異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第37話
その秘密、暴かれし時
「―――ぅう………」
「気が付いたか、ハバキリ?」
「隊長………」
ハバキリが目を覚ますと、デュランがハバキリの顔を覗いてきた。起き上がって周囲を見てみると、どうやら酒場の2階にある客室のベッドの上らしかった。
「そうか、拙者は………!ソウスケたちは!?」
気を失う直前の事を思い足して、顔を伏せるハバキリ、だが、そこで彼女は気絶をする直前の出来事を思い出したのか、慌てた様子でデュランに聞いた。デュランが少し俯いて黙るのを見て察したハバキリが息を呑んでいると、部屋のドアが開いてレピオとレイェンが入って来た。
「おお、起きたかハバキリ。」
「無事そうアルね。」
「レピオに、レイェン?なぜこの村に?」
ハバキリが呆気に取られていると、更にニールが入って来た。
「クシーフが残したらしい機怪魔獣が、何故か貴族の娘に横流しされていたらしくてな。その中にザムラロイドF1の名前があったので調査のために、この領地にまで来たのだが………」
「ばっちり遭遇していたとはな………しかも、シャスティを攫ったんなら………」
「いじめの主犯のご令嬢が黒幕って訳アルね………」
「例のいじめのか………!」
「この辺に残っていたドロイドたちは、ニールさんたちが合流した直後に退散をして行った。形勢が不利と見たのか、足止めは十分と判断されたのか………とにかく、村への被害は殆どなかった。」
ニールたち3人の話を聞いて、ハバキリは愕然とした顔になった。シーツを握る手に力が入る中、隣のデュランがやさしく語りかけた。
「大丈夫だ。ソウスケは攫われる直前、ウォッチャーを起動させていた。通信機能と追跡機能は生きている。向こうの状況は把握できる。」
「そ、そうでござるか………」
「流石ソウスケ、抜かりないネ。」
デュランの言葉に、ハバキリは少しほっとしたような顔になった。ベッドから降りて草履を履いていると、ニールが言葉を続ける。
「合流が遅れたのは、戦力を揃えていたからだ。相手は最強クラスの戦闘員ザムラロイド。我々だけでも勝算は少なかったからな………」
ニールがそう言うと、部屋の入り口からフローが複数人のメイド、クララたちが入ってきた。
「ハバキリさん、大丈夫でしたか?」
「クララどの?なぜここに?」
「いえ、戦力を探していたんだけど、生憎ロンたちは別の任務で出ていてね。どうしようと思っていたらマル………ロッティンさんたちが名乗り出てくれたんだ。」
「あ、私は、皆さんが怪我とかしたら、大変だと思って………」
「実際、ハバキリの傷はクララが治癒魔法で治してくれたんだぜ?」
「そうでござったか………忝いでござる。」
フローやレピオの説明を聞いたハバキリが、クララに礼を言って頭を下げた。クララが逆に恐縮していると、何かを思い出したのか周囲を見渡した。
「タマホメボシ………拙者の刀は?」
「ああ、それならここに………」
デュランはそう言って、テーブルの陰からハバキリの刀・タマホメボシを取って彼女に渡した。愛刀を受け取ったハバキリは、決意を固めたように強く握った。
「己の不始末は、拙者でつけるでござる………!」
「あまり気を張んなよ?固執しすぎて、取り返しのつかない事になっちまいかねねーぞ………」
「ッ、う、うむ………」
レピオに注意されて、ハバキリは恥ずかし気に頷いた。その時、デュランのGPデバイスが通信を告げる電子音とバイブレーションを起こした。すぐさまデュランが画面を見ると、全員に告げた。
「みんな、ソウスケのウォッチャーからの通信だ。」
全員の視線が、一斉にデュランへと集まる。デュランはデバイスを操作すると、空中に映像を投影した。
†
ダオコオ村の小高い山の上に立つ屋敷、草介、シャスティ、リサーナは荷馬車から降ろされた。
剣や杖を没収されたうえで周囲をドロイドたちに囲まれ、ザムラロイドに先導されて一同は屋敷の中に連れ込まれていく。草介は後ろを着いてくるウォッチャーが気づかれないか心配をしていたが、現状は大丈夫なようだった。
「しかしこの屋敷、どこの貴族様のもんだ?」
草介が外観を見ながら呟いていると、リサーナは屋敷の入り口に掲げられた紋章が目に入った。
「あの紋章、どこかで………?」
『ついてくるデアル。』
考える間もなく、草介たちは屋敷の奥にある部屋の前へと連行されていく。ザムラロイドは両開きの大きな扉の前に立つと、ノックをした。
『失礼するデアル。』
そう言って、ザムラロイドは部屋の扉を開けた。
扉を開けると、豪奢な調度品で飾られた室内。カーテンが開いて夜の暗い月夜が窓から見える窓際に、一人の少女が座っていた。
「ようやく会えましたわね、シャス、ティ………!?」
「………ッ!!」
「あら?」
長い金髪をツインテールにして、一目で高価と分かる濃い青を基調としたドレスを見に纏ったその少女は振り返ると、サファイアを思わせる青い瞳のツリ目でシャスティを睨みつけてきた。シャスティは少女の顔を見ると顔を強張らせたが、その隣のリサーナは彼女を見るとキョトンとし、少女も目を見開いて表情を固まらせ、手にしていた杖をポロリと落としてしまった。
「なっ!?何で、リサーナお姉さまが一緒に………!?」
「お姉さま?」
「あなた、レイクちゃんよね?カシンバルトの後輩だった………」
「あっ、いや、その………」
レイクと呼ばれた少女はしどろもどろになってしまい、草介たちの近くに立っていたザムラロイドを呼びつけた。
「ちょ、ちょっとあなた!何でシャスティ以外にもいますのよ!?」
『コイツ1人だけを連れて来いとは、言われていないデアル。』
「だ、だからって、よりにもよってリサーナお姉さまを連れてきますのよ!?」
『コイツが誰かなど、ワガハイは知らないデアル。』
「いや、でも………あーもー!!」
苛立って髪を掻き毟り、床を何度も踏みつけるレイク。草介はそれを見て(案外融通が利かないんだなアイツ………)等と考えていたが、シャスティの反応を見て彼女の正体に察しがついたのか、隣の彼に問いかけた。
「………シャスティ、多分だけどあの子、お前をいじめてたっていう貴族の令嬢だよな?」
「は?いじめ?」
「な!?ちょっと………」
草介の発言にリサーナは聞き返し、レイクは慌てて遮ろうとしたが、シャスティが頭を抱えながら肯定をした。
「………ん、んだ………あの子、2年生からオラをいじめてた首謀の令嬢だべ……」
「ちょ!?」
「やっぱりか………」
「ほ、本当なの?レイクちゃん?」
「え、えっと………それは………」
シャスティの答えに草介は呆れたようにため息を吐く。リサーナが問うとレイクは再びしどろもどろになる。若干涙目になりながら頭を掻いて俯き唸っていたが、苛立ったように顔をガバッと上げて叫んだ。
「~~~あーもー!そうですわよ!ウジウジしてばっかの芋臭い田舎モノの分際で!親が高い才能を持っているからって!あんな高い魔法の才能を持っていて生意気だと思いましたのよ!!」
「そ、そんなことで………」
レイクの自白めいた叫びに、リサーナは驚き言葉を詰まらせる。シャスティは怯えるように1歩後退る中、レイクは彼を睨みながら続けた。
「あの攻撃魔法の授業の時!『バーニング・カノン』級の『ファイア・バレット』で的を焼き尽くした時!そいつ、何て言ったと思います!?」
『い、今ので良かっただか?これくらいなら、先生とかでもできると思うだけんど………?』
「って!まるで「誰でも出来るでしょ?簡単でしょ?」とでもいうかのような言い方でしたのよ!」
憤慨し叫ぶレイク。状況を聞いた草介が、思わず隣のシャスティに聞いてしまった。
「お前、そんななろう系異世界転生主人公みたいな事言っちゃったの?」
「い、言ったかもしれねぇだ………(ナロウケイ?)」
((ナロウケイ??))
(((ナロウケイ???)))
シャスティが冷汗を流しながら答えるが、リサーナやレイク共々『なろう系』という単語がよくわかっていないようで小首を傾げていた。
ウォッチャー越しにこの様子を見ていたデュランたちも小首を傾げる中、レイクは気を取り直して話を続けた。
「わたくしだって苦労してカシンバルトに入学したっていうのに!努力で埋まらないような才能の差を見せつけられてぇ!わたくしがどれだけ!悔しい思いをしたと思っているんですのよ!!」
レイクはそう叫ぶと、足元に落ちていた杖をわざわざ拾ってシャスティに突き付けた。シャスティはその気迫に圧されてか肩をびくりと震わせ、リサーナや草介は困惑するが、レイクはさらに続けた。
「それだけではありませんわ! 1年生で執り行われた『学年で一番可愛い生徒ランキング』に2位だったわたくしと大差をつけて1位になりましたのよ!男子の分際で!!」
「地味にスゴイなそれ!?」
「ぇう………」
先ほど以上に恨みの籠ったレイクの暴露に草介とリサーナは呆れと驚きの混じったような反応を取ると、シャスティは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いてしまう。確かにシャスティは小柄で中性的な顔立ちで可愛らしく、ソプラノボイスも相まって初対面の時は女の子と勘違いもしたものだと、思い出していた。
「オ、オラ………女の子によく間違えられっし………それで男の同級生や先輩とかに告白されて………中には男って分かっても付き合ってほしいとか、男だからこそ付き合いてぇって言われたりもして………」
「………そ、それは………」
「何と言うか………」
「流石に同情いたしますわ………ですがぁ!!」
当時を思い出したのか、シャスティが涙目になって鼻をすする姿に、流石のレイクも罪悪感があったのか複雑そうな顔をした。が、すぐに顔を赤くしながら激しく叫び出した。
「何よりもわたくしが許せないのは!リサーナお姉さまを馴れ馴れしく「姉ちゃん」と呼んで仲睦まじくしていたことですわ!わたくしがその理由を聞いても何だか煮え切らない態度で答えなくて!」
「それらが積もりに積もって、いじめを始めるに至ったって訳か………」
レイクの話を聞いて、大体の事情を把握した草介。
「リサーナお姉さまといえば、わたくしが話すのも躊躇うほどの高嶺の花だというのに!わたくしだって遠くから見つめることしかできないのに!それを何ですか!あんな軽々しく親しげに!! 何なんですか!!」
(むしろ、それが一番ウェイトかかってるっぽいなー………)
レイクは怒りのままに、床を何度も踏みつけて叫ぶ。せっかくの美貌や教養が台無しなその姿を見た草介は、レイクの心情を察しながらも呆れるばかりであった。それを聞いたシャスティとリサーナは、「あー………」と何かを察したような表情で声を漏らした。
「あれを見られていたなんてねー………」
「ちょっと、油断してただな………」
はぁー、と、ほぼ同じタイミングで深~くため息をつく2人。草介は同情するかのように横目で見ていたが、ふと、この場を解決できそうな考えが思いついた。
「シャスティ!あなた、まるでお姉さまに弟みたいに可愛がられるなんてえ!」
「待ちなお嬢さん。」
「はあ!?」
苛立ちのままに叫ぶレイクであったが、そこに草介が待ったをかける。レイクは怒り半分、驚き半分といった感じで睨むように草介の方を睨みつけた。
「確かに俺も、この2人の関係について気になっていたところだ。ただの「後輩をかわいがる先輩」っていうだけでは説明付かないように見えたからな。」
鼻息を荒くしながらも、レイクは訝し気な顔で草介の言葉を聞いた。シャスティとリサーナは草介の言葉を聞いて顔を見合わせた。
「2人とも、話しにくい内容なのは何となくわかるけど、ここまで来ちゃったら、もう話さないわけにはいかなくなったんじゃないか?」
「ッ、そ、それは………(あ、あのことバラすん事は………あん時や、あん時みてぇに………)」
草介は2人にそう諭すが、シャスティは困ったように視線を逸らす。草介の言う通り、自分たちの関係性を明かせば、レイクも納得してくれるかもしれない。だが、『その事』を話すことは、シャスティには抵抗があった。
「ど、どうなんですの………?」
シャスティが冷や汗を流し視線が泳ぐ。何やらただならぬ雰囲気にレイクが恐る恐る問いかけるが、シャスティには聞こえているとは思えなかった。
もしかして、ヤバいこと聞いちゃったか?言い出しっぺの草介に公開と罪悪感が芽生えていると、隣のリサーナがシャスティの肩にそっと手を乗せた。
「………確かに、ソウスケ君の言う通りね。ここまでことが大きくなってしまっては、秘密にし続けるのは難しそうね………」
「姉ちゃん………」
「そうよね、どうやら私たちの関係が原因みたいだしね………」
リサーナがそう言うと、シャスティは申し訳なさそうに泣きそうな顔で彼女を見つめる。リサーナは微笑みながら頷き、レイクに向き直った。
「………レイクちゃん、あなたは「私がシャス君を弟のように可愛がっていた」と言っていたわね?」
「え、あ………はい………」
突然、話を振られてキョトンとするレイク。リサーナはさらに続けた。
「それは、少し違うわね………「弟のように」可愛がっていたわけではないのよ………」
「え………?」
「どういう………?」
リサーナの言葉に草介とレイクは疑問に思うが、リサーナはシャスティと目を合わせた。シャスティはそれに気づくと、深呼吸をしてから目の前にいる過去の因縁のある貴族令嬢の方を見た。
「………リ、リサーナさんは………姉ちゃんは………本当のッ、姉ちゃん………なんだべ………」
「「………はい?」」
「
「「え………?」」
シャスティとリサーナが告げた事実に、草介とレイクは一瞬理解ができずキョトンと目を点にしてフリーズしまう。しかし、その意味が段々と頭の中で繋がっていくうちに、2人は驚愕の顔に変わっていった。
「「………ゑゑゑゑゑーーーーーッ!?!?!?」」
その事実を理解すると同時に、2人は驚きのあまり思わず旧字体で叫び声を上げてしまった………
†
「「「「「ゑゑゑゑゑーーーーーッ!?!?!?」」」」」
同時刻、リーシャの酒場の一室でモニター越しに事の成り行きを見守っていたデュラン達も、同じく旧字体で叫び声を上げていた。
「あ、あの2人が姉弟って………」
「いや、言われてみれば、目元が似ていたような………」
混乱しながらも状況を整理しようとするデュランと、2人の顔を思い出すニール。道理で妙に仲が良かったな、とハバキリが思い出していると、画面向こうで草介たちが再起動したらしく話し始めていた。
[い、いや、でも!お姉さまって確か、クリファート公国の出身でしたわよね?シャスティがわたくしと同じロコロの生まれだし………]
[あー、うん………姉弟といっても、腹違いだからね………]
[姉弟って知ったんのも、学園で初めて会った時だもんなぁ………]
[は、腹違い………?]
[あれ?これ聞かない方が良かったやつか?]
「複雑そうでござるな………」
画面向こうで2人が異母姉弟と明かされて、顔を引きつらせる一同。だが、父親が同じということは………
[じゃあ、例の『伝説の冒険者』っていうブルートが父親って事か?]
草介がそう聞くと、2人は苦虫を噛み潰したようにその顔を歪ませた。デュランはそれを見て(嫌そうな顔はそっくりだな!?)と内心思っていると、シャスティは口を開いた。
[………ええ、まあ、そういうことです………]
[あの人、オラの母ちゃんや、姉ちゃんの母ちゃんの他に、世界中に『妻』が何人もいるだよ………]
[見つけた魔物よりも、他所の女の人の方が多いんじゃないですか?あの人………]
[オラが知ってるだけでも、姉ちゃん以外にも、母ちゃんの違う弟が1人、妹が3人いるべ………]
[そ、そういう事かよ………!]
心底嫌そうに語る2人。『伝説の冒険者』等と世間では言われ尊敬されているらしいが、私生活では相当無節操な様子であった。
「英雄色を好むとは言うアルが………」
「その範疇を超えてんだろ………」
画面内で草介が頭を抱えてため息をつく中、レイェンとレピオは呆れたように呟いた。シャスティは続けた。
[父ちゃんのせいで、オラと母ちゃんの家に色んな所から女の人が押しかけてきてなぁ………そん度に引っ越しすんのを、ずっとしてきただよ………最近、ようやく落ち着いたべ………]
「………もしかして、そのせいでシャスティは、あのような引っ込み思案な性格になったのか?」
[無駄に名声だけはあるから、言い出しづらいし言っても信じてくれそうにないんですよねー………]
「逆に、そっち方面で有名になってもおかしくなくねーか?」
姉弟2人のどこか拗ねたような告白に、ハバキリとレピオは呆れてコメントする。そこで、草介が口を開いた。
[………シャスティ、会ったこともない他人の父親の事をこんな風に言うの失礼だけど、言わせてくれ………最低だなお前の親父!]
[[ホンッッットにそれ!!]]
「「「まったくだ!!」」」
「ていうか、何で仕掛けた側のあの子が一番追い詰められてるの?」
「リサーナの登場で、考えていた計画が瓦解したのかもな………」
画面向こうで草介が叫ぶように言う。デュランたちもこればっかりは同意して、激しく頷いた。フローとニールも呆れて苦笑している中で、ここでレピオはある事に気が付いた。
「………あれ?つーかさっきから、ザムラロイド静かすぎねーか?」
「あ………」
「そういえば………?」
レピオの指摘を受けて、ハバキリたちもそれに気づいて画面を再び凝視した。
†
一方でレイクの屋敷。シャスティ達姉弟の話を聞いていた草介であったが、『ポトッ』という音が聞こえてレイクの方に目を向けてみれば、レイクは愕然とした顔をしてわなわなと震えていた。先ほどの音は、手から再度杖を床に落とした音であったようだ。
「そ、………そんな事情があったなんて………それなら、頑なに語らなかったのも………そんな家庭の事情を、他人に話せるわけなんてない………!」
レイクは顔を青ざめさせて、プルプルと震え始めた。知らなかったとはいえ、2人の複雑な事情に踏み込もうとして、あまつさえそれを理由にシャスティに陰湿ないじめを主導してしまった。
シャスティの心を深く傷つけただけにとどまる事なく、尊敬するリサーナへの無礼を働いてしまい、それがどれだけ浅はかであったのか、どれほどその行動が下らなかったのか気づいてしまったのか、レイクは目に涙を浮かべ、膝が震えていた。
「………す………」
「ん?」「え?」「は?」
「すみませんでしたぁーーーーーーーーーーッ!!」
そして、ついにその感情は限界を超えてしまったのか、レイクはひざから崩れ落ち、そのまま額を床に擦りつけるように土下座をして謝罪をしてきた!
「えええ!?」
突然、自分たちに向けて土下座をしてきてレイクに、シャスティは驚いて後退ってしまった。リサーナも意外そうな顔をする中、草介は(この世界にも土下座ってあるんだなー………)と、どこか呑気に考えていた。多分、いきなりすぎて脳の処理が追い付かなかったのだろう。
「わ、わたくし………自分の事しか考えていなくて………そのせいでシャスティだけではなくて、リサーナお姉さまにまでひどいことを………謝って済む問題ではないかもしれませんが………ごめんなさい!」
「あ、いや、その………」
謝罪をされたシャスティは、逆にどうしていいのか分からず戸惑っていた。草介とリサーナは後ろから2人のやり取りを少し不安そうに見守っていると、土下座をするレイクにシャスティは恐る恐るといった具合に歩み寄って、話しかけた。
「あ、あんの………オラも、話さなかったんも悪かったし………ご、ごめんだ………!」
「あ………」
シャスティも謝ってくると、レイクは驚いたように涙で濡れた顔を上げて目を見開いた。シャスティは少し辛そうな表情をしながらも、何とか笑みを浮かべようとぎこちなく口を歪めた。
「いじめの事は、後から学校の方から制裁受けたみてぇだし………それでオラはもう、これ以上なんかする気はねえだ………それで手打ちしね?」
「シャ、シャスティ………!」
シャスティの寛容な提案に、レイクは涙ながらにうんうんと頷いた。草介とリサーナは顔を見合わせると、やれやれ、と言った具合に深く息を吐いた。
「………一件落着、かな?」
「そう、ですね………」
どうやらひとまずは平和的に終わったようだと、草介とリサーナは安堵する。
『………話は終わったデアルか?』
「「「「ッ………!?」」」」
その時、今まで黙って部屋の壁際で立っていたザムラロイドが口を開き、重く低い声を発した。その一言に、草介たちの背中に冷水を流し込まれたかのように悪寒が走った。
「え、ええ………そうですわね………もう、彼らを解放していいですわ………」
レイクは少し戸惑いながらも、涙を拭って立ち上がりザムラロイドに命じた。
『それは出来ない相談デアル。』
「え………!?」
しかし、ザムラロイドはその命令を一蹴すると、腰にマウントされていたライフルを引き抜いてレイクに突き付けた。レイクが驚愕と恐怖にビクリと目を震わせていると、周りのゾロゾロイドやアシガロイドが獲物を草介たちに突き付けていた!
「ど、どういう事ですの!?あなた、クシーフのおじ様から、わたくしの命令を聞くように言われていたはずですわよ!?」
「クシーフ?お前、クシーフの親戚なのか?」
「お母さまの従兄ですの………」
草介の質問にレイクは短く説明をした。しかし、問われたザムラロイドは鼻で嗤うかのように『ハンッ』と電子音声を発した。
『これまで貴様の我儘な命令を聞いていたのは、貴様が
「何ですって………!?」
「まさか、最初から俺たちを狙って………!?」
「そーいう事だ。」
ザムラロイドの告げた事実にレイクは驚愕して息をのみ、草介がその狙いに気づいたその時、背後のドアから声がした。振り返ってみれば、そこには見知った赤とオレンジの髪の青年の姿があった。
「ティラノ………!」
「そいつは元々、クシーフの作戦が失敗した時に備えていたんだが、そのお嬢さんがわがまま言っただかでクシーフが引き渡しちまったみたいでな。あん時は参加出来なかったんだが………まさか、こうしてそっちから来てくれるとは思わなかったぜ………なんか込み入った話始めて、入るタイミングなかったけど………」
嘲笑気味に入って来たティラノを草介は睨んだ。後半は少し呆れたように話していたが、ティラノはザムラロイドの方を向いた。
「連絡ありがとうなAKY044、上手く勇者クンを捕らえてくれたぜ。」
『光栄デアル。』
ティラノがそう言うと、ザムラロイドは恭しく頭を下げた。草介はティラノが自分を皮肉っぽく『勇者クン』と呼んだ事に一瞬ムッとしたが、当のティラノはそれを意に介さずに周囲を見渡して大声を出した。
†
[そういう事だ、GPの諸君!どうせ今この様子もどっかで見ているんだろ!?]
画面越しにティラノが自分たちへと挑発をするかのように叫ぶのを聞いて、デュラン達は恨みと怒りの籠ったような顔をした。
[お前らと関係のあるヤツらと関係ないお嬢様、どっちの命も見捨てるようなテメーらじゃねーよなぁ?助けたかったら、山の上の屋敷にまで来るんだなぁあッ!!]
「あ、あの野郎………!!」
「いかがなさいますか、隊長?」
「このまま突っ込んでも、あのドロイドに返り討ちになるかもしれないネ………」
ティラノの挑発交じりの声明に、レピオたちはギリギリと歯ぎしりをする。ハバキリとレイェンが冷や汗をかきながらにデュランに問いかける。当のデュランは顎に手を当てて考え事をしていたが、その時、デュランのGPデバイスが通知音を鳴らした。操作をしてみれば、それはメッセージアプリからの通知であった。
「これは?」
デュランがメッセージを開いたデュランは、少し驚いた顔をした。
メッセージは以下のようなものであった。
送り主:アスカ丸
件 名:突入作戦に関して
本 文:15分後に、屋敷でドカンと花火が5回上がる。そうしたら、屋敷に突入せよ。
「このメッセージって………?」
「アスカ丸って、確か例の………」
メッセージを横から見ていたレピオが思い出すように呟く。それを聞いていたクララたちは何のことか分からなかったが、フローはそう言えば、と思い出していた。
(確か、別行動中の仲間が1人いるって言っていたな………この村に来ていたのか………?)
「………とにかく、あの子が下ごしらえをしてくれているのなら、我々は仕上げの調理を行うまでだ。」
「うむ………」
「そうだな。」
デュランがそう切り出すと、全員頷いて動き出した。1階へ向かう途中、レピオがデュランに話しかけた。
「隊長、他のドロイドに関してっすけど、もしかしたら何とか出来るかもしれないっす。」
「本当か?」
「はい。ザムラロイドの指令系統を断てば、アイツらの連携は封じられますからね。」
レピオの言葉にデュランは納得したように頷いた。
「分かった、方法は君に任せるよ!」
「うっす!」
レピオが返事をすると同時に、デュラン達は1階に降りた。降りた先ではレヴァンティとラナシィが、トッタ達の面倒を見ていた。
「シスター、大丈夫かな………?」
「勇者とシャスティが着いておるからのう、心配はいらぬだろう。」
「でも………」
心配そうにするトッタ達を、レヴァンティは優しく諭すように話す。そこにデュラン達が下りてくるのを見ると、ラナシィが立ち上がった。
「行くのか?」
「ああ、15分後に突入する。」
「こちらはわしとラナシィに任せてくれ。すまぬが、シャスティ達を頼むぞ。」
「兄ちゃん!」「シスターを助けて!」
「ああ、もちろんだ!」
ラナシィとレヴァンティに続いて、ギッタとスッタも頼み込むように言うと、デュランは力強く答えるた。一行は酒場の前に止まっていたバトルトレインに乗り込むと、レヴァンティたちが見守る中、列車は静かに動き出して村を後にした。
「行ったか………」
村人たちが呆気に取られたようにバトルトレインの消えた先を見つめる中、レヴァンティが息を一つ吐いて酒場に戻ろうとした。
「………あれ?トッタは?」
「何?」
「そういえば見当たらないな………?」
そこでギッタが、周囲を見渡しながらトッタがいない事に気が付いて声を上げた。酒場の店内にでもいるのかと思って見てみるが、どこにも姿が見えない。
「どこにもいないぞ?」
「さっきまでいたのに………どこに行ったのかしら………?」
リーシャも手伝って探したが、どこを探してもトッタの姿は見当たらない。どこに行ったのかと頭を悩ませていると、その時、スッタが「あ!」と声を上げて、ギッタと共に外に出た。
「もしかしてトッタ、シスターを………!」
「なに!?」
「ウソだろ………!?」
バトルトレインの向かった山の上の屋敷を見ながら、ギッタたちは信じられない表情で息を呑んだ………
【つづく】
衝撃の事実発覚編。ゾミクノーチでも2人の関係がただならないものなのは描写していたのですが、実はシャスティ、姉ちゃんって言いかけてる描写があったりします。
ようやく本格登場したのに、追い詰められちゃってるレイク嬢w 分かりやすいくらいの悪役令嬢ムーブしてたのに、リサーナの登場でペース乱されて瓦解して即落ちしたのは面白いですねw
ちなみに名前を並び替えるとアクャクレイジヨウ=悪役令嬢になります。
本性を現すザムラロイドと、合流するティラノ。次回、突入です。