異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第27話 萌えよ、朱雀

異世界勇者ロボ 第27話

萌えよ、朱雀

 

 

 

 

 

キャブキーラ村を襲ったランダート最後の1機が地面に伏すと、デュランダーは肩で息をするような動作をすると、Dブレードを納め変形し、デュランカーから暗い表情のデュランが出てきた。

 

「デュラン!」

 

車から降りたデュランにフローたちが駆け寄り声をかけるが、デュランは複雑そうな表情で少し俯いていた。

 

「デュランさん?」

「機怪魔獣は倒した。だが………」

 

シャスティが心配そうに声をかけるが、デュランがチラリと村の一点を見た。そこでは、遠巻きにこちらを見る難民たちの姿があった。しかし、その目は恐怖に怯え、デュランたちを遠巻きに眺めていた。

 

「こ、これは………」

「彼らの心に刻まれた機怪魔獣のトラウマを、私自身も呼び起こしてしまったようだ………」

「そんな………!」

 

不可抗力とはいえ、デュランは難民たちの心の傷を抉ってしまったことに、酷く落ち込んでいた。フローはなんて声をかけたらいいのか分からず言葉に詰まり、シャスティやカールは困惑してオロオロしていた。

 

「デュラン……」

「いや、大丈夫だ………それよりも、さっき走って行った子を探さないと………」

 

フローは落ち込むデュランに声をかけようとするが、デュランは気丈に振る舞ってその場から去ろうとした。

 

「フローレント様!」

「っ、村長………」

 

その時、ロッティンと共に村長が駆けよってきた。デュランが足を止めてフローと同じタイミングで振り返ると、一瞬ロッティンと目が合う。フローはその目に既視感を覚えるが、目の前で立ち止まった村長が話しかけてきた。

 

「逃げる際に転んで膝や肘を擦りむいた程度で、幸いにも難民や村民に大きな怪我人はいませんでした。ただ………」

「さっきの、クララって子が行方知れず、ってことですね………」

「ええ。」

「何てこと………あの子、機怪魔獣にトラウマがあるとはいえ、この辺の土地勘もないのに………」

 

フローの言葉に村長は頷いた。ロッティンも心配そうに額に手を当てて呟いた。フローも心配ではあったが、ロッティンの呟いた声に聞き覚えがあって顔をよく見ると、あることに気が付いて声が出そうになった。

 

「あ………」

「………」

 

フローが声をかけようとしたが、ロッティンが鋭い目で睨んで来たので押し黙った。

 

「と、とりあえず、その子の方には私の仲間も追っていますので………魔王軍が近くにいても、心配はないかと………」

「そうですね………」

 

少し焦った様子ながらもデュランがそう言うと、ロッティンも頷いて、フローとすれ違う形で歩き始めた。

 

「―――お久しぶりです。まさか、こんなところにいるなんて………」

「―――ええ、こちらこそ。」

「―――“()()”であるあなたがいるという事は、あのクララという子は………」

「―――悪いけれど、今はまだ正体を明かせないの。ましてや、魔王軍が近くにいる今はね。」

「―――はい………」

 

顔を合わせないまま、フローとロッティンは小声で会話をして別れた。会話の内容は誰にも聞かれなかったが、デュランだけはその様子を見て首を傾げていた。

 

「村長!」

 

その時、村人の1人が村長の元へ慌てたように走って来た。

 

「どうした?」

「それが、村の入り口にリザードマンたちと魔族が………!」

「何だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃぅ~」

 

一方その頃、森で絶賛遭難中の草介たちは、倒木の幹に腰掛けて休んでいた。クララのリュックサックから出てきた小さなトカゲはクララに抱きかかえられて、草介たちを見ていた。

 

「で、どうしたんだ、そのトカゲは?」

 

クララの隣に座ったレピオが話を切り出した。

トカゲの全長は尻尾を合わせておよそ50cm程度、クリクリと大きい目は宝石の様に青く、背中には小さな2枚のヒレが翼のように生えており、時折パタパタと動かしているのが見えた。

 

「2日くらい前に、村の近くの草むらでケガしているのを見つけまして……治癒魔法で治してあげたら妙に懐かれちゃったから、仕方なく連れていたんです………最近、リザードマンがうろついているから、危険だと思って………」

「そうであったか………」

「ぎゃぎゃ~」

 

ハバキリが話を聞いて頷く。すると、トカゲはクララの豊満な胸に顔をうずめて、クララは顔を赤くした。

 

「あ、こら! ちょっと!」

「ぎゅぅ~?」

「はぅうっ」

 

クララが少し恥ずかしそうに言うが、トカゲは不思議そうに首を傾げた。一方で、ハバキリはトカゲが顔をうずめて柔らかく形が変わるクララの胸を見て、悶える様に顔を赤くした。

 

「ハバキリ………本当にどうしたんだよ………」

「はっ、い、いや、それは………」

 

悶えた様子のハバキリを見た草介が、呆れたように聞いた。ハバキリはそれを聞いて我に返ったのか、赤面で恥ずかしそうに俯いた。何やらもごもごと口ごもる彼女に対して、草介とクララは不思議そうにして、レピオとレイェンが呆れたような顔になっていた。

 

「あー、前々からそんな気がしていたアルけど………」

「そうだな、そんな気はしていたけど………」

「ん?何だ?」

 

2人の様子に気付いた草介が聞くと、レピオはため息を吐いて答えた。

 

「ハバキリ、お前『()()()()()』だろ?」

「ぅぐッ………」

「ぎゃう?」

「ひゅ、ひゅまなー………?」

「ヒュマナー、って?」

 

レピオの指摘に、ハバキリがギクリと肩を震わせる。草介とクララは聞きなれない単語に首を傾げていると、レイェンがやれやれと手振りをしてみせた。

 

「ヒュマナーっていうのは、人間みたいなヒューマノイド型星人を愛好する人のことアル。」

「基本的にヒューマノイド型以外の宇宙人に多い、特殊性癖なんだけどな。」

「あー………」

 

2人の説明を聞いた草介は、納得するような声をもらした。彼女らの正体がエネルギー生命体であることを踏まえれば、納得のいくものであった。クララとトカゲは意味が分からないらしく首を傾げていたが、ハバキリは顔を真っ赤にしながら俯いていたが、2人の方をチラリと見て聞いた。

 

「い、いつから気付いて………?」

「いや、前からそのテの画像ネットでこっそり検索してたの見かけてたし。」

「任務ですれ違ったヒューマノイド型星人に見惚れてたし。」

「はうっ………!」

 

2人があっけらかんと答えると、ハバキリは更に顔を赤くしてしまった。

 

「けど、こっち(異世界)って人まみれだよな?何で今になって?」

 

ふと、そこで草介は疑問を口に出す。ハバキリはもじもじと恥ずかしがりながら答えた。

 

「いや、その………せ、拙者の好みは『奥ゆかしく、乳房の大きな女性のヒューマノイド』でござって、その………クララどのは、拙者の好みにどストライクで、それで……いや!決して不埒な気持ちではない!………でも少しは………」

「こだわりが強いアルな………」

「地球人はそれを「おっぱい星人」と呼ぶ。」

「………よくわからないけど、とりあえず私は「変態に目を着けられた」っていう認識でいいですか?」

「何かごめんな?」

 

呆れるレイェンと草介。一方、意外と辛辣な事を言うクララに、レピオが小さく謝っていた。

 

「まあ、人の好みはそれぞれだし、気にする事ないって………」

「ぅ、うむ………」

 

自身の恥ずかしい性癖(へき)がバレて恥ずかしそうに落ち込むハバキリを草介が慰めるように言う。そうだぞ、とレピオが続けた。

 

「オレもショタコンだしさー」

「え、そうなの!?」

「お前ら(9千~1万歳)にとってのショタって何歳だよ?」

「いや、実年齢より見た目だな。」

 

いきなり性癖を明かしてきたレピオに軽く驚くハバキリと、素朴な疑問が草介の口から出た。フューゾニアが超長寿なのを考えると、大抵の者は年下だろう。

そこでふと、草介とクララはまさかと思いレイェンの方を見た。レイェンは2人の意図を察してか、否定するように両手を振った。

 

「いや、アタシはノーマルアルよ!?」

「そ、そうか………」

「よかった………」

「あれ?これアタシも変態だと思われた?」

「オレも変態扱いかよ………否定しづらいけど………」

「す、すまぬ………」

 

レピオとレイェンは自分が変態扱いされたことにショックを受け、ハバキリはまた申し訳なさそうにしていた。

 

「まあ、とりあえずあれだな。早く村に帰ろう。」

「そ、そうだな………みんな心配してるだろうし。」

 

草介がそう言うと、ハバキリも気を取り直したのか頷いて返した。トカゲがクララのリュックに戻ると、ハバキリはGPデバイスを取り出し操作して、デュランのいる位置を表示させた。

 

「隊長たちは北東、そっちが村の方角か。ここは、竜神山の南側のようでござるな。」

「けっこう走って来ちゃったなー………」

「ご、ごめんなさい、私のせいで………」

「いや、クララどのが謝る事は………!!」

 

ない、と言いかけたハバキリだが、その時、弾かれたように森の一点を睨んだ。一拍遅れて草介たちも視線をそちらに向けると、森の中から3体のリザードマンが現れた!

 

「グゥ………」

「クロロロ………」

「シュルル………」

「リザードマン!!」

 

草介たちはクララを守る様に前に出て得物を抜いて構えた。すると、中央のリザードマンは両手を上げて、左右のリザードマンは両手を斜め下に伸ばし、左足を上げたポーズを取った!

 

「………!?」

「何だ、あの構えは………?」

 

リザードマンの奇怪な構えに草介たちは困惑した。

 

「グクゥ………」

 

すると、中央のリザードマンは左右の仲間のポーズに気付いて肩を叩く。振り返った2体に、そのリザードマンは自身のポーズを見せるように両手をクイクイ、と上げると、2体は顔を見合わせて構えを解き、中央のリザードマンに倣って両手を上げた。

 

「?………あ、「戦う意思はない」って伝えたかったの!?」

「種族間の文化の違いか………」

「どうしたの?」

 

リザードマンの意図を察した草介が言うと、ハバキリも納得したように言った。一行は得物を下げると、リザードマンたちの背後から声がした。リザードマンたちが左右に分かれ道をあけると、後ろから赤い髪に黒い角の魔族の少女、キアラが現れた。

 

「ってアンタたち!?」

「またお前か!?」

 

キアラの姿を見た草介たちは、下ろしていた武器を再度構えた。

 

「待って、今日は戦うつもりはないわ!」

「それなら、村を襲った機怪魔獣はどう説明する!?」

「機怪魔獣?何のことよ?」

 

キアラは手を振って止めるが、レピオの反論の意味が分からないのかキョトンとしていた。

 

「ここは竜神様のお膝元よ?そんな場所で暴れるなんて、できないわ。」

「何だと………?」

 

キアラの説明にレピオは訝しげな顔になる。しかし、草介はその話を聞いて、カールが人間だけではなく、魔族の中にも竜神信仰をしている者がいると言っていたのを思い出した。

 

「なるほど、お前も竜神信仰をしているのか。」

「ええ。私たち竜人………あ、同じ「りゅうじん」でも、神じゃなくて人の方ね。その末裔にとって、竜神様は文字通り神様なのよ。」

「神の眠る地での狼藉は御法度、か……」

 

ハバキリもそれを聞いて納得し、一同は武器を納めた。

 

「それに、お前の性格なら先陣切って機怪魔獣を率いるもんな。」

「それもそうか。」

「………何よ、知った口をきいて………」

 

草介が付け加えるように言うと、キアラはムッとした顔になった。ふと、草介たちの後ろにいるクララに気付くが、クララの前髪に隠れた目がこちらを睨んでいるように見えた。

 

「その子は?(私より胸大きいわね………背が低いのもあるだろうけど………)」

「………お前らに占領された、リグーン王国の難民だよ。」

「あ………」

 

草介の説明を聞いて、キアラは少し気まずそうに顔をひきつらせた。(そりゃ、恨まれてるわよね………)、と考えていると、レピオが前に出てキアラに問いかけた。

 

「で、お前らはこんな所で何してるんだ?」

「ああ、その事?ここのリザードマンたちが、妙な動きをしているって聞いてね、竜神山の麓だし、気になったから調査に来たのよ。私、リザードマンの言葉分かるし。」

「わざわざ魔王の姫が出向くとは、信心深いでござるな………」

 

キアラの話を聞いて意外そうにハバキリが呟いた。しかし、敵とはいえリザードマンの言葉が分かる者が現れたのは好都合だ。

 

「それで、リザードマンは何て?」

「リザードマンたちによれば………」

 

キアラは、神妙な面持ちで草介たちの方を見た。

 

 

 

 

 

「竜神様が、目覚めたそうなの………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だと!?」

「竜神様が………!?」

 

同じ頃、キャブキーラ村でもリザードマンと共にやってきたカラとボルグから事情を聞いたデュランとフローたち。村長や村人たちも一緒に聞いて、どよめきが起こっていた。

 

「うむ。リザードマンたちによれば、1週間ほど前の真夜中、竜神山の南側にある『竜神ヶ森』に空から何かがふわふわと落ちたのを見たそうなのだが、それに呼応するかのように、山の頂上付近で大きな竜の影を見たそうでな。」

「それが竜神様の目覚めだと思って、何とかこっちの村にも伝えようとしたそうダスが、互いに無干渉だったせいもあって人間の言葉が分からず話せなくて、唯一話せた村の婆様も去年ポックリ逝ったばかりで、どうしたものかと悩んでいたらしいダス。」

「それであんな風に………」

「いや、それにしたってあんな風に黙って見られたら、不気味で仕方ないよ………」

 

カラとボルグの説明を聞いて、デュランとフローは納得と呆れの混ざった顔を見せた。それに対して、ゴブリンとオークのコンビは同じように呆れていた。

 

「なーんでその婆様は、人間の言葉教えなかったんダスかね………」

「本当にな………」

「それで、竜神様は?」

 

呆れるボルグにカラも賛同していると、村長が2人に聞いてきた。しかし、2人は少し申し訳ないように返した。

 

「それが、山の周囲にそれらしき気配を感じるものの姿が見えないらしくてな………今、姫様がリザードマンたちと調べに行っている。」

「ただ、2日ほど前に2人の娘が小さな赤いトカゲを拾ったのを見たらしいダス。」

「トカゲを、2人の娘が?」

「ああ、青い目の娘を見た者が2匹、緑の目の娘が拾うのを見た者が2匹いたダス。」

「ふーむ………竜神様は見上げるほどの大きなお姿と聞いているが………」

 

村長とデュランはその話を聞いて、「少し気になる」程度にしか考えなかった。しかし、フローはそれを聞いて、内心考えていた。

 

(やっぱり、あの子だ。行方不明だったけど、無事に逃げ延びていたんだ………)

「だが、だとしたらこの村を襲った機怪魔獣は………?」

 

一方で、デュランは先ほど襲撃してきた機怪魔獣の事を思い出した。それを聞いて、2人も首を傾げていた。

 

「我々は、リザードマンの調査に来たから、この村を襲うつもりは毛頭もない。」

「だとしたら………」

「ワシらの関与してない作戦で動いている連中………おそらくは、ワルンダイツの連中ダスかね………」

「あいつら、何のつもりだ………?」

 

カラとボルグがうんざりしたような顔で言うと、デュランは顎に手を当てて考え込んだ。2人の後ろのリザードマンたちは何の話か理解していなかったが、何か良からぬことが起きていることは理解していたのか、不安そうに顔を見合わせていた。

 

 

 

 

 

『ウィーン………(この村には、もういないようだな………)』

 

 

 

 

 

しかし、森の暗闇の中からゾロゾロイドが1体村の様子を見ていたのを、誰も気が付いていなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでお前は、南の森を調査しに来た、ってことか。」

「ええ。」

 

所変わって、キアラと共に行動をすることになった草介たち。リザードマンたちの事情を聞いて少し気になった事と、また村に機怪魔獣が現れクララがパニックになるのを懸念して、一行はキアラと共に南の森の調査に同行することとした。

 

(クララどの………)

(………いえ、大丈夫です……魔王軍は憎いし機怪魔獣は怖いですが、あの人個人とは初対面ですし………)

 

唯一、魔王軍に国を追われたクララがキアラへの恨みで無茶をしないか心配であったが、クララはキアラを睨んでいる様子ではあったが、何とか抑えているようであった。

その時、前を歩いていたリザードマンが振り返って鳴き声を上げた。

 

「ギャギャ!」

「ギキャキャ!」

「どうしたんだ?」

「向こうに何かあるって。」

 

キアラが通訳すると、一同は駆け出した。木々の向こうの草むらの向こうに到着すると、そこには全長5m、高さ2m程度の、銀色艶消しの金属製の円盤が鎮座していた。

 

「これって………」

「宇宙船、か………?」

 

キアラと草介はその円盤に驚き、クララとリザードマンたちは見たこともない円盤に警戒していた。すると、レピオが驚きの声を上げた。

 

「おいおい、こりゃネメア2Cじゃねーか!」

「何それ?」

「ハーキュリー重工業が販売した1人乗りの16世代宇宙船だよ。長時間の運転も楽になるよう設計されてる。このスペースシルバーは3種類のカラーバリエーションの中でも1番人気だったらしくて………」

「機種は兎も角!」

 

レピオが目の前の円盤の情報をぺらぺらと早口で説明していたが、キアラが遮る様に強く言った。

 

「要するに、この森に宇宙人が来たのが、竜神様が目覚めた切っ掛けになった、っていうことでいいかしら?」

「多分な。こいつは着陸時に周囲への影響はほとんどないタイプだが、竜神様とやらには何か影響があったと考えられるな。」

「だとしたら、その宇宙人はどこに………?」

 

レピオが仮説を立てるが、だとしたら乗って来た宇宙人の行方も正体も分からない。それに加えて竜神もどこか分からない。どうしたものかと考えていると、円盤を挟んで反対側の木々がガサガサと音を立てたのが聞こえてきた。

 

「な、何だ!?何でこんな所に宇宙船があるのだ!?色合いは美しいが………」

「「「ん?」」」

 

直後に聞こえてきた男性の声に聞き覚えがあった草介とキアラ。円盤の横を回り込んで覗いてみれば、そこには頭や肩に葉っぱや小枝を着け髪が青と緑の混じったくせ毛をぼさぼさにした汗だくで息を切らした青年、六魔獣将・空のイーグルの姿があった。

 

「あ、アンタ!?」

「空のイーグル!?」

「え?あ!?」

 

キアラと草介が声を上げると、イーグルも草介たちに気付いたらしい。慌てて身なりを整え、姿勢を正した。

 

「………ふっ、久しいな勇者よ。このような場所で奇遇だな?」

「いや、取り繕わなくていいから………」

「アンタこそ、こんなところで何してるのよ?」

「む………」

 

先ほどまでの慌てた様子から一転、直ぐにキザったらしい態度で髪をかき上げながら話しかけるイーグル。草介が呆れたようにツッコむと、キアラもイーグルに問いかける。イーグルは一瞬ムッとするが、少しバツが悪そうにした。

 

(どうする?予想外とはいえ、私の醜い失態を晒すワケにも………)

「さては、キャブキーラ村を襲った機怪魔獣!あれはお前の差し金アルな!?」

 

悩むイーグルであったが、レイェンが問い詰めた。草介たちもそれに思い至って睨むが、しかし、当のイーグルはそれを聞いてキョトンとした顔で見てきた。

 

「何だと?私の機怪魔獣が別の村を?」

「惚けてんのか!?って待て、今『別の村』って言ったか?キャブキーラとは別の村も襲っていたのか!?」

「いや、違う!私はメンパロンという漁村だけを襲うつもりで………」

「メンパロン?(確か、ロンたちが魔王軍から解放した村だったはず………)」

 

レピオが斧を手にイーグルに問い詰めるが、イーグルは慌てた様子で否定した。ハバキリが聞き覚えのある名前の村だと考えていると、レピオが更に問い詰めた。

 

「じゃあ、何でその機怪魔獣が!?」

「それは私が聞きたい!村を襲おうとした直後に私の機怪魔獣軍団が突然、私のコントロールから離れて勝手に動き出して追いかけてきたのだ!」

「何だと?」

 

イーグルの明かした事情に草介が聞き返した。

 

「それなら、今回の事態は機怪魔獣の暴走か?」

「いや、我々の機怪魔獣はそう簡単に暴走するわけが………」

「ちょっと待って。」

 

草介の仮説にイーグルが反論する。その時、ふとキアラは自分たちの目の前の円盤を見て、ある可能性に行きついた。

 

「もしかして、この円盤に乗って来た宇宙人の仕業じゃあ………?」

「それはあり得るな………」

「だが、それなら何が目的だ?こんな堂々と隠す気もない停め方して………」

 

キアラの発言にレピオも同意しつつ、ハバキリが疑問を口に出す。そこで、草介はある事を思いついてそれを口に出した。

 

「とりあえず、この宇宙船を調べるのはどうだ?」

「そうでござるな。宇宙船の登録情報を見れば、持ち主も分かるやもしれぬ。」

 

草介の発案にハバキリも賛同する。早速円盤に手をかけようとしたその時、森に強い風が吹き始めた。

 

「?何だ、急に風が強く………?」

「この風は………!?」

 

突然の強風に困惑をするが、イーグルはある可能性が脳裏を過った。しかし、それを口にする前に突如として巨大な竜巻が発生した!

 

「何!?」

「竜巻だとぉ!?」

 

突然の竜巻に、草介たちは飛ばされないように木や岩にしがみついた。

 

「うわあああああ!?」

「きゃああああ!!」

「クララどの!」

 

ハバキリが飛ばされそうになったクララの右手を掴んで引き寄せる。その時、徐々に竜巻が収まり始めたかと思うと、竜巻が晴れた中からがっしりしたボディに両腕の先が巨大なブレードになった機怪魔獣が出現した!

 

「ひぃっ!?」

「機怪魔獣!!」

「こいつ、ホパクの時の奴に似てるぞ!?」

 

機怪魔獣を見たクララが悲鳴を上げ、草介が叫ぶ。彼の言う通り、その機怪魔獣はホパクの街でキアラが乗っていたトロルハンマーE2の両腕を、とげ付き鉄球からブレードに付け替えただけのように見えた。すると、同じく機怪魔獣を見たイーグルが叫んだ。

 

「こいつはトロルハンマーE2の兄弟機、ボディを回転し竜巻を発生させ、飛行出来るトロルネードF2!私の率いる『美しき疾風(はやて)戦団』の一員だ!」

「何だ、その軍団名!?」

 

イーグルがトロルネードF2の情報を漏らすと、草介が相変わらず頭の悪いイーグルのセンスにツッコミを入れた。しかし、同時に今聞いた名前に、ある疑問がよぎった。

 

「お前、今『戦団』って言ったか?あいつの他にいるのか?」

 

草介がそう聞いてイーグルが答えようとしたが、トロルネードの後ろからライムグリーンの4機の機怪魔獣、ランダートと同じソルダートタイプだが、両肩にタービンを持った機怪魔獣が現れた!

 

「あれは!?」

「我が戦団のストームダートF1だ!両肩のタービンから強力な突風を生み出す!」

「説明乙。」

「厄介そうなヤツらばっか手下にしやがって………!」

「ちょっと、こいつら本当に制御できないの!?」

 

イーグルの説明にレピオと草介は悪態をつく。一方で、キアラはイーグルに食って掛かってきたが、イーグルは焦った様子で懐から取り出したスマホ型デバイスで操作を試みていた。

 

「そ、そうしたいのは山々なのだが………ダメだ、私の操作を受け付けない………!」

「もう!私、今日は機怪魔獣乗ってきてないっていうのに………!」

 

イーグルの返答にキアラは頭を抱える。しかし、直ぐにリザードマンたちに向き直ると指示を出した。

 

「ギャガギャ!ジャガ!グキャギャ!(訳:アンタたち、ここは危険よ!村にこの事を伝えに行きなさい!)」

「「「シャシャ!」」」

 

キアラがリザードマンの言語で指示すると、3匹はその場から去って行った。

 

「ひぃい………いやぁ!!」

「クララどの!!」

 

その時、再び機怪魔獣への恐怖心が蘇ったのか、クララが頭を抱えて叫び始めてしまった。ハバキリが慌てて彼女を宥めようとするが、彼女の声が聞こえていないのか頭を左右に激しく振るう。

 

「いや!いやああ!!」

「落ち着くでござる!」

「ちょっと、その()大丈夫なの………!?」

 

あまりにも怯えるクララを見たキアラも、さすがに心配そうに言った。しかし、草介たちはそれに応じる暇も余裕もなく、パニック状態のクララを鎮める事ができない。現在、こちらの様子を伺うように見下ろす機怪魔獣たちがいつ襲い掛かってきてもおかしくない以上、またクララがパニックで走り出してしまいかねない。そうなっては危険である。

 

「くっ………!」

 

ハバキリは小さく唸ると、意を決した顔でレピオに向かい叫んだ。

 

「レピオ、ニールどのへトライメイルの発進要請を!レイェンは隊長へこの事を!」

「だ、だが………!」

 

ハバキリの指示にレピオは難色を示した。先ほどの戦いで、デュランダーの姿を見てクララはトラウマが発症してパニックになった。トライメイルの姿を見てしまえば、更に悪化する可能性が高い。レイェンも同じ考えなのか渋い顔をしていたが、ハバキリは続けた。

 

「ここから逃げても連中が追ってくるし、村へ被害が及ぶ!早く!」

「ッ!わ、分かった!」

「合点アル!」

 

ハバキリが必死の形相で急かすように叫ぶと、2人はそれぞれGPデバイスを取り出して操作をし始めた。それを見ていたキアラは、イーグルの方へ振り返った。

 

「イーグル!コントロールできないなら、ビーストメイル呼んで、アレの対処しなさいよ!」

「そ、それはそうだが………GPの連中を手助けするには………」

「言ってる場合じゃないでしょ!竜神様の聖地を荒らすわけにはいかないし、それにアンタも、自分の尻くらい自分で拭いなさいよ!!」

「ぅう!?」

 

キアラに叱咤されて一瞬苦虫を噛みつぶしたような顔になるが、直ぐにイーグルは手元のデバイスを操作し始めた。

 

「いったんこの場から離れるぞ!」

「うむ!」

 

草介がそう言うと、一同はその場から離れようとした。しかしその時、トロルネードは両腕を真っ直ぐに伸ばし上半身を回転させ始め、次第に速度が上がり竜巻が発生した!

 

「なっ!?」

「きゃああっ!?」

 

突然の竜巻に吹き飛ばされそうになるが、木にしがみ付いて何とか耐える。

 

「おい!これいつまでも持たねーぞ!」

「くッ………!」

 

竜巻の風圧に耐えながら草介が叫ぶ。ハバキリが下唇を噛んで竜巻を見上げると、その時、竜巻の向こうに光るものがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

 

「あれは………!」

「2人とも、飛ぶぞ!」

「おう!」

「「え!?」」

 

レピオが言ったことが理解できず聞き返してしまう草介とクララ。2人が問いただすよりも先に、レイェンは木から手を放して飛び上がった!

 

「ソウスケ、掴まってろ!」

「クララどの、しっかり離さないで!」

「え?え?」

 

ハバキリはクララの腰に手を回すと、彼女を抱きかかえ、レピオは草介を脇に抱えて飛び上がった!

 

「うおおっ!?」

「きゃあああ!?」

 

突然の浮遊感に草介は叫び、クララは悲鳴を上げる。そんな2人を気にも留めず、3人は強風に乗って高く上昇する!

草介が困惑していたが、目を向ければ、こちらに向かって飛んでくる物体を視認した。

 

それは、先端にドリル戦車、中央に白い潜水艦、そして上部にジェット機が合体したメカニックであった!

 

「あれは!?」

「『トライスクランブラー』、トライメイルの緊急発進形態だ!」

 

ハバキリが短く説明をすると、目の前でトライスクランブラーはフェニックスジェット、トータスドリル、タイガーアクアに分離、レイェンが風に乗って乗り込むと、レピオは草介と共にトータスドリルに、ハバキリもクララと共にフェニックスジェットに搭乗した。

 

「あいつら強風を利用して………!」

「ひぃぇえええ………」

「ん?」

 

強風に耐えながら上空を見上げたイーグルが、感心が混じったような悪態をつく。一方で同じく木にしがみ付いて耐えていたキアラは、どこからか聞こえてきた悲鳴を耳にした。振り返って見れば、近くの茂みから金髪の端がひと房、強風に煽られて激しく揺れているのが見えた。

誰かいるのかと思い声をかけようとしたその時、上空で3機のトライメイルに動きがあった。

 

「クララどの、少しの辛抱でござる!」

「へ!?」

「フュージョイン!!」

 

フェニックスジェットの上に立ったハバキリはそう言うと、胸の前で『合掌』する構えと共に叫び、フェニックスジェットと一体化をした!

 

「え!?え!?」

 

突然目の前で起きた出来事にクララは混乱し言葉を失った。しかし、驚きのあまり手が滑ってしまい、フェニックスジェットから落ちてしまう!

 

「あ!?」

『変身!!』

 

クララが落下を始めたその瞬間、フェニックスジェットの機首と尾翼部分が根元から分離すると、起き上がるように姿勢を正し、下部の赤いボディが見えるようになる。後ろ部分が伸びて両脚に、機体の下に折りたたまれていた両腕が伸びて頭部に翼の装飾を持った頭部が出現、背中の両翼がV字に跳ね上がると機首が下を向くように右肩に、尾翼部分が背中に装着されると、機首のキャノピー部分が反転して赤い鳥の顔が露わとなった!

 

『天空武士!トライフェニックス!!』

 

トライフェニックスは名乗りと同時に飛び出すと、落下するクララを両手でそっと受け止めて、地上に着地をした。

 

「あ、あれ?」

「ぎゃぅ?」

『無事でござるか?』

「あ、ハバキリ、さん………!?」

『いかにも。』

 

背中のリュックサックからトカゲが顔を出す中、クララは自分を受け止めた巨大な機械人形を見上げた。トライフェニックスは優しく微笑んで答えるのを見て、クララは先ほどまで恐怖心を抱いていたというのに、それに対してどこか安心感を抱いた。

 

『チェンジ!トライトータス!!』

『チェンジ!トライタイガー!!』

 

トライトータスとトライタイガーがトライフェニックスと並び立ち、竜巻の中にいるトロルネードを睨みつける。

 

「ぎゅぅ………」

 

戦いの火蓋が切られようとするさ中、クララの右肩に乗ったトカゲは、その様子をじっと見ていた。

 

(やはり、こ奴らも外国(とつくに)の者か………さて、どれほどのものか………)

 

 

 

 

 

【つづく】




リグーンの人々のトラウマから遠巻きにされるデュラン。デュランは大分エリート刑事だけど、こういうのは本当に辛いと思います。

ハバキリの性癖発覚。ヒュマナーは「ヒトナーな宇宙人もいると思うけど、呼び方は地球由来のものだし宇宙人規模のヒトナーってなんて呼ぼう?」と考えたものです。
ハバキリは真面目なキャラになったので、サブタイトル含めてギャグ調にしています。

リザードマンの真意発覚。降参のポーズ、最初は「シェー」を考えてましたw

暗躍する機怪魔獣と人影、それにトカゲ。トカゲの正体は割と分かりやすいですね。

トロルネードは、ロボットアニメとかによくあるバージョン違いメカとして出しました。ネーミングは個人的に好き。
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