異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第35話 勇者と侍は、故郷を想う

異世界勇者ロボ 第35話

勇者と侍は、故郷を想う

 

 

 

 

 

ティルヴィと出会い、シャスティの過去を知った日の夜。夕食後の団欒とした席で、草介とデュランはその日にあった事を話していた。

 

「何と………」

「シャスティ君に、そんな過去が………」

 

デュランの話を聞いたニールとアルスが、神妙な面持ちで呟く。草介とデュランも苦笑気味になっていたが、トライヤーズの3人は面白がっている様子であった。

 

「シャスティは良き友を持ったようだな………」

「やり方はかなり強引で無謀アルけどねー」

「いいよなー、そういうバカ出来る友達(ダチ)って………」

 

ハバキリとレイェンは笑みを浮かべながら言うと、レピオも経験があるのかしみじみと呟いた。草介はオフューカスの事を思い出しているのかなと思っていると、クララ達メイドが紅茶を運んできた。

 

「紅茶をお持ちしました。」

「ああ、ありがとう。」

 

青みがかった黒髪のボブカットで眼鏡をかけた、3人の中で一番背の高い切れ目のオリヴィアがデュランに紅茶を差し出すと、デュランは礼を言って受け取った。金髪三つ編みのダリアがカップを用意してロッティンが紅茶を淹れると、クララと歳の近い見た目で赤っぽい茶髪のマシューが草介たちにも配り始めた。

 

「皆さん、何の話をしていたのですか?」

「こら、マシュー!」

 

ふと、マシューがデュランたちに聞いてくるが、ロッティンはそれを見て注意をした。

デュランたちは自分たちの『事情』を理解しているとはいえ、立場上は主人とメイドという関係である以上、馴れ馴れしくするのは不敬に当たってしまう。叱られたマシューは肩を竦めるが、デュランは「大丈夫だ。」とたしなめた。ふと、そこでハバキリはある事に気が付いて、クララたちに話しかけた。

 

「そうだ。クララどの、リグーン王国を訪れた「ブルート」という冒険者をご存じではないか?」

「え?」

「ブルート、さん………ですか?」

「あ、そうか………」

 

ハバキリの問いにクララたちはキョトンとしていたが、デュランたちは意図に気付いた。彼女たちはリグーン王国の出身だ。ブルートについて何か知っている可能性もある。少し期待をしたものの、クララたちの表情芳しくなかった。

 

「いえ………王国を訪れた事は噂に聞いていましたが、直接会ったりするまでは………」

「私も………国内にある世界最高峰のバンジー山に入山したということまでしか………」

「そうか………」

 

クララとロッティンの返答に、デュランは残念そうに呟いた。肩を落とす草介たちの様子にクララは首を傾げていたが、そこでニールが何かに気づいた様子に気づいた。草介たちもそれに気が付いてクララたちと一緒に彼女の視線を追うと、そこにはどういうわけか、オリヴィアが苦虫を噛み潰したような嫌そうな顔をしていた。

 

「………オリヴィア?」

「どうかしたのか?」

「………いえ、何も………」

 

クララとニールが気になって声をかけると、オリヴィアはハッとした様子で表情を戻し、ティーポットを片付け始めた。草介たちは首を傾げたが、ダリアとマシューは何か事情を知っているのか苦笑をしながらも視線で「何も聞かないでほしい」と訴えているのを察して、草介たちはあまり聞かない方がいいと判断をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん………」

「うーむ………」

 

翌朝。食堂で席に着いた草介とハバキリは、目の前の朝食を見下ろしながら、腕を組んで唸っていた。今日の朝食は、薄切りのパン2枚と野菜のスープという、この世界では一般的な献立である。

 

「ハバキリ、お前もか………」

「うむ。気が合うな………」

「ん?ソウスケ君にハバキリさん、どうかしたでありますか?」

「いや、ちょっとな………」

 

2人の様子に気づいたアルスが食事の手を止めて問いかける。デュランたちもそれに気が付いて視線を向けると、草介が口を開いた。

 

「この世界に来て、だいたい1ヶ月弱、こういう食事を毎日食べてきた。」

「味にも量にも不満はない。むしろ、質素ながら美味いまである。だが………」

 

2人は目を閉じながらしみじみと話す。料理に不満があるのかと思っていたニールだが、2人は目をカッと開いて、ほぼ同時に叫んだ。

 

 

 

 

 

「「………米が食べたい!!」」

 

 

 

 

 

「「「「………は?」」」」

 

2人の叫びに、デュランたちは目が点になった。2人は続けた。

 

「こっちに来るまで、ほぼ毎日当たり前のように食べていたのに、1ヶ月以上食べるのを絶ったら無性に食べたくなった!」

「迂闊であった………ここまでの長期任務なら、米かパックごはんを持ち込むべきでござった………!」

「何かの歌じゃないけど、米食いてーよ!」

「切実アルな………」

「故郷の味が恋しくなってしまったか………」

 

思いの丈を語る2人を前に、呆れたように苦笑する一同。日本人の草介は勿論であるが、服装と言動から日本的な環境で育ってきたことが伺えるハバキリもまた、毎日パンの食生活から白米が恋しくなってしまったらしい。

全員がその場で呆然としていると、食事の用意をしていたマシューが首を傾げた。

 

「コメ、って………?」

「………ああ、俺の故郷の穀物だよ。炊飯調理をすると、白くツヤのある食べ物になるんだよ。」

 

一通り叫んで落ち着いたらしい草介が、簡単に米の説明をした。それを聞いて、マシューは「うん?」と首を傾げた。

 

「それって、もしかして『イアム』のこと?」

「何?」

「米があるのか!?この世界にも!?」

 

マシューの発言に、草介とハバキリは身を乗り出して食いついた。2人に気おされながらも、マシューは答えた。

 

「え、ええ。私は食べたことはないけれど、確かロコロ王国の北東辺りで栽培されている作物に、そんな物があるって聞いたことが………」

「マジか!!そうと決まれば!」

「待てソウスケ、動くのであれば、まずはきちんと情報を集めてからでござる!」

「そうだな………あ、ティルヴィさんまだこの街にいるかな?もしかしたら詳しいかも!」

 

2人は「白米が食べられるかもしれない」という期待からハイテンションに話し合う2人。まずは食事だと思い、テーブルのパンをスープに浸して掻っ込むように手早く食べ終えると、食器を片付けて食堂を飛び出して行った。

 

「やれやれ………」

 

デュランの一言に全員が苦笑をしていると、入れ違いになるようにロッティンが食堂に入ってきた。

 

「あの、今ソウスケさんとハバキリさんが凄い勢いで出て行ったのですが………」

「あ、うん………ちょっとね………」

「?」

 

ロッティンは首を傾げていたが、それよりも、と話を切り出した。

 

「先ほど、国王様からのご連絡がありました。」

「国王様から?」

「はい。何でも、確認したいことがあるそうで………」

「ふむ?」

 

伝達を聞いたデュランが顎に手を当てて考えていると、ニールが声をかけた。

 

「デュラン、国王の元へは私が行こう。お前たちはソウスケたちの方に行ってくれ。あの調子じゃあ、万が一何かあっては事だからな。」

「分かった、頼んだよニール。」

 

デュランが頷くと、一同は食事を済ませてそれぞれ動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、デュランと草介、それにハバキリとシャスティを乗せたデュランカーは、王都から数十㎞離れた道を走っていた。

 

「目的地の『マリワヒ領』まで、後2時間くらいだな。」

「隊長、忝いでござる………拙者たちのワガママに付き合わせてしまって………」

「いや、いいよ。ある意味、君たちのメンタルケアになるだろうからね。」

 

後部座席で申し訳なさそうにするハバキリに、デュランは苦笑しながらも答えた。草介も振り返って、後部座席のシャスティに話しかけた。

 

「シャスティも悪かったな。付き合わせちゃって。」

「ええだよ。オラも、勇者様の故郷の味、知りてぇもんなぁ。」

 

シャスティも楽しみそうに笑って返すと、草介は前を向きなおった。

 

「ティルヴィさんの話によると、ベロースリット領の近くにあるマリワヒって領地の農村で、イアムの栽培をしているらしい。」

 

そう言うとバッグから1冊の本、ティルヴィ出版刊『世界珍味百貨・ロコロ王国編』を取り出した。

 

「本に載っているイアムの調理法は日本の炊飯と同じで、料理の付け合わせみたいな感じらしい。イアム自体は栽培方法が難しくて、今はまだ収穫量が少ないから国内での流通はほとんどしていないらしい。けど、領主が各地で栽培できるよう研究に力を入れているらしい。」

「そうなると、茶碗1杯食べられればいいって感じかなー………」

「それでも、握り飯にするだけでも食べる価値はあるでござろう。」

「にぎりめし?」

「米の食べ方の1つにござる。」

 

草介が本を開いて言うと、デュランとハバキリは期待している様子で言った。草介は本をしまうと、道の先にあるだろうマリワヒ領に目を向けた。

 

「楽しみだなー、異世界米!」

「そう呼ぶと、それっぽくなるな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃。

シンナセンの衛星軌道上のマッドアドワーズの一室では、六魔獣将総大将、炎のティラノがタブレットを手に機怪魔獣のデータ整理をしていた。

 

「ん?」

 

そこでふと、ある項目が目に留まった。表示されているデータによれば、戦闘員(ドロイド)タイプの機怪魔獣20体以上が起動していることを示していた。現在、ドロイドを動かすような作戦ってあったかなと思い認識番号(シリアルナンバー)を照会すると、ある事に気が付いた。

 

「これって………クシーフに渡したドロイドじゃねーか?しかもコイツは………」

 

起動しているドロイドが、以前クシーフに提供したドロイドである事に気付いたティラノ。おまけに、その内の1体の番号を見て目を丸くさせた。

 

「『アレ』が単独で行動するにも、こっちの命令が必要だし………ブレイバーが消えた今の内に色々進めたかったが………仕方ない、調べさせるか………」

 

ティラノはため息交じりに呟くと、通信機を手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………俺、ここの勤務になって5年になるけど、「食事」だけの目的でこの領地にやってくる人には初めて会ったよ………」

「あはは………」

 

マリワヒ領の検問所、受付で手続きをしていたデュランは、若手らしい検問官に呆れられていた。後ろの草介とハバキリも少し気恥ずかしそうにしていたが、一行は無事にマリワヒ領へと入ることができた。周囲の人物から好奇の目で見られながらも、一同を乗せたデュランカーは走り始めた。

 

 

 

 

 

デュランカーはしばらく走った後に、小高い丘の上で停車をした。草介たちが車から降りると、草原や畑が広がり、緩やかな丘の斜面にぽつぽつと小さな民家が建ち、遠くの畑や道で農民がデュランカーに驚いているのどかな風景を眺めていた。

 

「平和そうだなぁ………」

「魔王軍の侵略も、以前ほど激しくないそうだからな。農地くらいしかないここは、余計なんだろう。」

「先の検問官の反応からしても、単なる農地程度にしか思われているのでござろう………」

 

草介が感嘆の声を呟くと、デュランが答える。ハバキリやシャスティも景色を眺めていたが、ふと、右手側に見えた雑木林から鳥の群れが飛び出すのが見えた。ハバキリは何気なく見ていたが、雑木林の入り口らしき道に猛スピードで馬車が飛び出してきたのが見え、驚愕で目を見開いた。

 

「何だ?」

 

草介が驚きの声を上げると、馬車を追うように5頭の馬が飛び出してきた。馬を駆るのは覆面で口元を隠し、手には剣や鎌を持った男たち(内4名がモヒカン)であった!

 

「盗賊か!?」

「襲われている!」

 

緊急事態と判断したデュランとハバキリは瞬時に表情を引き締める。草介とシャスティは一瞬戸惑うも、すぐさまデュランカーに乗車、デュランはアクセルを踏んで車を急発進させた。

何とか追いついた先では、馬車の窓から魔導師らしき者の手が見えて風の弾丸を放っているようだが、盗賊は馬を巧みに操って回避をして、馬車との距離を詰めていった。

 

「ハバキリ、シャスティと一緒に車の屋根から狙えるか!?」

「す、少し難しいかもしんねぇが………」

「『飛突』の射程からギリギリでござるな………それに、拙者の技の威力では馬車にも飛び火してしまう………馬車に飛び乗れれば、何とか………」

「あまり近づいてしまえば、馬車と追突してしまうし………」

 

2人が少し渋り、デュランも運転をしながら考えていると、草介がデュランに声をかけた。

 

「デュラン、クラクションだ!車のクラクションで馬を驚かせるんだ!」

「!そうか!」

 

草介の提案を聞いたデュランは、その手があったかと納得をした。馬車の馬も驚いてしまうかもと一瞬思ったが、デュランはそれが最適だと判断をしてハンドル中央のクラクションボタンを勢いよく押し込んだ!

 

プァアーーーンッ

「ヒィィィン!!」

「うわあ!?」「何だ!?」

 

甲高いクラクションの音が鳴り響くと、盗賊の馬たちは驚いたのか前脚を上げて大きく嘶いた!馬車も数m先で停車していたが、盗賊たちは馬から振り落とされないようにするので精一杯であった。

 

「ぐげっ!?」「うぎゃ!?」「ごぎょ!?」

「ぶげっ!?」「げぎょ!?」

 

しかし、結局全員耐え切れずに落馬してしまい、カエルが潰れたような声のアンサンブルが響き渡った。デュランカーが停車をしている目の前で、盗賊たちは痛みに悶えていたが馬が暴れていたために踏みつけられぬよう、ふらふらとその場を離れた。

 

「上手くいったな!」

「な、何だお前ら!?」

 

盗賊の1人が草介たちに気が付いて、手にした短剣の切っ先を向けてくる。それに倣って他のメンバーも体の痛みに耐えながらも獲物を向けるが、次の瞬間、ほぼ同時に全員の腕に衝撃が走り、武器を手放してしまった!

 

「ぅおお!?」

「肆ノ太刀………夜通!」

 

盗賊の悲鳴を上げる中、いつの間にか彼らの背後にいたハバキリが静かに告げる。盗賊たちは全身と腕の痛み以上に、背後の『手練れの剣士』の実力に愕然としていると、草介とデュランは手にした剣を突き付けていた。

 

「ッ………ま、参った………降参だ………!」

 

リーダー格らしき男(モヒカンではない)が諦めて両手を上げると、他の者も両手を上げた。デュランは盗賊に剣を突き付けたまま、未だに暴れる馬たちに目を向けた。

 

「捕らえる前に、馬を宥めるのを手伝ってくれるかな?」

「あんたらのせいだけどな!」

「それはすまない。」

 

リーダー格のツッコミにデュランは短く返すが、その時、デュランの鼻孔をさわやかな花の香りがくすぐった。

 

「ん?」

「花の香り?」

 

草介たちもそれに気づいて小さく呟く。何だろうと思っていると、いつの間にか馬たちは暴れるのをやめて、大人しくなっていた。

 

「馬が………?」

「よしよし、ビックリしちゃったよね?」

 

馬が突然大人しくなったのを目の当たりにして呆気に取られていると、馬車の陰から黒い修道服を着た1人の女性が姿を現した。いつの間にか馬車から降りていたらしく、片手には青い花弁の花を一輪持っており、近くにいた馬の首を撫でていた。

 

「あれ?」

「え?」

 

その女性を見た草介が、思わず声を漏らした。女性も草介たちに気が付いたのか、ゆるくウェーブのかかった薄い茶髪のボブカットに少し垂れ気味の青い目の顔をこちらに向けて、少し驚いた表情をしていた。

 

「リサーナさん!?」

「ソウスケさんにデュランさん………シャスくんも!?」

 

草介たちとリサーナは顔を合わせて驚きの声を上げた。すると、馬車のドアが開いて、小さな影が3つ降りてきた。

 

「あれ、兄ちゃんたち!?」

「兄ちゃんたちが助けてくれたのか?」

「久しぶりー!」

「おぬしらもか!?」

 

降りてきたのは、短い金髪の男の子とぼさぼさの茶髪の男の子と銀髪ロングの女の子、以前よりも身なりと服装は綺麗になってはいたが、クリファート公国のゾミクノーチの修道院にいたトッタ、ギッタ、スッタの3人であった。

 

「今のは、君がやったのか?」

「はい。リラックス効果のある花を媒介に、香りを嗅いだ者の気持ちを落ち着かせる魔法です。」

 

デュランの問いにリサーナが答える。一方で、盗賊たちは呆気に取られた顔をしていた。

 

「シスターが乗っていたのか………」

「子供までいたし………」

「知っていたら、襲わなかったのに………」

 

盗賊たちの呟きを聞いたハバキリは、「こやつらにも、一定の良識があるのか………」と呆れていた。

 

「それはそうと、助けていただいてありがとうございました。」

「いえ、たまたま通りかかっただけなので。」

 

リサーナがデュランに礼を言うと、ふと、リサーナは手にしていた花をしまうと、馬車から先端には鋲が付いた握り拳大の楕円形の金属球が付いた、金属製と思わしき長い杖(スタッフ)をズルリと取り出した。

 

「まあ、みなさんが来なくても、馬車に乗り込まれていたら私がボコボコにしていましたけれど………色々ストレスも溜まっていたし………」

「意外にも武闘派だった!!」

「モーニングスタッフ(※1)………まだ持ってただか………」

※1 鉄球付き魔法杖。呪文詠唱中に接近されても打撃武器として使用可能。

 

ニッコリと笑いながら、左手の平に杖をパシパシと打ち鳴らすリサーナに草介が驚きの声を上げる。どうやら在学中から持っていたらしくシャスティは呆れていたが、盗賊たちはその様子に「ひえっ」と悲鳴を上げて小動物の如く身を震わせていた。

 

「あ、デュランさんたちのおかげで怪我はなかったので、直ぐにこの場を去ってくれれば見逃してあげますよ?」

「は、はい!すみませんでした!帰るぞ野郎ども!」

「「「「へ、へい!!」」」」

 

笑みを浮かべながらも、どこか圧を感じるリサーナの言葉に盗賊たちは何度もコクコクと頷いた。盗賊たちは一斉に90度のお辞儀をして「ごめんなさい!」と謝ったかと思うと、そそくさと馬に飛び乗って脱兎の如くその場を後にした。盗賊たちの後ろ姿が見えなくなると、リサーナはため息をついて杖を下した。

 

「さて、と………」

 

リサーナが振り返ると、草介たちは一瞬肩を振るわせる。当の彼女はその様子に慌てて優しい笑顔になると、改めてお礼を口にした。

 

「えっと………その、改めてありがとうございました。」

「あ、いえ、どういたしまして………」

「シスターって、怒ると怖いんだよな………」

「ねー………」

「笑顔が逆にねー………」

 

デュランが前に出て返事をする。その後ろでは、トッタ、ギッタ、スッタの3人が小声で話していた。草介はそれを耳にして苦笑いをしていたが、そこでリサーナが再び口を開いた。

 

「それにしても、こんなところで奇遇ですね?」

「ああ、私たちは、この土地にあるイアムという食材が、ソウスケとハバキリの故郷の食べ物と似ていると聞いてね。それで実際に食べようって話になったんだ。」

「そうでしたか………」

「珍しいなー、そんな事のためにわざわざ………」

 

デュランの返答を聞いて、リサーナだけではなくトッタたち3人も意外そうな顔をしていた。草介はそれを見て、「文明レベル的に、グルメ旅行って珍しいのかな?」と思っていた。

 

「そういうリサーナどのたちは、何故ここに?」

「実は、修道院に数人増員されて人手が足りるようになったので、院長が私の休養を兼ねてサンルスターにある『ナウタイ』という別荘地で親戚が営んでいる宿に招待してくださいまして。」

「では、サンルスターに向かう途中でござるか………」

 

ハバキリが聞くと、リサーナはええ、と返した。そこに、トッタが割って入るように続けた。

 

「本当は船で行く予定だったんだけど、ギッタの船酔いが酷くてさー、ベシューから馬車を乗り継いで行くことになったんだよ。」

「ギッタ君、バケツから手が離せてなかったよねー」

「あはは………」

 

トッタとスッタに言われて、照れくさそうに苦笑いするギッタ。草介たちは納得と同時に少し不憫に思っていると、リサーナはため息を一つついた。

 

「はぁ、こんなことなら、少しお金がかかっても冒険者の護衛を雇えばよかったかなぁ………」

「もしよろしければ、この先の村まで同行しましょうか?」

「良いのですか?」

「ええ。私たちも、その村で一泊する予定なので。」

 

デュランの提案にリサーナは驚いたが、すぐに笑顔で返した。草介たちも特に異論はないようで、頷いていた。

 

「では、お言葉に甘えて………」

「ありがとうな、兄ちゃんたち!」

「ソウスケさんたちの故郷の味ってのも、気になるな………」

「私も食べたいー!」

 

リサーナとトッタ達が承諾をして頷きあう。馬車の御者とも話し合って、護衛のためにハバキリが馬車に乗り、デュランたちは馬車の後ろから着いていくことになった。

 

「馬車の速度に合わせるとなると、村への到着は夕方前になりそうだな。」

「まあ、食べたいとは言え急いではないからさ。後になった分、味も格別になるだろうし。」

 

馬車の後ろを走るデュランカー内で、デュランと草介は話し合っていた。後部座席に座るシャスティは目の前の馬車が気になるのかチラチラと前の方を見ており、一方で馬車のリサーナも、後ろのデュランカーの様子が気になっているようであった。

 

 

 

 

 

「―――お嬢様、例の魔法使いが、この先の村に向かって行きました。」

 

草介やデュランは気づいていなかったが、遠くの畑で作業をしていた農夫の1人が、農具に隠された通信用水晶に向けて話しかけていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリワヒ領のダオコオという村、そこの最奥に位置する屋敷では、長い金髪をツインテールにした1人の少女が、30cmほどの杖を手にして椅子に座っていた。

一目で高価と分かる濃い青を基調としたドレスを見に纏い、サファイアを思わせる青い瞳のツリ目の奥には、「恨み」の火が燃えていた。

 

「………なるほど、アイツが、シャスティがこちらに来ますのね………」

『ウム。』

「冒険者登録しているのは聞いていたから、適当な依頼でおびき寄せようと思っていましたが、手間が省けましたわね………」

 

少女の後ろに控えていた大柄な男が声を低くして答える。男の声は機械で作られた合成音声であったが、少女はそれを気にせずに整った顔立ちが台無しなほど、忌々し気な表情を浮かべた。

 

「クシーフのおじ様に無理を言って、アナタ達をもらい受けた甲斐がありましたわ。アイツのせいでわたくしが………貴族の娘であるわたくしが、こんな田舎の村に追いやられる羽目になりましたのよ………この恨み、晴らさずにおくものですか………!」

 

少女は下唇をかみながら、恨みの籠った声で吐き捨てるように言う。全身を真っ赤な鎧で包んだ男はそれに対して何も言わず、目を赤く光らせる。

2人の目の前では、ゾロゾロイドとアシガロイドが十数体、静かに並び立っていた。

 

 

 

 

 

【つづく】




サブタイトルそういう意味かよシリーズ(笑)異世界転移して生活環境変化したら、こういう事もあるよねって話。イアムは米(MAI)の逆さ読み。

デュランカーでシンナセンを走る草介たち。実は当初、「ルパン三世カリオストロの城」の冒頭みたいにヨーロッパの田舎っぽい異世界の道をデュランカーで旅する展開を考えていたんですが、人数が増えたらデュランカーだと乗り切れないと思いバトルトレインを登場させた経緯があったので、今回書いてみました。

シスター・リサーナとトッタ、ギッタ、スッタが再登場。実は、シャスティ問題のキーパーソンだったりします。
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