異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第36話 赤き武士(もののふ)、出陣す

異世界勇者ロボ 第36話

赤き武士(もののふ)、出陣す

 

 

 

 

 

時間は数時間ほど遡り、草介たちがマリワヒ領に向かっている頃、ニールはレヴァンティと共に、モルデュア城の会議室に向かっていた。

 

「失礼します。」

「おお、来たか。」

 

一同が会議室に入ると、クリセイ王とフローレント、リジルの他に、もう一人の人物が既に着席していた。

 

「む、君は………」

「ご無沙汰しております、ニールさん。」

 

その人物は、栗色の短いポニーテールの女兵士、ベロースリット領で出会ったラナシィであった。

 

「彼女がいるということは………話とは、クシーフの件だろうか?」

「話が早くて助かるよ。」

 

2人の姿を見たニールが察したらしく推測を口に出すと、王は肯定して頷いた。ラナシィは書類を一束手にして立ち上がった。

 

「実は、クシーフ事件の事後処理をしていたのですが、その中で、屋敷から押収した書類に、機怪魔獣の納品書があったのですが………」

「わざわざ納品書を渡していたとは、マメというか、何というか………」

 

ラナシィが説明をしながら書類をニールに渡す。ニールは妙に律儀な面のあるワルンダイツに呆れながらも受け取った。

 

「それで、そのリストと破壊された機怪魔獣を照らし合わせたのですが、ゾロゾロイドとアシガロイドの数が合わなくて………それに、リストに名前があるのに、戦闘に参加も破壊もされていない機怪魔獣もいたんです。」

「あの日以前に、破壊や機能を停止したのでは?」

「そう思って、ティッケインさんやセツィアとも協力してもらって領地内を聞きこみしたのですが、あの日以外で戦闘や事故はなかったので。」

 

リストを見ながら話を聞くニールだが、ラナシィも困っている様子で答える。後ろで話を聞いていたレヴァンティも顎に手を当てて考えていると、ラナシィはメモ帳を取り出してペラペラとめくり始めた。

 

「しかし、調査の中で少し気になる情報がありまして………」

「気になる情報?」

 

レヴァンティがラナシィに問おうとしたが、その時、リストを見ていたニールがある項目を見て目を見開いた。

 

「なっ………コイツは………!?」

「どうした?」

「『ザムラロイドF1』だと………!?ワルンダイツのやつら、よりにもよって何という物を………!!」

「ザムラロイド?どんなものじゃ?」

 

ニールの顔に驚きと共に困惑と焦燥が現れ冷や汗をかくのを見て、レヴァンティが問いかける。名前からしてゾロゾロイドやアシガロイドと同じ戦闘員タイプである事は予測できると思っていると、ニールはため息を一つついて説明をする。

 

「………ザムラロイドF1は、下級のゾロゾロイドG1、中級のアシガロイドG2の更に上、上級戦闘員タイプの機怪魔獣………言うなれば、部隊長クラスだ。」

「上級戦闘員だと!?」

「戦闘力はゾロゾロイドの比ではなく、1つの部隊を指揮し統率する高度な人工頭脳を搭載し、アシガロイド以上に円滑な会話による意思疎通も可能だ………あの日の戦闘に投入されていたら、死傷者が出ていた可能性もある………」

「そ、そんな危険な機怪魔獣が………!?」

 

ニールの説明を聞いて、ラナシィやフローは目を丸くする。ニールは頷いて続けた。

 

「以前、任務で1度だけ対峙したことがあるが………銃器やマシンメイルで相手取ったというのに手も足も出ず、更にヤツの指揮する戦闘員や機怪魔獣のせいで、28名の重傷者と15機のマシンメイルの大破という犠牲を出して、ようやく機能停止に追い込んだ………」

「そ、そんな………」

「ただ、性能が高い分値段も下の2機と比べ物にならないほど高額(ゾロゾロイドのおよそ30倍、アシガロイドの10倍)故に、戦場や犯罪に投入された事例は少ないが………それでも、出した被害は通常の大型機怪魔獣と大差はない………」

「自身の戦闘力に加えて、部隊の指揮もできる程の性能なら、それだけ高価なのも納得じゃな………」

 

ニールの説明に王やフローは戦慄して息をのむが、追加された情報に呆れと納得の顔となった。しかし、すぐさまニールは表情を戻して続けた。

 

「いや、戦闘力や指揮能力以上に厄介なのは、その思考回路だ。過去にザムラロイドを購入したとあるテロ組織の幹部に対して、元からそうプログラムされていたのか、そいつ自身の考えなのかは不明だが、必要以上の機怪魔獣を大量に購入するよう、言葉巧みに誘導した事がある。他にも、組織を内部分裂させて戦力を分断、その隙にワルンダイツ本隊がその星を侵略した事例も存在する………」

「とんでもない機怪魔獣だな!?」

「強くて指揮も出来て、おまけに狡賢いとか………」

「どちらにしても、放っておくわけにはいかなくなったな………下手をしたら、破壊行為とは別の被害が出かねないぞ………」

 

ニールから語られるザムラロイドの悪辣さと厄介さに王は危機感を覚える。そこで、フローが思い出したようにラナシィに話しかけた。

 

「ラナシィさん、さっき気になる情報があるって言っていたよね?それって、ザムラロイドに関係しているの?」

「あ、はい。」

 

フローの指摘を受けたラナシィも、思い出したようにメモを手にして読み始めた。

 

「ええと………皆さんが来る5日ほど前、クシーフの親族である貴族の娘が、馬車で屋敷を訪ねるのを見た方がいるそうです。その人によれば、屋敷に入って行った時はその娘と付き人1人だったのに、帰る時は十数人の人を引き連れて行ったそうでして………」

「そんな大人数が?」

「十数人………不足している戦闘員と数が近いな………」

「もしかしたら、その者が連れて行った可能性もあるのう………」

 

ラナシィからの情報を聞いたレヴァンティが顎に手を置いて考える。ニールはラナシィに聞いた。

 

「その親戚について、何かわかっているか?」

「はい。目撃者の証言が正しければ、「クウジャー伯爵」のお孫さんらしく………」

「クウジャー?」

 

ラナシィの答えを聞いたニールが聞き返す。しかし、その名を聞いたレヴァンティが、驚きの声を上げた。

 

「クウジャー?今、クウジャーと言ったか!?」

「え、ええ………」

「知っているのかい、レヴァンティさん?」

 

普段と異なり、慌てた様子で問いただすレヴァンティの様子に戸惑いながらも聞くフロー。すると、王が口を開いた。

 

「クウジャー伯爵の孫娘といえば、両親に甘やかされてワガママになり、せっかくカシンバルトに入学できたのに、2年ほど前に問題起こして退学になったと聞いたが………?」

「退学?カシンバルトを?」

 

王の話を聞いたニールは、昨晩草介たちから聞いたシャスティの話を思い出す。もしやと思い、レヴァンティの方に目を向けてみれば、当の彼女は冷や汗を浮かべながらも小さく頷いた。

 

「デュラン達から聞いているようじゃな………おぬしらの予測通り、伯爵の孫娘、レイク・ヨア・クウジャーは、シャスティのいじめの主犯格じゃ………」

「なんだって!?」

「問題って、いじめだったのか………」

 

レヴァンティから告げられた事実に、一同は唖然とする。だが、そこでニールはある事に気が付く。

 

「そんな奴が機怪魔獣を?まさか………」

「嫌な予感がするね………父上、今その娘は?」

「さあのう?噂では、いじめの件で家の名に泥を塗ったと流石の父親も激怒して、反省させるためにどこか田舎に飛ばしたとかなんとか………」

 

フローからレイクの事を聞かれた王であったが、噂程度の情報しか知らない様子であった。同じくラナシィも知らないらしく、フローとニールは肩を落とす。

 

「どうする?クシーフを問いただすか?」

「………いや、クシーフのいたベロースリット領に馬車で来たということは、馬車で来ることが可能な距離なのではないか?」

「なるほど。だとしたら………」

 

フローの推測を聞いたラナシィは頷くと、会議室の壁に飾られたロコロ王国の大きな地図の下に向かう。地図上のベロースリット領を人差し指で刺すと、指を上にスライドさせた。

 

「ベロースリット領に馬車で向かうとしたら、一番近く、かつ、平坦な道を使うだろうから………北東のマリワヒ領が、一番近いですね………」

「マリワヒだと?今、ソウスケたちが、シャスティと一緒に向かっているところだぞ!?」

「ええ!?」

 

ラナシィの話を聞いたニールが思わず大声を上げた。それを聞いたフローが焦った様子で口走る。

 

「それって、もしかしたらシャスティくんがその令嬢と鉢合わせになるかもしれない、という事か!?」

「ああ、それも、機怪魔獣の軍団を従えているとなれば………」

「デュランとハバキリがいるとはいえ、相手はザムラロイド………下手を撃てば………」

「みんなが危ない………!!」

 

フローが叫ぶと、ニールたちは顔を見合わせて頷きあった。

 

「父上、マリワヒ領に向かいます!」

「た、頼む!」

 

フローが王に短く言うと直ぐに彼は承諾、それを聞くや否やニールたちは会議室を飛び出していった。

 

「ニールさん、デュラン達に連絡を入れたほうが良いのでは?」

 

廊下を走る中、フローは前を走るニールに話しかけた。レヴァンティとラナシィも同じことを考えていたのか頷いていると、ニールは少し気まずそうに口を開いた。

 

「………いや、私もそれは考えたが………本当にその令嬢がシャスティを狙っているのかはまだ確定していない。今彼らは、ソウスケとハバキリの故郷の味を求めて、旅行気分でマリワヒに向かっている………そんな時に、不確定な情報を伝えるのは気が引ける………」

「「「た、確かに………」」」

 

ニールなりの気遣いを知って、妙に納得をする3人であった。ニールは走りながらも、とりあえずメッセージだけでも送っておこうと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、モルデュア城でそんな緊迫した状況になっていたとはつゆ知らず、草介たちは夕方の少し前にダオコオの村に到着していた。馬車の停車場に馬車とデュランカーを預けると、村の酒場に向かった。停車時にデュランカーを物珍しそうに怪訝な顔をされたが、最近よく見る光景であった。

 

「まあ~、あんな馬も魔法も使わない乗り物で来たって聞いて驚いたけれど………わざわざイアムを食べるために来たのかい?珍しいねぇ………」

 

草介たちが酒場のテーブル席に着いていると、軽い挨拶をしていた女将さんである妙齢の女性・リーシャが物珍しそうにデュランや草介に言う。草介やハバキリが少し照れている中、同じテーブルではシャスティやトッタ達がわくわくした様子で待っており、リサーナはそれを微笑ましそうにしていた。

 

「この村は農地くらいしかないからね。冒険者や商人が王都からベシューに行く時や、逆に王都に行くのに経由地に泊まる人が来る程度の宿場町未満みたいな所だから、あんたたちみたいにご飯食べにくる人なんて、初めてだよ。」

「彼らの故郷の味に似ているらしくてね。特にここは、料理がおいしいと聞きましてね」

「あらぁ、お世辞でもうれしいこと言ってくれるわねえ!」

 

デュランの答えを聞いたリーシャが、嬉しそうに笑っていた。でも、と彼女は少し申し訳なさそうにしていた。

 

「イアムはパンの代わり程度にしか使われていないからねえ………そんなに期待出来ないと思うよ?」

「それでも構わないよ。」

「イアムに合うおかずなら、鶏肉の香草焼きと、野菜炒めがおすすめだね、どうする?」

「ええ、ではそれを………?」

 

お願いします、とデュランが言いかけたが、ふと、酒場の席に着くマント姿の集団に気が付いた。全員、揃いの茶色いマントのその集団はテーブルに配された飲み物に手を付けておらず、フードを被っていて表情は伺いし知れなかったが、こちらに視線を向けているのを察して怪訝な表情をとってしまった。

 

「………ああ、あの人たちかい?最近この村をうろついててねぇ………何ヶ月か前に、どっかの貴族のお嬢様が村の奥のお屋敷に来たんだけどね?その子がちょっと前に連れて来てから、みんな不気味がっててねぇ………」

「そうですか………」

 

デュランの視線に気が付いたのか、カウンターの向こうにいる料理人らしき男性に注文を告げたリーシャが、やれやれとため息交じりに説明をした。デュランや草介は一団の異様な雰囲気に少し気にはなったが、今は何かする素振りもないので様子を見ておくことにした。(盗賊も出るし、意外と物騒だな………)と草介が考えていると、リーシャが話しかけてきた。

 

「ところでさ、あんたの故郷にはどんなイアム料理があるんだい?」

「え?」

「さっき言ったように、イアムはパンと違ってあまり有名じゃないからね。自分の生まれ育った土地の作物なら広まってほしいし、おいしく食べてもらいたいじゃない?それで、参考になればと思ってさ。」

「あ、ああ………」

 

リーシャがめもとペンを手に興味津々とばかりに聞いてくるのを、草介とハバキリは若干引いていた。2人は顔を引きつらせながらも、リーシャの質問に答える事にした。

 

「えーと、米………イアムを使った料理だと、やはり握り飯が一番でござるかな?洗った手を、塩を少し入れた水で濡らして、炊いたイアムを手に乗せて三角に握っただけではあるが、イアム本来の味を味わえる一品にござる。」

「そうだな。中に焼き魚とか、細かい味付け肉なんかの具を入れたのもおいしいけど、シンプルな塩むすびも意外と味わい深いんだよな~………サンドイッチみたいに、片手で食べられるから、弁当にもいいし。」

「それと、冷や飯に熱い茶をかけたお茶漬けもよいでござるな。本来なら緑茶や番茶が良いが、出汁でも良いな。サッと食べられるから、時間のない時に良い。」

「後はやっぱり丼だなぁ………お椀に持ったご飯に、味付けの肉とかの具を乗せて、一緒に食べるんだよ。シチューとかもありだなぁ………」

「へぇー、色々あるのねぇ………」

 

ハバキリと草介からイアム、米を使った料理の事を聞いて、メモをとりながら興味深そうに頷くリーシャ。デュランやシャスティ、それにリサーナたちも横で聞いている内に段々と食べたくなってきたのか、目を輝かせていた。

 

「なるほどねぇ~………今日は出せないけれど、うちで出してもいいかもしれないねぇ………」

「そうしたら、また食べに来ますよ!」

「あらぁ!嬉しいこと言ってくれるじゃ言ってくれるじゃないのぉ!」

「へい!鶏肉の香草焼きと野菜炒め、お待たせー!」

「はいよー!」

 

草介の一言にリーシャは嬉しそうに笑った。ちょうどその時、カウンターの向こうから声がかけられる。リーシャは盆に乗ったそれを持つと、草介たちに料理とイアムの装われた皿を配膳しはじめた。

食欲をそそる刺激の強い香りを放つ鶏肉の香草焼きも、トラックとチョウ(それぞれ人参とキャベツ似の野菜)、それにキノコの野菜炒めももちろんおいしそううではあるが、草介たちの視線は、もう1枚の皿に注がれていた。

 

「これがイアム………これは間違いなく………!」

「うむ………この見た目と香り………(まご)う事無き白米だ………!」

 

皿に盛られていたのは、つややかな白い粒、独特の匂い………日本の米に比べると少し長い形状ながらも、この世界のイアムとは、白米そのものであった。

 

「米だ………ごはんだ………」

「ひと月ぶりの白米………ありがたい………!!」

「そ、そんなにかい………?」

 

感極まった草介とハバキリが、手を合わせてありがたそうに拝み始める。周囲の者は彼らの行動に困惑していたが、本人たちはついにこの時が来たと待ち望んでいたため、喜びと感激のあまり目に涙を浮かべていた。

横のトッタたちは大げさな、と内心思っていたが、実情を知っているデュランとシャスティはその気持ちが分かっていたために何も言わなかった。

 

「さあ、そろそろ食べましょうか………」

「あ、そうですね………」

 

リサーナが苦笑気味に促すと、草介とハバキリはハッとしたように表情を戻す。デュランが苦笑しながらも微笑ましく思っていると、例のマント集団が立ち上がったのが視界の端に映った。少し気になったが、その時、集団が右手をこちらに向かたかと思うと、手首から肘にかけて左右にスライドをすると、手が鉄棒の逆上がりよろしくグルリと反転し、マシンガンの銃口が顔を見せた!

 

「ッ!?」

「「いただきます!!」」

 

草介とハバキリが両手を合わせて挨拶をしたのが耳に入るが、それとほぼ同時にマント集団の腕のマシンガンが火を噴いた!

 

「危ない!!」

「「え!?」」

 

2人が食べようとしたその瞬間、デュランは叫ぶと同時に近くにあった長椅子を蹴り上げて銃弾を防ぐ!油断していた草介たちがハッとしたように身構えると、リサーナはトッタ達3人を守るように覆いかぶさる!

 

「シャ、“シャイン・シールド”!!」

 

シャスティは咄嗟に杖を構えて呪文を唱えると、輝く魔力のシールドが生成されて銃弾からデュランやリーシャを守る!

 

「て、敵襲か!?」

(詠唱省略で、中級の防御魔法を?やっぱりシャス君は才能がずば抜けてるなぁ………)

 

酒場が騒然とする中、シールドで銃弾が防御されたのを見た一団が銃撃を止めた隙に、草介とハバキリは獲物を手に立ち上がって状況を判断しようとする。一方でリサーナは、シャスティの魔法の才能を改めて評価していた。

 

「あいつら、まさか………!?」

 

草介が目の前のマント集団を睨みつけながら武器を構えた。マント集団は右腕をマシンガンから通常の腕に戻しマントを脱ぎ棄てると、その下からくすんだ銀色の仮面のような顔と黒いボディ、戦闘員型機怪魔獣・ゾロゾロイドであった。

 

「機怪魔獣!?」

「ゾロゾロイド!怪しいとは思っていたが………!」

 

ゾロゾロイドの姿を見たリサーナが怯えたように声を上げるが、それでも3人を守ろうと抱きしめる。草介が剣を握る手に力を入れ、今にもゾロゾロイドがかぎ爪で斬りかかってこようとした次の瞬間―――

 

カーンッ

「「「!?」」」

『ウィーン………!?』

 

甲高い金属音と共に、先頭に立っていたゾロゾロイドが右によろける!何事かと思ってみてみれば、少しへこみのできたフライパンを振り下ろした姿勢のリーシャが、般若を思わせる怒りの形相でゾロゾロイドを睨みつけていた!

 

「お客さんが、まだ食べてる途中でしょうが!!」

「どちらの国から!?」

『『『ピポポポ………』』』

 

どこかで聞いたことのある(でも一部の地球人にしか伝わらない)リーシャの怒号に、思わず草介がツッコミを入れてしまう。しかし、酒場の女将のその気迫に、感情を持たない簡易AIしか積んでいないはずのゾロゾロイドたちはタジタジになってしまった。

 

「喧嘩するんなら、外でやりな!!」

「「「「は、はーい………」」」」

 

リーシャに言われるがままに、草介たちはゾロゾロイド共々、酒場の出入り口に向かいそそくさと外へ出る。多分、喧嘩程度じゃすまないと思うけど。

 

「あっ!?」

 

しかし、外に出た草介は、酒場の周囲に先ほどと同様のマント集団が十数人、取り囲むように集まっているのを見て声を上げてしまう。先に酒場から出てきたゾロゾロイドが振り返ると同時に一斉にマントを脱ぎ棄ててゾロゾロイドとアシガロイドの姿を現した!

 

「全員機怪魔獣かよ!?」

「何で貴族のお嬢様が戦闘員抱え込んでるんだ?」

 

ゾロゾロイドの出現に村人たちが騒然とする中、デュランは突然の状況に戸惑っていた。機怪魔獣を抱える貴族と聞いた草介の脳裏には、あのナマズ顔の悪徳領主・クシーフの顔が浮かび上がったが、それを口に出そうとするよりも先に先頭にいたゾロゾロイド数体が一糸乱れぬ動きで両腕をマシンガンに変形させると、こちらに狙いを定めた!

 

「考えている暇はないか!!」

「“ファイア・バレット”!!」

 

草介が呟き、ゾロゾロイドが発砲をしようとしたその時、シャスティが杖を手に呪文を唱えると、周囲に火球が複数生成されて発射、ゾロゾロイドの胴体に直撃して小さく爆発を起こし、仰向けに倒れこんだ!

 

「わるい、シャスティ!」

「え、ええだよ………」

「次が来る!下がれ!」

 

草介とシャスティが短くやり取りをすると、かぎ爪を構えたゾロゾロイドや剣・アシガーベルを手にしたアシガロイドが襲い掛かって来る!ハバキリは一歩前に出ると、腰に差した刀を一瞬のうちに抜刀!風をも断ち斬る居合切りで、迫りくるドロイド集団の腰から上と下が見事に両断された!

 

「弐ノ太刀―――風断!!」

 

ハバキリが言い放つと、一泊置いてドロイドたちは爆発に消える!

 

「やるなー、あの姉ちゃん………!」

「あの2人、あんなに強かったのか………!」

「すごーい………!」

 

草介たちの背後、酒場の入り口から様子を見ていたトッタたちは、ゾミクノーチでは戦闘に巻き込まれないようにされていたため、初めて目の当たりにしたハバキリたちの戦いぶり感嘆の声を上げる。リサーナも不安そうにしていたが、少し安堵した表情を浮かべていた。

しかし、休む暇もなくドロイドたちの猛攻は止まらない。草介とデュランは剣を抜いてアシガロイドのアシガーベルを受け止めはじき返すと、疑問を口に出した。

 

「こ、こいつらの動きは………!?」

「確かに………統率されたような動き………どこかに司令塔がいるの、か!!」

 

言い終わるかどうかの間に、アシガロイドの剣を弾いて斬り捨てるデュラン。その時、デュランの背後から別のアシガロイドが迫ってきていた。

 

「っ!“サンダー・アロー”!!」

 

デュランの背後に迫るアシガロイドに気づいたシャスティが咄嗟に呪文を唱えると、目の前に雷の矢が出現して、高速で射出される!次の瞬間には、アシガロイドの胸に直撃し、火花を散らしながら後ろに倒れこみ、そこでデュランも背後に迫ってきたことに気が付いた。

 

「す、すまないシャスティ………」

「気を付けるべ………!」

 

デュランがシャスティに短くやり取りをするが、その時、自分に向けて射抜くかのように鋭い視線を感じ取った。向きなおって見てみれば、ゾロゾロイドたちの一番後ろ、異様な雰囲気を纏う大柄な影が見えた。

 

「ひぅッ………!?」

「ッ!?なんだ、アイツは………!?」

 

シャスティが視線に怯え小さく悲鳴を上げると、草介とデュランもそのドロイドに気づいた。ゾロゾロイドたちが、さながら地球の旧約聖書に記されたモーゼの奇跡の如く左右に分かれ、1体のドロイドのために道を開ける。

 

『意外とやるデアルな、お主ラ………』

 

現れたのは、芥子色のボディの上から赤い鎧を纏った武者のような姿の大柄なドロイドであり、額に日輪を思わせる丸鋸型の飾り、棘のようなギザギザの吹き替えしが付いた烏帽子を思わせる長い兜に、牙の生えた面頬を付けたような顔から覗く目のようなカメラアイは、睨むように赤く光っていた。

 

「ッ!?まさか………ザムラロイドF1か!?」

「まさか、あれが!?」

「知っているのか、デュラン!?」

「上級戦闘員タイプの機怪魔獣だ!迂闊に戦っては危険だ!」

 

デュランが草介にザムラロイドの危険性を告げると、草介たちは戦慄し青ざめた。ザムラロイドは赤いカメラアイをギラリと光らせ立ち止まった。

 

『ホウ、ワガハイをご存じデアルか………ワガハイはザムラロイドAKY044、この地に配属されたザムラロイドデアル!』

「ッ………!」

 

尊大な口ぶりで名乗るザムラロイド。これまでの機怪魔獣とは異なる雰囲気と流暢に喋る目の前のドロイドに、草介たちは恐怖に足がすくんでしまう。ザムラロイドは背中に背負った野太刀・ザムラソードを引き抜くと、切っ先をシャスティに向けてきた。

 

「ひう!?」

『ワガハイが用があるのは、そこの小僧デアル。ワガハイと一緒に来てもらうデアル。』

「何だと………?」

 

草介がシャスティを庇うように彼の前に出ると、ザムラロイドが言い放つ。その言葉に草介たちは訝しげに眉をひそめた。

 

「シャスティに用があるって、何で………?」

『お前にソレを知る必要はないデアル。トットと引き渡すデアル。』

「そうはいかぬ!」

「ま、待て!」

 

ザムラロイドが草介の問いを突っぱねると、ハバキリが飛び出して刀を振るった。ザムラロイドはそれに気づくと、まるで落ちてきた木の葉でも払いのけるかのようにザムラソードで簡単に受け止めてしまう。

 

「ハバキリッ!!」

「ッ、今のは………!?」

 

スライディング気味に着地をしたハバキリは2mほど距離を取ると、たった今受けた剣の衝撃がビリビリと残る手から、目の前にいるザムラロイドの実力を感じ取った。たったの一振りで、目の前の機怪魔獣がゾロゾロイドやアシガロイドとは比べ物にならない威力、機械仕掛けだというのに危機感を与えた先ほどの気迫とその出で立ちが、決して見かけ倒しではないことがひしひしと感じ取れた。

 

『軽い剣デアルな。今のデ程度ガ知れるデアル。』

「こやつ………なれば!」

「ハバキリ、挑発に乗るな!」

 

ザムラロイドの一言にハバキリはムッとしたような顔をした。ザムラロイドの危険性を知っているデュランは止めようと叫ぶが、ハバキリは素早い動きで接近をした!

 

「中段肆剣!巨ノ太刀 災断!!」

 

手にした刀を真上に構えて『円』を描くように回し、その刃をザムラロイドの脳天目掛けて振り下ろす!

 

『何のォ!!』

 

しかし、ザムラロイドは両手で持ち替えたザムラソードを上に振るい、2つの刀剣が衝突!瞬間、爆発にも似た金属音と衝撃波が、四方八方を走った!

 

「ッ、うわあ!?」

 

衝撃波と突風に、2人に一番近かったゾロゾロイド数体が吹き飛び、草介たちは腕で顔を庇いながら目を瞑った。目を開けた草介が見たのは、不動の姿勢のままハバキリの一撃を受け止めたザムラロイドの姿であった!

 

「トロルネードをぶった斬った、あの技を………!?」

「中段肆剣の中でも最大の破壊力を持つ、『災断』が………!?」

『フンッ!!』

「うぐっ!?」

 

自身の一撃を防がれた事にショックを受けるハバキリであったが、ザムラロイドはザムラソードを振るってハバキリの刀を弾いて吹き飛ばす!弾かれたハバキリはその衝撃に刀を手放し、地面を転がり倒れてしまった。

 

「ぐぅう………ッ!!」

「ハバキリ!」

『惜しいデアルな。今のはワガハイでも、チョッピリ痛かったデアルぞ。』

 

倒れて気絶してしまったハバキリにデュランが駆け寄る中、ザムラロイドは皮肉交じりに嗤う。ザムラロイドはハバキリに目もくれず、真っすぐに草介に庇われるシャスティの元へ向かっていく。

 

「ぅう………ッ!」

『抵抗は無意味デアル、大人しく付いてくるデアル。』

「シャスティ!」

 

後退るシャスティにザムラロイドが声をかけるが、草介が彼の前に出て庇うように剣を向ける。

 

『邪魔デアル!』

「うゎ!?」

 

しかし、草介の剣はザムラソードで弾かれてしまい、数m離れた地面に突き刺さった。草介がそちらに顔を向けていると、ザムラロイドは草介の襟首を左手で掴んで30cm以上持ち上げてきた!

 

「ぐぇッ!?」

『貴様、邪魔立てするのであれば容赦しないデアルぞ?』

「勇者様!!」

 

ザムラロイドが草介の首元にザムラソードの刃を突きつける。シャスティは悲鳴交じりの叫びをあげながら咄嗟に杖を向けるが、その手はガタガタと震えて、狙いが定まらない。ザムラロイドはそれを見下ろすと、鼻で嗤うかのように「フン」と小さく合成音声を漏らした。

 

『そのような抵抗は無意味デアル。魔法を無駄使いするだけデアル。』

「ぅうッ………!」

『連れて行くデアル!』

「ひゃっ!?」

 

シャスティがたじろいだのを見ると、ザムラロイドは周囲のゾロゾロイドに命じて、シャスティを連行しようとする。

 

「シャス君!!」

「あっ!?」「シスター!?」

 

しかし、そこに酒場の入り口から行く末を見守っていたリサーナがモーニングスタッフを手に飛び出すと、シャスティの腕を掴んだゾロゾロイドの側頭部にその鉄球を叩きつける!

 

『ギギギ………ピー………』

 

リサーナの一撃を食らったゾロゾロイドは頭の右半分を失って仰向けに倒れると、電子音を残して動かなくなった!

 

「姉ちゃん!?」

「………?」

「でぇえいっ!!」

『ムウ!?』

 

シャスティが思わず叫ぶ中、リサーナはザムラロイドにも殴り掛かった!草介がシャスティの発言に一瞬疑問を抱くが、彼女の一撃がザムラロイドの右腕に直撃!想定外の一撃にザムラロイドは思わず草介を手放してしまった。

 

「ゲホッ!ゴホッ!」

「勇者様!!」

「大丈夫ですか!?」

「な、何とか………!!」

 

手放されて地面に尻餅をつきせき込む草介に、シャスティとリサーナが駆け寄った。

 

『ユ、油断したデアル………手こずるのは、非効率的デアルな………』

 

一方、ザムラロイドはリサーナに打撃を受けて少しへこんだ腕を庇いながら、忌々しそうに言葉を零す。しかし、そこで直ぐに思考を切り替えると、敵に悟られないよう周囲のゾロゾロイドとアシガロイドたちにIRC形式で命令を出す。指令を受信したドロイドたちはすぐさま行動に移り、草介達を取り囲んだ。

 

「何!?」

『別に、そこの小僧1人だけを連れて来いとは言われていないデアル。3人とも連れて行くデアル。』

「ま、待て!!」

 

ザムラロイドの発言にデュランは立ち上がって止めようとしたが、その目の前にゾロゾロイドが数体立ちふさがってきた。

 

「くっ!」

「うわあ!?」

「!?」

 

草介とリサーナは得物を握る手に力を入れるが、その時、背後の酒場から悲鳴が聞こえてきた。振り返ってみれば、ゾロゾロイドが右腕のマシンガンをトッタたち3人やリーシャたちに向けていた!

 

『抵抗をすれば、後ろの連中の命はないデアル。』

「ひぃ!?」

「卑劣な……!」

 

ザムラロイドの声にトッタたちが怯えたように悲鳴を上げ、デュランたちは歯噛みをする。草介たちは悔し気に歯ぎしりをするが、数秒考えた後に手にしていた剣を鞘に納めた。

 

「くそっ………!」

『賢明な判断デアル。』

「お、お前っ……!」

 

剣を納めた草介を見たザムラロイドが嗤うように言うと、トッタは思わず声を荒げた。しかし、シャスティ達も杖を納めたのを見ると、アシガロイド達は3人を拘束してしまった。

 

「ソウスケ!!」

「大丈夫だ!こいつらは俺たちを捕まえることが目的で、傷つける気はないようだからな!」

「しかし………!!」

 

連れていかれながらもデュランに向けて叫ぶ。デュランは悔しそうにしながらも、気絶したハバキリやトッタ達を庇いながらではあのザムラロイド達を相手取る事は不可能に近かった。デュランが歯噛みをしている内に、草介たちは用意されていたらしい荷馬車に押し込まれるように乗せられてしまった。

 

『さて、目的も済んだ以上、ここにはもう用はないデアルな。』

 

ザムラロイドはそう言うと、荷馬車の前に行くと(ながえ)(馬車の前方に突き出ている2本の棒。馬を繋げるのに使う)を両手で掴んだ。そして、『さらばデアル!』とだけ言うと、その場から猛ダッシュで立ち去ってしまった!

 

「って速!?思いのほか速!?」

 

ドナドナも歌う暇もないようなとんでもない速さで去ってしまった馬車に、思わず思わずデュランが叫んでしまった。追いかけるべきだと思ったが、周囲に残っていたゾロゾロイドがそれを阻んだ。

 

「くっ、まずはコイツらか………!!」

 

目の前のドロイドたちに剣を向けながらも、デュランはザムラロイドの走り去った道の先を睨んだ。

道の先、小高い山の上には、1件の屋敷に明かりが灯っていた。

 

 

 

 

 

【つづく】




やばい機怪魔獣登場の巻。機怪魔獣の設定を考えていた時に、「特捜戦隊デカレンジャー」の怪重機のイメージが連想されたのでオマージュとして取り入れていたのですが、ザムラロイドもイーガロイドを意識しています。
名前について、ゾロゾロイドは雑兵とゾロゾロ、アシガロイドが足軽大将が由来なので、ザムラロイドは侍大将が由来です。

イアム実食はお預け。リーシャさんは肝っ玉母さん系女将としていい感じにできたと思います。
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