参宣言を受けたハバキリは刀を納めると、フェイは落ち込んだように肩を落とした。

 

「予想外の威力………油断した………」

「戦略としては悪くなかったが、おぬしは想定外の事態に弱いでござるな。なるべく早く立ち直れるよう、戦況を見極められるようにすべきでござろう。」

「分かった、精進する………」

 

いつもの無表情ながらも、目に見えて落ち込むフェイにハバキリはアドバイスを送った。

 

 

 

 

 

「いやー、まさか全敗とは………」

 

3組の戦いを見ていたロンが、頭に手を当てて呟いた。草介とアルスは感心したように見ていると、ニールがロンに話しかけてきた。

 

「先日の戦いの記録を見るに、お前たちのパーティがこれまで戦ってこれたのは、互いの欠点を補っていたからだろう。そういう意味では、良いチームであると言えるな。」

「そう言っていただけると………」

 

ニールの評価に畏まるロン。一方のデュランは、GPデバイスから呼び出した情報とこちらに戻ってくるハバキリを見比べた。

 

「ハバキリ、流星一刀流剣術の使い手。冷静な性格で的確な判断と指示を下せるため、3人のリーダー格。一撃必殺の技が多い流派の性質上、消耗が激しいのが欠点だ。」

 

次いで、デュランはレイェンに視線を移した。

 

「レイェン、宇宙カンフーと呼ばれる少し怪しい拳法の使い手で、銀河連邦警察格闘大会3年連続優勝を果たしている。性格は明るいが少し楽天家なのが玉に瑕。機転が利くものの、ハバキリとは逆に力を出し惜しみしているような気がある。」

 

デュランは最後に、レピオに視線を移した。

 

「レピオ、ヘラクルス式戦斧術の使い手。単純な力ではメンバー1のパワーファイターだが、真っ先に突っ走る性格故に失敗しがち。メカの知識に詳しいため、それを活かした戦法を組み立てることが得意だ。(最も、これは『例の件』が理由だが………)」

 

トライヤーズを再評価したデュランは、再度3人の方を見た。

 

「以上3人が『トライヤーズ』だが、未だにトライメイルの合体には至っていない………」

「もしかしたら、合体に必要な何かが欠けているのかもしれないな………」

 

デュランが呟いていると、ニールもそれに続くように意見を言った。すると、彼らの後ろから声をかける者がいた。騎士団団長代理のリジルであった。

 

「失礼します、デュランどの、それにソウスケどの。」

「あ、リジルさん。」

「国王がお呼びです。皆さま、会議室まで来てください。」

「分かりました。」

 

リジルに呼ばれたデュランたちは、リジルの案内で城の会議室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来てくれたな、勇者。」

 

会議室に通された一同は、紅茶とお茶菓子の置かれたテーブルに着く国王と挨拶をした。お茶菓子は細長く先がとがった、剣の鞘のような形状のクッキーであった。それを見た草介は、王に聞いてみた。

 

「このクッキーは?」

「ロシロ銘菓の、『聖剣の鞘クッキー』だ。」

 

そして、と言ってクリセイ王は、ジェット機と機関車のような形のクッキーの盛られた皿を取り出した。

 

「こっちは今度発売予定の、『ブレイバードクッキー』と『バトルトレインクッキー』の試作品じゃ。」

「いや、勝手に観光資源にしないでくださいよ!?」

「いや、勝手に城や街を改造されてるんだから、これくらいせんと割に合わんわい!」

「ぐはっ!言い返せない………!」

 

クリセイ王にデュランが抗議を含めたツッコミを入れるが、王の反論に何も言えず、さながら銃弾を受けたかのように仰け反った。草介たちは「それもそうだ。」と思い、GP組は申し訳なさそうに小さく謝った。

 

「………さて、本題に入ろう。先ほど、モルホン基地のケイリー君から依頼があってな。クリファート公国の『ゾミクノーチ』という街にある工場から、『パンツァー』の改良に必要な部品の輸送班の護衛を、君たち勇者一行に依頼したいそうじゃ。」

「なるほど………」

 

気を取り直した王からの話を聞いて、デュランは納得したように頷いた。

 

「明日、ロコロ王国東の港町ベシューから船を出すとのことだ。もっとも、君たちなら船は不要かもしれない、とも言っておったがのう………」

「まあ、そうかもしれませんが………」

 

王の言葉に、ニールは苦笑する。それこそ、バトルトレインであれば海も関係なく走行可能である。すると、レイェンが手を挙げてきた。

 

「何なら、アタシが海中から護衛する手もあるアルよ♪」

「お、そうか。」

「というか、こういう時くらいしか潜水艦の出番ないネ………」

「本音そっちか………」

 

レイェンの提案に納得するが、次いで出てきたボヤキに呆れる一同。デュランは呆れて苦笑しつつも、王の方に向き直った。

 

「分かりました。護衛の任、お受けいたします。」

「うむ、頼んだぞ、勇者よ。」

 

デュランが受諾すると、王は満足そうに頷いた。

 

 

 

 

 

【つづく】




機怪魔獣やレイヴン魔帝国のちょっとした設定の開示。魔王軍の本拠地が温泉の名産地で、キアラが風呂好きなのはセクシーシーン要因なのも理由w

トライメイルの合体設定。元ネタではお約束の3体合体担当でした。

観光資源にされる勇者のメカ。まあ、あんなことされたら仕方ないでしょうねw
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