異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第29話 (くろがね)の山が動くとき

異世界勇者ロボ 第29話

(くろがね)の山が動くとき

 

 

 

 

 

機怪魔獣を退けたデュランダー達は、キャブキーラ村へと向かっていた。

 

『………ええと、クララどの、その、本当にこのような形でよろしいのでござるか………?』

「………はい、大丈夫です………」

 

キャブキーラ村への道中、クララはトライフェニックスの手の上に乗せて運んでほしいと頼んで来た。恐怖心が残っているのか未だに腕が震えているというのに、それでもトライフェニックスに乗っていくと懇願してきた彼女が何か決意をしているように見えたため、その意図を汲んだデュランダーたちは、トライフェニックスの手にクララを乗せてキャブキーラ村まで運んでいる最中である。

 

「本当に大丈夫かな………?」

『少し心配アル………』

『だが彼女のあの様子………何か考えがあるのかもしれない………』

 

デュランダーの肩に乗せてもらった草介とトライタイガーは不安を隠せないでいた。デュランダーはクララに何か考えがあるのではと予測していたが、そう話している内にキャブキーラ村が見えてきた。

 

「デュランダー!」

「戻ってきたか………」

 

デュランダーが戻って来たのを見つけたロンとフローが安堵の表情になり、マルティアたちはトライフェニックスの手に乗ったクララを認めて安心した顔でほっと胸を撫で下ろした。

デュランダーたちは笑みを浮かべて手を振ると、村人たちは少し怪訝な顔になるが、それでも機怪魔獣の脅威が去ったことに喜ぶ者もいたが、リグーン王国の難民たちは恐れている様子でデュランダーたちを遠巻きに見てひそひそと話していた。

 

「………やはり、機怪魔獣やマシンメイルへの恐怖はぬぐえない、か………」

 

デュランダーの肩から降りた草介は、難民たちの様子を見て少し残念そうにため息をつき、デュランダーたちも複雑そうにしていた。

しかし、そこで声を上げる者がいた。トライフェニックスの手に乗ったクララだ。

 

「み………みなさん!畏れないでください!」

「クララ?」

『クララどの?』

 

突然大声を上げたクララに、一瞬虚を突かれた草介たち。村人や難民も呆気に取られている様子ではあったが、マルティアとフローは少し意外そうな顔になっていた。

クララは少し緊張をした様子ながらも難民たちの方をしっかりと見て、今までと比べて凛とした声で話し始める。

 

「みなさんが恐れるのは当然のことです!……ですが、彼らは我々を機怪魔獣の脅威から守ってくれました!彼らは私たちの『敵』ではありません!」

 

クララはそう言うと、一度深く呼吸をして被っていた頭巾を外し、目元を隠していた前髪を左右にかき分けた。

 

「彼らが味方であることは、この私―――」

 

そして、その下に隠されていたつり目気味の右が青、左が緑の瞳で民衆を見据え宣言した。

 

「リグーン王国第13代女王、ソラス・クレイヴ・ソリッシュが保証します!」

『な!?』『アイヤ!?』

『何と………!?』

「はぁ!?」

 

クララが名乗ったその名前と肩書に、草介たちは驚いて声を上げた。村人やロンたち、そして難民たちの間でざわざわとざわめきが広がっていく。

 

「まったく、あの方は………」

「やっぱり、ソラス………無事だったのか………」

 

その一方で、マルティアはやれやれと呆れた様子でため息をつき、フローは安心したように微笑んでいた。

 

「あの娘が、リグーン王国の幼き女王………!?」

「即位前から不幸体質でケガが絶えず、戴冠式の翌日に魔王軍の攻撃を受けて国を追われ、行方不明になっていた………」

「『リグーンの不幸女王』………!?」

「何度聞いても、不名誉なあだ名だべ………」

「でも、あの青と緑の瞳は、リグーン王国の王家に代々受け継がれてきた『神の宝石』。間違いなく彼女はリグーンの女王陛下。」

 

ロン、カール、ドラムがソラスの情報を口にすると、シャスティは不憫そうに呟いた。しかし、珍しく冷や汗をかいたフェイは、ソラスの青と緑のオッドアイを見て確信したように言った。

 

『ク、クララどの………いや、ソラス、どの………?』

「………黙っていて、すみません。身分を隠していたもので………」

(青と緑のオッドアイ………そうか、リザードマンたちの目撃証言は、これが原因だったのか………)

 

トライフェニックスは少し困惑しながらも、手の上のクララ、否、ソラスの名前を呼ぶ。ソラスは振り返って眉を下げながら小さく謝罪をする中、デュランダーはリザードマンの目撃証言を思い出してその真相に納得をしていた。

 

「ソラス様………!?」「クララが、ソラス様………!」

 

難民たちはクララの正体を知ってどよめき困惑していたものの、次第にその声は収まっていった。

 

「あー、やっぱりか………」

「そんな気はしていたよねー」

「だと思ったよ。」

「………あれ?何で『やっぱり』って空気なの!?」

「いや、だってあれだけ大きな胸だし………」

「あれだけついてないし………」

「あの胸と不幸っぷりは、ソラス様じゃないかなーって………」

「体格と体質で感づかれてた!?」

 

難民たちの納得したような反応に思わずソラスがツッコミを入れるが、彼らの返答に自身の不幸体質と豊満な胸を呪った。草介たちはそのやり取りに顔を引きつらせていたが、今ので緊張がほぐれたのか、ソラスは深く呼吸をして話を戻した。

 

「………皆さん、機怪魔獣への恐怖を抱いているのは私も同じです。しかし、機怪魔獣に怯え逃げてばかりいては、いつまでたっても前に進むことは出来ません。」

 

ソラスは難民たちに訴えかけるように、そして諭すように言った。

 

「彼らは機怪魔獣を倒せる勇者です。しかし、彼らに頼ってばかりでもいけません。我々自身が立ち上がり、そして恐怖を乗り越えなければならないのです!」

 

ソラスの宣言を聞いた難民たちは、彼女の言葉を黙って聞いていた。ソラスは一同を見据えると、一度目を閉じて息を吐き、頭を下げた。

 

「私自身、恐怖を乗り越え切れていません。なので、お願いします。私と一緒に、乗り越えるのを手伝ってください………!」

「ソラス様………」「ソラス様………」

 

ソラスの懇願ともとれる演説を聞いた難民たちは、彼女の言葉に心を打たれた様子でざわついていた。しかし、そのざわめきは徐々に小さくなり、やがて静まっていった。

 

「ソラス様………私も乗り越えます………立ち向かってみせます………!」

「私も………もう怯えてばかりはいられないわ………!」

「お、俺もだ………!」

 

難民たちは決意を固めた顔で、口々にソラスへ協力することを口にする。

 

「みなさん……ありがとうございます……!」

 

ソラスは目に涙を浮かべながら、彼らに向けて深く礼をした。

 

『ソラスどの………』

『彼女はまだ幼い。これから国民たちに支えられて、女王として成長していくだろう。』

『そうでござるな………』

 

ソラスたちのやり取りを見ていたトライフェニックスとデュランダーが、感慨深げに呟いた。草介とトライタイガーも静かに頷いていると、その時、デュランダーにレピオから通信が入った。

 

[隊長、こちらレピオ。今大丈夫ですか?]

『む、どうした?』

[例の宇宙船の持ち主を発見しました………ニールさんと一緒に宇宙船回収して、基地に連れていきます………]

『?分かった。事情聴取は任せたぞ。』

 

どこか気まずそうな声のレピオに少し疑問を抱いたが、デュランダーは小さく返した。

視線を戻してみれば、トライフェニックスの手から降りたソラスがマルティアに付き添われ、フローと再会を喜び合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そうか、竜神様が………」

[はい。]

 

同じ頃、レイヴン魔帝国のリブアン城では、魔王ダインズが娘であるキアラから通信用魔水晶で報告を受けていた。

 

「竜神様から、鱗を賜ったそうだな?」

[はい。持っているだけでも、かなりの魔力が籠っているのが分かります。]

「うむ。本来であれば城の神棚に祀り、毎朝祈りを捧げたいところではあるが、竜神様の意思でお前に授けたのであれば、それはお前が持っているべきであろう。肌身離さず大事に持っておくといい。」

[ありがとうございます。]

 

キアラはダインズに礼を言って頭を下げた。

 

「それにしても、話に出てきた者は、勇者の仲間が連れて行ったとのことだな?」

[はい。どうやら知り合いだったらしくて………]

「うーむ、その件も気になるが………今はデスダイト主導で大規模な作戦を控えている。なるべく早く、そこの王都から離れるのだ。」

 

ダインズからの指示を聞いたキアラは、彼の口から出た『作戦』が引っかかり、父に聞いた。

 

[デスダイトの主導で?一体、何をする気なのですか?]

 

娘の質問に、ダインズはうむと頷き沈黙した。少し考えたものの、やがて口を開いた。

 

「………王都ロシロの大規模爆撃だ。」

[何ですって………!?]

 

キアラは信じられないと息を呑んだ。ダインズ自身、未だ納得のいかないところがあるのか、苦々しい顔で答えた。

 

「確かに、勇者たちは王都を拠点としている事は理解しているが、正確な場所までは掴めていない。故に王都諸共吹き飛ばし、ついでに王国の行政を麻痺させる作戦、という事だ………」

[何てことを………!]

「ワシもそこまで非道な真似は気が引けた。しかし、勇者たちのせいでこちらの進軍が停滞しているのも事実だ。状況打破には、これしかない………」

 

ダインズは苦々しく話すが、その表情はどこか迷いがある様にも見える。キアラが言葉を失っていると、ダインズは口を開いた。

 

「………お前の気持ちは分かる。だが悲しいが、これは戦争なのだ………敵の戦力は、減らすべきではあるのだ………」

[ッ………]

 

ダインズの言葉に、キアラは返す言葉を失い俯いた。

 

「話は以上だ。早い所、本国に戻ってこい。」

 

ダインズはそう言って、通信を切った。拳を握るその顔は、どこかやりきれない表情をしていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラスの演説から4時間後、別荘に戻って来た草介たちは、レピオたちの待つ地下のブレイベース行きのエレベーターに乗っていた。

あの後、ソラスとマルティアは数人の部下を難民の護衛のためにキャブキーラ村に残し、フローと共に王へと秘密裏に謁見に向かった。その間に、デュランたちはレピオが連れた宇宙人に会うべく、ブレイベースへと向かっていた。

 

「じゃあその宇宙人、レピオの知り合いだったの?」

「ああ。昔所属していたグループの1人だそうだ。」

「その人もフューゾニアなのか?」

「いや、別の宇宙人だ。」

 

エレベーター内で草介とデュランが話し合っていた。同行していたシャスティはそれを聞いて、興味深そうに頷いた。

 

「フューゾニアでねぇ宇宙人に合うの、初めてだなぁ………」

「そうだな………」

「初見だと大分驚くと思うぞ?」

 

シャスティの呟きにフローも同意していると、デュランが少しいたずらっぽくニヤリと笑ってみせた。ちょうどその時、ブレイベースの階に到着してエレベーターのドアが開き、メインルームへと足を踏み入れた。

 

「あ、隊長。」

 

中央のソファーの傍で立つレピオとニールが草介たちに気付いて声をかける。ソファーには1人の少女が、緊張しているのかおどおどした様子で座っていた。

見たところ、草介よりも少し年上だろうか。金髪縦ロールで金色の瞳を持っており、一目で高価と分かる上質な黒いゴシック調のドレスを着ていた。

 

「………なんだ、宇宙人って聞いて身構えてたけど、普通に可愛い子だな。」

 

草介はそう言いながら視線を少女の下半身に向けると、ドレスのスカートの裾から伸びた、紫色の斑点の入った緑色の10本ほどの長い触手がウネウネと動いているのが目に入った。

 

「下半身以外は。」

「スキュラっていう魔族に似てるべ………」

「あの触手………カシオペア星系のデビッシュ星人か………」

 

草介とシャスティが顔を引きつらせていると、少女の触手を見たハバキリがその特徴から彼女の種族を推測した。すると、少女は触手をピクリと震わせて、草介をキッと睨みつけてきた。

 

「あっ、あなた………初対面で、じょ、女性の下半身の事を言うなんて、し、ししししつ失礼、ですわよ……!」

「あ、いや……ごめんなさい………」

 

やや言葉に詰まりながら注意されて、草介は反射的に謝った。しかし、少女は直ぐに顔を赤くして、両手で隠してしまった。

 

「ぅー………」

「あー、うん、文句言えて大分頑張ったよ………悪いな、ピンギィは人見知りでさ………初対面のヤツとあんま会話できねーんだわ………」

「そうみたいだな………」

「気持ちは分かるべ………」

 

レピオが胸を貸して落ち着かせながら説明をすると、草介が同情するように呟いた。同じく引っ込み思案なシャスティは、親近感がわいている様子であった。一同が呆れた顔になっていると、ニールがため息交じりに口を開いた。

 

「彼女の素性を聞いて、驚いたぞ。ピンギィ・ストーム。カシオペア座付近に本社を持つ『ハリケーン社』社長、カイ・ストームの一人娘だ。」

「ハリケーン社?」

 

ニールの説明を聞いた草介が社名を聞き返す。デュランたちはその名前に聞き覚えがあるのか、少し驚いた顔をしていた。

 

「ハリケーン社と言えば………例のスキャンダルで業績不振になったハーキュリー重工業を吸収合併し、一部の技術者と商品を引き継いだ大企業でござるな………」

「そのおかげで、業界シェア2位から1位に繰り上がったアル。」

「ハーキュリー重工業って、機怪魔獣の………」

「なして、そんな大モンとレピオさんが………?」

 

ハバキリが告げた情報を聞いた草介たちも、ハーキュリー重工業と関係のある企業と知って驚きの顔になった。その話題が出て、ピンギィがピクリと身を震わせた。

 

「………(レピオさん、()()()、こちらの皆さんは………?)」

「………(ああ、隊長とニールさん以外は知らない、つうか、言えなくてな………)」

(あ………)

 

誰にも聞こえない小声でレピオに尋ねるピンギィ。レピオは気まずそうに小声で答えると何か察したらしくそれ以上聞かなかった。草介たちは小首を傾げていたが、ニールは話を続けた。

 

「レピオが聞いた話では、宇宙を航行中、突然コントロールが効かなくなって、この惑星へ着地させられてしまったそうだ。現在、アルスが宇宙船を調査しているところだ。」

「しゅ、修理や、救難信号を出そうとしても………なぜかわたくしの操作を受け付けなくて………途方に暮れていたところ、でしたの………」

 

ピンギィがレピオの後ろに隠れてそう言ったタイミングで、通信が入った。モニターが点灯してアルスの顔が表示された。

 

[宇宙船を調べたところ、内部からゲル状の物質が検出されたであります。現在、成分を検査しているであります。]

 

アルスはそう言いながら、銀色のトレーに入った青いゲル状の物質を見せてきた。それを見たレピオは、見覚えがあるのか眉をひそめた。

 

「あれって、遠隔操作できない機械を遠隔操作できる『リモートゲル』じゃねーか?誘拐事件に使われて、ハーキュリー重工業が自主回収したはずだぞ?」

「だ、だれが、こんな物を………?」

 

レピオとピンギィが首を傾げる。2人が妙に詳しい事にハバキリは疑問を抱くが、デュランが口を開いた。

 

「いずれにしても、正体は不明だが、ワルンダイツとは別の宇宙人がこの星に来ていて、何かを企んでいるのは確かだ。」

「それも、レピオを狙っての行動か………」

「レピオ、誰かに恨み買うような事したアルか?なんちって………」

 

デュランの言葉にハバキリも続く。冗談めいたように笑いながらレイェンがレピオに聞くが、当の本人に何か心当たりがあるのか、レピオとピンギィは表情を曇らせた。

 

「……そう……かもな………」

「………え?マジで?」

「レピオ………」

 

予想外のレピオの反応に、レイェンの顔から笑みが消える。草介とハバキリはその表情に事の深刻さを悟りはじめた。

 

(レピオ………時々、あんな風に顔を曇らせるのを見かける………何か隠し事をしているようにも思えるが………問い詰めるわけでもないからなー………)

 

草介がそう考えていると、ニールが口を開く。

 

「あー………レピオ、すまないが、ピンギィ嬢を基地のゲストルームに案内してくれないか?」

「あ、ああ……了解っす……」

 

レピオは頷き、ピンギィを連れて居住エリアへと入って行った。2人の背中を見送った草介は、デュランとニールに問いかけた。

 

「………2人とも、もしかしてレピオの事、何か知っているのか?」

「先ほどのあの反応………隊長たちは知っていたとしか思えぬ………」

「もしかしてレピオ、何かヤバいこと首突っ込んでるアルか?」

 

草介に続いてハバキリとレイェンも心配そうに聞く。デュランとニールは顔を見合わせて、小さくため息をついた。

 

「………確かに、知ってはいる。だが、レピオが「時が来たら、自分から話す」と、そう言っていたからな………私たちから言う訳にはいかん……」

「すまないな………」

「……そうか………」

 

デュランとニールの言葉に、草介はそれ以上追及しなかった。ハバキリとレイェンは、レピオの消えたドアの向こうを心配そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、レピオはゲストルームにピンギィを案内してドアが閉じると、ピンギィが話しかけてきた。

 

「………レピオさん、よろしいんですの?『あの事』を話さないで………」

「………いや、いつかは言わなきゃって思ってるんだけど、さ………アレのせいで苦しんでるヤツ、何人も見ちゃってるわけだし………」

「レピオさん………」

 

苦笑気味に答えるレピオに、ピンギィは心配そうな表情で彼を見つめる。レピオはその視線から逃げるように顔を背けた。

 

「……ま、機会があれば、その内話すよ。それよりお前、何で宇宙を飛んでたんだ?お前が1人で出かけるなんて、よほどの事だろ?」

 

レピオが問いかけると、ピンギィは少し照れたように答えた。

 

「その………実はひと月ほど前にお父様が()()()について、銀河連邦警察から正式発表が決定したと聞きまして………」

「そうなのか!?」

「ええ。ワルンダイツのフロント企業数社とされていたムモーキテ社やラウワーツエレクトロニクス、(株)ケリワァを始めとした数社が一斉摘発されて、証拠が揃ったからと。」

 

ピンギィの話を聞いたレピオは、暗かった表情をパッと明るくした。その様子を見て、ピンギィは可笑しいように微笑んだ。

 

「そうか………これでようやく………」

「ええ………それで、この事を真っ先にレピオさんに伝えたかったのですが、通信が出来なくて………」

「あー、この星に来た時のトラブルで、通信機がお釈迦になってたからなー………」

 

話を聞いたレピオは、ピンギィが通信を入れたのが、自分たちがシンナセンに来たタイミングと一致していることに気付き、その頃にGPデバイスの通信機能に障害が生じていたと思い出した。

 

「それでわたくし、レピオさんに何かあったのではと思い、居ても立っても居られなくて………」

「それで飛び出してきたのかよ……相変わらず、人見知りのクセにこういう時の行動力はあるんだな………」

「他ならぬ、レピオさんのためですので………」

 

レピオが呆れて言うと、ピンギィは顔を赤く染めた。

 

「………とりあえず、この星はワルンダイツの戦場になっていて危険だ。お前の宇宙船じゃあまた襲われる可能性があるだろうから、ニールさんがGPの迎えを手配してくれてる。到着次第、カシオペア座のデビッシュ星に送り届けてくれるよ。」

「あ、ありがとうございます………」

 

レピオはそれだけ言うと、ゲストルームのドアを開けて外に出ようとする。そこで足を止めると、少しぎこちない笑みを浮かべた顔をピンギィの方に向けた。

 

「その、ありがとうな、わざわざ言いに来てくれて。久々に会えたのも、うれしかったよ………」

「え、ええ………!」

 

レピオの礼に、ピンギィは顔を赤くした。レピオが出て行きドアが閉じても、彼女はその笑みを脳裏に焼き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご無沙汰しております、クリセイ王陛下。」

「うむ、ソラス女王、無事でなによりだ………」

 

同じ頃、モルデュア城の一室では、ソラスとマルティアは密かにクリセイ王と謁見をしていた。

ソラスは身だしなみを綺麗に整え前髪を上げて髪をハーフアップにして青いドレスに装いを変えており、その姿は、先ほどまでの『小汚い難民の少女クララ』から打って変わって、『高貴な幼き女王ソラス』と化していた。

 

「髪型と服装だけで、よくもまああそこまで正体を隠し通せていたな………」

「変装術は私仕込みよ。」

「どうりで………」

 

フローとマルティアが小声でそんな話をする中、クリセイ王はソラスに話しかけた。

 

「しかし、女王たるおぬしがこれまで身分を隠し難民として生活していたのは………」

「はい。魔王軍から身を隠すためと、王国奪還のための準備をするためです。」

 

ソラスは真っ直ぐな目で王を見るが、その声は不安そうであった。

 

「王国を魔王軍に占領されてしまったのは、機怪魔獣の導入以上に、女王である私が至らなかったせいです。ですから、国を取り戻すのは、私の責務と考えています………」

「ソラス様……」

「………そう気を病むでない。国の王が変わり、国の体制が整っていない時を狙われるのは、戦の定石でもあるからな………(それにしたって、戴冠式の翌日狙われるのはどうかと思うけど………)」

 

ソラスの決意に、クリセイ王は内心、彼女の不幸体質を不憫に思いながらも、優しく微笑む。ソラスは王の言葉に、少し安心したような笑みを見せた。

 

「ありがとうございます、陛下。」

「それで、これからどうする?キャブキーラ村にいる民には、正体を明かしてしまったのだろう?」

「はい。これからは各地にいる我が国の民の元を訪れて、王国奪還の協力を仰ごうと考えています。」

「ふむ……ならば、我が国の騎士団も派遣しよう。機怪魔獣が相手では心許ないかもしれんが……」

 

ソラスの言葉にクリセイ王がそう提案をした。それに、と1つ付け加えた。

 

「これからのそなたらの衣食住に関しては、こちらで全て用意する。」

「え……よろしいのですか?」

「構わんよ。お主らは言わば、他国からの客人だからのう。」

「あ、ありがとうございます………」

 

王の提案に、ソラスは驚きつつも頭を下げた。そこで、ソラスは頭を上げると、口を開いた。

 

「それでしたら、是非ともお願いしたいことがあるのですが………」

「む?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ブレイベース内にあるマシンメイル用の広いトレーニングルームには、トライフェニックス、トライタイガー、トライトータスが、円陣を組むように向かい合って立っていた。

 

『………行くぞ!』

『おう!』『アイよ!』

 

深呼吸を1つしたトライフェニックスの号令にトライトータスとトライタイガーが答え、3機が同時に飛び上がると、それぞれ変形を始めた!

 

トライフェニックスから機首と尾翼が分離すると、頭部と両腕が格納され、両脚が真横に開くように展開して肩と腕に変形をした。

トライタイガーの右肩から虎の頭部が分離、頭部と手足が格納されると、両脚部分が太股に変形した。

トライトータスの右肩からリクガメの頭部が分離すると頭部と手足が格納され、胴体が左右に分離して巨大な両脚に変形をした。

 

『『『トライコンバイン!!』』』

 

掛け声と共に3機は合体の所定ポジション―――トライタイガーの背後にトライフェニックス、下位置にトライトータス―――にそれぞれつくと、いよいよ空中で合体されようとする。そのポジション、タイミング、全てが完璧に見えた―――

 

 

 

 

 

ガギンッ

 

 

 

 

 

『ぐう!?』『ぅあ!?』『アイヤ!?』

 

合体の直前、わずかにズレが生じたのか空中でバランスを崩してしまい各機が衝突、そのまま床に落下してしまった!

 

[レピオさん!!]

[大丈夫か、3人とも!?]

『な、何とか………』

『またダメだったか………』

『何が原因アルかね………』

 

メインルームの窓から見ていたピンギィが悲鳴を上げ、デュランが心配そうに通信を入れる。3機は痛みに呻きながら答える。

 

『これで、通算20回目の失敗か………』

『うーむ………今までで一番良いタイミングと思ったのだが………』

『システムにはエラーもバグもないアルのに………』

 

頭や腰を抑えながら立ち上がり、トライトータス、トライフェニックス、トライタイガーは失敗の原因を考えながらビークル形態に戻り、コックピットからハバキリたちが出てくる。

 

[今朝はもうこの辺にしておこう。一旦上に戻って、朝食にしよう。]

 

デュランが通信を入れるとハバキリたちは頷き、メインルームへと戻って行った。

 

「レピオさん………」

 

落ち込む様子の3人、特にレピオを見たピンギィは、不安そうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マシンには原因がない。だとしたら、問題があるのは………」

「アタシたち自身に、何か原因があるアルかなー………?」

「だとしたら、何が………?」

 

朝食の食卓に着いてからも、トライヤーズの3人は頭を抱えていた。草介はそんな3人を見て、うーん、と同じように考えていた。

 

「こー言うのって、漫画とかアニメとかだと『心を一つにする』とか、そんなんがキーになるよな………」

「心を一つに………(もしもそれをやったら、あの事がこいつらに………)」

「確かに、拙者たちが合体すれば、ボディだけではなく、心も1つになる………」

「3つの心を1つに、アルか………」

 

ハバキリとレイェンは、草介の案に一理あると感じて頷いた。その一方で、レピオだけはどこか浮かない顔をしていた。

 

「心って、どーやったら1つに出来るアルかね………?」

「それが一番の問題でござるな………」

「きゃあ!」

 

ハバキリが呟いたその時、廊下の方で何かが倒れるような音と女性の悲鳴が聞こえてきた。何事かと思い見に行けば、そこには尻餅をついたメイドと倒れた掃除用具が散乱していた。この別荘の管理を任されている、ハウスメイドの1人であろう。

 

「だ、大丈夫でござるか!?」

「ご、ごめんなさい………足を滑らせて………

 

ハバキリがメイドに駆け寄って助け起こそうとする。が、そこでハバキリは、薄い栗色のロングヘアを持ち、切りそろえた前髪で目元を隠した、年齢と身長の割りに豊満な胸を持ったそのメイドが、自分の知る人物であると気づいた。

 

「な!?ソラスどの!?」

「何!?」

 

ハバキリはそのメイドの正体に気づいて名前を口に出す。草介たちもその姿を確認して驚くが、立ち上がった当の本人はスカートについたホコリを叩いて小首を傾げた。

 

「な、何の事ですか?私は、新人メイドのクララと申しますが………?」

「あれ、とぼける感じ?」

 

正体を隠すようにクララと名乗るメイドに、レピオが思わずツッコミを入れる。すると、後ろから黒っぽい茶髪を夜会巻きにして分厚い便底眼鏡をかけたメイドが、3人のメイドを引き連れて歩いてきた。

 

「あ、マルティ………」

「おはようございます。本日よりこの別荘の管理を頼まれたメイドのロッティンと申します。」

「ダリアです。」

「オリヴィアです。」

「マシューです。」

「あ、そうっすか………」

 

あくまで正体を隠す2人に呆れた様子の草介とレピオ。レイェンも呆れた笑みを浮かべ、デュランとニールも顔を引きつらせていると、クララは前髪を分けて目を露出させて、『ソラス』として小声で話し始めた。

 

「クリセイ陛下に頼んで、ここの城でお世話になっている間、身分を隠すためにメイドとして雇われる事にしてもらったんです。こちらの別荘の担当になったのは驚きましたけど………」

「なるほど………」

「王様、ここなら安全と思ったのかもなー」

 

ソラスの言葉に、草介とレピオは納得したように頷く。ハバキリは、前髪を戻したクララに問いかけた。

 

「しかし、何故メイドに………?」

「匿ってもらっている間、何もしないのは忍びないのと、メイドなら、城内とかから色々と情報を聞きやすいと思って………」

 

それに、とクララはその場でクルリと1回転をして見せた。

 

「メイド服って、前から着てみたかったものですからー♪」

「それが一番の理由では?」

「意外と楽しんでるぞ、このお方………」

「結構ポジティブアルなー………」

 

妙に楽しそうにしているクララにトライヤーズの3人は呆れ、草介たちも苦笑していた。

ロッティンは(変装術叩きこんだのはいいけど、妙に仮装好きになっちゃったのよねー………)と、内心自身の行動を後悔していた。

 

ソラス・クレイヴ・ソリッシュ女王初めての功績は、「異世界シンナセンで、初めて『コスプレ』の概念を産んだ」事であろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロコロ王国西側の海底。誰にも悟られずに動く、高さ62メートル、幅が200mもある、巨大な「山」のような物が動いていた。

 

[首尾はどうだい、ティラノ?]

「ええ。イーグルのしくじり、いや、原因不明の事故でメンパロンからの上陸は難しくなりましたが、他の地点からの上陸は可能です。」

 

その「山」の内部、デスダイトからの通信に不敵な笑みを浮かべ答えるティラノ。

周囲には複数のモニターと制御用と思わしきコンソールに操縦桿が設置され、ゾロゾロイド数体がせわしなく動いていた。

 

[だが、怪我の功名だ。連中はメンパロンの調査に向かっているそうだ。この隙に別の地点から上陸し、王都ロシロへ向かうのだ。]

「はっ!」

 

デスダイトからの通信を終えると、ティラノはくくっ、と笑い声を漏らした。

 

「さーて、これより移動要塞型巨大機怪魔獣ザラートレスC3で王都近くにまで向かい、コイツに搭載された爆撃機型機怪魔獣グリフォンバーC1で王都を上空から爆撃する………ブレイバーどもはザラートレスの対応に追われ、グリフォンバーにまで手が回らない、という寸法よ!」

 

ティラノは段々とテンションが上がって来たのか、高笑いしながら操縦桿を握りしめた。

 

「さあーて、ブレイバーども!原住民の王国が亡ぶ様を、最前列で見させてやるぜえ!!ザラートレスC3、発進!!」

 

ティラノが高らかに叫んだその瞬間、巨大な「山」―――巨大な亀を思わせる姿の機怪魔獣ザラートレスC3は動き出した。

 

 

 

 

 

『ウィーン………』

 

 

 

 

 

この時、ザラートレスの艦橋(ブリッジ)にいたゾロゾロイドの1体の目が、怪しい赤色に光っていることに、ティラノは気づいていなかった………

 

 

 

 

 

【つづく】




クララの正体は、リグーンの幼き女王、ソラス・クレイヴ・ソリッシュ。最終的にメイドになって草介たちの元に来ましたが、実はコスプレ好きな一面が発覚するというオチに。

王都爆撃計画。実は魔王軍は「悪」ではなく「敵」として書いているんですが、この辺で反対する辺り、ダインズも「悪」とは言えない人物と分かります。

ピンギィはフューゾニア以外では初めて登場する宇宙人なので、古典的なタコ型火星人をモチーフにしました。レピオ以外には人見知りにしたら、結構いいキャラになりましたね。
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