異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第40話
閉ざされた要塞都市
「いやぁ………本当にご飯、イアムが食べられるとは………」
「しかも、お土産にイアムを俵3つももらえるとは………米俵なんて、実物初めて見たよ………」
食事を終え、レイクの対処をフローが下してから数時間後、ガタンゴトンと揺れる帰りのバトルトレイン車内で草介とハバキリは、詰め込まれた3つの米俵ならぬ『イアム俵』を見ながらありがたさと困惑の混ざった顔で話していた。帰り際に村の問題を解決してくれたからと、村人からお礼にイアムの詰まった俵を3つ貰ったのだ。
「うわー!」「すげー!」「はやーい!」
席の一角では、トッタ、ギッタ、スッタが窓に張り付いて、流れていく景色から分かる機関車の速さにはしゃいでおり、反対の席ではリーシャたちがそれを微笑ましく見ていた。
「すみません、私たちまで………」
「いえ、王都まで送るくらいならお安い御用ですから。」
改めて頭を下げるリサーナに対して、デュランがなんてことないように答える。せっかくだからと、デュランの提案でリサーナたちはバトルトレインで王都まで送り届けてもらえることになっていた。デュランとしては、昨晩の事もあって、せっかく再会した姉弟をすぐに別れさせるのは心苦しいと感じての提案だった。
そんな時、隣の席では草介が対面に座るシャスティとリサーナに話しかけていた。
「しかし、今までシャスティの魔法は見てきたけど………あれって、魔法使いの中では結構上の方だったんだな………」
「ぇう………」
「まあ、確かにこやつの魔法しか見たことないのなら、そう思うのも無理はないかのう………」
草介に言われて、少し恥ずかしそうにするシャスティ。隣で聞いていたレヴァンティも呆れたように呟くと、リサーナが話しかけてきた。
「あの、レヴァンティ先生、昨日のシャス君の“ファイア・バレット”を見て思ったんですけど………」
「おぬしも気づいたか………」
「え?何?」
何か気づいたらしいリサーナとレヴァンティの反応が気になったのか、草介が問いかけた。2人は顔を見合わせて苦笑をすると、リサーナが口を話し始めた。
「えーと、ソウスケ君とかは詳しく知らないと思うから改めて説明をするとね………攻撃魔法にはいくつか種類があるんだけど………それぞれに特徴があるのよ。」
「一般的に習う攻撃魔法は主に4種類、属性魔法を砲弾状にして放つ『バレット系』、針、または矢の形状にして放つ『アロー系』、刃状にして放つ『カッター系』、そして、バレット系の上位魔法である『カノン系』じゃ。」
リサーナに続くようにレヴァンティも説明をする。隣にいたデュラン達も興味を持ったのか、意識をそちらに向けていた。
「この内、バレット系は破壊力に優れ込める魔力によって威力が変わる特性を持っている。つまり、理論上はカノン系魔法と同等の威力は出せるが、消費魔力とチャージ時間が膨大になるため、現実的とは言えぬ。」
だけど、と、リサーナはシャスティの方に視線を向けた。
「昨日の戦いで、確信したわ。シャス君は、生まれ持った魔力量が同年代の数倍近くはあるのよ。その魔力量故に威力も高くて、チャージ時間も大分短縮させていたのよ………」
「そ、そうだっただか………!?」
「自覚なかったのか?」
リサーナの説明を聞いて、当のシャスティ本人が一番驚いていた。草介が呆れていると、シャスティは少し気恥ずかしそうにして口を開いた。
「だ、だって………母ちゃんもあん
「あー………」
「それは………」
シャスティの弁明を聞いて、草介たちはどこか困ったような表情になっていた。シャスティが不思議そうにしていると、そこにレピオが呆れたように声をかけてきた。
「あのさーシャスティ………お前のお袋さんって確か、世界最高峰レベルのスゴイ魔法使いなんだよな?」
「ん、んだ………?」
「魔法学校の先生務めるくらいなんだから十分優秀な魔法使いだとは思うけどよ、そんなスゴイ魔法使いと同じ事ができると思うか?」
シャスティはキョトンとした表情をしていたが、レピオの問いかけに数秒考えこみ、ハッとした顔となった。
「あっ!!」
「今気付いたのか………」
シャスティの反応に呆れる一同。
それもそうだろう。確かにシャスティは、母であるティファルの魔法を毎日のように間近で見てきたのだろう。だが、それは他人から見たら『
「それが、いじめのきっかけになった例の『ファイア・バレット事件』の原因って訳か………」
「わ、悪いことしちまっただなぁ………」
「まあ、本当に悪気はなかったんだし………」
呆れたようにため息をつく一同。シャスティは少し俯いて落ち込んでいたが、それをリサーナが慰めていた。草介たちは顔を合わせて苦笑をしている中、俯いていたシャスティは何か考えている様子であった。
†
デュラン達が帰路についている頃、シンナセンの北の果て、ティダマ大陸のレイヴン魔帝国。
「そうか………やはりあの勇者、デュランは生きていたか………」
「うむ。どうやってあの爆発から生き残ったのかまでは知らないがな………」
「何でちゃんと生死を確認しなかったダスか………」
リブアン城の一室、ウルフとバッファローからデュランの生存を聞いたカラとボルグは、呆れたようにため息をついた。ウルフたちは少し気まずそうにしている中、同じくソファーに座って聞いていたキアラは、頬杖をついてどこか興味なさそうにしていた。
「ひめさま、どうしたの?」
「………別に。だた、あの勇者が生きていたのなら、少し面倒ね、って思っただけよ。」
隣にちょこんと腰かけたミュールが問いかけてくるが、キアラは視線を逸らして言い捨てる。その口の端が、どこか嬉しそうにうっすらと上がっていたのを、ミュールは不思議そうに見ていた。
「だが、ブレイバーの生存とは別に報告をしたいことがある。連中の仲間が1人、別行動をしているようなのだ。」
「ああ。毎回姿は見えねえが、何度かそいつの仕業らしき妨害があった。昨晩の屋敷での件もそうだ。」
「別行動だと?」
「話を聞く限り、隠密行動ができるタイプの戦士かしら?」
ウルフとバッファローが話を変えると、ここでキアラも興味を持ったのか視線を向けた。
「正体不明の敵に、これ以上好き勝手されてはたまらない。」
「かと言って、どこにいるかも分からない敵を探すのは骨が折れるダス………」
「それならば、おびき寄せて炙り出すのが手っ取り早いわね。」
「我々も同意見だ。」
キアラたちの提案を聞いて、ウルフもそれに同意する。バッファローも頷くと、ロコロ王国の地図を取り出してローテーブルの上に広げてみせた。
「この『ファリージャ』という要塞都市、ここはロコロ王国においてサンルスター魔法国との貿易の要とされているそうだ。ここを機怪魔獣で占領すれば、必然的にブレイバーどもが奪還しに来るだろう。」
「なるほど、そこを返り討ち、あるいは捕縛すれば、隠れてるヤツが助けにくるって算段ね。」
「話が早いな。」
ウルフの作戦を察したキアラが呟くと、ウルフは感心したように頷いた。だけど、とキアラは続けた。
「『貿易の要』っていう街よ?警備は当然厳重のはずよ。それはどうするつもりかしら?」
「問題はない。我が隠密機怪魔獣軍団を持ってすれば、1日もかかるまいよ………」
「なるほどね………」
マスクの下で不敵な笑みを浮かべるウルフ。よほどの自身があると感じ取ったキアラは、彼の作戦に乗ることにした。
「分かったわ。準備ができたら呼んでちょうだい。私の機怪魔獣は、そうね………街中であれば接近戦向きのタイプが好ましいわね。」
「分かった、選定しておこう。」
「準備には数日かかると思う。しばし待ってくれ。」
キアラの要望に、ウルフとバッファローはそれだけ言うと、部屋から退室していった。
「デュラン………今度こそは………」
2人が立ち去った後、キアラは誰に聞かれる事なく小さく呟いていた。
†
「何、復学をするだと?」
「んだ。」
草介たちが王都ロコロに帰還した昼過ぎ頃。サンルスターへ向かうべく馬車を取りに行ったリサーナたちと別れて別荘の談話室でくつろいでいた草介たちであったが、そこで同じく休んでいたレヴァンティとシャスティが話し合っていた。
「決心をしたのは良いが………何故急に?」
「今回の事で、色々とオラん中で考えただよ。オラ、結構世間知らずだなって………それに、いつまでもお師匠様や勇者様の後ろさ隠れて怯えてばっかじゃあいけねえしなぁ………勇者様の調べモンも、進めねぇといけねえし。」
「そうか………」
意を決したようなシャスティの顔を見たレヴァンティはふっと表情を和らげると、その頭を撫でた。
「お前がそう決めたのなら、わしは何も言わぬ。学園にはわしから手紙を出しておこう。」
「お願いしますだ。」
シャスティは頷くと、レヴァンティは笑みを浮かべながら立ち上がり、帽子をかぶりなおした。
「では、わしはこの辺で失礼させてもらうぞ。」
「ええ。」
それでは、と言ってレヴァンティは別荘を後にした。草介たちはシャスティが前に進もうとしているのを嬉しくも不安にも思ってみていた。そこでふと、フローがデュランに問いかけた。
「そういえばデュラン、昨晩私たちを助けてくれたあの黒い車って………」
「あ、そういえば………」
「もしかして、別行動しているっていう仲間か………?」
フローの質問を聞いて、シャスティと草介もそれを思い出して問いかける。デュランとニールは苦笑していると、レピオたちも話に入って来た。
「確か『アスカ丸』って名前でしたよね?」
「別の部隊所属で、アタシらより先にシンナセンに来てたアルよね。」
「拙者たちも直接話したり会ったりはしたことがないでござるな………」
「そうだったのか………」
トライヤーズ3人の話を聞いてシャスティたちは納得したように頷いた。デュランは頷くと、口を開いた。
「彼女、アスカ丸は我々とは別の所属でな。現在は調べものがあるという事で別行動をとっていたんだ。」
「そうだったのか………」
「それに、」
フローが納得したように頷くと、それにデュランが苦笑しながら続けた。
「所属している部隊の上司からの、正式なうちの隊への出向辞令が出ていないそうでね。申請はしているみたいだけど。」
「あ、その辺はしっかりしているのか………」
「いや、前に勝手に別部隊に協力したら、上からそこそこ強めに叱られたそうで………」
「前科あっただか………」
デュランの説明を聞いて、草介たちは呆れた表情になっていた。ふと、草介が視線をソファーの方に向けると、座っていたアルスが頬を紅く染めてどこかボーっとしているのに気がついた。
「アルス、どうした?ボーっとして………」
「え?あ、いや………なんでもないでありますよ………」
「?」
どこか慌てた様子で表情を戻したアルスに、草介たちは小首を傾げていた。デュランだけは何か知っているのか、少し困ったような表情になっていた。
†
同じ頃、任務を終えたロンたちは、帰路の途中で立ち寄った小さな町の宿屋で休憩をしていた。
「しかし、今回は割と楽な任務だったな。」
「まあ、書類の運搬なんていう冒険者でもできそうな任務だったからね。」
「でも、内容はベロースリット領の新領主の件に関して。冒険者には任せられない。」
「それもそうだな………」
宿屋の出入り口に近い席でテーブルを囲い、注文した果実のジュースや紅茶を飲みながら雑談をする一同。フェイが一緒に頼んだケーキをフォークでつつきながら何気なく宿屋のスイングドアの方を見ると、宿屋の前を1人の人物が通り過ぎるのが見えた。
「ん………?」
「どうかしたか、フェイ?」
カールがフェイの様子に気づいて声をかけるが、彼女はそれに構わずに席を立って宿屋の外に出て行った。ロンたちはそれに少し驚いて後を追うと、フェイはあまり人通りも少ない周囲をキョロキョロと見渡し、眼鏡に手を当てて探索魔法まで使用していた。
「見失った………探索魔法にも引っかからないなんて………」
「どうしたんだフェイ?急に飛び出したりなんかして?」
珍しく少し慌てた様子で周囲を見渡すフェイに、ロンが声をかける。カールとドラムも何事かと近づいて来ると、フェイは振り返って口を開いた。
「今、ここを吟遊詩人が通り過ぎた。」
「吟遊詩人が?」
「確かに珍しいな。最近は通信用魔法水晶の普及やティルヴィ出版みたいな出版社が増えたせいで、めっきり減ったって聞いてはいたが………」
「だけど、だからって飛び出すほどか?」
フェイの答えにカールとドラムが首を傾げつつも感慨深くしていたが、ロンはそれが理由ではないと考えて問いかけた。フェイは真剣な目をして頷いた。
「その吟遊詩人………おそらく、デュランやワルンダイツと同じ宇宙人………」
「は?」「何?」
「何故そう思うんだ?」
フェイの話を聞いてロンたちは驚きの表情になる。ロンがさらに聞くと、フェイは眼鏡をかけなおしながら答えた。
「帽子の下から見えた髪の色が、『蛍光色の緑色』だった。あんな派手な髪色、宇宙人しかいない………」
「「………な、なるほど………」」
「言われてみれば………」
フェイの話を聞いて、ロンたちはデュラン(紫髪)やニール(深緑髪)、それにゾミクノーチで出会ったポーラ(水色髪)やシャーク(ライムグリーン髪)が脳裏に浮かび、彼らの髪色がシンナセンでは絶対に見ない色であると思い出す。それを踏まえれば、フェイの言っていることもあながち間違いではないだろうと納得をして頷いた。
「でも、見失った。探索魔法にも引っかからない………」
「この少ない人通りで、か………?」
「それで姿を消すなんて………かなりの手練れと見受けられるな………」
「お褒めにあずかり光栄だよ。」べべん
「「「「!?」」」」
ロンたちが話していたその時、フェイの背後から聞いたことのない楽器の音と、4人とは別人の、少年とも少女とも取れる声が聞こえてきた。
振り返ってみれば、そこにはいつの間にやら蛍光グリーンのショートカットの前髪で右目を隠してアメジスト色の左目でこちらを見る吟遊詩人の少女の姿があった。白いシャツの上から刺繍の施されたベスト、下はスカートとタイツ、ショートブーツを履き、緑色を主体としたとんがり帽子とマントを着用しており、手には見たこともない弦楽器と演奏に使うと思われる道具を持っており、どうやらさっきの音はその楽器のもののようであった。(※ロンたちはシンナセン人なので、三味線と撥が分かりません。)
「しかし、髪色か。気づかなかったなぁ………地球で言うところの『灯台下暗し』ってやつだね………」
「何だと!?
「い、いつの間に………!?」
「ああ、驚かせてゴメンね。癖なんだ、追われると姿や気配を消すのが。」
吟遊詩人の少女は前髪をいじりながら少し意外そうにしていたが、困惑するロンたちに気軽に謝った。ロンたちは突然現れた少女に警戒をしていたが、少女は笑みを浮かべながら手を振って話を続けた。
「そんなに警戒しないでよ。ボクはアスカ丸、デュラン隊長たちと同じ銀河連邦警察、つまり、キミらの敵じゃあないよ。」
「アスカマル………」
どこか飄々とした態度で自己紹介を済ませたアスカ丸にロンたちは少し緊張を解いた。アスカ丸は笑みを浮かべると、三味線を「べん」と鳴らして数歩後ろに下がった。
「今日キミらに会ったのは本当に偶然でね。今はまだ調べもの中だけれど、いずれデュラン隊長たちと合流できるとできると思うよ。ああ、デュラン隊長たちには内緒にしといてね?それじゃあね。」
「あっ………」
踵を返して立ち去ろうとするアスカ丸をフェイが呼び止めようとしたが、マントの下から何かが地面に落ちたかと思うと、どろんっ!と煙が上がって姿を消してしまった。
「あ!?」
「消えた………!?」
「煙幕か………」
「もう追えない………」
姿を消したアスカ丸にロンたちは唖然とする。フェイは周囲を見渡して再度探索魔法を使うが、既に追跡ができなくなっていた。
「彼女の今の動き、それに気配を消す技術………おそらくは
「いずれ合流するとは言っていたが………何者だ?」
「アスカマル………謎すぎる………」
ロンたちは、現時点で謎多き存在であるアスカ丸に困惑しつつも、宿屋の席に戻って行った………
†
それから3日後。
王都ロシロの南にある街はずれの森の中に、アスカ丸の姿はあった。
切り株に腰かけてサンドイッチを頬ばっていると、軽快な通知音が聞こえてきた。懐を漁りネイビーブルーのカバーの付いたGPデバイスを取り出すと、受信をしたメッセージを開き、同封されていたファイルを開封した。
「………やっと届いたか。これで彼らと合流ができるね。」
アスカ丸はやれやれと息を吐くと、サンドイッチの残りを口に放り込んで水筒からお茶をコップに注いで飲み込むと、三味線を手に立ち上がって歩き出した。
「調べたいことも一通り終わったし、さっそく向かうとするかな。アルスは元気にしてるかな?」
口に笑みを浮かべながら歩き始めるアスカ丸。数分歩いて森を出ると、右手で印を結ぼうとした。
ドォンッ
「ん?」
しかし、遠くの方から爆発音が聞こえた。右手の方を見てみれば、要塞都市の城壁の向こうで黒煙が上がっているのが見え、遅れて悲鳴と、銃声も聞こえてきた。
「あの音は、機怪魔獣か?やれやれ、合流前に一波乱って感じかな………一応、デュラン隊長にはメッセージを入れておこうかな………」
口調は軽く笑みを浮かべながらも、冷や汗をたらすアスカ丸。改めて印を結ぶと、どろんっ!と煙が爆ぜてその中から黒と紫色の車が現れる。直ぐに乗り込むと車は走り出すが、車の形状が一瞬グニャリと歪んだかと思うと、姿を消してしまった。
†
十数分後、要塞都市ファリージャが機怪魔獣の軍団に襲われて占領されたという国王からの緊急要請とアスカ丸からの連絡を受けたデュラン達は、Dキャリアー、トライスクランブラー、バトルトレインを発進させていた。緊急事態のため、全機をバトルトレインに搭載させる時間はなかったため、各機別で出動をすることになっていた。
「ファリージャはサンルスターとの貿易の要だ。あそこを占領されては魔道具等の物資や輸入作物、それに魔導師も出入り出来なくなる………!」
「それ以上に、街に住む人たちも危険だ………」
「最初のメッセージ以降、アスカ丸と連絡が取れない………間に合えばいいのだが………」
Dキャリアー内でフロー、草介、デュランが短く会話をする。バトルトレインの客車内でロンたちも神妙な面持ちでいた。
[もうそろそろ、ファリージャが見えてくるころだ。]
バトルトレインのニールから通信が入る。デュランは操縦桿を握りながら目の前を見据えていると、前方の山々の間の向こうに円形の城壁を持った要塞都市・ファリージャの街が見えた。
「なっ………!?」
「何だ、あれは………!?」
ファリージャの街は山と大きな川に挟まれて建設された街であった。城壁の周囲と川にある船着き場を数体の量産型機怪魔獣ランダートが取り囲み、上空には円盤型機怪魔獣・アダムックD2が飛び回っている。
だが、何よりもデュラン達が驚いたのは、城壁の上部が天幕のような真っ黒なドームで覆われていたことだ!
†
数分後、デュラン達はファリージャの街を見下ろせる丘の上にマシンを停めて、その場を臨時作戦本部としていた。
「隊長、ありゃあ『光学バリア』っすね。」
「光学バリア?」
「バリアの屈折率を調整して、外から内側を見られないようにするタイプっす。多分、あんな真っ黒な見た目で中は普段通りの明るさになっていると思いますよ。」
「まるで、スマホの覗き見防止フィルターだな………」
双眼鏡で街の様子を見ていたレピオが、振り返って背後にいるデュランに説明をする。草介たちは納得をしたように頷くと、遠くに行っていたロンとレイェンがこちらに駆け寄ってきた。
「街から逃げてきた人たちから、話を聞くことができたよ。それによれば、街の影から湧き出るように機怪魔獣が次々に現れたそうだ………」
「影からだと?」
「まさか………ウルフの『影渡りの術』か!?」
「あの人らはなんとか逃げ延びたけれど、ほとんどの人が街に閉じ込められているらしいアル………」
ロンとレイェンの話を聞いたデュラン達は、今回の事件が六魔獣将・影のウルフの仕業と気づく。ここまでの話を顎に手を当てて聞いていたニールが口を開いた。
「バリアということは、上空からの侵入は不可能だろうな。」
「街に侵入したアスカ丸から連絡がないなら、妨害電波もバッチバチアルな………」
「あの街は、山と川に挟まれている関係から、出入り口は北と南の門と川の桟橋だけ。普通に入るならこの3つのどれか。」
「だが、そこから突っ込めばそこを敵の集中攻撃を受けてしまうでござろう………」
一同が頭を悩ませる中、草介は何か思いついたのか、デュランに話しかけた。
「なあデュラン、こんな状況なら突入口は1つじゃね?」
「ソウスケもそう思うか?」
「2人も同意見みてーだな?」
「「「「「え?」」」」」
草介とデュランの話に、レピオが入って来ると、3人は顔を合わせてニヤリと笑みを浮かべる。それを見て、ニールたちは呆気に取られた顔で声を上げてしまった。
「3人とも、何か思いついたのか?」
「どこから突っ込む気アル?」
「正面?川?」
全員が当然の質問を向けると、3人は人差し指である一点を指した。
†
レピオの予想通り、ファリージャの街は普段通りの昼間の明るさを保っていた。しかし、普段の喧騒がまったくない静寂に包まれた街の中、ランダートが北側の門の前に集結し、マシンガンを構えていた。
「姫様、連中が街の近くに来ました。」
「―――やはり来たわね、デュラン、それにソウスケ………」
そのランダート部隊を率いる、銀色を主体に赤でカラーリングされた、剣闘士を思わせるデザインの機怪魔獣―――グランダートの接近戦用カスタマイズ機ソードダートD1の足元で、モニターを見ていたカラから報告を受けたキアラは息を1つ吐きながら答えた。
「街を占領していたとは聞いていたけど、
「まったく………これは想定外だぞ………」
「………私にだって思うところはあるけれど、連中と戦う機会があるなら利用すべきよ。ブランドンのおじいちゃんの頼みもあるしね。」
不満と困惑の混じった声を出すボルグとカラに、キアラは顔を上空に向けて、複雑そうに答える。
街の上空には、中央にある町のシンボルである時計塔を中心に、蜘蛛の巣のようなワイヤーが張り巡らされており、時計塔の上には蜘蛛型の下半身と人型の上半身を持ったメタリックパープルカラーの機怪魔獣が、玉座でふんぞり返る暴君の如く鎮座していた。そこに、ウルフとバッファローも合流してきた。
「連中のいる地点からなら、この北門を突破してくるに違いないな!」
「仮に意表をついて桟橋や南門から突っ込んでくる可能性もあるが、我が『影渡りの術』を持ってすれば瞬時に移動は可能だ。この作戦に死角はない!」
「………まあ、その作戦には賛成ね。」
2人の提案に、複雑そうながらも頷くキアラ。すでに2人のビーストメイルも準備が完了しているらしく、後は向こうの動きを待つばかりだ。
「わう?」
そう思っていると、カラからモニターを受け取ったらしいミュールが、キアラに話しかけてきた。
「ねえねえ、ひめさまー?」
「どうしたの、ミュール?」
「ゆうしゃたち、じめんにあなをほってもぐっちゃってるよ?」
「あら、そうなの。」
ミュールの言葉に、キアラは軽く返事をした。
「「「………え?」」」「「え?」」
そして、1~2秒置いてから、目が点になった顔で一斉にミュールの方に向きなおった。ミュールはキアラたちに見えるようモニターを向けると、そこではトライスクランブラーが合体しているトータスドリルの象徴であるツインドリルで地面に穴を掘り、デュランカーと共に土煙の中に消えていく最中であった。
「「な、何ぃいーーー!?」」
「ち、地中から潜入だと!?」
「そ、そういえば………連中のメカの中に、穴を掘れる奴がいたダスな………!」
「か、完全に失念していたわ………」
唖然とする一同。敵の奇策に驚く以上に、自分たちの不手際に愕然とするばかりであった。今から街の外にいるランダート達を向かわせても間に合わないだろう。
「こ、これ、マズくないか!?」
「確かにマズいな………地中から潜入してくるのでは、どこから来るのかまったく分からないぞ………!!」
慌てるバッファローに、カラもどうすべきか頭を悩ませていると、キアラが声を上げた。
「街の中央にある広場よ。あそこならマシンメイルが3,4体出てきても十分な広さだし、今は人も少ないわ。連中が人を巻き込むわけないもの。」
「おお………!」
「なるほど………!」
キアラの推測に、カラとボルグが感心するように声を漏らす。ウルフとバッファローも顔を見合わせて頷くと、ウルフがキアラに話しかけた。
「姫君、こうなってしまっては、我がアラクネットD3による『プランB』に移行させていただく。異論はないな?」
「………ええ、分かったわ。あまり気乗りはしないけれどね………」
「ひめさま?」
「ミュールはここで待っていてね?」
ウルフの提案に、キアラは顔をしかめつつも苦渋の決断をする。一同はこの場をランダート達に任せて、中央広場に向けて走り出した。
「………流石は隊長、いや、あのソウスケって勇者君かな?奇抜だけど、的確な作戦だね。」
キアラたちが立ち去った後、建物の影からその様子を見ていたアスカ丸が顔を覗かせた。その口は笑みを浮かべているものの、頬には冷や汗が2つほど垂れていた。
「ボクでもあの機怪魔獣たちを相手にするには、今は手が足りない………早く合流する必要があるな………頼むよ………」
上空の蜘蛛型機怪魔獣を見上げながら、アスカ丸は小さく呟いた。
【つづく】
序盤は攻撃魔法とシャスティの実力のお話。カシンバルト魔法学園編はまたいずれ。
デュランが生きていたことをようやく知る魔王軍とワルンダイツ。キアラはデュランをライバル視しているので、これはどこか喜ばしい感じ。
アスカ丸本格登場。吟遊詩人なのに三味線なのはミスマッチで結構好き。
今作のキャラクターの髪色は「地球人とシンナセン人は現実でもあり得る色、フューゾニアは漫画やアニメみたいなカラフルな色」という法則で設定していたのですが、今回はっきり描写されましたね。
終盤は一転して、要塞都市奪還作戦。こういう時のためのドリルメカですw
次回から、アスカ丸活躍回になります。お楽しみに。