異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

35 / 36
第33話 魔王軍、集結す

異世界勇者ロボ 第33話

魔王軍、集結す

 

 

 

 

 

狂気の新卒社員・ビュニーの逮捕の翌朝。

デュランダー隊が拠点としている別荘から少し離れた地点の上空、デュランカーとブレイバードが合体したDキャリアーが雲の上で待機していると、空の彼方から小さい光が見えた。

 

「来たか………」

 

デュランが呟いた数秒後、Dキャリアーの数倍もあろう円盤が飛来してきた。円盤下部の一部に2つの環が交差した惑星のようなエンブレムが刻まれているのが見える事から、銀河連邦警察の宇宙船であると直ぐに分かった。

 

[こちら、銀河連邦警察カペラ支部第6部隊所属ヘリオス艦長のゲイル。ブレイバー・デュラン、危険行為を行った容疑者の引き渡しと、遭難者の受取りに参りました。]

「こちらデュラン。ゲイル艦長、感謝する。」

 

宇宙船・ヘリオスからの通信画面が開き、ワインレッドの髪と眼鏡が特徴のインテリ風の男・ゲイルからの通信を受けたデュランが返答をすると、ヘリオスの機体下部のハッチが開き、レーザーサイトで誘導がされる。デュランはそれに従って艦内へと入って行く。Dキャリアーがヘリオスの格納庫へ収納されるとアームで固定され、Dキャリアーへタラップが伸びる。デュランはハッチを開き、後部座席でうなだれていたビュニーを引きずり出すように外へ出す。

 

「ほら、行くぞ?」

「う……うぅ……」

 

ビュニーはデュランに言われるがまま、ふらふらとした足取りで外に出た。デュランがタラップを進んで行くと、白い制服に身を包んだ銀河連邦警察の隊員6人を引きつれたゲイルがやってきた。

 

「ブレイバー・デュラン、容疑者・ビュニー引取ります。」

「ありがとう、ゲイル艦長。彼をよろしく頼む。」

 

ゲイルとデュランは敬礼を交し、ビュニーは手錠をされたまま隊員に両脇を抱えられながら連れて行かれる。

 

「………すまないな、ゲイル。わざわざありがとう。」

「いや、構わんさ。ちょうどこの星の近くにいた俺たちが、たまたま護送の任務を任されたからな。」

 

礼を言うデュランに対して、ゲイルはなんてことないように笑いながら返した。ゲイルはデュランと同期入隊であり、個人的にも交流がある仲であった。2人が笑いあっていると、後部にドッキングしていたデュランカーから、ピンギィがレピオの後ろの隠れるようにしてデュランの元にやってきた。

 

「彼女が?」

「ああ。ハリケーン社の令嬢だ。」

 

レピオの後ろに隠れるピンギィに少し呆れながらもゲイルが聞くと、デュランも苦笑気味に答えた。レピオはゲイルの元まで行くと、少し困ったような顔で彼に話しかけた。

 

「ゲイル艦長、見ての通りピンギィは人見知りなんですが………家までお願いします。」

「あ、ああ。それは任せてくれ。」

「お願いします。ピンギィ、銀河連邦警察の人なら、安心して家に送り届けてくれるだろうからな?心配する事ないからな?」

「そ、そうです………けれど………」

 

レピオは自分の後ろに隠れるピンギィにやさしく話しかける。ピンギィは怯えながらもレピオから離れて、ゲイルの前に出てきた。

 

「で、ではレピオさん………また、いずれ………」

「そうだな。また連絡入れるよ。たまには『マデルー』にも顔出すようにするし。」

「ええ。そうですわね………」

 

レピオとピンギィは微笑みながら短く会話をした。デュランとゲイルは顔を見合わせて笑みを浮かべていた。

 

「では、ピンギィ嬢は安全にご自宅へお送りいたします。」

「はい、お願いします。」

「よ、よよよろよろしくお願いします………」

 

ピンギィは言葉に詰まりながらもゲイルに頭を下げると、ゲイルは微笑みながらピンギィに手を差し伸べる。

 

「では、行きましょうか?」

「は、はい……」

 

ピンギィがゲイルの手を取ると、2人は宇宙船の奥へと向かって行った。デュランとレピオは顔を合わせ頷きあうとDキャリアーへ乗り込んだ。Dキャリアーはヘリオスから発進をすると、すぐにヘリオスは飛び立って行き、惑星から脱出して行った。

 

「………さて、帰ろうか。」

「はい。」

 

2人は宇宙船の姿が見えなくなるまで見送ると、その空域を飛び立ち、別荘へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、戻ったか2人とも。」

 

デュランとレピオが別荘に戻ると、リビングには草介やフロー、シャスティといういつもの面々に加えて、レヴァンティの姿があった。

 

「さて、今日はおぬしらへの伝達事項が『2つ』あって来た。まずは、この鱗についてじゃ。」

 

レヴァンティはそう言うと、懐から2枚の鱗を取り出した。それは2日前、竜神山の一件で竜神から受け取った『竜神の鱗』であった。1枚は鮮やかな真紅に輝いているが、もう1枚は薄いピンク色でやや光沢が少なくなっていた。

 

あの事件の後、デュランはポケットに入っていた『竜神の鱗』の色が薄くなっている事に気が付き、何かあると思って草介のものと一緒にレヴァンティに預けて調べてもらっていたのだ。

 

「鱗を調べてみたところ、これには強大な『火』系統の魔力が籠っていた。」

「魔力が………」

 

デュランが小さくつぶやくと、レヴァンティは2枚の鱗をテーブルの上に並べてみせた。

 

「この綺麗な赤色の方がソウスケから、こちらのピンク色のものがデュランからそれぞれ借りたものじゃが、デュランの鱗は、ソウスケのものに比べて籠っている魔力が少なくなっていた。どうやら、この鱗には『火炎や爆発の大ダメージを無効化する』効果があるようじゃ。」

「では、隊長があの大爆発でも無事でいられたのは、この鱗のおかげであったのか………!」

「『竜神様の加護』ってヤツか………」

「流石は『リュウジン様』、ってところアルな♪」

 

レヴァンティが説明をすると、ハバキリとレイェンは納得と喜びの声を上げた。レヴァンティはテーブルの上の鱗を手に取ると、草介とデュランにそれぞれ渡した。

 

「やはり、この鱗が私を助けてくれたのか………」

「竜神様、この鱗は『お守り』って言ってたけど、こういうことだったのか………」

 

草介とデュランはそれぞれ鱗を受け取ると、手のひらの上で見つめた。デュランが呟いている中、草介は「出来れば、ちゃんと効果教えてほしかったけど…」と思っていた。

デュランが気を失っていたのは、おそらくは爆発の威力があまりにも強過ぎて爆炎のダメージを無力化できたものの、衝撃波までは完全に無効化しきれなかったからだと予測はできた。

 

「鱗の魔力量を見るに、1枚でだいたい3回までは無効化してくれるようじゃ。大事に使う事じゃな。」

「そうですか………」

「魔力が減ると色素も減るのか。分かりやすいな。」

 

レヴァンティの説明を受けた2人は小さく頷く。ハバキリたちたちトライヤーズも、自分たちが貰った鱗を取り出していた。

 

「こういうのって、もったいないからって取っておいて、結局最後まで使わない事が多いんだよなー」

「あー、『ラストエリクサー症候群』ってヤツだね………」

「宇宙や異世界にも、その概念あるんだ………」

 

レピオの呟きにフローが返すと、草介は地球でも馴染みのある現象の名前を聞いて妙な親近感を覚えていた。

 

「多分、ワルンダイツは隊長が生きてるのに気づいてないアルよね?」

「次に会った時、驚くであろうな………」

「それにあっちのお姫様も、鱗の効果知らないよな?わざわざ教えることはない気もするけど………」

 

トライヤーズが笑いあっていると、レヴァンティが話を続けた。

 

「さて、ではもう1つの件じゃ。例のオーヒン文字に関する文献についてじゃが、カシンバルト魔法学園からの返事がようやく来てのう。ちょっと厄介な条件を突き付けられたが、アメモウ図書館での閲覧許可証が下りた。」

「おお、やっとか………」

「だが、厄介な条件というのは?」

 

レヴァンティの報告を聞いて、草介は安堵の声を漏らした。だが、デュランは彼女の言う『条件』が気になった。

 

「それがのう………」

 

レヴァンティは少し複雑そうに頬を掻きながら、チラリと弟子のシャスティの方を見る。彼はキョトンとしていたが、レヴァンティは答えた。

 

「………学園側からの条件が、『休学中のシャスティの来年度からの復学』でのう………」

「ッ………!」

「『復学』?」

「それはまた、面妖な条件でござるな………」

 

彼女の明かした条件に、デュランとハバキリが小首を傾げた。草介はそれを聞いて、あることを思い出して口を開いた。

 

「『休学中』?あれ?シャスティって確か、学校辞めたって言ってなかったか?」

「そ、それは………」

 

草介の疑問に、シャスティはバツが悪そうに顔を背ける。

 

「シャスティ?」

「なんか事情があるみてーだし、これに関しては後回しにしたほうがいいかなー」

「………そうだな。まあ、俺もそこまで急いでないし。」

「………す、すまねぇだ………」

 

そんな彼を見て草介とレピオは何か事情があるのだろうと察してか、図書館の件を後回しにする事にした。シャスティは申し訳なさそうに小さく謝った。レヴァンティも少し複雑そうな顔をしていると、ハバキリのGPデバイスが通信音を鳴らした。通信ボタンをタップすると、アルスの顔が表示された。

 

[トライヤーズの皆さん、オートさんから通信が入っているであります。]

「オートどのから?」

 

ハバキリは思わず聞き返した。草介たちは「オート」という名前に聞き覚えがあった。以前話に出てきた、マシンメイルの開発主任のはずだ。

 

[はい、トライディアンへの合体成功に関してのデータを送ったら、ぜひとも話をしたいと………]

「なるほどネ。」

「承知した。すぐ、ブレイベースに向かうでござる。

 

ハバキリはそう答えると、レピオらと共にブレイベースへと向かう。草介たちも向かう中、シャスティはレヴァンティに話しかけた。

 

「お、お師匠様………」

「まあ、こればかりは無理強いはせぬ。ゆっくり気持ちを整理するのじゃ。」

「ん、んだ………」

 

シャスティは小さく頷くのを見て、レヴァンティはため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その同じ頃、シンナセンの北の果てにあるティダマ大陸のレイヴン魔帝国。

シャークとポーラがリブアン城を訪れると、場内が妙に忙しない様子であることに気が付いた。

 

「なんだ?みんな忙しそうにして………?」

「あら、あなたたち………」

「あ、キアラちゃん。」

 

シャークが不思議そうに呟いていると、ちょうどやって来たらしいキアラが話しかけてきた。

 

「何か、お城の中賑やかね?みんな忙しそうだし。」

「ああ、明後日に3ヶ月に1度の魔王軍会議があるからね。それに先立って、四族長たちが城に集まっているのよ。」

「なるほど、それでか。」

 

キアラの返答を聞いてポーラが興味深そうに呟いた。シャークも少し興味があるのか、場内を見渡していると、3人に声をかける者がいた。

 

「おお、姫様!久しぶりだにゃー!」

「あら、バルベエさん。久しぶりー」

 

やってきたのは、後ろにリビングアーマーのフォーリーとスケルトンのキャプテン・キューダを引きつれた、1.5~2頭身の手足の生えた頭蓋骨、霊族長バルベエであった。勝手知ったる相手ゆえか、気さくに話しかけてくるバルベエに対して、キアラも右手を小さく振りながら、まるで正月くらいにしか会えない親戚に会ったような挨拶を交わした。

 

「いやぁ、元気そうで何よりだがや!ああ、そうそう、姫様の言っていた例の勇者と会ったがや。」

「そう。どうだった?」

「会ったのは短い時間だったが、見どころはあるように思えるがや。」

 

キアラがバルベエと会話をしていると、横で聞いていたポーラは勇者の話題になって何かを思い出したのか、あ、と声を出して、バルベエに話しかけた。

 

「あのー………うちのウルフとバッファローが迷惑をかけたみたいで………その節は申し訳ありませんでした………」

「ん?あー………そのことならわしはもう気にしとらんがや………」

 

頭を下げるポーラに対して、バルベエは苦笑しながら答えた。シャークとキアラも苦笑していたその時、

 

「おう!キアラちゃんにバルベエのジジイ!久しぶりだな!!」

「ぅお!?」

 

突然、背後から轟音かのような大きな声で話しかけられて、シャークは思わず飛び上がった。振り返ると、そこには背後にゴブリンとオークを引きつれた、ボサボサの長く赤っぽい黒髪に大きな2本角を生やし、筋骨隆々の赤い肌と右頬の古傷が目を引く、(オーガ)の男がいた。上半身は袖を引きちぎったかのようなノースリーブのシャツを羽織り、下にはトラ柄の腰蓑を巻いた服装をしていた。

キアラとバルベエは耳を押さえながらも、その人物に挨拶をした。

 

「あ、あー………ガラバーさん………お久しぶり………」

「おう!元気そうだなキアラちゃん!また背ぇ伸びたか!?」

「おみゃーは相変わらず、声がデカいにゃー………」

「こ、声でかぁ………!」

「耳、キーンてする………」

 

ガラバーと呼ばれた鬼の男は大声で笑いながら声をかけた。シャークとポーラはガラバーの声に耳を押さえて目を回していたが、一方で、慣れているのか、キアラは苦笑気味に返し、バルベエは呆れていた。

 

「お久しぶりです、姫様。」

「ウチんとこのせがれたちは、迷惑かけてないダスか?」

「ええ、問題ないわ。むしろ私が助けられてるし。」

 

ガラバーの後ろにいたゴブリンとオークが話しかけると、キアラは耳を押さえていた手を放して答えた。彼らはゴブリンジェネラルのカレと、オークロードのヴルク。それぞれゴブリン族とオーク族の族長にして、カラとボルグの父である。

 

「相も変わらず、あんたさんは一言一句声が大きすぎやなぁ………」

「ん?」

「ミスティルさん。」

 

その時、ガラバーの後ろから話しかける者がいた。振り返ってみれば、そこには艶やかな黒髪ストレートロングに切れ目、背中に白い翼を生やし、膝から下が鳥の足になったセイレーンの女性の姿があった。地球の和服に似た背中が大きく開いた独特の白い民族衣装に、肩には握り拳大の白い房が4つほど付いた帯のような長い長方形の布をかけた服装をしていた。後ろに同じくセイレーンの少女・ルティを従えたその女性・ミスティルの顔を見て、キアラは声をかけた。

 

「いややなぁ、キアラ様。昔みたく、呼び捨てでもええんですよ?」

「いや、私の世話係だったからって流石にそれは………」

 

からかうかのようにクスクスと笑うミスティル。地球の京ことばによく似た言葉で話す彼女に対して、キアラは苦笑気味に返した。

 

「なんつーか………」

「愛されてるねー、キアラちゃん………」

 

そんな風に語り合う魔王姫と族長による穏やかな空気がその場に流れる中、双子はどこか居づらさを覚えていた。シャークが首の後ろを掻いていると、また声をかける者がいた。

 

「あ、キアラ姫様ー」

 

呼ばれてキアラが振り向けば、そこには全長30cmほどの、金髪をポニーテールにして緑色の服を着た、風の妖精シルフの少女が浮遊しながらこちらに向かってくるのが見えた。

 

「あら、セリス。久しぶりね?」

「お久しぶり~」

「ヌボコは?一緒じゃないの?」

「森の方で、アルラウネとケンタウロスがちょっと揉めててねー………そっちの対応で少し遅れるって………」

「あら、それはすんまへんなぁ………」

 

セリスの話を聞いたミスティルが、左程表情を変えないまま申し訳なさそうに頭を小さく下げた。ふと、そこでセリスがシャークとポーラに気づいて声をかけた。

 

「あ、もしかしてこの2人、ワルンダイツの?」

「ええ、そうよ。」

「どうもー」

「はじめまして。」

 

セリスが話しかけると、双子は苦笑気味に会釈をしながら返した。だが、それを聞いてミスティルとガラバーは、冷めた目で2人を見た。というよりも、むしろ睨んできたので、2人は戸惑って半歩後退ってしまった。

 

「………ああ、どうも。同盟軍のおふたりさん。」

「あんたさんらのおかげで色々助かっとりますわ。最近は失敗続きみたいやけど。」

「あ、はい………」

「どうも………(居心地悪ぅ………)」

 

ガラバーとミスティルのどこか冷たい言葉に、双子たちは戸惑いを隠せなかった。キアラとセリスはそれを見て困惑し、バルベエは呆れた様子でため息をついた。

そんな険悪な空気を破るかのように、声をかける者がいた。

 

「こらこら、同盟相手にそんな冷たい態度をするものではないぞ?」

 

その声が聞こえた瞬間、その場の空気が一瞬で引き締まった。一斉に振り返れば、そこには赤い髪にカイゼル髭、黒い大きな角を生やした男がこちらに歩いてきていた。魔王軍のトップにしてキアラ姫の父、魔王ダインズ・レイヴンである。

 

「お父様。」

「おお、ダインズ陛下。」

「魔王様!」

「ダインズ様、お久しぶりやなぁ。」

 

キアラ、バルベエ、セリス、ミスティルがそれぞれダインズに挨拶をした。ダインズはそれに手を上げて応えると、ガラバーが不敵な笑みを浮かべていた。

 

「おう、ダインズ!来てやったぞ!」

「ちょい、ガラバー………」

「おみゃーっちゅうやつは………」

 

何の遠慮もなくダインズに声をかけるガラバー。ミスティルとバルベエが頭を抱えて注意をしようとするが、それを当のダインズが制した。

 

「良い。ワシとコイツの間に、礼儀も遠慮もいらん。そうだろう?」

「おうよ!俺たちはかつて(しのぎ)を削りあった間柄、いわゆる『ライバル』ってヤツよ!お互いに魔王と鬼族の(おさ)の座にこそ収まったが、魔王になったからって別に『ダインズ様』の部下になったつもりはねえ!」

 

ダインズがそう言うと、ガラバーは右頬の古傷を撫でながら笑ってみせた。ダインズはそれを聞いて笑みをこぼす。

 

「それはワシも同じこと。今は互いに立場のある身ゆえ昔のようにやり合う気はないが、その時が来れば決着をつけようぞ!」

「ガハハハハッ!せいぜい俺をガッカリさせるなよ!?」

「こっちの台詞だ馬鹿タレ!!」

 

ガハハと笑い合うダインズとガラバー。そんな旧友2人を余所に、キアラやバルベエ、ミスティルは呆れたようにため息をつきながら苦笑し、シャークとポーラの双子は唖然としていた。

 

「さて諸君、精族長の到着は遅れるそうだな。今日の所は2日後の会議に備えてくれたまえ。」

「おう!」

「ええ、どうも。」

「そうさせてもらうがや。」

 

ダインズがそう告げると、3人の族長はそれぞれ返事をしてその場を後にした。族長たちの姿が見えなくなると、緊張の糸が切れたのか深く息を吐いた。

 

「お~、こわぁ………」

「何か、俺らってかんげーされてない感じか………?」

「あー、うん………ごめんなさいね?」

 

双子が額の汗を拭いながら呟くと、キアラも少し引きつった笑みで返した。

 

「ガラバーさんは見ての通り直接戦うのが好きなタイプだし、ミスティルさんは前に自分が指揮した時に機怪魔獣が指示聞かなかったのをまだ怒ってるっぽいからねー………」

「そっか………」

「同盟結んだっつっても、やっぱまだ警戒されてんのねー………」

 

キアラの説明に、2人はそう呟きながら肩を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王家の別荘地下、ブレイベースのメインルームにやってきたデュランたち。アルスがコンソールを操作すると、メインモニターが点いて空色のぼさぼさの髪にゴーグルを着け、ツナギとTシャツを着た女性の姿が映った。

 

「オート主任、3人をお呼びしたであります。」

[うん、ありがとう!トライヤーズのみんなー、久しぶりー!!]

「うお!?」

 

アルスがモニターの向こうの女性に話すと、オートと呼ばれた女性が満面の笑みで挨拶をする。しかし、スピーカー越しだというのに大きすぎる声に、一同は耳を塞いだ。

 

「み、耳が………!」

[あ………あー、ごめんねー!声大きかったー!?]

「まだデカいアル………」

「スピーカーのボリューム、自動調節にしとくであります………」

[ごめんねー?普段から喧しい整備工房にいるからねー!つい大声で話しちゃうんだよねー!]

 

自身の大声のせいで画面向こうのメンバーの鼓膜に大ダメージを与えてしまった事に気づき謝るオート。軽く目を回す一同に対して、アルスはコンソールを操作した。

 

[改めて、3人ともトライディアンへの合体成功おめでとー!ぶっつけ本番だったみたいだけど、成功できてよかったよぉー!!]

「あ、ありがとうございます………」

「未だに何で成功できたのか、分からないアルけどね~」

「あの時は、何となくできる気がしただけだしなー………」

[………あー、その事かー!]

 

ボリュームを調整しても十分な大声で祝うオートに対して、トライヤーズの3人は苦笑気味に返した。レピオが後頭部に手を当てながら呟くと、オートは画面の中で少し申し訳なさそうな顔になった。

 

[みんなには言ってなかったけれど、実はトライメイルの合体には操縦者の心というか、気持ちが合わさっている必要があったんだよねー!]

「気持ちが………?」

[そう!3機のマシンメイルと3人のフューゾニアが1つになっても十分に戦うには、心を1つにする必要があると思ってね!試験的に新開発した、『シンクロニング・システム』が搭載されていたんだ!]

「シ、『シンクロニング・システム』?」

[うん!心を合わせる事で合体が可能になって、しかも理論上は気持ちが合わさるほどにスペック以上の力が発揮されるシステムなんだ!!]

 

オートの説明を聞いて、草介たちだけではなく、聞かされていなかったらしいトライヤーズも驚きを隠せないでいた。

 

「なるほど、それでか………」

 

ふと、話を聞いていたデュランが呟いた。一同の視線が彼に集まると、デュランは口を開いた。

 

「いや、思い返してみたんだが………昨日の合体が成功するまで、レピオたちは何らかの秘密や悩み、隠し事を抱えていたのだと思ってな………」

「あ………」

「言われてみれば………」

 

デュランの言葉を聞いて、草介たちはトライヤーズ3人を見た。

 

「レピオは機怪魔獣を生み出す遠因になった後悔………レイェンは師匠と流派への遠慮………ハバキリは特殊な性癖………」

「拙者だけなんか違くない!?」

「実際、オレは合体して心が1つになったら、秘密がばれて2人に非難されるんじゃないかって、心のどこかでビビっていた………それが合体を妨げていたのか………」

「レピオのは、特に重い気がするネ………」

「逆に拙者の悩み小さすぎて恥ずかしいんだけど!?」

 

抗議するハバキリを華麗にスルーして、一同は話を続けた。そこに、オートも入って来た。

 

[オートさんもレピオちゃんの話は聞いていたけどねー!他の2人も、違いはあるけど色々心に抱えていたのが、失敗の原因だったわけだねー!]

「というかオート主任、『シンクロニング・システム』の事、拙者たちも聞かされていなかったのだが………?」

[あー、うん!言ったら意識しすぎちゃって、逆に失敗しちゃうと思って言ってなかったんだよねー!ごめん!]

 

ハバキリの指摘に対して、オートは両手を合わせて謝った。

 

[まあ、それはともかくとして………これからも合体と戦闘のデータを送ってねー!それを元に問題点とか改善するからねー!それ以外で、何か要望とかあるかなー!?]

「あ、それなら………」

 

オートが気を取り直して問いかけると、レイェンが挙手をした。

 

「アタシのメカが潜水艦だと、地上で運用できないのが難点アル。地上でも多少は動けるようにしてほしいネ。」

[………あー、それもそうか………潜水艦だからって、拘りすぎなのも問題だったか~………]

 

レイェンの要望を聞いて、頭を掻くオート。小さく「うーん」と考えてから口を開いた。

 

[その辺の改修とか、戦闘データを基にした調整とかも必要になるだろうし、一回そっちに行ったほうがいいかもねー!]

「いいんすか?忙しいでしょうに………」

[大丈夫だよ!オートさんが作った可愛いトライメイルだからね!協力は惜しまないよー!]

「あ、ありがとうございます………」

[それじゃあねー!]

 

オートはそう言うと、通信が切れた。暗転した画面を見て、草介はため息をついた。

 

「………なんつーか、結構強烈な人だったな………」

「あー見えて、マシンメイルの開発とメンテナンスの腕は確かだし、メカへの愛情はあるからな。」

「だろうなぁ………」

 

草介の呟きにデュランが答える。草介自身も、先ほどの会話の節々に見て取れたため、納得をしたように頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都ロシロの北西にそびえ立つ竜神山の麓。森の木々を縫うようにして、緑色の陰が音もなく駆け抜けていた。

 

「―――やはり、この辺は他の場所に比べて魔素(マナ)が濃いようだね。採集には最適だよ。」

 

影はひと際大きな木の根元で立ち止まって小さく呟いた。

その姿は吟遊詩人を思わせる帽子にマントを着用し、背中に三味線のような弦楽器を背負った、蛍光グリーンのショートカットで、前髪で右目が隠れている少女であった。

少女は懐から10cmほどの緑色の半透明の結晶体を取り出すと、鼓動するかのように緑色の光を点滅させるそれを見つめた。

 

「だいぶ溜まったな。クリファート公国で手に入れたバッテライト鉱石………マナを蓄える性質があると聞いて、わざわざ手に入れた甲斐があった………」

 

少女は呟くと、円筒型の小さなカプセルにバッテライトを入れてふたをすると、今度は2ℓのペットボトルほどもあるロケットのようなものを取り出してカプセルを中に入れた。

そしてネイビーブルーのカバーが付いたスマートフォンを取り出し操作をすると、ロケットはブースターを噴出させて飛び立ち、空の彼方でキラリと光らせた。

 

「『手に入れたサンプルを送ります。解析をお願いします。』、っと………」

 

少女はメッセージを送信するとスマートフォンをしまい込み、静かにその場を後にした。

 

「………(ワルンダイツの首領や幹部が一斉に集まるなんて、今までなかったことだ。この星に一体何があるというのかと思って、この星に満たされているマナと呼ばれるエネルギーが気になって採取したけど、これが手掛かりになるのだろうか……)」

 

歩きながら、少女は内心考え事をしていた。少女は立ち止まると、帽子をかぶり直しながら空を見上げた。

 

「(手段を選ばない大規模な作戦も多くなってきた………)どうやら、ボクも表舞台に出る時が近づいてきたみたいね………そろそろ合流する頃か………」

 

彼女は小さく呟くと右手の指2本を伸ばした構えを取った。すると、『ドロンッ』と煙が爆ぜると、その中から1台の黒と紫色の自動車(地球の『シボレー・コルベット』に似ている)が現れた。少女はその車に乗り込むと、車は全くと言っていいほどエンジン音を鳴らさずに走り出し、そして、いつの間にか姿が見えなくなった………

 

 

 

 

 

【つづく】




ビュニー事件の事後処理。デュランの同期のゲイルは、また登場させてもいいかもしれません。

前回デュランが無事だった理由は、竜神に貰った鱗のおかげでした。草介やトライヤーズも持っているので、いずれ活用されるかもです。

シャスティがカシンバルト魔法学園をやめた話はゾミクノーチ編で語られていましたが、何故か休学になっている件。この辺の事情はいずれ。

バルベエ以外の四族長2人登場。ヌボコは次回登場予定。ガラバーとミスティルはダインズとキアラと大分近い関係性なんだけど、キアラとの接し方は親戚のおじさんおばさん的な感じ。その分、ワルンダイツには若干辛辣気味。ダインズとガラバーの関係は好き。

オートさん再登場。ガラバーと並んで声の大きい人が敵味方に登場する展開にwトライディアンへの合体の秘密は割と分かりやすい感じ。ハバキリはちょっとかわいそうだけどw

これまで何度か登場していた、三味線を持った謎の吟遊詩人。そろそろ本格登場させます。どんなキャラかは、最後のシーンがヒント。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。