異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

24 / 36
第22話 煙突の街の3人の泥棒

異世界勇者ロボ 第22話

煙突の街の3人の泥棒

 

 

 

 

 

王の依頼を受けた翌日―――

 

城下町に軽快なメロディーが鳴り響き、人々がそれを聞いて周囲を見渡し始めた。

 

[間もなくー、1番線からバトルトレインが発車いたしまーす。危険ですので、白線の内側に下がってお待ちくださーい。]

 

アナウンスが聞こえると住民たちは家の中や道の端に下がっていく。(3度目なので慣れてきた。)すると、城下町の円形になった中央広場のレンガ造りの地面が少し下がって左右に開くと、地下から転車台に乗ったバトルトレインがせり上がって来る。

 

「あ、駅弁買い忘れた!」

「元から無いでござろう………」

「アタシが何か作るアルか?」

 

客車内でトライヤーズが話す中、バトルトレインが地上にまで登り停止すると、大通りの地面が左右に跳ね上がり、その下から線路が姿を現し、空に向かって伸びて行った。

 

「出発進行!!」

 

運転席のニールが宣言と共にレバーを押し込むと、巨大な動輪が回転を始め、バトルトレインがゆっくりと動き出す。地響きを響かせながら、バトルトレインは徐々に速度を上げ、線路を駆け上がり、空に向かって走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都ロシロから発進したバトルトレインは、3時間ほどで東の港町ベシューに到着した。

ベシューは、ロコロ王国から見て東のトウスト大陸にある2大国、クリファート公国とマカグレロー共和国との出入り口となる大きな貿易港であり、港に隣接した商店街には各国から輸入された製品が免税価格で販売されている。特に、マカグレロー共和国首都のジャスカン名産の「ジャスカン服」は、人気の製品となっている。

 

「へぇー、貿易港だけあって賑わっているんだなー!」

「時間があるなら、街を歩いて買い物とかしたいでありますけどねー」

 

街の様子を見たレピオとアルスが感想を口にする。一方の草介は、港から見える海の水平線を見ていた。

 

「これが、この世界の海か………」

「惑星の海というのは、宇宙空間から見るのとは違った見え方がして面白いなぁ………」

 

小さく感嘆の声を漏らす草介の隣で、デュランも同じように海を見て呟いた。その時、後ろから一同に声をかける者がいた。ケイリーだ。

 

「おまたせしました、みなさん。」

「あ、ケイリーさん。」

「船はこちらになります。」

 

ケイリーが案内をすると、カマリサ帝国の国章が描かれた大型の蒸気船が停泊していた。

 

「こちらの高速艇で、およそ3日で隣国クリファート公国の北にあるシィーダ港に到着する予定です。」

「分かった。」

 

デュランは頷くと、早速打ち合わせを始めた。

 

「では、船上には私やソウスケたちが乗って、ニールとハバキリはバトルトレインで海上を、レイェンは海中を護衛してもらおう。」

「了解した。」

「了解ネ♪」

 

デュランの指示に、ニールとレイェンは頷いて了承をした。

 

数十分後、高速艇は無事に出航し、バトルトレインも並走する形で発射し、海中にはタイガーアクアが潜航した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トウスト大陸の北端に位置する『クリファート公国』。

元々は鉄鉱石を始めとした鉱石、地球で言うところのレアメタルが採掘できる鉱山が多くある土地であった。そのこともあってこの国は工業が盛んであったため、それに目を付けたカマリサ帝国が属国として軍事兵器の工場がいくつも建てられていた。

 

その内の1つが、国の北側にあるシィーダ軍港から山を1つ超えた先にある街、ゾミクノーチである。

周囲を高い塀で囲まれ、黒い煙を吐き出す何本もの高い煙突から「煙突の街」ともあだ名されており、街中は煤で汚れた壁が目立ち、せき込む人もチラホラ見える。

そんなこの街を、山の木々の間から見下ろす者たちがいた。

 

「あの街の工場の1つが、例の機動兵器の部品製作を担っているのね?」

「ああ。ウルフの情報収集力は俺が保証するよ。」

 

望遠鏡で街を見ていたキアラに、ティラノが答える。テーブルを置いて簡易的な陣地を設置して、工場襲撃計画を話し合っていた。

 

「あの街の西地区にあるB2工場で、秘密裏に作られているって話しだ。」

「それなら、とっとと工場ごとぶっ壊しちまおうぜ?」

「いや、そうも行かないみたいよ。」

 

テーブルに着いてティラノの話を聞いたシャークが提案するが、キアラが待ったをかけた。ポーラたちがキアラの方を見ると、キアラと一緒に街を見ていたカラも、賛同するように頷いた。

 

「あの街を囲む城壁には、魔力障壁が展開できるように『障壁装置』が設置されている。空から城壁を超えての侵入や、遠距離から攻撃をしようとすれば、障壁が展開して街を守る仕組みだ。無論、城壁自体もな。」

「それに、街の出入り口には城門があるダス。もちろんの事ダスが、警備は厳重ダス。」

「結論、工場破壊の前に、街に入るのも難しいわ。軍事工場があるだけあって、厳重な防御態勢よ。」

 

カラとボルグ、キアラが説明をすると、ポーラとシャークの双子は「う~ん……」と唸った。しかし、ティラノは知っていたかのように表情を変えなかった。

 

「ま、ウルフもそれを調べてあるし、障壁の仕組みも突き止めてある。街の5ヶ所に魔力障壁の要となる魔力結晶がある。これを1つでも破壊、あるいは停止させれば、障壁は張れないってわけだ。」

「なるほどねー」

 

ティラノが言うと、ポーラが納得して頷く。だが、キアラはそれにも否定的な意見を述べた。

 

「簡単に言うけど、そういう要っていうのは、大抵隠されているものよ?どうやって探すの?」

「それもご安心を。」

 

キアラの疑問に対して、ティラノは笑みを浮かべて答える。

 

「ウルフの情報によれば、要の魔力結晶には魔力を込める役割を兼ねた護衛の魔導師がそれぞれついているらしい。そして、北側の魔導師は最近、体調が優れていないそうだ。そこで、街の北側から重点的に攻撃すれば、その負担で魔力結晶はエネルギー切れってワケ。」

 

ウルフは地図の北側にある1点を指さした。キアラたちはそれをのぞき込んだ。

 

「どこバウ?」

「ここって、修道院よね?そこに隠されてるの?」

「ああ。どうやら、ここの地下にあるらしい。」

「なるほど………ん?」

 

ティラノの説明を聞いていたキアラだが、その時、自分たち以外に話に入ってきている声があることに気が付いた。声のした方を見てみれば、そこには見覚えのある灰色の狼耳の少女の姿があった。

 

「って、ミュール!?」

「お前、何で!?」

「わう………」

 

キアラやカラに指摘されたミュールは、さっとテーブルの下に隠れてしまった。キアラはしゃがみ込んで、ミュールに優しく問いかけた。

 

「ミュール、どうして来ちゃったの?」

「ひ、ひめさまが、コアをちゃんとつかえるように、わたしがてつだってあげようとおもって。おじいちゃんから、やりかたきいてたし………」

「そうだったのね………」

 

ミュールから事情を聞いて、キアラは小さく頷いた。ミュールの頭をなでながら抱きかかえると、カラとボルグは呆れたようにため息をついた。

 

「まったく、どこに忍び込んでいたのか………」

「ま、着いてきちゃったもんは仕方ないダスな………」

「甘いね、おたくら………」

 

キアラたちのやり取りを見ていたシャークは呆れて一言漏らす。ミュールはそちらを見るが、ティラノと目が合った瞬間、怯えたようにキアラの胸に顔をうずめた。

 

「ミュール?」

「あのひと、こわい………」

 

キアラに抱かれたままのミュールがティラノを怖がっているのを見て、シャークとポーラはジロリとティラノを睨みつけた。睨まれたティラノは、気まずそうに視線をそらした。

 

「………まあ、とりあえず私は、例の装置の取り付けてくるわ。ミュール、お手伝いお願いね?」

「う、うん!」

 

ミュールは元気よく頷くと、キアラと一緒に陣地を去って行った。

 

(炎のティラノ………軽い見た目だけど、他の六魔獣将と比べ物にならないくらいに信用できないのよね………ミュールの言う通り目線も怖いし………)

 

その場から離れつつ、キアラは内心ティラノを警戒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日の航海の後、そこから魔導列車で更に1時間半ほど揺られて、草介たちはようやくゾミクノーチ門前の駅に辿り着いた。バトルトレインを周囲の森に隠した後、草介たちは城門で手続きをして街に入った。

 

「………ここの空は、随分と黒いな………」

「そうだな………空気も大分悪いし………」

 

街を歩きながら、ふと空を見上げた草介とロンが呟いた。工場の噴煙で空は黒く濁り、煙の向こうから青い色がチラホラとしか見えなかった。

 

「ここはクリファートにいくつもある工業都市の中でも、特に工場が多い街ですからね。街の人には、「きれいな青空」を見たことがないという人もいるとか………」

「そんなにか………」

「産業革命の弊害か………」

 

少し眉を下げたケイリーの説明を聞いて、草介とレイェンが呟いた。街中を見てみればあちこちが煤に汚れ、どこか疲れ切ったような顔をした人が多く、せき込んでいる者も少なくない。レイェンはそれを、悲壮感のある目で見ていた。

 

「何か、嫌な事思いだすなァ………」

「ん?どうしたんだ?」

「いや、ネ………アタシも………」

 

レイェンの小さな呟きが耳に入った草介は、それにどこか違和感を持った。草介に聞かれてレイェンが口に出そうとしたその時、路地裏から飛び出してきた3人の子供が走ってくると、ドンっとレイェンとぶつかった。

 

「んぁ!?」

「あ、ごめん!」

 

3人組はレイェンとぶつかると、そのまま走り去ってしまった。草介とデュランが子供たちの後ろ姿を目で追っていると、レイェンが何かに気付いたのか、懐を探っていた。

 

「………ア、アイヤ~………やられたアル………お財布ないアル………」

「何!?」

 

草介は思わず叫ぶと再度子供たちの走った先を見るが、子供たちの姿はもう見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ、上手くいったな………」

 

路地裏に逃げ込んだ3人組、短い金髪の男の子とぼさぼさの茶髪の男の子は「戦利品」を手に笑っていたが、銀髪ロングの女の子は少し不安そうにしていた。

3人とも衣服はボロボロで薄汚れ、身なりはお世辞にも整っているとは言い難かった。

 

「ねえトッタ、こんなことして、良いのかな………?」

「今さら何言ってるんだよ、スッタ?僕たちにできるのは、これくらいしかないだろう?」

「でも………」

 

スッタというらしい女の子が金髪の男の子に尋ねるが、トッタは財布を右手でポンポンはねさせながら、割り切ったように言う。スッタはそれでも納得しきれない様子だったが、茶髪の男の子がトッタに言ってきた。

 

「なあトッタ、それより中身見ようぜ?いくら入ってる?」

「慌てるなよ、ギッタ。あのお姉さんの身なりとこの重さなら、20Gは固いぜ。」

 

茶髪のギッタにそう言うと、トッタは財布の紐を緩めて開いてみると………

小馬鹿にしたようにベロを出した頭がが、ビヨ~ンと出てきた!

 

「「うわッ!?」」「きゃあ!?」

 

驚いた3人は思わず財布を投げ捨てた。地面に転がった財布を見れば、頭の付け根の辺りには長いバネと、「ざんねんでした☆」と書かれた垂れ幕が下がっている。さながらびっくり箱だ。

 

「え、これって………?」

「ダミーの財布かよ………!?」

「やられた………!」

 

スッタとギッタが驚く中、トッタは悔しそうに頭に手を当てた。

 

「はーい、ドッキリ大成功~」てってれー♪

「「「!?」」」

 

その時、3人のいる路地裏の出入り口から声がすると、棍棒を肩に担ぎ、いたずらっぽく笑うレイェンと、効果音を出すのに使ったらしいGPデバイスを右手に持った草介が立っていた。

 

「バ、バレた!?」

「逃げるぞ!」

 

3人は慌てて反対方向に逃げようとするが、そこには既にハバキリやレピオが立ちふさがっていた。

 

「ああ!?」

「こっちは立ち入り禁止だ。工事はないけどな。」

「し、しまった………!?」

 

3人の逃げ道を塞ぐレピオが言い放つ。3人が足を止めていると、後ろに迫って来ていたレイェンがトッタとギッタの首根っこを捕まえた。

 

「ほい、御用アル。」

「うわ!?」

「は、離せよ!?」

 

トッタとギッタがジタバタする中、スッタは怯えて2人を見ていたが、後ろからポンと肩を叩かれた。見上げれば、そこにはハバキリとレピオの顔があった。

 

「おぬしもだ。」

「ひ……!」

 

2人の顔を見たスッタは、思わず小さな悲鳴を上げた。3人は観念したのか、大人しくなって肩を落とした。

 

「しっかし、よくダミーの財布なんて用意してたな?」

 

ふと、レイェンの後ろから落ちたダミーの財布を拾った草介が話しかけた。レイェンは振り返ると、どこか気まずそうに笑った。

 

「ナハハ………昔取ったキネヅカってやつネ。取りたくなかったけど………」

「?」

 

最後の方は小声で草介には聞こえなかったが、レイェンの表情に少し違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーたお前らか!!」

 

数分後、草介たちが街の詰所に3人を連れて行くと、年配の兵士が3人に向けて怒鳴りつけた。椅子に座った3人はその声にビクッと身を縮こまると、年配の兵士はため息をついて頭を押さえた。

 

「『また』って、常習犯かよこいつら………」

「ああ、この近くのスラム街じゃあ有名な悪ガキどもでな………身寄りがなくスリや盗みで食いつないでみたいでのぅ。数ヵ月前に、この街の北にある修道院の院長が引き取ってからは、盗みもしなくなったいたというのに………」

 

草介が呟くと、兵士が呆れ気味に説明をした。レイェンはそれを聞いてチラリと3人の方を見れば、トッタはばつが悪そうに顔を逸らし、ギッタは不貞腐れたように下を向き、スッタはふさぎ込んだ表情をしていた。それを見たレイェンは、兵士に笑いながら言った。

 

「あー、今回はアタシもお金盗られたわけじゃないし、このくらいで許してあげてほしいネ。」

「む、そうかの………お前たち、その人に謝るんじゃぞ?」

「すみません………」

「すんませんした………」

「ごめんなさい……」

 

兵士に言われて、3人はレイェンにペコリと頭を下げた。レイェンはそれを見て頷くと、3人と一緒に詰所を後にした。

 

「もう、こんなことすんなよ?」

「すんません………」

「でも、このままじゃあ………」

「どうしよう………」

 

草介が念押しするように3人に言うが、3人は暗い顔のまま俯いていた。それを見て草介たちは顔を見合わせると、草介は3人に聞いてみた。

 

「何かあったのか?修道院に引き取られたって聞いたけど………」

「「「………」」」

 

3人は顔を合わせると頷き合い、トッタが意を決したように話し始めた。

 

「………実は、魔導師を雇うお金が必要で………」

「魔導師を?何でまた?」

「僕たちのいる修道院って、院長ともう1人のシスターの2人がいるんだけど、院長が先月病気で倒れて、今ベッドで寝たきりなんだ………」

「今、シスターが1人で頑張ってるんだけど、日に日にやつれていって……それでこの前、「もっと優秀な魔導師がいれば……」って呟いているのを聞いちゃって………」

「理由は分からないけれど、優秀な魔導師がいればシスターが助かるならって思ったんだけど………そういう人ってタダでお願いなんてできないから、お金が必要って思って………」

「それでスリをしたのか………」

 

トッタに続いてギッタとスッタも事情を説明した。ハバキリが納得したように頷くと、トッタは頷いた。

 

「僕たち、こんなことでしかお金集められないから………」

「そういう事か………」

「やむを得ない事情は分かったアル。だけど、だからって悪いことでお金稼いでもシスターさんは喜ばないと思うネ。少なくともアタシは嬉しくないアル。」

「そ、それは………」

「ごめんなさい………」

 

レイェンが諭すように言うと、3人は俯いた。レイェンはそれを見て頷くと、草介の方を向いた。

 

「どうするネ?」

「どうするって言っても………」

「拙者たちには『優秀な魔導師』がどのような者かは分からぬが………」

「それに、オレたちも隊長たち待たせてるしな………」

 

うーん、と一同は頭を悩ませた。ふと、そこで草介は、1つの案を思いついた。

 

「とりあえず、シャスティ連れてその修道院に行ってみるか?レヴァンティさんが言うには、結構な実力持ってるみたいだし。」

「うーむ………拙者たちにできることがあるとすれば、それくらいでござるな………」

 

草介の案にハバキリも頷いた。レイェンも2人の考えに同意したようで、頷いた。その様子を見てトッタたちは驚いたような顔となる。

 

「助けてくれるっていうのかよ?」

「そのシスターさんの事も気になるしな。立て続けに2人も体調不良になるなんて、おかしいだろ?」

「それは、そうだけど……」

 

草介の疑問にスッタが言いよどむと、ギッタは戸惑ったように聞いてきた。

 

「ほ、本気かよ?俺たち、さっき会ったばかり、しかも財布盗もうとしたっていうのに………!?俺たち………お互いに名前だって知らないんだぜ!?」

「………それもそうネ。アタシはレイェンアル。そっちがソウスケで、ハバキリとレピオネ。財布をスろうとしたことは、さっき言ったように大目に見るアル。助ける理由は………色々あるけど、一番は「困ってる人がいたから」、じゃダメアルか?」

「………!!」

 

あっさりと言ってのけたレイェンを、愕然とした顔で見るギッタ。見てみれば、草介やハバキリ、レピオも同意見とばかりに笑みを浮かべていた。トッタとスッタも、喜んでいいのか呆れていいのか分からない、といった様子だ。

 

「………アンタら、シスターたちと同じくらい………いや、それ以上のお人よしだな………」

「まったくだ………」

「そうだね………」

 

ギッタが呆れたように言い、トッタとスッタも頷くと、トッタは呆れたように笑うと、草介たちに向かって言った。

 

「いいよ。分かった。あんたたちは信用できる人間のようだ。あんたたちを僕たちの世話になってる修道院に案内するよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――という事だそうです。」

「なるほど、妙なことに巻き込まれたみたいですね………」

 

数分後、B2工場では、GPデバイスで連絡を受けたニールが、ケイリーたちに伝達をしていた。

 

「まあ、例のエンジン部品は完成に後2日かかるそうなので、1日くらいなら余裕はありますので。」

「すまないな。」

「いえ、私たちも、護衛を頼んでいる身なので………」

 

ニールが苦笑気味に言うと、シャスティを連れて草介たちと合流しようと工場を出ようとした。すると、工場の前で既にいたデュランが誰かと話して、というか、一方的に話しかけているのを見つけた。

 

「兄ちゃんよぉー!聞いてくれよぉー!」

「あ、あの………」

「俺の工場よぉー、今月売り上げが3割減でよぉー!俺ぁ、このままじゃあ破産しちまうんだよぉー!」

「は、はぁ……」

「酔っ払いに絡まれとるべ………」

 

デュランは、無精ひげを生やして前髪が後退している中年の男性に腕を掴まれて絡まれていた。鼻が赤く手には酒瓶を持っており、明らかに酔っぱらっていた。周囲にいるロンたちも、どうすればいいか分からない様子であった。

 

「もう、呑まねーとやってらんねーんだよー!ほら、兄ちゃんも呑めよ!」

「いや、私は………」

「いいからよぉ!俺の酒が呑めねえーってのかよぉー!おらァ!」

「むごっ!?」

 

デュランの拒否も聞かずに、男は持っていた酒瓶を強引にデュランに押し付けて飲ませた。デュランは何とか口から離すものの既に酒は少量入り込み、飲み込んでしまった。

 

「ふっ、ふへぇ~………」

「へ!?兄ちゃん?」

「デュ、デュランさん!?」

「お兄ちゃん!」

 

その瞬間、デュランは顔を真っ赤にさせて、その場に倒れてしまった。男は驚いてデュランの顔を覗き込み、ロンたちは心配そうに駆け寄った。デュランは目の焦点が合わず、口からはよだれが垂れている。

 

「んぇ~………」

「な、なんだよ兄ちゃん、酒弱いのかよ………?」

「お兄ちゃん、1滴もお酒飲めないであります………」

「下戸だったのか………」

 

呂律の回らないデュランを介抱するアルスが説明をする。あまりの酒の弱さに驚いて酔いがさめたのか、男は申し訳なさそうに頭を下げていると、ニールが呆れたように言って来た。

 

「そこの御仁、仕事が辛いのは分かるが、無理に酒を飲ませるのは良くないぞ?」

「あ、ああ……すまねぇな兄ちゃん……」

「おーい、大丈夫ですかー?」

 

男が恐縮している中、ロンがデュランに声をかけるが、泥酔しているのかうめき声を上げるだけであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それでそんな状態なのか?」

「ああ………」

「あ゛ー………もうむり………」

 

十数分後、草介たちが見たのは、青い顔でぐったりしたデュランに肩を貸すニールと、困った顔のシャスティであった。

 

「そんな状態の隊長、わざわざ連れてこなくても……」

「いや、流石に工場に置いていくわけにもいかなくてな………」

 

修道院に向かう道中、呆れたようにレピオが言う。一方でトッタ、ギッタ、スッタの3人は、シャスティを見ていた。

 

「お前が、兄ちゃんたちの言ってた魔導師?」

「ん、んだ………」

「歳、俺らとあんま変わんねーじゃねーか………」

「おどおどしてるし、頼りないなー、そっちの人は具合悪そうだし………」

「ぁう………」

「あ゛ー………」

 

訝しんだ目で見る3人に言われて、シャスティは縮こまってしまった。後ろから見ていた草介たちも、初対面でこれではそう思われても仕方ないか、と苦笑していた。

一同はぐったりしたデュランを連れたまま、北側にある修道院への道を歩き、やがて修道院の門にたどり着いた。

 

簡素な門の前まで来た草介は、中の様子を伺った。門の向こうはそこそこの広さのある庭があり、小さいながらも花壇には花が数種類植えられている。その奥にこじんまりした建物が建っていた。多少古いが手入れはされているようで、建物の屋根には十字架にも大きな金槌にも見えるシンボルが刺さっていた。

 

「ここか……」

「小さいけど、この街では唯一の修道院なんだ。」

「他の街にはもっと大きい所があって、そこの支部みたいな感じらしい。」

「あのシンボルは、マカグレローで信仰されている『神樹教』って宗教のもので、『大樹に落ちてきた神様の槌』って話が元なんだって。」

「へぇー………」

 

草介が呟くと、トッタ、ギッタ、スッタが説明をした。3人に連れられて門をくぐり、修道院の建物まで向かい歩いていると、ちょうど入り口のドアが開いて黒い修道服を着たシスターが出てきた。

 

「あ、シスター!」

「!?」

「あら?」

 

出てきたシスターは、ゆるくウェーブのかかった薄い茶髪のボブカットの女性であった。少し垂れ気味の青い目には黒い隈が浮かび疲れている様子であったが、トッタたちの姿を見ると嬉しそうに微笑んだ。

 

「あらみんな、今帰り?お客さんたくさんいるみたいだけど?」

「うん、シスターの助けになる人たちを連れてきたんだ。」

「私の?」

「あ゛ー………」

 

シスターはトッタの言葉に草介たちを見るが、見るからに具合の悪そうなデュランへと、真っ先に目が行った。

 

「えーっと………私よりも、その人の方が助けが必要みたいだけど?」

(((ごもっとも………)))

 

シスターの指摘に草介たちは苦笑するしかなかった。シスターは呆れて顔を引きつらせていたが、ふと、草介は自分の後ろにいたシャスティが、驚いた顔で固まっていることに気が付いた。

 

「?どうした?」

「あ、いや………」

「え?」

 

シャスティが言い淀んでいたが、その時、シスターはシャスティの姿を見て、驚いた様子でシャスティの前まで来た。

 

「え、あれ……?シャ、シャスくん!?」

「「「え?」」」

「リ、リサーナ………さん……!」

 

シスター・リサーナはシャスティの顔を見ると、驚いた様子で声をかけた。草介たちは驚いたが、シャスティはそれ以上に困惑していた。

 

「久しぶりね!私が卒業して以来だから、2年ぶりくらいかしら?」

「ん、んだな………オラ、あれから学校辞めちまったけど………」

「そうだったのね………私、卒業してから学校の内情聞いてなかったから………」

「だ、だども、今はレヴァンティ様に教えてもらってっから………」

「あら、レヴァンティ先生も、シャスくんと辞めちゃったの?」

「んだよ………今はロコロ王国で、王宮魔導師をしてるだよ………」

 

「シャ、『シャスくん』……?」

「あいつ、シスターの知り合いだったのか?」

 

楽し気にシャスティと話すリサーナを見て、2人の仲を察する一同。呆気に取られていると、それに気づいたのか、リサーナは「ハッ」として振り返った。

 

「ああ、ごめんなさい。つい話し込んじゃって………私、2年前に『カシンバルト魔法学校』を卒業したんだけど、シャスくん、あ、いや………シャスティくんは、学校の後輩なのよ。」

「あ、そうだったのか………」

「学校卒業してからずっと会っていなかったんだけど、在学中は仲良くしていてねー、懐かしいなぁ………」

 

リサーナは嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべた。シャスティも嬉しそうな顔をしているのを見て、草介たちは本当に仲が良かったのだなと理解した。トッタたち3人も、先ほどまで疲れたような顔をしていたリサーナの嬉しそうな顔を見て、少しだけ安心していた。

 

「とりあえず、外では何だから、中に入りましょうか。その人もヤバそうだし………」

「ゔあ゛ー………」

「そ、そうっスね………」

「助けに来たのに助けられてどうすんだよ………」

 

リサーナに案内されて、草介たちは修道院の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

【つづく】




冒頭のバトルトレイン発車シーンはバンクなのですが、「声優がバンクシーンにアドリブを入れる」感じで毎回色々変えてます。

ミュールちゃん、レギュラー化。味方にショタ、敵側にロリを入れる采配(何

3人の泥棒こと、トッタ、ギッタ、スッタの3人組。名前はまんま、「盗む」を意味する盗る、ぎる、掏るから。

シスター・リサーナ登場。シャスティとの関係の詳細はまたいずれ。

デュランの弱点発覚。妙にイメージしながら書きやすかったんだけど、自分の中で杉田智和さんの声のイメージなせいかもw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。