異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第25話 光をくれた、名もなき君へ

異世界勇者ロボ 第25話

光をくれた、名もなき君へ

 

 

 

 

 

夜空が輝く夜、ゾミクノーチの街の人々が『奇跡の夜』と呼ぶ幻想的な現象(その裏で、街を守る戦いがあった事を、人々は知らない)から一夜明けた朝。

 

「………何か、昨日に比べて明るくないか?」

 

修道院で一晩眠った草介が起きて外に出てみると、昨日に比べて街の様子がほんの少しだけ活気づいているように見えた。

表情が暗かった人々の顔には笑みが浮かんでいて、道行く人の足取りも軽く、黒い空と同じように暗かった街の雰囲気が別物のように感じられた。

不思議に思って見てみたら、人々の話題は昨夜の『奇跡の夜』の事で持ちきりだった。

 

「どうやら、昨夜のアレを見て、街のみんなが感動したらしいな。」

「確かに…あんな光景、宇宙のどの惑星でも見られないでありますよ………」

「シンナセンでも、滅多に見られない。」

「シャ、あー………『()()()()()()()()』のおかげで、みんなの心に希望が芽生えた、って事か………」

「ぇう………」

 

草介たちが街の様子を見て話していると、昨晩の功労者であるシャスティは、気恥ずかしそうに顔を赤くすると、とんがり帽子を目深に被って俯いた。(修道院の秘密の事もあるため、シャスティの名前は外で出せなかった。)

 

「隊長!」

「もう、起きて大丈夫でござるか?」

 

その時、後ろにある修道院のドアの方で声が聞こえて振り向いてみれば、デュランがニールと共に外に出てきており、トライヤーズの3人は心配そうに話しかけていた。

 

「デュラン!もう大丈夫なのか?」

「ああ、心配かけたね、みんな。アルスやみんなの看病のおかげで、すっかり元気になったよ。」

「隊長も、とんだ災難だったアルね~」

 

笑みを浮かべるデュランに、レイェンが少し茶化すように言った。デュランはそんな彼女の方を向いた。

 

「それはそうとレイェン、今回は大活躍だったそうだね!」

「あ、ありがとうアル………」

 

デュランに褒められ、レイェンは照れ臭そうに頭を掻いた。その時に、草介が思い出したように口を開いた。

 

「そうだレイェン、あの技、王道寺拳法って………」

「あ、そうだよ!お前、あんなスゴイ流派の拳法だったなんて!」

「なぜ今まで、黙っていたのでござるか………?」

「あー、その事ネー………」

 

草介の指摘にレピオとハバキリも続く。一同の視線がレイェンに集まると、彼女はバツが悪そうに苦笑した。

 

「いや~、実はアタシ、王道寺を破門同然の身アルよ………」

「破門って………」

「何したんだよ?」

「流派の方針と、アタシの考えが合わなかったネ。」

 

レイェンは草介にそう答えると、適当な木の枝を拾ってしゃがみ込み、地面に何かを描きながら話し始めた。

 

「ハバキリが言ってたように、王道寺拳法は「使い手一人で百万の戦力となる」って言われるほどの力があるネ。そのため、『邪悪な闇に与すれば闇が全てを飲み込み、正義の光に与すれば光が全てを滅する』って教えがあって、つまり、1つの勢力に1人が加担すれば、宇宙のパワーバランスを崩壊させるから、基本的に大きな戦等には干渉しないのが、流派全体の方針アル。」

 

レイェンが地面に地球の『陰陽』にも似た模様を描きながら説明するのを、草介たちは真剣な表情で聞き入っている。

 

「でも、アタシはワルンダイツみたいな悪党が宇宙で暴れまわってるのに、王道寺は静観を決め込んでるのに我慢できなくなって、銀河連邦警察に入る事を決めたネ。当然、師範代の大半には反対されたアル。王道寺総帥でもあるアタシの師匠はいつでも帰ってこいって言ってくれたけど、師匠には迷惑かけたくないから、流派の名前出さないで、技もアタシのオリジナルをほとんどにして、本流の技は使わないようにしていたネ………」

「それで、今まで力を出し惜しみしていたのか………」

 

レイェンの話を聞いて、デュランは納得をしたように頷いた。

 

「力を持つが故の矜持、というわけか………」

「アタシに言わせれば、傲りもいいところアル。」

 

ロンが少し感心したように呟くが、レイェンは立ち上がって枝を放り捨てると、吐き捨てるように言った。

 

「王道寺を出て分かったけど、アタシが未熟なのを差し引いても、この身一つでバランスを崩せるほど宇宙って言うのはちっぽけじゃないアル。師範代たちは、ソコんところ分かってないっぽいネ。」

「静観していたくせに、本当の意味で宇宙が観えていなかった感じか………」

(なるほど、それが王道寺の総帥の狙いか………)

(恐らく総帥は王道寺の現状に危機感を覚えていたのだろう。レイェンを通じて、王道寺の力がどれほどのものか、師範代や門下生に示したかったのだろうな………)

 

呆れたように言うレイェンに対して、デュランとニールは王道寺総帥の考えを予想した。

 

「でも、まあ、今回の事で色々吹っ切れたアル。遠くで見守ってくれてる師匠との約束守っても、近くにいる人たち守れなかったら意味ないって、気づけたアル。」

「レイェン……」

「だから、これからはいざって時は遠慮なく本流の技を使わせてもらうネ。」

 

レイェンはそう言うと、草介たちの方を向いて笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の正午頃。

B2工場でケイリーに呼ばれた草介たちは、エンジンパーツの完成を聞かされ、今日の夕方には運び出せると聞かされていた。

 

「あと1日かかると聞いていたが?」

「それが、工場の人たちが妙に張り切っちゃって………思った以上に作業が捗ったとか………」

 

デュランの疑問にケイリーが苦笑気味に答えた。昨晩の現象が、作業員たちのやる気を向上させてしまったようだ。

 

「工場長も、「こんなことなら、定期的に奇跡が起こってほしい」なんて言ってましたね。」

「あはは………奇跡って言うのは、滅多に起こるもんじゃないからねー………」

 

ケイリーが冗談交じりに言うのを、デュランは苦笑しつつ答えた。自らの行いを恥じているシャスティのことを考えると、複雑な気持ちにはなるが。

 

「とりあえず、今日の夕方には魔導列車でシィーダへ向かい、夜には出向します。例の修道院の方々に挨拶を済ませておいてください。」

「ああ、分かった。」

 

ケイリーに言われて、デュランと草介は頷いた。

 

「ソウスケ、ここは私とニールさんに任せて修道院に戻っていいぞ。ハバキリたちにも伝えに行ってくれ。」

「ああ、分かった。」

 

デュランに促されて、草介は工場を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、もう出なきゃいけないのか………」

 

草介から話を聞いたレピオは、どこか寂しそうに呟いた。レイェンも少しだけ名残惜しそうにしていると、草介たちの後ろからトッタたちがこちらに小走りでやってきた。

 

「兄ちゃんたち、もう帰っちゃうのか?」

「ああ、今日の夕方にはな。」

「そっかー………」

「少し寂しいね~」

 

トッタたち3人がぼやいていると、3人の後ろからリサーナと院長が顔を出したのを、レイェンが気づいた。

 

「あ、シスター!」

「リサーナさん!院長も………!」

「もう起きて大丈夫なのか?」

「ええ、おかげさまで……」

「昨夜は、久しぶりにぐっすり眠れましたので。」

 

気付いたレイェンと草介が声をかけると、リサーナは笑って答えた。院長は杖を使いながらもゆっくり歩み寄ってくると、丁寧に頭を深々と下げた。

 

「この度は、我々を救っていただき、誠にありがとうございました。」

「あ、いえ!そんな大したことは……」

 

院長の感謝の言葉に草介が慌てて手を振るが、頭を上げた院長がこちらを真っ直ぐに見つめてくる。その目には、昨日までの疲れがまるで感じられなかった。

 

「私も、昨日のあの光景を見た影響か、ようやく薬が効いてきまして。『向こう』の方もしばらくは大丈夫そうですので。」

「それは良かったです。」

 

院長の話を聞いて、レイェンは一安心だと頷く。リサーナの方も見てみれば、彼女も疲れが取れているのが表情から見て取れた。

 

「それに、喜ばしいことがもう1つあるんです。」

 

リサーナはそう言うと、1通の手紙を懐から取り出した。

 

「私と院長だけでは行き届かない所があると前々から言っていた件について、増員の目途がようやく立ったと今朝手紙で連絡がありまして。」

「それは、良かった!」

 

リサーナの報告に草介が嬉しそうに言った。院長も穏やかな表情で頷いていると、その様子を見て、トッタたちはパッと笑顔になった。

 

「よかった、シスターも院長も、元気になったみたいで!」

「あのちっこい魔導師、本当にスゴイヤツだったんだな!」

「見直したよ!」

 

トッタたちが嬉しそうに話すのを聞いて、ハバキリやロンたちも思わず笑みを浮かべた。3人の話を聞いた院長とリサーナも、シャスティへ感謝の気持ちが湧いてきた。

 

「あの子にもお礼を言わなければ。」

「そうですね、えーと、シャス君は………?」

「あー……」

 

リサーナがキョロキョロと周りを見てシャスティを探そうとすると、レピオやロンは少し気まずそうな顔になった。チラリと礼拝堂の隅を見てみれば、顔を真っ赤にしたシャスティが、柱の陰に隠れながらこちらを覗いていた。

 

「あ、あの……そ、その……」

 

シャスティはしどろもどろになりながら何か言おうとしているが、なかなか言葉が出てこないようだ。その様子を見て院長はキョトンとして、トッタたちは呆れた顔になっていた。

 

(シャスティ、昨夜の件やりすぎって気にしてたみたいでさ………)

(そうでしたか………)

 

レピオが院長にこそっと耳打ちをすると、院長は少し申し訳ない笑みを浮かべた。すると、リサーナはシャスティの元に歩み寄り、彼の隣に立った。

 

「シャス君、昨日は本当にありがとうね。」

「だ、だどもオラ、やりすぎちまったし……」

「でも、シャス君のおかげで、私たち助かったのよ?だから、ありがとう。」

「あ、う……」

 

リサーナが笑顔でシャスティにお礼を言うと、シャスティも少し恥ずかしそうにだが頷いた。レイェンと院長が微笑ましそうに見ているのに気づいたのか、シャスティは羞恥からか先ほど以上に顔を真っ赤にさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方、ゾミクノーチ門前の駅に例の部品を運搬し、ロコロ王国への帰還準備が整っていた。

 

「改めまして、今回はありがとうございました。」

「いえ、そんな………」

 

駅まで見送りに来た院長が頭を下げるのを、ロンやレイェンは恐縮していた。

 

「姉ちゃんたち、もう行っちまうんだな~」

「この街出て行ったら、もう会えないかもな………」

「そうね………」

「でも、またいつか会える気がするアル♪」

 

少しだけ寂しそうな顔をするトッタ、ギッタ、スッタの顔を見て、レイェンが明るく言った。トッタたちは顔を見合わせると、笑顔になって頷いた。

 

「………そうだな、またいつか、どっかで会えるよな!」

「うん!」

「その時は、またカンフー教えてくれよ!」

「アイヨ~♪」

 

トッタたちが笑顔で言うのを聞いて、レイェンも笑って頷いた。一方で、ケイリーと打ち合わせを終えたデュランとニールは、シャスティはリサーナと別れの挨拶を交わしているのを見つけた。

 

「シャス君、また会えて嬉しかったわ。」

「オ、オラもね………リ、リサーナさんに会えて、本当は嬉しかっただよ。」

 

シャスティの言葉を聞いたリサーナは、どこか寂しそうな顔をしていた。ニールはそれを見て、シャスティとリサーナの関係性について、単なる『先輩と後輩』という訳ではないように思えた。

 

(まあ、人の事をあれこれ詮索するものじゃないよな。なにより、シャスティのあの性格だし。)

 

ニールはそう考えて何も言わないでおくことにした。

 

数分後、デュランたちを乗せた魔導列車は、シィーダ港に向けて発車していった。リサーナたちは、列車が見えなくなるまで手を振り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――では、護衛の配置は前回と同様で大丈夫ですね?」

「ああ、問題ない。」

 

1時間半ほどかけて、シィーダ港に到着した一同。デュランとニール、レイェンは、護衛の打ち合わせをしていた。

 

「フェニックスジェットとトータスドリルは応急処置が必要だったが、幸いバトルトレインとタイガーアクアは運用に問題はないし、何より私のデュランカーは無傷だからな。」

「そ、そうでしたね………」

「怪我の功名アル………」

 

自嘲気味に言うデュランに対して、ケイリーたちは苦笑するしかなかった。数十分後、荷物の積み込みを終えた高速船は、煙を吐き出しながら出航を開始した。

 

 

 

 

 

「嗚呼、波に乗り、嗚呼、風を切り、船は向かうよ、人を乗せ、船は向かうよ、ものをのせ♪」べべん♪

 

 

 

 

 

しかし、その船に人知れず、1人の吟遊詩人が密かに乗船していたのを、誰一人として気づいていなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、あの街外にまで煙臭いし、煤とか砂埃とか飛んできて、本当に最悪だったわ………あー、さっぱりした………」

 

レイヴン魔帝国リブアン城の廊下を歩く風呂上りのキアラは、小さくぼやいていた。自室のバスタブでの入浴も良いが、城の大浴場でのびのびと入るのもまた格別なもので、キアラは上機嫌に鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。

 

「あら?」

 

すれ違うメイドや兵士たちが頭を下げるのを笑顔で返しながら歩いていると、見知った顔が目の前を歩いているのが見えた。

艶のある黒いショートボブで、ゆったりとした襟を胸の前で重ね、腰帯でしっかりと固定され、背中が大きく開いた独特の白い民族衣装(地球の『和服』に近い)を着て、背中に白い翼、膝から下が鳥の足になったセイレーンの少女は、顎に手を当てて、何やら考え事をしながら歩いていた。

 

「ルティ、久しぶりね?」

「あ、キアラ様………」

 

キアラは少女・ルティに声をかけると、彼女はこちらに気付いて立ち止まった。

 

セイレーンの少女であるルティは、キアラの世話係でもあった獣族長ミスティルの年の離れた妹である。キアラとは姉妹同然に育った仲でもあるが、ミスティルが獣族長就任に際して彼女の補助をするようになってからは、あまり会えていなかった。

 

「どうしたの、考え事?」

「………」

「ルティ?」

 

キアラはルティに質問するが、ルティは何故か、湯上りのキアラに見とれていた。キアラが声をかけると、ルティはハッとして慌てて口を開いた。

 

「あ、す、すみません!えっと……その……実は先ほど、ロコロ王国のキャブキーラという村の付近に住むリザードマンが、妙な動きをしていると報告を受けまして………」

「リザードマンが?」

「はい。ですが、そのリザードマンたちは村を襲ったりはせず、ただ周辺をウロウロしているだけらしく………話を聞こうにも、リザードマンの言語は独特で、通訳できる者が現地にいなかったので。」

 

ルティの話を聞いてキアラは首を傾げるが、ルティは続けて報告を続けた。

 

「それで、この件を姉上………いや、ミスティル族長に相談して通訳できる者を派遣しようと思ってのですが、あいにく今は人魚族の漁場にサメが出現して被害を受けている件の対応で、手が回らないらしく……」

「そうだったの………」

 

少し困った表情のルティに、キアラは納得したように頷いた。ふと、気になってキアラは問いかけた。

 

「その村って、どの辺りにあるのかしら?」

「あ、はい………」

 

ルティはキアラの質問に答えながら、地図を開いてキャブキーラのある場所を指で示した。

 

「ここです。」

「……あら?ここって……」

 

ルティが指さした場所は、大きな山の麓にある村であった。その山を見たキアラは、ルティに話しかけた。

 

「………ここ、『竜神山』の麓にあるのね………」

「あ、そういえばそうですね………」

 

キアラに指摘されて、ルティも気づいたようだった。キアラは少し考えると、ルティに提案をした。

 

「………ルティ、この件、私に一任してくれないかしら?」

「え?」

「少し気になることがあるの。お父様には私から言えば分かってくれると思うから。」

 

キアラが言うと、ルティは少し考えてから頷いた。

 

「……分かりました。ミスティル族長には私の方から伝えておきます。」

「ありがとう、ルティ。」

 

キアラは礼を言うと、ルティと別れて再び廊下を歩き始めた。

 

「竜神山………「竜神様」が眠るとされている山………」

 

歩きながら、キアラは少し思いつめたような顔で小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『手裏剣………?』

[はい。ティラノラダーをメンテナンスしていたら、右膝から手裏剣が発見されまして………]

 

マッドアドワーズの巨大な窓のある部屋に立っていたデスダイトは、ティラノからの通信を受けていた。通信画面にはティラノの顔と、ティラノラダーから発見されたという直径10cm程の十字に刃が伸びた手裏剣が映っていた。それを傍に控えて聞いていたイーグルは、顎に手を当てて訝しんだ顔になっていた。

 

「それは妙だな。連中の仲間の中には、忍者はいなかったはずだが………」

『そのはずだよねえ?………待てよ?』

 

デスダイトはイーグルの言葉に同意するが、ふとある事を思い出した。

 

『確か、ウルフをずっと追い回していた銀河連邦警察の宇宙忍者がいたはずだよね?』

「そういえば、そのような報告があったはず………」

[まさか、その宇宙忍者がシンナセンまで追って来た、と………!?]

『まだ、確定ではないけれどね………』

 

デスダイトの推測に、イーグルとティラノは考え込んだ。現状、確認できているデュランダー隊とは別に姿の見えない敵がいると分かった以上、警戒しない訳にはいかない。

 

『まあ、連中の仲間が増えようと問題ないさ。それでイーグル、『例の作戦』はどうなっている?』

「は、既に魔王に計画の稟議を通し、多少難色は示されたものの、承認は得ています。機怪魔獣ザラートレスC3並びにグリフォンバーC1の準備は完了し、現在、上陸地点の選定をしているところです。」

 

デスダイトに問われたイーグルは、情報画面を空中に表示させながら淡々と報告する。デスダイトはそれを聞くと、空中に表示された地図の1ヶ所を指さした。

 

『この「メンパロン」って漁村のある辺りが、一番王都からの距離が近くないかな?道中まで目立った起伏もなさそうだし。』

「ええ。しかしそこは、魔王軍が占領したものの、人類に奪還されたはず………」

『関係ないよ。』

 

イーグルが地図を見ながら言うと、デスダイトはキッパリと言い切った。

 

『我々の計画のためには必要な『尊い犠牲』というヤツだよ。』

[それもそうですね。]

 

デスダイトが冷酷に言い切ると、ティラノも賛同をした。イーグルは少しだけ考え込んだが、すぐにデスダイトに向き直る。

 

「……分かりました。では、その漁村を上陸前に破壊するよう、準備をいたします。」

『頼んだよ。』

 

イーグルは頭を下げると、踵を返して部屋を後にした。

 

「デスダイト様………美しい程に恐ろしいお方だ………!」

 

廊下を歩きながら、イーグルは頬を垂れる冷や汗を拭い呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日間船に揺られてロコロ王国に帰還し、数時間列車に揺られてモルホン基地にパーツを運搬し終えると、草介やデュランたちはようやくロシロの別荘に帰ってきた。

帰ってきて一晩明けてから王に報告を済ませると、草介たちは別荘で疲れた体を1日休ませた。

 

「ソウスケ、大分剣の腕上がったんじゃないか?」

「そうかな?まあ、あれだけドロイドとかと戦ったらな………」

 

翌日、別荘を訪ねてきたロンと庭で稽古をした草介は、休憩のために歩きながら話していた。同じくフェイたちと訓練を終えたらしいレピオとレイェンも、タオルで汗を拭きながら合流をした。

 

「なんだかんだで、お前ら仲良いよなー」

「ファーストコンタクトがあんなでも、気が合うもんアルねー」

「まあ、あの件は謝られたし、嫌いって訳じゃなかったもんな………」

 

レピオとレイェンが2人の仲の良さを茶化すと、草介自身も呆れつつも少し笑みを浮かべていた。

 

「ロンとは先日から共に戦う事が多くなったからな。チームワークの訓練をしておいてそんなないでござろう。」

「確かになー」

「この間の模擬戦でも、お互いに良いチームワークだったアルしな~」

 

ハバキリ、レピオ、レイェンがロンたちの事を話す。ふと、フェイはハバキリたちの様子を見て、自分たちと同じかそれ以上のチームワークと信頼関係を持っていると思い、訪ねてみることにした。

 

「3人とも、仲いい。チームワークもばっちり。」

「ん?」

「まあ、そうだな。」

「モチロンネ~」

 

フェイの一言に、トライヤーズ3人は顔を見合わせると、それぞれ頷いた。それを聞いていた草介たちも、同じように頷いた。

 

「確か、デュランのチームに入る前から3人で組んでたんだよな?」

「3人は、どうやって知り合ったんだ?」

 

草介とロンが問いかけると3人は苦笑し、レピオが話し始めた。

 

「ま、隠す気はないしな。オレたち3人は、元々同期入隊だったんだよ。」

「入隊時のサバイバル訓練で偶然同じ班になったのが切っ掛けで、出会ったのでござる。」

「で、移動中の無人シャトルの自動操縦システムが目的地を間違えて、『トライヤ』って惑星に着陸しちゃったアル。」

「トライヤ?」

「うむ。その惑星は何百年も前に人々が別惑星に移住し、文明の残骸がまだ残っていたのだが、発電所のような一部の施設が生きていてな、いつ爆発などが起こるか分からない危険地域のため、訓練候補地から外れていたのでござる。」

 

3人の話を聞いていた草介は、その惑星は所謂『ポスト・アポカリプス』のような星なのだろうと思った。

 

「オレたちはそれに気付いたんだけど、シャトルは着陸の時に壊れちゃってな。通信を入れて迎えを待っていたら、ちょうどその時に雨が降ってきてさ。雨風を凌げる廃屋に逃げ込んだんだけど………」

「そこが何と吃驚仰天、指名手配になっていたラ・ジュール星人の犯罪グループの隠れ家だったアル!」

「ええ!?」「どんな偶然だよ………」

 

3人の話に草介やロンは呆れたように言った。話している3人も同意見のようだ。

 

「いや、オレもそう思ったよ?とりあえず謝ってその場を後にしようと思ったけど、見逃してくれるわけがなくてさ、銃やらナイフやら持って襲ってきたわけよ。」

「ボス以外の連中は拙者たちが全員伸したのでござるが、その時の連携が思いのほかよかったのでござる。」

「そうだよなー、ハバキリが連中を見て弱点見抜いて指示出して、」

「レピオが突っ込んで連中の陣形を崩し、」

「崩れたところをレイェンがかき乱して、」

「最後にハバキリが一刀両断で決めたアル!」

 

当時を思い出してか、ハバキリたちは嬉しそうに話した。

 

「そしたら、ボスがギガダートF3って機怪魔獣に乗り込んできたから、その場は逃げまわってさ………」

「重量級ながらも異様に素早く動く故、流石の拙者も、あの時は肝を冷やしたでござるよ………」

「でも、そこに詐欺グループを追っていたデュランダーが駆けつけて、あっという間に倒しちゃったアル!それが、アタシたちとデュラン隊長の出会いアル。」

「そうだったのか………」

「流石はデュランだ………」

 

デュランの活躍を聞いたロンと草介は、その活躍に感嘆を漏らした。

 

「そんで、ボスも隊長が倒して全員逮捕、オレたちは他の手下ぶちのめして事件解決に貢献したって事で、訓練中の身でありながら隊長と一緒に表彰されちゃってさ。」

「意外と気が合う故、チームを組んだのでござる。」

「そのチームワークを見込まれて、トライメイルのパイロットに抜擢されたアル♪」

「そうだったのか………」

「『トライヤーズ』って、トライメイル使ってるからじゃなくて、その惑星の名前からだったのか………」

「トライメイルの方が後付けだったんだ。」

「よく間違えられるけどなー」

 

3人の結成話とチーム名の意外な由来に、少し感心する一同。トライヤーズ自身よく言われるらしく笑っていた。

 

「そういえば、その犯罪グループってどんなやつらだったんだ?」

 

ふと、草介は気になった事があって、興味本位で聞いてみた。レピオがああ、と相槌を打って答えた。

 

「オレたちも後で聞いたんだけど、7つの惑星で2500万件を超えるオレオレ詐欺をやったグループだったらしい。」

「規模と被害の割りにやってる事ショボくない!?てか、宇宙にもあるんだその詐欺!?」

 

レピオの答えに、草介がツッコミを入れる。草介の脳裏には、昔の火星人のような宇宙人たちが雑居ビルの一室で、一斉に電話をかけているシュールな光景がよぎった。

その一方で、異世界人であるロンたちは『オレオレ詐欺』がどのようなものか分からず小首を傾げていた。

 

「オレオレ詐欺って?」

「んー、まあ、ざっくり言うと身内を名乗って、声だけで助けを求めて大金をせしめる詐欺だ。」

「なるほど………」

「割と根気いりそう。」

 

レピオの説明を聞いて、ロンとフェイは納得した。被害数を考えると、確かに根気がいりそうだ。

 

「でも、連中のせいでおよそ8000億GR(ギャラー)の被害が出ているからな。」

「いや、知らない通貨出されてもピンとこないんだけど?金額多いけど、1ギャラーいくらだよ?」

 

レピオの補足説明に草介がツッコミを入れた。すると、ハバキリは目線を上に向けて手は算盤を弾くような仕草を見せて計算を始めた。

 

「えーと、この星で言えば………1GRで大体320Gくらいでござるな。」

「ってことは、8000億ギャラーは………」

「256兆G!?うへぇ!!」

 

あまりの金額にひっくり返るロン。

 

「く、国を2,3個建国してもおつりが出そうだぞ………!?」

「流石は宇宙人………スケールがデカすぎる………」

「ちなみに日本円だと………」

「いや、いい………恐ろしい額になりそうだしな………」

 

カールとドラムがこぼすと、計算しようとするハバキリを額の冷や汗を拭いながら草介は止めた。

 

「おや、みんなお揃いだね。」

「あ、フロー。」

 

その時、一同の後ろからデュランたちと共にフローが歩いてきた。フローはひっくり返ったロンが目に入り、少し心配そうな表情をして屈んで声をかけた。

 

「えーと、どうしたの?大丈夫?」

「は、はい……大丈夫です……」

「そっか。なら、よかった。」

 

恥じらいながらも起き上がったロンの返事を聞いて、フローは安心したように微笑んだ。それを見ていた草介が、フローに聞いた。

 

「それでフロー、今日はどうしたんだ?」

「ソウスケ、姫様が許しているとはいえ、あまり馴れ馴れしいのは………」

「いや、大丈夫だよ、私がそうしてって言っているんだから。実は、ソウスケたちにお願いしたい事があってね。」

 

草介の態度にロンが苦言を示すが、フローはそれを制して説明をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャブキーラ?」

 

別荘のリビングに移動した草介たちは、フローからの話を聞いていた。

 

「うん、王都から北西にある『竜神山』っていう山の麓にある村なんだけどね。そこは、リグーン王国からの難民を受け入れている村でもあるんだよ。」

「リグーン王国………魔王軍に占領された国でござるな………」

 

フローの話を聞いたハバキリが、少し険しい顔で呟いた。その言葉に、フローが頷いた。

 

「キャブキーラを含めて、難民を受け入れてくれている村はいくつかあってね。今回、その村に食料等の物資を運搬したいんだけど、最近、この村の付近をリザードマンがうろつくようになったそうでね。襲ってくるわけじゃあないんだけど、不安に思っている人が大半でね。」

「そこで、我々に運搬する馬車の護衛を頼みたいそうだ。」

「なるほど。」

 

フローとデュランの説明を聞き、草介は納得して頷いた。

 

「馬車の護衛なら、今回はバトルトレインじゃない方がいいかな?」

「そうだな。何かあった時に備えて、私は王都で待機しておこう。」

「まあ、いざとなったら、トライメイルだけでも発進させればよいでござろう。」

 

ニールとハバキリはそう言うと、レピオとレイェンも頷いた。

 

「決まりだね。出発は明日の朝だから、よろしくお願いね。」

「ああ、分かった。」

 

デュランが頷いて返答をすると、フローは別荘を後にした。

 

 

 

 

 

【つづく】




全開の出来事で少し前向きになったゾミクノーチの人々。シャスティのやりすぎが切っ掛けとは言え、いい方向に向かって行ってます。シャスティとリサーナの関係はまたいずれ。

王道寺拳法と方針の違いで飛び出しちゃっていたレイェン。この辺、るろ剣が元ネタだったりしますw

ルティ登場。先に姉である獣族長ミスティルを考えていて、そこから妹として逆算してデザインしています。今後もちょくちょく登場予定。
サメ被害は、最近話題になっていた熊被害がモデル。

プロローグ:サイドBでも描かれたトライヤーズ結成秘話。今回は詳細に語られました。個人的にオレオレ詐欺グループはデカレンっぽいイメージで考えたんだけど、出来上がってみればカーレン風味w

次回からキャブキーラ編になります。
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