異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第38話 魔法使いよ、立ち上がれ

異世界勇者ロボ 第38話

魔法使いよ、立ち上がれ

 

 

 

 

 

「さーて………ピンチだなこりゃ………」

 

屋敷の一室、シャスティ、リサーナ、そしてレイクと共に囚われた草介は、ドロイド軍団に囲まれた状態で座らされ、動けない状態であった。少し離れた位置では、ティラノがほくそ笑みながらザムラロイドと話していた。

 

「今のGP連中はブレイバーを欠いた状態だ。スペース・パンサーがいたとしても、そこまでの脅威ではないだろうよ………」

『たとえマシンメイルを出されたとしても、ティラノ様のビーストメイルとワガハイが機怪魔獣を率いれば対処可能デアル。』

「頼んだぜ?頼りにしているからな!」

『御意デアル。』

(あの人たち、デュランさんが生きてる事知らねぇみてぇだべな………)

(だな………連中の情報網、どうなっているんだか………)

 

ティラノとザムラロイドの会話を聞いて、草介とシャスティは小声で話す。流石に今回ばかりはデュラン待ちかな、と草介が思っていると、横のレイクが怯えた声を出した。

 

「も、申し訳ありませんわ………わたくしのせいで、2人だけではなく、そちらの方もこんな目に遭わせてしまうなんて………」

「………いや、むしろ巻き込んだのはこっちの方みたいな所はあるし………あ、俺の名前、勇薙草介ね。」

 

申し訳なさそうに謝罪するレイクに草介は慰めるように声をかける。ついでに今更ながら自己紹介を済ませるのをリサーナは苦笑気味に見ていると、ザムラロイドがレイクの方を向いてきた。

 

『貴様には、任務とはいえ我儘に付き合わされデアル。人間でいう『ウンザリした』というやつデアル。衝動的に斬り捨ててやろうと思わなかっただけ、アリガタイと思うデアル。』

「ッ………!」

 

機械的かつ冷酷に投げられたザムラロイドの言葉に、レイクは顔を青ざめた。草介たちは下唇を噛んでいた。

 

「さーてと、どっから来てくれてもいいが………」

『周囲にはドロイドの部隊4つを配備済みデアル。この部屋の本隊である我々がいるデアル。首尾は万全デアル。』

 

すでに勝利を確信しているのか、ティラノがニヤついた笑みを浮かべて腕を組んでいた。

 

ドォンッ!!

 

その時、屋敷の外で爆発音と同時に重い衝撃が地面から響いてきた!

 

「来たか!」

『屋敷の西側か………α1、向かうデアル!』

 

爆発音を聞いて、ザムラロイドはゾロゾロイドの一部隊に向かうよう通信を送る。部隊が到着しようというその時、再度爆発音と衝撃が響いた!

 

「また!?」

『反対方向?β2!向かうデアル!』

 

ザムラロイドは別部隊に向かうよう通信を送るが、爆発音と衝撃は三度、四度と発生し、ドロイドの部隊は屋敷の4ヶ所に散り散りに分散された!

 

『γ3、δ4!向かうデアル!』

「バラバラの地点4ヶ所で爆発………?」

「それって………?」

 

2人の会話から何が起こっているのか草介とシャスティ達は何となく察した。それはティラノも同じだったようで、指示を出していたザムラロイドに怒鳴りつけた。

 

「ってちょっと待て!これ確実に陽動じゃねーか!?」

『何!?』

 

ザムラロイドがそれに少し驚いたその瞬間、彼らのいる部屋の外側で爆炎が上がり、その衝撃波で窓ガラスが割れ、壁の一部が破壊された!

 

「うぉお!?」

『ヌゥッ!?』

 

爆発の衝撃波にティラノとザムラロイドはその身を吹き飛ばされて床に倒れ、ゾロゾロイド達も倒れこんでしまう!草介たちは周囲のゾロゾロイド達がちょうど壁になってくれたのか、ダメージをほとんど受ける事はなかった。

 

「これって………!?」

「今の内だ!」

「んだ!」

「!?え、ええ………!?」

 

レイクは突然の事に戸惑っていたが、草介とシャスティの言葉に我に返ったのか立ち上がって足を動かした。草介は倒れているゾロゾロイドを見渡すと、探していた個体を見つけて真っ先に駆け寄り、没収された自分たちの獲物を素早く回収すると、リサーナは爆破で壁に空いた穴を見た。

 

「こっちよ!」

「ああ!」

「あ、待て………!!」

 

倒れた際にザムラロイドの下敷きになったティラノがそれに気づいて止めようと叫ぶが、草介たちがそれを聞きいれるつもりがあるわけもなく、そのまま走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、『花火』は上がった

な!行くぞ!」

「風情の『ふ』の字もない花火だったな………」

 

草介が屋敷から脱出するほんの数秒前、バトルトレインを屋敷周辺の森の中に隠したデュランは、5回の爆発をその目と耳で確認をすると、後ろの隊員たちに指示を飛ばした。レピオが呆れたように軽口を叩きながらも、武器を手にしたデュランダー隊の一同は塀を乗り越えて一斉に突入をした!

ゾロゾロイドの一部はそれに気づくと右腕をマシンガンに変形させてその銃口を向けてくる。レピオが前に出て手にした盾を構えたが、彼女のすぐ傍を風が吹き抜けたかと思ったかと思えば、ゾロゾロイドたちはそのボディを斬り割かれ、火花を散らしながら地面に伏した!

 

「今のは………!?」

 

デュラン達が驚いて足を止めていると、その目の前に4つの影が小さな音と共に降り立った。それは『駿騎兵装』を身に纏って右手に細身のサーベルを手にしたマルティア、ダリア、オリヴィア、マシューであった。

 

「マルティアさん!」

「前衛は任せてくれ!」

「頼んだ!」

 

マルティアがチラリと振り返って言うと、デュランは頷いて応える。4人は目にも止まらない速さでドロイドたちを斬り捨ててスクラップへと変えていき、デュラン達はそれの上を走り抜けていく。すると、屋敷の壁に空いた大きな穴と、そこから出てくる草介たち4人を見つけた。

 

「ソウスケ!」

「あ、デュラン!」

 

草介もデュランたちに気づいて声を上げると、デュランの元へ走ってきた。

 

「みんな無事か!」

「ああ!」「はい!」

「ん、んだ………!」

 

草介たち3人は返答をするのを見てデュランはホッとした表情となる。レピオたちもホッとしていると、ふと、フローレントはレイクの姿を見つけて話しかけた。

 

「やあ、クウジャー伯爵のお孫さんだね?君も大丈夫だった?」

「フ、フローレント様!?え、ええ………」

「そう。今回、君は色々やらかしちゃったみたいだけど、無事みたいで良かったよ。」

 

自分なんかに微笑んでくるフローに恐縮しながらもレイクが答える。何でシャスティとソウスケとかいう男がフローレント様なんかと知り合いなのかと困惑していると、屋敷の穴からティラノとザムラロイドが慌てたように姿を現した。

 

『ま、待つデアル!』

「逃げても無駄だって………ん?」

 

追いかけて草介たちに怒鳴りつけるティラノであったが、その時、草介と合流した一団の中に見慣れた薄紫髪の男性の姿が目に入った。

 

「んん………??」

 

見間違いかと思って目を擦ってもう一度見るが、そこには白いタイトな服の上から赤いジャケットを着た、薄紫髪の男性の姿があった。

 

「んんんんん!???」

 

慌てた様子のティラノの顔は驚愕に変わり、銀河連邦警察のユニフォームの上から赤いジャケットを着た薄紫髪の男性・デュランを凝視した。

 

「なんで………なんで「ブレイバー」がここにいるんだ!?」

『何、ブレイバーデアルか?』

「そうだよ!あの紫髪の男!あいつがいるなんて聞いてないぞ!?」

『いや、数日前に爆死したと聞いていたデアル。それに顔知らなかったし、そこまで命令されていないデアルから………』

「~~~ッ!!それは、そう、だが………ああ~~~!!」

「やっぱあいつ、融通利かねーみたいだな………」

「隊長の事も聞いていないようでござるし………」

「高性能AIが聞いて呆れるな………」

「アイツ、アタシと語尾被ってるアル。」

「どこに引っかかっているんだ?」

 

デュランが生きていた事に困惑しながらもザムラロイドに怒鳴るティラノであったが、当の本人(本機?)から命令外のことまでは知らないと返されて言葉に詰まり頭を掻き毟る。その様子を見ていた草介とレピオは呆れる一方で、レイェンとハバキリはくだらない話をしていた。

 

「………ったく!おいブレイバー!何であの爆発で生きてやがるかは、今は置いといてやる!ここでくたばれば、どうせ同じなんだからな!!」

「開き直ったか………」

『集まるデアル!』

 

ティラノが破れかぶれとばかりに叫ぶのを見たハバキリが呆れたようにため息をつくと、ザムラロイドは周囲のドロイドたちに指示を飛ばした。ゾロゾロイドたちが周囲を取り囲み鉤爪を構えたのを見ると、草介はシャスティ達の方に向きなおった。

 

「2人とも、行けるか?」

「え?ええ!」

「んだ!」

 

2人が返事をすると、草介は杖を渡した。それを見ていたフローは、チラリとレイクの方に目を向けた。

 

「で、君はどうするんだい?」

「え?」

「この状況、君に責任がないとは言い切れないし、君も利用されて黙っていられるの?」

「そ、それは………」

 

そこまで言われて、レイクは考えた。

自身は騙され利用されていたとはいえ、私怨のあったシャスティ(しかも独りよがりの勘違いしたもの)だけではなく見ず知らずの草介や、何よりもリサーナにまで迷惑どころではない被害を与えてしまった。挙句の果てに自身が陥れられたのであれば、ここで何もしないのは、それこそプライドが許せないというものだ。

 

「………分かりましたわ、自分の責任は、自分で取りますわ!」

「良い返事だ!」

 

その返事を聞いたフローが笑みを浮かべると、草介も頷いて彼女の杖を投げて渡した。

 

『かかるデアル!』

 

その瞬間、ザムラロイドの号令でドロイドたちは一斉に飛びかかって来た!草介たちが剣でそれを受け止めると、レピオが腰のポーチを弄りながら周囲に向けて言った。

 

「みんな、手はず通り最初にオレが連中の指揮系統を潰す!それまで耐えてくれ!」

「分かった!」

 

デュランがそれに答えると、レピオはポーチから緑色の野球ボール大の球体とひも状のものを取り出した。そして球体をひもで巻き付けると、先端を持ってクルクルと回し始めた。

 

「何だそれ?」

「あれは………たしか『スリング(投石器)』だったか?」

 

それを見た草介とマルティアが少し不思議そうにしていると、レピオはニヤリと笑った。

 

「開発課に頼まれて作った試作品だが、ついでにテストしてやるぜ!おりゃぁあッ!!」

『なぬッ!?』

 

レピオが掛け声と共に腕を大きく振るうと、スリングから解き放たれた球体は大きな放物線を描きながらザムラロイドの頭上に飛んでいった!

 

『その程度!!』

 

ザムラロイドはザムラソードを引き抜くと、接近してくる球に向けて振るって難なく斬り割いてみせた!

 

バシャッ

『ムゥッ!?』

 

しかし、その球が斬り割かれたその瞬間、中から緑色の液体が破裂するように飛び出し、ザムラロイドの頭や胸を緑色に染め上げた!

 

『こ、これは何デアル!?』

「何だ?防犯用のペイントボールか?」

 

ザムラロイドに付着した液体にティラノやザムラロイドが困惑する。いきなりこんなものを投擲してきたレピオの思惑に疑問を持っていたが、その時、周囲を取り囲んでいたドロイドたちが脱力したかのように腕をダランと下げて動きを止めてしまっていた。

 

「何だ!?」

『で、電波障害デアル!ドロイドへの指示電波が送信できないでデアル!?』

「何だと!?まさか、そのペイント!?」

 

電波状況を現すアンテナが『圏外』と自身のカメラアイに表示される事に少し慌てた様子のザムラロイドの報告に、ティラノは直ぐにその原因に思い至る。草介たちもそれに気づいてレピオの方に視線を向けると、彼女は「してやったり!」と笑みを浮かべていた。

 

「レピオ、あれって?」

「ああ、犯罪者の使う遠隔操作メカの操作の妨害用電波妨害塗料だ!あれだけ長い頭だから、指揮通信用のアンテナじゃないかって推測していたが、ドンピシャだったみたいだな!」

「あの頭って、単なるデザインじゃなかったのか………!」

「でんぱ?あんてな?」

 

レピオの話を聞いた草介が、改めてザムラロイドの烏帽子のような長い兜型の頭部を見て感心したようにつぶやいた。使役していただけで詳しい構造を理解していた訳ではなかったらしいレイクには草介たちの話している意味は理解できなかったが、動きを止めたゾロゾロイド達を見てあの頭のデザインに意味があった事は何となく分かった。

 

『ぅう!と、塗料が取れないデアル………!』

「これでゾロゾロイドへの指示は飛ばせない!」

「しまった………命令系統をザムラロイドに一任させていたのが仇になったか………!」

 

棒立ちで動かなくなったゾロゾロイドを前にティラノがたじろいでいると、レピオが笑いながら言い放った。ティラノは悔しそうに歯噛みをしていたが、頭を左右に振って切り替えると、頭の塗料に躍起になるザムラロイドに命じた。

 

「い、いや!まだアシガロイドとお前がいる!アシガロイドなら指示電波がなくても動かせる!それで十分だ!」

『そ、そうデアルな!御意デアル!行くデアルぞ、お前ら!』

『『『はッ!!』』』

 

困惑するザムラロイドにティラノが叫ぶと、ザムラロイドは周囲のアシガロイド10体程度に命じると周囲で棒立ちになっているゾロゾロイドを薙ぎ払いながら草介たちに向かって行く!

 

「ハバキリさん、私たちがあの赤い機怪魔獣を引き付けます!その隙に大技を!」

「御意!」

 

デュランや草介たちは周囲のアシガロイドの剣を受け止める中、ダリアがハバキリに提案をして、オリヴィア、マシューと共にザムラロイドに迫る。迫ってくるアシガロイドにはニールのマシンガンとマルティアの素早い斬撃で阻まれる。

 

「俺を忘れてないか~?」

「うん?」

 

しかし、そこにティラノが立ちはだかる。ティラノの周囲に炎が浮かび上がったかと思うと右手に集束されて、身の丈以上もあろう巨大な肉食恐竜・ティラノサウルスの頭部を形作った!

 

「なッ………!?」

「喰らいつけ!“暴焔竜皇(ぼうえんりゅうおう)噛牙爆喰(ごうがばくしょく)”!!」

「し、しま―――」

 

先頭を走っていたダリアが驚くのもつかの間、ティラノがヘヴィー級ボクサーのストレートパンチのように右腕を振るうと、炎の恐竜がダリアの頭に喰いつかんとその咢を開いて迫ってくる!

ハバキリはその攻撃に驚くが、ダリアを救うまでには間に合わないと思われた。

 

「”サンダー・アロー“!!」

「はっ!?」

 

しかし、その牙がダリアに届くよりも前に呪文が聞こえたかと思うと、ティラノに向けて雷の矢が複数本迫ってくる!ティラノは標的をダリアから雷の矢に変更し、恐竜の頭部を盾のように構えると、恐竜の額に矢が突き刺さりスパークを起こした!

 

「うおお!?」

 

スパークにティラノが驚いていると、ティラノサウルスの頭部は、まるでバースデーケーキの蝋燭の火が吹き消されるように霧散する。飛んできた方向を見ると、そこには杖を構えたシャスティと、杖を持ったリサーナとレイクがこちらを睨んでいた!

 

「シャスティ!」

「こ、こっちは、任せるだ!」

 

シャスティの言うことにハバキリは一瞬キョトンとするが、その目に、何やら『覚悟』のようなものを感じ取った。それはダリアたちも同じだったのか、4人は顔を見合わせて頷きあった。

 

「………分かった、頼むぞ!」

「無理はしないでね!」

「はい!」

 

ハバキリとダリアの言葉にシャスティたちは頷くと、改めて4人はザムラロイドに向かって行った。

 

『相手になるデアル!』

「今度は先のようにはならぬぞ!」

「オリヴィア!マシュー!機怪魔獣に『シューティングハリケーンアタック』を仕掛けるわよ!」

「ええ!」「はいはーい♪」

 

ダリアが2人に言うと、先行してロングソードを振るう。ザムラロイドはそれをザムラソードで受け止めるが、ダリアの背後からオリヴィアが大型の剣ファルシオンを構えて迫ってくるのが見えた。一瞬そちらに気が向いたザムラロイドであったが、オリヴィアの背後から小柄なマシューが両手にダガーを逆手に持って飛び出してきた!

 

『な………!?』

 

ザムラロイドが驚く間もなく、マシューは目で追う間もないような速さでダガーをザムラロイドの膝裏や肘内、腰に突き刺した!

 

『ぐぉッ!?』

 

急所を的確に攻撃されたダメージにザムラロイドは怯み、その衝撃でザムラソードに入る力が弱まった隙にダリア剣を弾いて後方へと下がると、飛び上がったオリヴィアががら空きになった正面に向けて、ファルシオンを力いっぱい振り下ろした!

 

『グガッ!?オノレぇ………!?』

「今です!」

「忝い!下がっていてくれ!」

 

ボディに大きく刀傷を受けたザムラロイドがのけ反ると、それを商機と見たダリアがハバキリに向けて叫ぶ。ハバキリが声をかけると3人が飛び退くように離れると、ハバキリは手にした刀・タマホメボシをビリヤードのキューのような片手刺突の構えを取った。

 

『な、嘗めるでないデアル!!』

「ぬ!?」

 

しかし、ザムラロイドは腰にマウントされたザムライフルを引き抜いて狙いを定めた。ハバキリは発射されるかと思い身構えるが、しかし、当の銃口は目の前の侍ではなく、離れた所にいるリサーナに向けられていた!

 

『ワガハイが敗れても、キサマも仲間を1人失うデアル!』

「しまっ!?」

「え!?」

 

ハバキリが対応する間も、ティラノと対峙していたリサーナが反応する間もなく、ザムライフルの引き金を引かれようとした―――

 

 

 

「このぉおっ!!」

『ヌゥ!?』

「え!?」

 

しかしその時、ザムラロイの腰のあたりに小さな影が突進してきた!ザムラロイドはその弾みでバランスを崩してうつ伏せに倒れてしまい、ザムライフルのビームは虚空に向けて放たれ消えてしまった!

 

「あれって………!?」

「ト、トッタ!?」

「棒立ちのゾロゾロイドに隠れて近づいたのか………!?」

 

ザムラロイドの腰にしがみついていたのは、短い金髪の少年・トッタであった。一同が呆気に取られていると、トッタは顔を上げてザムラロイドを睨みつけた。

 

「シスターが心配であの乗り物(※注釈:バトルトレインの事である)にこっそり乗って来たけど、こいつ、シスターを狙いやがって!」

『このッ!!』

「うゎ!?」

 

ザムラロイドは怒ったかのように起き上がると、トッタは吹き飛ぶように転げ落ちた。

 

『小僧が、邪魔しおって!!』

 

ザムラロイドは立ち上がると、トッタに向けてザムライフルを構えた!

 

『………アレ?』

 

………しかし、その手に持っていたはずのザムライフルはなく、引き金にかけていたはずの人差し指は空を切っていた。

 

「………コイツをお探しか?」

『あ!?』

「「「ああ!?」」」

 

そこで身体を起こしたトッタが、手の中に持っていた大型ライフルを見せてきた。ザムラロイドは素っ頓狂な電子音声を上げると、ハバキリたちは驚きの表情をしていた。

 

『い、いつの間に!?』

「ダリアどの!トッタを!」

「!ええ!」

「わ!?」

 

ハバキリが咄嗟に叫ぶと、ダリアはトッタを連れてその場から離脱をした。

それにザムラロイドが驚くのもつかの間、ハバキリはザムラロイドに高速で接近をすると片手刺突の姿勢のままきりもみ回転をした!

 

『ヌゥ!?』

「流星一刀流剣術 中段肆剣が一つ!」

 

その回転の勢いのまま、ハバキリはザムラロイドの胴体に向けて、アッパー気味の超高速の刺突を放った!

 

「天ノ太刀 爆矢(ばくし)!!」

『ごァアーーー!?』

 

回転の勢いが加わった刺突を受けてザムラロイドは遠くに吹き飛ばされる!それに少し遅れて風を切る轟音が響く―――それはつまり、今の一撃が音速を超えて放たれた事を意味していた。

 

「?『爆矢』を受けて、吹き飛んだ程度だと?」

 

ハバキリは不思議に思い、吹き飛んだザムラロイドを見上げた。中段肆剣である『爆矢』の威力を考えれば、上半身と下半身が分離するほどのはずだが、ザムラロイドは一目で分かるほど深刻なダメージを受けた様子はない。

ガシャンッ!と大きな音を立てて落下したザムラロイドを見て、その理由はすぐに分かった。ザムラロイドの右手には、刀身の折れたザムラソードが握られていたのだ。ザムラロイドは咄嗟にザムラソードを盾にして、ダメージを最小限に抑えたのだ。

 

「意外に出来る………!」

『ガッ、ギガガ………!』

 

それでも直ぐに立ち上がれないのか、ボロボロになった傷口から火花を散らしながらガクガクと痙攣するかのようにボディを震わせる異様な動作をザムラロイド。しばらく攻撃は出来ないだろうと思い、ハバキリはトッタの元に駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アシガロイドが倒れる数分前、ティラノと対峙するシャスティ、リサーナ、レイクの3人。

 

「邪魔しやがって………マホウ使えるからって、原住民程度に俺が後れを取るかよ!!」

 

ティラノが叫ぶと、彼の両肩に炎が集まってティラノサウルスの頭部を形作り、口を開いた。

 

「“暴焔竜皇・溶牙乱翔(ようがらんしょう)”!!」

 

瞬間、2つのティラノサウルスの牙が弾丸か、あるいは無数の矢の如く射出され、3人に向けて迫ってくる!

 

「ここはわたくしが!」

「レイクちゃん!!」

生命の根源たる水よ(トイニモイニミラノラミキイミカチスナ)集いて渦巻き(カナシラニカイナツナモチノニ)盾となれ(カチカイカラミチスイ)!“ラウンド・ヴォルテックス”!!」

 

レイクが前に出て呪文を唱えて杖を突きだすと、3人を十分に防御できるほどの大きさがある『渦巻く水の盾』が生成されて、雨あられと降り注ぐ炎の弾丸から防御する!

 

「やるじゃねーか、オ嬢サマよ!だが、いつまでも持つわけがねーだろう!?」

「ぐぅう………!!」

 

水の盾に炎の弾が降り注ぎ、レイクは段々と追い込まれて冷や汗をかき始める。ちょうどその時、アシガロイドをある程度片付けた草介たちが目を向けると、ティラノが嘲笑い攻撃の手を強めていた。

 

「アイツ、あんな戦い方かよ………!」

「かなりド派手アル………」

 

ティラノの苛烈な炎攻撃を目の当たりにしたレピオとレイェンが、その戦法に戦慄をしていた。

 

「でも、あれって………」

「そうだな………」

「え、何?」

 

その一方で、同じくその戦い方を見ていた草介とニールはある事に気が付いたのか話をしていた。フローが何かあるのかと思い話しかけたその時、リサーナが動いた。

 

「“ロック・バレット”!」

「あん?」

 

リサーナが呪文を唱えると、手元に岩の弾丸が生成される。そのまま発射されるのかと思いきや、

 

「どっせぇええいッ!!」

「はい!?」

 

なんと、リサーナはまるで野球のノックかのようにモーニングスタッフで“ロック・バレット”を殴りつけ、ティラノに向けて打ち飛ばした!あまりにも予想外の行動にティラノは面食らったが、打ち飛ばされた岩の弾丸はティラノの左太ももに着弾し、激痛が走った!

 

「ぐっ!?ごぉ………!!」

「あ、相変わらずですわね、お姉さま………」

「普通に発射するよりも、こっちの方が当たりやすいのよね~」

 

攻撃の手を止めて悶絶するティラノを余所に、“ラウンド・ヴォルテックス”を解除したレイクが顔を引きつらせながら言うと、リサーナはなんてことないように言ってみせた。しかし、ティラノが涙目で顔を上げると、恨めしそうに睨んできた。

 

「て、てめぇらァア~~~!!」

「ひぇッ!?」

 

獰猛な爬虫類を思わせる金色の目で睨まれて、レイクが小さく悲鳴を上げる。ティラノの周囲に、日本で言う『鬼火』の如く再度炎が燃え上がり始めた。

 

「またあの技………!?」

「ふ、2人とも、下がってるだ………!」

「シャス君………!」

 

2人が慄いて数歩後退る中、シャスティは冷や汗をかいて足と杖を持つ手を震わせながらも前に出て、杖の先端をティラノに突き付けた。シャスティの行動にリサーナとレイク、フローは驚きを隠せないでいた。

 

「む、無茶だ!いくらシャスティでも………!」

「待て、ここは彼に任せよう。」

「デュラン!?」

 

止めるべく駆け出そうとしたフローであったが、それをデュランが静止した。何を考えているのかと問いただそうとしたが、デュランだけではなく草介やニールもその考えに賛同しているのか、視線で訴えかけてきた。何か考えがあるのかと思い、フローは渋々ながらもこの場は見守る事とした。

 

「ガキが………大人の恐ろしさを思い知らせてやる………!」

「ッ………」

 

ティラノが睨みながら凄んでくるのを、シャスティは怯えた表情のまま杖を構え、ジッと見据えていた。ティラノは両手に炎を集め形作り始める中、シャスティも呪文の詠唱を始めていた。

 

全てを燃やす火よ(トナコイカイテラモランチトナクニンラ)ここに集いて(ノラノラミニカナシラニカイ)我が敵を撃て(テチキチカイノニテラナカイ)―――」

「!“ファイア・バレット”………!」

 

唱える呪文から、シャスティが“ファイア・バレット”を放とうとしていると察したレイク。かつての因縁の呪文に少し意外に思うが、、杖の先端に生成される巨大な火球を見て、つい身構えてしまう。

 

「こ、これは………」

「随分なマホウだな!だが!こっちはその2倍よぉッ!!」

 

シャスティの生成する火球を見て、ある事に気付いたリサーナ。それに対して、ティラノは嘲笑いながら両腕に先ほどの巨大なティラノサウルスの頭部を生成した!

 

「“暴焔竜皇・双竜噛破(そうりゅうごうは)”!!」

「“ファイア・バレット”!!」

 

叫ぶと共に、ティラノは両腕の竜の牙で噛みつかんと迫ってくる!それとほぼ同時に、シャスティは生成した火球を放つ!

 

(目測でも、互いの技の魔法量は同等!でも………!)

「シャスく―――」

 

リサーナが叫ぶが、発射された火球は振り下ろされる2つの恐竜の頭部、その間をすり抜けて、ティラノの腹部に着弾!爆炎が吹き上がって、彼を吹き飛ばした!

 

「ぐぉッ!?がああ!?」

 

ティラノは、両腕から炎の恐竜が霧散させながら、吹き飛ばされて仰向けに倒れてしまった。

 

「や、やった!!」

「マジかよ、シャスティのヤツ………!!」

 

シャスティがティラノに一撃を与えたことに、リサーナとレピオが驚きと喜びの混じった感情の声を上げる。ニールは感心したように頷く中、フローやレイクは驚いた表情で声を出すのも忘れて唖然としていると、倒れていたティラノがよろよろと上半身を起こした。着ていた服の腹部は焼け焦げて、その下の肌は火傷を負っていた。

 

「な、何で………俺の“暴焔竜皇”が………!?」

「………あんたのあの技、魔力使ってっか分かんねぇけど、魔力も多いし威力も強くて、それにあの形作って保つ精密さと保持力、何よりもかっけええ技だよ………」

 

でも、と、唖然としているティラノに、シャスティは続けた。

 

「わざわざあの竜の形にすんのに精密さと保持力が必要な分、技を出すまでに時間がかかってっだよ………」

「あ………」

 

シャスティに言い渡された瞬間、ティラノは唖然とする。その一方で、デュランや草介、ニールは「だろうね。」と言いたげに頷き、フローやレイクは言われて気づいたのか、納得したような顔をしていた。

 

「やっぱ、シャスティも気づいていたか………」

「あの技の性質上、早撃ちには弱いとは思っていたが………」

「それで勝算を見出して、勝負に出たわけだな………」

「それでも、だからって前に出て早撃ち対決に持ち込むのは、勇気がいるでしょうに………!」

 

シャスティの説明を聞いて、草介、デュラン、ニールは補足するように納得、フローとレイク、リサーナは、シャスティの意外な度胸に驚いていた。

 

(シャスティ、意外に勇気がありますのね………)

(いや、あの勇気は『伝説の冒険者』譲りと言ったところか………シャスティは嫌がるかもしれないけれど。)

「く、くそっ………!(今までは“暴焔竜皇”一撃でブチのめしてたから、技の研鑽とかしてなかったからなぁ………最近は直接戦闘に出張る機会も減っていたし………)」

 

レイクとフローがシャスティの『勇気』に感心する中、ティラノは悔しそうな顔で自身の慢心を自覚し、後悔していた。

 

「そちらも終えたようでござるな………」

「あ、ハバキリたち………」

「!?ザムラロイドを………!?」

「あれ?トッタ?何で?」

 

そこで、ザムラロイドとの激闘を終えたハバキリたちが合流をしてきた。リサーナがトッタに気づいて呆気に取られる中、ティラノはザムラロイドが敗れたことに少し驚いた様子を見せていた。

 

(ザムラロイド、まさか負けるとは………さて、()()()()はいつ来るのやら………)

「さて、見ての通り君が包囲されている。これ以上やり合っても、勝ち目はない。大人しく連行されてもらおうか。ワルンダイツについての情報、全部吐いてもらうぞ!」

 

ティラノの周囲をデュラン達が囲み、手にした得物を突き付ける。ティラノは不機嫌そうに舌打ちをしたが、その時、倒れていたザムラロイドの右腕が密かに動いているのが視界の端に入った。

 

「へっ!」

「ん?」

 

それに気が付いて思わず笑みがこぼれてしまうティラノ。デュランはそれに気づいて何があるのかと思い問いただそうとしたが、背後で何かが動く音がして振り返れば、上半身を起こしたザムラロイドの姿があった!

 

「何!?」

『ア、マいッ、デッ!アル………!!』

 

デュランが驚くのもつかの間、ザムラロイドはノイズ交じりの叫びを上げたかと思うと、額の丸鋸型の飾りを引きちぎるように取り外し、草介に向けて投擲してきた!

 

「うわ!?」

「しまった!?」

「ソウスケ!!」

 

咄嗟の事で全員が驚いてしまい一瞬動きが止まってしまい、誰も対処ができず、手裏剣の如く放たれた円盤『ザムラスラッガー』が、草介に向けて迫ってくる!

 

 

 

 

 

ガキンッ

 

 

 

 

 

「………!?」

「え………!?」

 

しかし、ザムラスラッガーが命中しようとしたその時、横から何かが飛んできたかと思うと金属音と共にザムラスラッガーの起動が逸れて、地面に突き刺さった!

 

「今のは………!?」

 

草介が困惑しながら地面のザムラスラッガーを見下ろしたが、そこには丸鋸だけではなく、十字に刃が伸びた手のひら大の手裏剣が落ちていた。

 

「何、あの変な形のナイフ?」

「手裏剣………?」

『ナ、に………ガァ………!?』

 

その場にいた者全てが何も言えないでいると、シンナセンに存在しない手裏剣を見たマシューが呟いた。草介が手裏剣の実物に困惑する中、ザムラロイドはバチバチと火花を散らしながら倒れこんだ。

 

「おっと。」

『ギぎィ………』

「何!?」

 

だが、倒れる寸前で背後から巨漢がそれを受け止め支えた。何が起きたかと思えば、そこにはオレンジ色のモヒカンを持った大男・地のバッファローがいた。

 

「バファロー!!」

「ようやく来たか………」

「すまなかったな。」

 

バッファローの登場に驚いていると、ティラノの影の中からドロリと湧き出るようにして影のウルフが現れた。

 

「ウルフもか!」

「援軍………いや、撤退の迎えか………!」

 

草介がウルフたちの登場に驚いていると、バッファローはザムラロイドの首筋を操作したかと思うと、ザムラロイドの頭部が胴体から分離し、彼の手の中の頭部を残して、胴体がガシャンと大きな音を立てて倒れた。

 

『ナ、何を………?』

「壊れかけとはいえ、お前にはまだ利用価値があるからな。ウルフ!」

「ああ。」

 

バッファローの言葉に、ウルフは手早く印を結んだかと思うと、バッファローの背後に巨大な機怪魔獣が浮上してきた!

その機怪魔獣は、鎧武者の甲冑を着たかのような出で立ちをしており、裂けた口を持ったような顔と頭から垂れる長髪のような無数のコード、肩には突き刺さった矢を思わせるアンテナと思わせるパーツが生えていた。

 

「機怪魔獣か!!」

「ザムラロイド専用機、オチムダートE1だ!」

「セット販売したけど、全然売れなかったんだよなー………」

「性能故に高額だもんな、こいつら………」

 

オチムダートE1の登場に草介たちが驚く中、バッファローとウルフは小さくぼやいていた。バッファローはやれやれとため息をつくと、右手のザムラロイドの頭部をオチムダートの顔目掛けて全力で放り投げた。放物線を描いて飛ぶザムラロイドの頭部は、プロバスケットボール選手のスリーポイントシュートのように開かれたオチムダートの口の中に放り込まれた!

 

『ゥウ………ウォオオーーー!!』

 

すると、『ヴゥン』という駆動音と共にオチムダートの目に赤い光が灯り、唸り声と共に巨大な機体は起動した!

 

 

 

 

 

【つづく】




アスカ丸の作戦と、ようやくデュランが生きていたことを知るワルンダイツ。本当に、死んだと思って慢心しているのは大分まぬけ。

前評判の割りにどこかポンコツ気味なザムラロイド。実はこの辺、ちょっとした伏線になってます。

ダリア、オリヴィア、マシューの『シューティングハリケーンアタック』。実はこの3人、名前含めて黒い三連星が元ネタです。似た語感で名付けたんですが(マシューはほぼそのまんまですが)、イニシャル合わせると『DOM』になるのは、本当に偶然ですw

ティラノの戦法“暴焔竜皇”、ロマン技な分、隙が多いという弱点。勇気を出したシャスティもだけど、利用されっぱなしだったレイクも、一矢報いた感じに。

ラストで出たオチムダートE1。機怪魔獣はモンスター+兵器というルールなんだけど、こいつは『落ち武者』っていうギリギリ幽霊とか妖怪のラインモチーフですw
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