異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第39話
勝者は唄い、敗者は笑う
ダオコオ村の戦いは、最終局面を迎えていた。
『ゥウ………ウォオオーーー!!』
ザムラロイドF1の頭部を取り込み、新たなボディとなった機怪魔獣オチムダートE1は起動をすると、目を覚まして『伸び』をするか、あるいは己の力強さを誇示するかのように両腕を振り上げて咆哮を上げた!
「この場は任せたぜ、ザムラロイド!」
『心得たデアル!』
「ティラノ、ここは退いて怪我を治療しろ!」
「チッ!今回ばかりは仕方ねーか………」
「あ、待て!?」
バッファローがオチムダートに向けて叫ぶ中、ティラノは悔しそうにしながらもウルフに諭されて渋々ながら彼に肩を借りてその場を後にしようとする。草介はそれを追おうとしたが、その行く手を複数の黒い影が阻んだ。
「何!?」
「こいつらは!?」
阻んできた者たち、それは先ほどまで棒立ちになっていたゾロゾロイドの大群であった。
「電波が復活している………!?」
「そうか!あの機怪魔獣のアンテナを使ったのか!」
突然再起動したゾロゾロイドに足止めをくらい、レピオは何が起きたのかを察してオチムダートを見上げて舌打ちをする。そうこうしている間に、ゾロゾロイドの後方では、ティラノたち3人が集結していた。
「そういう訳でブレイバーに勇者クン、悪いが今回はこの辺でお暇させてもらうよ………!」
「あ!?」
ティラノが小さくそう言うと、草介たちが追いかける間もなくウルフの『影渡りの術』によって影が3人を包み込み、その場から姿を消してしまった。残されたゾロゾロイドの大群はオチムダートからの指令を受け取ったのか、鉤爪やマシンガンを構えてこちらにジリジリと近づき始めてきた。
「な、何だ今のは?あんな魔法、見たこともない………?」
「いや、そもそもあれは魔法なの………?」
「それよりも、今はこいつらだ………!」
たった今ウルフが使用した忍法を見たマルティアとリサーナが疑問を呟くが、考える間もなくゾロゾロイド達は迫って来る。更に、オチムダートも腰に差していた刀を引き抜いて両手で持って構えている!
「ちっ!機怪魔獣だけでも大変な相手なのに………!?」
「フロー、ソウスケ、すまないがこいつらを頼む!」
「分かった!」
「え?」
デュランはそう言うと、ニールやトライヤーズたちと目配せをしてGPデバイスを操作した。リサーナは何を言っているのかと問いかけようとするが、それよりも先にデュラン達の元へ5機のマシンメイル―――デュランカー、バトルトレイン、フェニックスジェット、トータスドリル、タイガーアクア(※地上では自走できないのでバトルトレインに牽引されている。)が走って来た。
「あれは………?」
「何ですの?あの乗り物は………?」
マシンメイルの登場に、デュラン達の正体とマシンメイルの関連性を知らないリサーナやレイクは小さく驚いていた。
そういえばこの人たちは知らなかったな、と思い出していると、デュランダー隊の一同は飛び上がってそれぞれのマシンメイルに向かって高く跳び上がっていく!
「「「「「フュージョイン!!」」」」」
そしてそれぞれがマシンメイルとフュージョインを果たし、直ぐ様に変形を開始する!
『チェンジ!デュランダー!!』
『チェンジ!バトルパンサー!!』
『変身!トライフェニックス!!』
『チェンジ!トライトータス!!』
『
5機のマシンメイルは変形を果たすと、着地と同時にオチムダートと対峙した!
「え………えええ!?」
「何これ!?」
「かっこいい………!!」
突然並び立ったマシンメイルに、初めて見たレイクとリサーナは驚きの声を上げる。一方でトッタはその出で立ちに目を輝かせているのを、後ろから見ていたフローとシャスティは同意とばかりに腕を組んでうんうんと頷いていた。「何で後方彼氏面?」とマルティアが呆れている間に、デュランダー隊は戦闘を開始した。
『いざ、勝負デアル!』
『ここではソウスケたちが危険だ………』
『オレに任せろ!チェンジ!トライゲンブ!!オロチアンカー!!』
意気揚々と刀を振り上げるオチムダートに対して、デュランダーはこのままここで戦っては、草介たちに被害が出てしまうと考える。そこで、トライトータスはトライゲンブに変形をすると、両肩のドリルアンカーを射出した!
『ヌ………?』
オチムダートは身構えたが、しかし、2つのアンカーはオチムダートが視線で追うも、左右を通り抜けて、後方の地面に突き刺さった。
『馬鹿め、どこを狙っているのデアル?』
『お前は狙ってねーよ!』
『何?』
嘲笑うオチムダートであったが、トライゲンブの発言に反応して振り返ってみれば、その目の前にはトライゲンブの甲羅が迫ってきていた!
『なんグエッ!?』
『ハードシェル・タックルーーー!!』
トライゲンブの一撃を受けたオチムダートは、そのまま押し込まれるように後方に吹っ飛ばされてしまった!
トライゲンブはオチムダートの後方にアンカーを打ち込んで、ウィンチを一気に巻き取ってタックルを叩き込んだのだ!
『確かに、トライゲンブはトライメイル中最低の機動力ではあるが、装甲の硬さと重量は武器になるんだよ!』
『よし、これでこの場から離すことができた!』
『一気に決めるぞ!』
『おう!』『御意!』『アイアイ~♪』
仰向けに倒れトライゲンブにのしかかられたオチムダートを見たデュランダーが号令をかけると、一同は短く返答をして駆け出した。しかし、トライゲンブの下で藻掻いていたオチムダートは力ずくで押しのけて立ち上がった。
『小癪デアル!!』
『うわ!?』
トライゲンブが悲鳴を上げるが、オチムダートの両肩アーマーがスライドするように展開すると、ミサイルランチャーが顔を出して6発のミサイルが発射された!
『アームシューター!!』
『フェザーガン!!』
『クローバルカン!!』
咄嗟にデュランダー、トライフェニックス、トライタイガーが迎撃し、空中で爆発を起こす!しかし、爆発した煙の中から1発のミサイルが飛び出したかと思うと、軌道が逸れたのか屋敷の方へと飛んでいく!
『何!?』
「えっ!?」
デュランダーが驚くのもつかの間、ミサイルは屋敷に着弾すると爆発!屋敷の半分ほどを吹き飛ばし、その瓦礫が降り注ぐ!
「しまッ………!!」
『マズい!ソウスケ!!』
「うわああ!?」
ゾロゾロイドと対峙していた草介たちに向けて巨大な破片が落ちてくる!トライフェニックスが叫ぶが、反応が遅れてしまい逃げられない!
ブォオオンッ
『!?』
しかし、瓦礫が草介たちの目の前まで迫って来たその時、突如としてエンジン音が鳴り響いたかと思うと、黒い影が疾風の如くその場を走り、草介たちの姿が消える!
「今のは!?くっ………!」
突然の出来事に驚くが、マルティア達が瓦礫から逃れるべくその場を離脱し、ゾロゾロイド達が瓦礫によって押しつぶされる中、その影は屋敷から離れた地点で停止した。
『あれは………』
デュランダーが目で追った先で止まったそれは、黒と紫色の自動車であった。トライヤーズやバトルパンサーが呆気に取られている一方で、車内の運転席と助手席の草介とフロー、後部座席のシャスティ、リサーナ、レイク、トッタも、同じような顔をしていた。
「え?え!?」
『―――今のは、流石に危なかったね。地球で言うところの『九死に一生を得る』ってヤツかな?』
「何?」
草介たちが戸惑っていると、車のスピーカーからどこか少年のようにも聞こえる、中性的な少女のような声が聞こえてきた。
『ゾロゾロイドも今の爆発で片付いたみたいだし、ここまで来れば安全だよ。』
「君は………?」
「た、助かったけれど………」
「どうなってますの、これは………!?」
助かったものの、謎の車の登場と、いつの間にか乗車している事に混乱する草介たち。そこに、マルティア達がこちらに向かってくるのが窓の外から見えた。
『な、何が起きたのデアル………?』
『隊長、あれってもしかして?』
『ああ。“彼女”だ。だが、今はこちらを!』
『………そーアルな。』
オチムダートも突然の自動車の登場に困惑している中、デュランダー達はその正体に勘づいている様子であった。それでも今は、目の前の戦いを優先すべきと考えてオチムダートに向きなおった。それに気づいたのか、オチムダートもデュランダー隊に向きなおり、刀を握るアームに力を入れた。
『ゆ、油断できないデアル!喰らうデアル!』
オチムダートは叫ぶと、刀を振りかざして向かってくる!しかし、ガングパンサーを手にしたバトルパンサーが前に出て、それを受け止めた!
『みんな、私が押さえつけている間に合体するんだ!』
『分かった!行くぞ!』
『『『了解!!』』』
『ブレイバード!!』
トライヤーズが返答するのと同時にデュランダーが叫ぶと、天に向かって額から光が放たれる!ほどなくして、空気を斬り裂くようにブレイバードが飛来する!
『行くぞ!』
『おう!』『合点ネ!』
トライヤーズ3機が同時に飛び上がると、それぞれ変形を始めた!
『トウッ!!』
ブレイバードはデュランダーの真上まで飛来すると合体形態に変形、確認したデュランダーが飛び上がるとデュランカーに変形、車体の先端が下になるように中央の開いたスペースに合体するとカバーが下りてロックされ、両腕が下に下がった。
トライメイルの3機は合体の所定ポジション―――トライタイガーの背後にトライフェニックス、下位置にトライトータス―――にそれぞれつくと、トライタイガーの背後にトライフェニックスが、太股にトライトータスが合体、右肩に虎の頭部、左肩にリクガメの頭部が、胸部に赤い鳥の頭部がそれぞれ合体する!
『ギガ・コンバイン!!』
デュランダーの掛け声と共に機首の根元から赤い兜が飛び出して機体上部に接続、180度反転するとデュランダーの頭部がせり上がり、口元を面頬のようなマスクパーツが覆うと、額に金色の角を持った頭部となる。最後に、胸部が反転して獅子の顔が現れた!
『『『トライコンバイン!!』』』
掛け声と共に尾翼パーツが変形して、額に六角形、牙、翼を組み合わせたような前立てが付いた頭部となって合体した!
『勇者合体!デュランブレイバー!!』
『『『三神合体!』』』『トライディアン!!』
合体を完了したデュランブレイバーとトライディアンが名乗りを上げると、背面と両脚のスラスターでゆっくりと着地をした!
『グゥッ!?』
『な、何デアル、あのマシンメイルは!?ブレイバー以外に、あんな機体が!?』
ちょうどその時、バトルパンサーの槍を弾き飛ばしたオチムダートは並び立った2機を確認するが、デュランブレイバーのデータはあるものの、その隣に立つ機体・トライディアンはデータがなく、混乱を起こしていた。
『データなし………パワー、スピード、共に未知数………!?』
『混乱している?』
『拙者たちのデータは無いようでござるな………』
『隊長!今がチャンスだぜ!』
『必殺技の同時撃ちアル!』
『よし、行くぞ!』
フリーズしている今がチャンスと認識し、2機のマシンメイルは必殺技の体制に入った!
『デュランソード!!』
『トライハルバード!!』
デュランブレイバーが掛け声と共に背面からデュランソードを抜刀し、トライディアンが右手にビャッコロッドを持つと、その先端にゲンブアックス、更にその先にスザク丸が合体しトライハルバードとなり、両者は獲物を構え切っ先を交差させた!
『ブレイバーチャージ!!』
デュランブレイバーはデュランソードを構えると、胸の獅子の口から緑色のエネルギーが放出されて刀身に纏わせると、振り下ろすように下に構えた。
『『『トライチャージ!!』』』
3人が叫ぶと、トライディアンの胸と両肩の動物の頭部の目が光り、稲妻のような赤、白、カーキ色のエネルギーが放たれて刀身に纏わせると、3色のエネルギーを纏った刀身を突き付けるように構えた。
『ぬ、ぬぅう………!?』
デュランブレイバーとトライディアンが獲物の切っ先を構える気迫にオチムダートがたじろぐ中、2体のマシンメイルは背中のスラスターを最大に噴かせて一気に接近!交差するように逆袈裟と袈裟懸けになるように振り下ろした!
『ライトニング・スラァアーーーッシュッ!!』
『『『トラァアイッ!フィニィイーーーッシュ!!!』』』
交差するように斬り割かれ、その胴に『X字』の傷を受けたオチムダート!血を噴出させるかのように傷口から火花を散らしながら、数歩よろめいた。
『ム、ムねン……ガガっ………デ、aる………ジジッ、ティらの………サマ!ホネhAあ、拾ッて、デアルーー~ー!!』
ノイズ交じりに断末魔とも呼べなくもない言葉を残すと、オチムダート………いや、ザムラロイドAKY044は仰向けに倒れこみ、爆発四散した!
『ガァアーーーッ!!』
デュランブレイバーとトライディアンが爆炎を背に残心すると武器を納める。その直後、デュランブレイバーの胸の獅子が勝利の勝鬨の如く雄叫びを上げた。
「やったー!!」
「す、すごい………!!」
車から降りて、オチムダートが爆炎に沈むのを見届けた草介たち。トッタが歓声を上げてリサーナは言葉が出ないでいる中、レイクが思わず感嘆の声を呟く。草介たちもホッとしたように胸を撫でおろしていると、そこで草介はふと、後ろの方を振り返った。
「あれ?さっきの車は………?」
「え?あ、あれ?」
「いつの間に………?」
そこには、先ほどまでいたはずの黒と紫色の車は、影も形もなくなっていた。周囲をキョロキョロと見渡すが、どこにも姿はなかった。
「何だったんだ、あの車は………?」
「おそらく、別行動をしているっていうデュランの仲間がフュージョインしていたのだとは思うけど………」
「そもそも、突然現れただもんな、あの車………」
思い返してみれば、謎の多い車だったと口々に話す草介たち。不思議な存在であったと、首を傾げる事しかできなかった。
「………ところでさ、みんな。」
「ん?」
ふと、そこでフローが声をかけた。草介たちはフローの方を向くと、彼女は他愛のないことを聞くように尋ねた。
「おなかすかない?」
「「すいた。」」
草介とシャスティは即答した。
†
戦闘から数時間後、
「手当は終わったのか?ティラノ?」
「何とかな………」
シンナセンの衛星軌道上に浮かぶマッドアドワーズ。胴体と肩に包帯を巻いたティラノがある一室に入ると、コンソールを操作していたウルフとバッファローが振り返って話しかけた。
「珍しく直接戦闘したと思ったら、随分と手ひどくやられたな?」
「ああ、こればっかりは反省だ………」
「珍しく凹んでるな………」
揶揄ったつもりが妙に反省している様子のティラノに顔を引きつらせるウルフ。それを気にせずに、ティラノはバッファローに問いかけた。
「それよりも、アレは?」
「ああ、ちゃんと送られて来ているぜ………『AKY044の戦闘データ』………」
「そうか………ブレイバーが生きていたり、情報にない合体マシンメイルが出てきたりして、色々と想定外の事は起きたし、敗北しちまったが………ザムラロイドの実戦データが取れたのは良かったぜ………」
「ついでに、合体した新型機のデータも多少な。」
バッファローから答えを聞いたティラノはほくそ笑む。空中に投影されたウィンドウには、先ほどまでの戦闘データが映像と共に事細かに表示され、コンピューターによって事細かに解析されていた。
「ザムラロイド………高性能な分高額のせいか、全然売れなかったもんな………」
「そのせいで、アップデートに必要な実戦データが集まらなかったんだよなぁ………おかげで、あんなポンコツ個体が出てくる始末だし………」
ため息交じりにウルフとバッファローがぼやく一方で、ティラノはコンソールを操作しながらほくそ笑んでいた。
「AKY044、「骨は拾ってくれ」って言っていたな?その遺言通り、おまえの
ティラノがオチムダートを置き土産にした理由がこれであった。レピオによって潰されたアンテナの代わりにオチムダートのアンテナを使い、今回の戦闘データをマッドアドワーズに送信し、あわよくばデュランダー隊を撃破させる。ティラノたちにとって、この戦いにおける『勝敗』は関係なかったのだ。
「ブレイバー………今回は負けを認めてやろう。そんなもの、ザムラロイドのアップデートの代償としては十分すぎるからなぁ~~~………!!」
画面に映るデュランブレイバーに向けて、敗北者たるティラノは笑っていた………
†
戦いが終わり、戦闘によって炎上した屋敷の消火も終えた頃には、東の空が明るみ始めていた。レイクを連れたデュラン達一行は、ダオコオ村のリーシャの酒場にまで戻ってきていた。
「………改めまして、この度は申し訳ありませんでした………!」
大きなテーブルと椅子がいくつも並んだ酒場の広間で、レイクは深々と頭を下げた。草介や当事者であるシャスティは少し困ったように顔を引きつらせていた。
「まあ………君は利用されていた訳だしね………」
「元々は、ソイツの逆恨みが原因っすけどね………」
デュランが苦笑気味に言うが、レピオがバッサリと切り捨てる。レイクはビクリと体を震わせるが、カウンター越しに見守っていたリーシャの方にも向きなおった。
「それと………村の方にも不安を持たせてしまいましたし、このお店を荒らしてしまいましたし………」
「まあ、ウチもたまーに酔っ払いとかの喧嘩で騒がしくなるから慣れてるからねー………」
リーシャは笑いながら答えるが、レイクは何度も頭を下げていた。草介が呆れたようにため息をついていると、リサーナがトッタの方へ向きなおった。
「所でトッタ?」
「え?」
「助けてくれたのはうれしかったよ?ありがとう。」
「あ、うん。どういたしまして………」
「でも、危ないことはもうしちゃだめよ?いいわね?」
「あ、はい………」
満面の笑みで凄まれて、冷や汗をかきながら何度も頷くトッタ。草介たちはそれを微笑ましく見ていると、そこにダリアが部屋の壁に立てかけられたもの―――トッタが掠め取った
「しかし、あの武器を奪ったのはびっくりしたけどね~………」
「まーねー。手を伸ばしたら盗れそうだったからな。盗みとスリで生き抜いてきていたから、そういうの得意だったし。」
「悪ガキめ………」
「世の中、何が役立つか分からないアルな………」
トッタの返答を聞いて、レピオとレイェンは呆れながら苦笑いを浮かべていた。するとそこで後ろからオリヴィアがシャスティに話しかけてきた。
「シャスティさん。」
「え?あ、はい?」
「勝手ながら話を聞かせてもらったのですが………申し訳ございません。」
「え!?」
突然、オリヴィアが頭を下げて謝って来た。突然の出来事に一同は困惑するが、オリヴィアは続けた。
「昨晩の話………あなたの家に、何人も女性が押しかけてきたと言っていましたね?」
「あ、んだ………」
「その内の一人………多分、私の姉です。」
「「「ええ?!」」」
オリヴィアの明かした事実に呆気に取られる一同。まさか、こんな身近にブルートの『妻』の親族がいたとは思ってもいなかった。ふと、そこで草介は一昨日の夜の出来事を思い出した。
(そういえば、一昨日ブルートの話題が出たら嫌そうな顔してたけど………これが原因だったのか………)
「お、お姉さんって………?」
「私の姉、スレッタがブルートとの間に双子の姉妹を儲けていまして………」
「スレッタさん………ああ、ディニアとジーナの………」
「ご存じでしたか………改めて姉に代わり、謝罪いたします………」
「い、いえ、そんな………」
改めて頭を下げるオリヴィアに、シャスティは申し訳なさそうに手を振っていた。そこで、話を聞いていたリサーナが質問をしてきた。
「あ、そういえば3人は?」
「ご心配なく。無事に国を脱出して、カマリサ帝国で他の難民と一緒に保護をされたと、連絡を受けています。姉も私たちと同じ『影の騎士』とはいえ、出産を機に引退したのに騎士団の特殊回線使ってきたのには少し困りましたが………」
「よかった………」
3人の無事を聞いて、ホッと胸を撫で下ろすリサーナ。その様子にデュランは(腹違いとはいえ、きょうだいやその母は心配だよな………)と彼女の気持ちを感じ取っていいた。
その時、パンッパンッ、と手を叩く音が聞こえてきた。一斉に視線を向けると、そこには手を鳴らしたためか、両手を合わせたリーシャの姿があった。
「はいはい!何か難しい話してるけど、そんな暗い顔されちゃあこっちだって気が滅入っちゃうってもんだよ!」
「リーシャさん………」
「みんな、朝ご飯まだでしょう?席についてー!」
リーシャの言葉にデュランは苦笑をした。リーシャに促されて一同はテーブルにつくと、彼女はお盆に乗った料理を配膳し始めた。メニューはベーコンエッグにスープ、それに皿にこんもりと盛られたイアムであった。
「昨夜はあなたたち、おあずけ喰らっちゃったからねー。イアムに合う朝ご飯、用意したわよ~!」
「ありがとうございます。」
デュランがお礼を言う中、ソウスケとハバキリは一度食べ損ねてしまったためか、今度こそはと目を輝かせていた。
「さて、いよいよだな………!」
「うむ………!」
「じゃ、さっそく………」
「「いただきます!!」」
「「「いただきま~す!!」」」
草介とハバキリが両手を合わせ、お辞儀をするように食前の挨拶をする。フローやシャスティ達は(少し変わっているな)と思いながらも、それに倣って同じように『日本式』の挨拶をする。2人は待ちに待ったイアムをフォークで掬うと、口に運んだ。
「んぐっ………!」
「むぅっ………!」
イアムをかみしめた瞬間、口いっぱいに広がるその粘り気と甘み、独特の食感と風味………間違いなく、日本の米とほとんど同じ味であった。
「米だ………!」
「匂いも、味も………!」
イアムの味が、日本の米と大差ないものであると確信し、2人はガツガツとイアムを掻っ込んだ。ときおりベーコンエッグも口に含めて咀嚼し、少しつっかえそうになるとスープを啜って流し込む。涙を流すんじゃないかと思うほどイアムを噛みしめ味わう2人に、デュラン達は苦笑しながらもフォークを口に運んでいた。
「そ、そんなに………?」
「なんだか………2人の食べている姿だけで自然と食欲が湧いてくるネ。」
「よっぽどイアムが食べたかったのねぇ………」
「まあ、気持ちは分からなくもないが………」
2人の様子を食べながら見ていたデュラン達は呟いていた。フローも苦笑をしていたが、ふと、レイクの方に視線を向けてみれば、少し浮かない顔をしながらフォークでイアムを口に運んでいた。レイクが悪いとはいえ少し心配していると、草介とハバキリがほぼ同時に叫んでいた。
「「イアムおかわり!!」」
「はいよ~。あ、そうだ、ちょっと待ってってね。」
リーシャは笑顔で答え厨房の方に向かって行った。草介たちは何かあるのだろうかと思っていると、リーシャは何やら球状のものが2つずつ乗った皿を持ってきた。
「はい、お待たせ~♪」
「え?」
「これは………?」
それは、握り拳大の球状に固められたイアムであった。自分たちの知るものとは少し異なるものの、その形状のイアムが何なのか知っている草介とハバキリは、思わず身を乗り出して凝視してしまった。
「お、おにぎり………!?」
「昨夜の話を聞いて、試しに作って見たのよ。初めて作ったから、口に合うかどうか………」
少し苦笑気味に説明をするリーシャであったが、当の2人は目の前のおにぎりに釘付けになっていた。イアムだけではなく故郷の料理まで用意してくれたリーシャに対して、感激するどころではなかった。
「何という心遣い………!」
「リーシャさん、ありがとうございます!!」
「いやいや、そんなに喜んでくれるなら作った甲斐があったってもんよ!」
感激のあまり頭を下げる草介とハバキリに、リーシャは照れ臭そうに笑っていた。2人は早速おにぎりを鷲掴みにすると、それを見たフローとレイクがぎょっと驚いた。
「あれ、手づかみ?」
「おにぎりはこう食べるんだよ。」
「へ、へぇ………?」
昨日の話を聞いていなかった彼女たちはおにぎりの食べ方に少し戸惑っていたが、それに構わず2人はおにぎりをほおばった。口いっぱいに広がるイアムと塩の味………少し塩味が強いが、それでも2人にとっては十分であった。
「う、うまい………!」
「おにぎりだ………間違いなく………!」
「泣くほど………!?」
故郷の料理を口にしてかみしめた瞬間、2人はついにポロリと涙をこぼしてしまった。2人の様子にフローやクララが困惑していると、興味を持ったらしいレイクがじっと皿の上のおにぎりを見つめていた。
「これって………?」
「あ、うん、ソウスケたちの故郷の料理なんだよ。」
「お嬢さんも食べるかい?」
「え、ええ………」
リーシャに勧められて、フローと共に頷くレイク。リーシャは笑いながらおにぎりの乗った皿を差し出すと、フローたちは草介に倣って素手で持ち、ひと口かじった。
「む、これは………」
「しょっぱい………でも、その分、イアムの味が引き立って………」
初めて食べる異世界の再現料理に、フローとレイクは舌鼓を打った。だけど、とレイクは口を開いた。
「もう少し塩を減らした方が、イアムの味が引き立つと思いますわね………」
「ん?そうかい?」
「流石、貴族の娘だけあって、舌は肥えているみたいね………」
レイクの感想にリーシャはキョトンとしていたが、彼女の感想にロッティンとデュランは感心をしていた。
「ふむ………」
そこでふと、フローは考えた。彼女は反省する意思はある。そしてあの料理の味に対する意外な才能。これを活かすには………と考えると、あるアイディアを思いついた。
「………うん、それがいいね。父上にはあとで言えばいいしね。」
「え?」「はい?」
フローが笑顔で頷くのを見て、ソウスケやレイクは訳が明からず首を傾げた。
†
数日後、リーシャの酒場には平民の服を着ていても隠し切れない気品を持った金髪ツインテールの少女が、給仕として働くようになった。
女将のリーシャによれば迷惑をかけた罪滅ぼしの奉仕活動らしく、態度は少しつんけんとしながらも、接客態度はそれなりに良いため徐々に常連客も彼女を認めるようになっていた。
更に数ヶ月後、この酒場ではイアムを使った『オニギリ』や『ドンブリ』、『オチャズケ』がメニューに追加され、「シンナセンを救った勇者より伝えられた『勇者めし』」として村の名物となった。
その味の決め手には味見を担当した新人給仕のアドバイスがあったからというのは、村の中では周知の事実であったとか。
更に、イアム料理の噂を聞きつけた料理人たちが訪れて料理のマネや独自のアレンジ、まったく新しいイアム料理のアドバイスを求めるようになった。
後の時代、2人はイアム料理を世界に広めた『イアムの母』とその弟子としてシンナセンの料理史に名前を残すことになるのだが、それはまた別の話である。
【つづく】
ラストのイアム実食のためにザムラロイドとの決着はあっさり目に。
ザムラロイドがあまり売れていないのは前の話で書いていたとおりなのですが、そのせいでアップデートされていなかったというオチ。どこかポンコツだったのはそのため。
ようやくイアム実食。形は違えど味は米と同じで、更におにぎりまで出てくる気遣い。ラストは師弟コンビ誕生ルートに。