異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第41話
マリオネットが躍る街
デュラン達がファリージャに突入する数分前。
「なるほどね、確かに地中からなら、正攻法で正面から来ると思って待ち構えているだろう連中の意表を突くことができるね。」
「あのタイプのバリアは、地中にまでは及ばないからな。こーいう時のためのドリル戦車ってモンよ!」
草介たちから作戦を聞いたロンが感心したように頷くと、機器を調整しながらレピオが自慢げに笑ってみせた。
「でも、いきなり地中から出てきて、街にいる人達に被害はないかな?」
「一応、地下100mからでも地表にいる生物を感知できるセンサーが付いているからな。それで人のいない地点を探って地表に出よう。」
「想定されて装備してあったか。」
「なら安心だね。」
不安そうにするフローに対してレピオが答える。一方で、Dキャリアーからデュランカーを分離させたデュランに、ニールが話しかけてきた。
「私とアルスは、ここで街の外の機怪魔獣たちの動きを監視しよう。どのみち、バトルトレインのサイズではトライスクランブラーの空けた穴を通るのは、難しいだろうしな。」
「すまないが、頼んだ。」
「気を付けろよ?中の様子が分からない以上、連中の戦力がどの程度なのか分からないからな………」
「ああ、分かっている………」
ニールの忠告に、デュランは真剣な面持ちで頷く。草介たち突入組がトライスクランブラーやデュランカーに搭乗する中、アルスがデュランに話しかけてきた。
「あ、あの、お兄ちゃん………」
「ん?」
「その、アスちゃ………アスカ丸さんのこと………」
何故かもじもじしたアルスの様子に草介やフローは首を傾げる。デュランは呆れたように笑みを浮かべると、妹の頭を優しくなでた。
「心配するな。アイツなら大丈夫だろうし、私たちも向かうからな。」
「わ、分かったであります。よろしくお願いするであります………」
デュランの言葉に、アルスは少し不安そうにしながらも兄に託した。
「隊長、そろそろ突入するでござる。」
「ああ、分かった。」
ハバキリが声をかけると、デュランは返事をすると、草介、フロー、シャスティと共にデュランカーに乗り込む。ロンたちは3機のマシンの定員の関係でトライスクランブラーのタイガーアクアの艦内に乗り込むとトライスクランブラーは垂直上昇、先端のドリルが回転を開始し、トライスクランブラーは地面に向けて直進、ドリルが地面にぶつかると、そのまま周囲に土煙をまき散らしながら地中深くへと進んでいく。
「うおっ、と………ッ!」
「地中を進み始めたのか………!」
「揺れるから気を付けるアルよ~」
地面にドリルが突き刺さり、地中を進む衝撃と振動に驚くロンたちにレイェンが少し笑いながら注意する。デュランはある程度進んだのを確認すると、アクセルを踏み込んでトライスクランブラーの後ろを追って穴に突入していった。
†
それから数分後、ファリージャの街のシンボルである時計塔のそびえ立つ中央広場、その地面が地響きと共に少し盛り上がったかと思うと、次の瞬間には地面が爆ぜて、トライスクランブラーが飛び出した!少し遅れてからデュランカーも飛び出すと、2機は広場の地面に降り立った。
「着いた!」
「ここは人もいないし、広さも十分にある事は分かったからな。」
周囲の様子を確認した一同は、周囲を警戒しつつもマシンから降り立った。周囲を見回していると、直ぐに街の異様さに気づいた。
「………何か、妙に静かすぎでねぇか………?」
「確かに………それに、周りにランダートの姿もあるのに、動きがないのも変じゃないか………?」
シャスティの発言に続いて、フローも口を開く。そこで、上を見上げたロンが、街を覆うように張り巡らされた蜘蛛の巣のようなワイヤーと、時計塔のてっぺんに鎮座する機怪魔獣に気づいて大声を上げた。
「な、何だあれは!?」
「あの機怪魔獣………蜘蛛か?」
「クモ!?」
「うげッ!?」
時計塔の機怪魔獣に気づき、フローとレピオが顔を歪ませた。珍しく顔を青ざめる2人に草介はキョトンとして声をかけた。
「どうしたんだ、2人とも?」
「私、クモが怖くて………昔、大きなクモに噛まれたことがあって………」
「オレも………足が8本以上ある虫は気持ち悪くてキライなんだよ………!」
「そ、そうだったのか………」
2人の返答を聞いた草介やロンが苦笑した。ボーイッシュなフローと男勝りなレピオではあったが、意外と女性らしい欠点があったようだ。
「2人とも、意外と女の子みたいなものが苦手なんだな………」
「どういう意味だ!?」「どういう意味さ!?」
「3人ともー?ここ一応敵地だからねー?」
「うわあああ!!」
ボソリと草介が呟くと、フローとレピオは心外とばかりにほぼ同時にツッコミを入れた。当の草介が2人の剣幕に身を怯ませるコントめいたやり取りにデュランがやんわり注意してロンが呆れたように苦笑をしていると、その時、遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。一斉に悲鳴の方に顔を向けると、そこには小さな影がこちらに向かって走ってきた。
「あれは………」
「た、助けてぇ!!」
ロンが前に出るとその影、癖のある金髪を耳がかかる程度にした少女は、慌てた様子でロンの腹部に飛び込むように抱きついてきた。咄嗟の出来事にフローが問いかけようとしたが、少女を追うようにこちらに向かってくる足音がいくつも聞こえてくることに気が付いた。
「敵か!?」
足音に気づいてデュラン達に緊張が走る。ロンが少女を自身の後ろに隠すように守る体勢を取り、全員が得物を手に身構えると、少女が出てきた道の向こうから何者かが現れた。
草介たちはゾロゾロイドかと思っていたが、現れたのはこの街の住人と思わしき者や、冒険者や騎士、兵士と思われる武装した者たちであった。
「あ、あれって………」
「この街の住民たちか?」
「よかった、無事だったのか………」
現れたのが住民たちだったので草介たちが呆気に取られるが、フローやロンは住民たちの姿を見て安心したような顔でホッとしたような顔になった。直ぐに駆け寄ろうとしたが、それをデュランが手で制した。
「待て、様子がおかしい………」
「え?」
デュランが止めたのに一瞬戸惑うが、言われて改めて住民たちを見てみた。
「ぅう………」
「ひぃ~………」
住民たちはうめき声や小さな悲鳴を口から漏らし、表情は冷や汗や涙を流して恐怖に歪み、夢遊病者かのようにフラフラとした足取りでこちらに向かってきている。
「ど、どうしたんだ、君たち………?」
「うぅう………う、うわああああああああ!!」
「!?」
草介たちが警戒を続ける中、異様な住民たちの様子に困惑しながらもフローはなるべく表情に出さないようにしながらも声をかける。すると、先頭を歩いていた男性住民が突然叫び声をあげたかと思うと、手にした丸みのある棍棒を振りかざしながらこちらに向けて走り出してきた!
「な………!?」
「フロー!避けろ!」
突然の出来事にフローは硬直してしまうが、デュランの叫びにハッとして横に飛び退いた!男の棍棒は空を切るが、今度は横薙ぎに振るって追撃をしてきた!
「き、君!一体何を!?」
「た、助けてくれよぉ~!俺だってしたくないんだよぉ~こんな事はよぉ~!!」
「何だって!?」
フローが男に叫ぶが、襲い掛かってきている男は涙を流しながら止めてほしいと懇願してくる。フローは訳も分からず声を出すが、横から飛んできたレイェンが棍棒で男の攻撃を受け止めると、その腹に蹴りを入れて引きはがす!
「ぅぐぇっ………!」
「ご、ごめんネ~………強すぎたかも………」
「でも、いったい何が………ん!?」
倒れてうめき声をあげる男にレイェンが謝るが、そこで、男の後頭部に何か白いものが貼り付いているいる事に気が付いた。それはドクロと蜘蛛を掛け合わせたかのような見た目の小型機怪魔獣であり、目の奥を赤く光らせて男の耳に口からイヤホンのようなコードを伸ばして突き刺していた。
「機怪魔獣!?まさか、アイツが操っているのか………!?」
男に何が起きたのかを理解したフローが信じられないというように声を漏らす。だが、それと同時にデュランや草介たちは、ある事実に気が付いた。
「まさか、街の住民みんな………!?」
「そ、そうだよ………!」
草介が愕然としたように呟くと、今までロンの背後にいた少女が震えた声を出した。
「あ、あの塔の上にいるヤツが、一瞬で蜘蛛の巣みたいなのを街に張ったかと思ったら………それを伝うようにしてあのちっこいのが町中に散らばって………みんなの頭にくっついて………!」
「そ、そんな………!」
「ふっふっふ………」
少女の言葉に草介たちが更に愕然としていると、住民たちの背後から不敵な笑い声が聞こえてきた。住民たちはうめき声をあげながらも娑通に分かれて道を作ると、その後ろからウルフとバッファロー、それにキアラたちが姿を現した。
「見ての通り、今やこの街の住人は我らの兵士というわけだ。そこの小娘含めて2,3人ほど取り逃がしてしまったが、君たちに彼らが倒せるかな?」
「お前ら………!」
「卑怯だぞ!」
「卑怯で結構!」
草介の怒りの言葉に対して、ウルフは悪びれもしない様子で吐き捨てる。その後ろでキアラは気が乗らない表情をしているのが見えたが、今はそれに構っている暇はない。いつの間にか広場の周りを他の住人たちがぞろぞろと取り囲むように現れると、バッファローと共にウルフがマスクの上からでもわかるほど下衆な笑みを浮かべた。一同が困惑する中、ウルフが右手を掲げて口を開いた。
「さあ兵士の諸君、銀河連邦警察と勇者の連中を片付けるのだ!!」
「「「う、うわあああああ!!??」」」
「なっ………!?」
ウルフが指示を飛ばすと、人々は悲鳴を上げながら草介たちに向けて襲い掛かってくる!
「ちィッ!」
「みんな、俺たちの後ろに!」
「オ、オラが!」
咄嗟にドラムとレピオがメンバーを守るように盾を構えて前に出るが、そこでシャスティが叫んだ。
「“バインド・アイビー”!!」
「むぅ!?」
シャスティが呪文を唱えた瞬間、草介たちを取り囲むように地面からツタが何本も飛び出してくると、先頭を走っていた住民の数人に巻き付いて束縛してしまった!
「あれは、ホパクでカラが使った!?」
「だ、だども、この数捕まえるんは、オラにも難しいだよ!!」
草介が驚くが、シャスティは苦しそうに答える。ドラムとレピオが盾ではじき返しデュラン達が何とか攻撃を躱したり防いだりして、ロンが手にした剣を振りかざす。
「くっ………!」
「ひぃい!!」
「ぐぉッ………!?」
「ロン!!」
しかし、ロンは悲痛に満ちた顔を見てしまい、その手を止めてしまった。その隙に横から冒険者が手にしたハンマーを振り回してぶち当ててくる!幸い、直撃前に気づいて剣で防いだが、それでも衝撃は殺せずに吹き飛ばされてしまう!
「うぐぅっ………!」
「ロン!」
倒れたロンを見てフェイが思わず悲痛な叫びを上げて駆け寄ろうとするが、その時、彼女の頭上に向けて白いもの、先ほどの白い小型機怪魔獣が落下してきた!
「フェイ、上だ!」
「ッ!!」
倒れていたロンが気づいて叫ぶと、フェイも気づいてすかさず矢を放つ!矢は機怪魔獣の眉間ど真ん中に見事命中すると、ご丁寧に赤く光る目を『×』にしながら地面に落ちるが、上空の蜘蛛の巣によく目を凝らせば、他にも何匹もの機怪魔獣たちがデュラン達に狙いを定めていた。
「ゆ、油断も隙もない………!」
「地上だけじゃなく、上も油断できぬでござるな………!」
フェイの呟きに次いで、ハバキリは峰打ちで冒険者を倒しつつ、隙あらば自分たちも配下にせんと狙っている小型機怪魔獣にも警戒する必要があった。草介は後頭部の機怪魔獣を狙おうとするが、そこで迷いが生まれた。
「お、俺の攻撃じゃあ、下手をしたら人間も傷つけてしまう………」
「お、オレもだ………」
草介だけではなく、デュランやレピオも下唇を噛んで悔しそうにした。
「ふっ、貴様らの技や武装では、人間を傷つけずにタランテナD1を破壊することは出来ない事は確認済みだ。さて諸君、その兵士たちを相手に、どこまで持ちこたえられるかな?」
「………こ、これだけの人間を兵士兼人質にするなんて………私は気に入らないやり方だけど、確かに効果はあるわね………」
ほくそ笑むウルフにキアラたちは少し引きつつも、例の隠密活動をしている者が現れないかと警戒を怠らなかった。
「「「!?」」」
「何?」
「今の音は………?」
その時、突然戦場と化した街の中央広場に、シンナセンでは聞き覚えのない弦楽器の音色が響いた。一同は音色の出所を探すべく周囲を見渡していると、カールが顔を上げて一点を、中央広場に停まったトライスクランブラーの上に誰かが腰かけているのに気が付いた。
「あ、あれは………!?」
そこには、緑色の衣装にみを包んだ吟遊詩人が、シンナセンでは見たことのない弦楽器(三味線)を演奏していた。
「彼女は、あの時の………」
「アスカ丸………!」
「な、何で吟遊詩人が三味線を弾いてるんだ?」
デュラン達が彼女、アスカ丸の姿に驚いていると、草介は彼女が地球の三味線を演奏しているのに少し困惑していた。草介はアスカ丸の弾く曲に聞き覚えがあると思っていると、彼女は口を開いて歌を口ずさみ始めた。
「大キライだったそばかすをちょっとひとなでしてタメ息をひとつ♪ヘヴィー級の恋はみごとに♪角砂糖と一緒に溶けた♪」
(―――って『そばかす』!?吟遊詩人が三味線でJUDY AND MARYの『そばかす』弾き語りながら現れた!?)
草介はその曲が知っている地球の歌であることに気がづいて、内心ツッコミを入れていた。
「な、なんだアイツは!?いつの間にあんな所に………!?」
「そ、そうか!住民たちの人ごみに紛れて、あそこまで移動したんだわ………!」
一同が呆気に取られて動きが止まってフリーズする中、キアラはアスカ丸が移動した方法を察して驚いていた。彼女は唄い続けながらも身軽にヒョイっと飛ぶと、音もなく地面に降り立った。
「ず、随分身軽な身のこなしだな………!」
「想い出はいつもキレイだけど♪それだけじゃおなかがすくわ♪」
アスカ丸は唄いながら、草介たちの元にまで歩み寄ってくる。
「本当は切ない夜なのに♪どうしてかしら?あの人の涙も思い出せないの♪」
その場にいる全員の視線がアスカ丸に集まる中、当の本人は演奏を終わらせたかと思うと、帽子を取って恭しくお辞儀をしてみせた。すると、その帽子の中から丸い野球ボール大の球体が5,6個ボトボトと地面に落ちた。
「え?」
どろろんっ
「「「!?」」」
草介やウルフが何かが落ちたと思った次の瞬間、球体が破裂して大量の白煙が噴出して草介たちや2機のマシンを包み隠してしまった!
「みんな、この場は一旦退くよ!早くマシンに乗るんだ!」
「あ、ああ!!」
「し、しまった!?」
煙幕の中から聞こえてきた声に、草介たちは一瞬戸惑いながらも従ってマシンの方向に走り出す。ウルフたちは一瞬虚を突かれたが、住民たちを煙幕の中に突入させようとした。
「何………!?」
しかし、次の瞬間には煙幕が晴れたが、そこには草介たちも、2機のマシンの姿もなく、突入してきた時の穴が残っているだけであった。
「地中に逃げたのか………!」
「くそ!穴の中じゃあ、追いかけても生き埋めにされるかもしれないぞ!どうする!?」
「お、落ち着け!奴らだって、こいつらを見捨てることなんてできないんだ!いつまでも地中に居座り続けることは出来ない!街中を探すんだ!」
不安そうに叫ぶバッファローに、ウルフが少し焦りながらも叫ぶように指示を飛ばすと苦痛そうな住民たちは散り散りに動き始める。キアラたちはその様子に呆れながらも、一緒に探そうとして、思いとどまる。
「あ、先にミュールの方に戻った方がいいわね。」
「そうですね。」
「1人だけ置いてっちまったダスからな。」
そう言って、デュラン達の捜索をウルフたちに任せてカラとボルグと共にミュールの元に走るのだった。
†
それから5分ほど後、街中にある広い倉庫の中に、デュランカーとトライスクランブラーの姿があった。
「ここなら、連中に見つかる心配もないよ。」
「さすがはサンルスターとの貿易の要ファリージャ。大きい倉庫があってよかった。」
アスカ丸に案内されてこの倉庫にマシンを入れると、デュランは倉庫内を見渡しながら呟いた。
「倉庫の床に、けっこう大きい穴開けちゃったけど………」
「まあ、緊急事態だし、後で埋めておけば大丈夫だろ、多分………」
苦笑しながらフローとレピオが話している中、フェイは先ほど吹き飛ばされたロンの手当てを行い、レイェンは助けた少女(先ほど、ティコと名乗っていた)を落ち着かせ、カールとドラムは一緒に連れてきたレイェンが蹴り飛ばして気絶した男性を念のため縛ったうえで見張っていた。
「さて、さっきはありがとうアスカ丸。助かったよ。」
「いえいえ。他ならぬデュラン隊長と、その仲間の皆さんだからね。
デュランが礼を言うと、アスカ丸はなんてことないとばかりに返答する。2人の会話に草介たちが聞き耳を立てていたが、ふと、草介は倉庫の奥、トライスクランブラーの影に隠れるように停まっている黒い車に気が付いた。
「あれは、あの時の車!?」
「さっきから声を聞いてもしかしてと思っていたけど………ひょっとしてその子は………?」
「おっと、そろそろ自己紹介をしたほうがいいかな?」
車に気づいて、草介とフローがアスカ丸に問いかけるように視線を送る。トライヤーズやロンたちの視線も集まる中、当の彼女はいたずらっぽく微笑みを浮かべると、帽子を外して芝居がかったようにお辞儀をして見せた。
「そちらの騎士の皆さんとはこの間会ったけれど、トライヤーズの御三方やソウスケくんたちとは、こうして顔を合わせて話すのは初めてだね?ボクはアスカ丸。銀河連邦警察隠密諜報部隊、通称『宇宙忍者隊』所属の忍者刑事さ。」
「ニ、ニンジャ………?」
「ウルフも名乗ってたけど、何なのそれ?」
顔を上げて自己紹介をするアスカ丸。フローたちシンナセン人は聞きなれない『忍者』という職業に首を傾げた。アスカ丸は苦笑しつつ、簡単に説明をすることにした。
「まあ、分かりやすく言えば諜報活動や敵地の破壊活動を秘密裏に行う、文字通り忍ぶ者、って言えばわかるかな?隠密活動用の色々な道具や術もあるんだけど………今はタイミング的に見せる暇もないからね。お披露目はまた後日ということで。」
「そうなのか………」
アスカ丸の説明を聞いて、それならばあの隠密能力も納得できると頷くフロー。一行が納得する中、アスカ丸は背負っていた三味線を手にして弦の調整をし始めると、シャスティは気になっていた事を聞いた。
「だども、何で吟遊詩人の格好をしているだ?」
「ボクの任務は諜報活動。ウルフみたいにあからさまに忍者の格好をしたら怪しさ満点だからね。この星で色々調べるのに、この格好が最適と思ってね。」
「なるほど。」
シャスティが頷くと、今度は草介が問いかけた。
「じゃあ、その三味線は?」
「これは趣味。」
「趣味………さっきの歌も?」
「趣味。好きなんだ、地球の歌。」
「趣味………」
アスカ丸の返答に、草介は呆れたように顔をひきつらせた。アスカ丸は三味線を背負うと、改めてデュランに向き直ると、懐からGPデバイスを取り出して操作すると、その画面に映る辞令を見せた。
「改めてデュラン隊長。宇宙忍者隊所属アスカ丸、隊長イクタ衛門からの正式な辞令により、これより貴官の部隊に合流します。」
「ああ、よろしくたのむよ。」
2人は事務的なやり取りを済ませると、まじめな顔で一同の方に向きなおった。
「………さて、本題に入ろうか。今回の任務としては、まず小型機怪魔獣を街の人から引きはがすこと、街を覆っているバリアの解除、そして、大型機怪魔獣の排除、の3つといったところか………」
デュランが作戦の目的を明示すると、草介たちは頷いた。そこで、レピオがため息交じりに口を開く。
「バリアに関しては、城壁に設置された子機を破壊すれば何とかなるとは思うけど、問題はあの小型機だな………せめてサンプルとかがあれば、調べて弱点を探り出せるんだがなぁ………」
「あ、それなら………」
それを聞いたフェイが、トライスクランブラーのハッチまで小走りで走り出した。何かと思っていると、フェイは先ほど射止めて機能停止になったタランテナを持って戻ってきた。
「ひぇ!?」
「これ、何かの役に立つかと思って拾っておいた。」
「そ、そう………」
機能停止しているとはいえ、クモ型の機怪魔獣を見て露骨に不快そうな顔になるレピオとフロー。そこで、何かを思い出したのか、アスカ丸もゴソゴソと何かを探ったかと思えば、マントの下から8本の足をわしゃわしゃと動かすタランテナを掴んだ手が出てきた。
「「うひゃぁあ!?」」
「活きが良いのがご所望なら、さっき撤退するときに落ちてきたのを捕まえてあるよ?」
「2人とも、いつの間に………」
あっけらかんと言うアスカ丸に対して、レピオとフローは顔を青ざめさせて悲鳴を上げていた。蜘蛛が苦手な2人からしたら、機怪魔獣でも間近で蜘蛛を見るのは嫌なのだろう。そう思っていると、デュランがレピオに頼み込んだ。
「ま、まあ、何はともあれサンプルも手に入ったし………すまないがレピオ、解析を頼めるか?」
「え、えー………」
「まあまあ、拙者たちも手伝うでござる………」
「押さえつけるのは任せるアル。」
「ま、まあ………隊長の命令だし、こんな事態だし………」
レピオは恐る恐るフェイからタランテナの残骸を、ハバキリとレイェンが起動中のタランテナを受け取った。そこで、アスカ丸は話かけた。
「4体あればいいかな?」
「2体で十分だよ………」
「いや、4体だよ。2と2で4体。」
「2体で十分だって!」
アスカ丸の進言にレピオは抗議をするが、アスカ丸はいつの間にか、額に手裏剣が刺さり機能を停止させ目を「×」にしたタランテナを2体両手に持っていた。
「でも、こうしてもう2体いるわけで………」
「いつの間に!?」
「倉庫に潜んでいたのを仕留めたんだよ。もういないみたいだから、安心して。」
「分かってくれよ………」
アスカ丸の返答にレピオはうんざりした顔になる。トライヤーズの3人はタランテナを手に広めの場所に移動をすると、タランテナの分解と解析を開始した。
「くっそー!あいつらもお前も、後で覚えとけよ!!」
「ボクはお手柔らかにねー?」
「無論だ!!」
タランテナを分解しながら、涙目で毒づくレピオ。アスカ丸が軽く返すのをデュラン達は(手加減はしてくれるのか………)と内心呆れていると、振り返った彼女は話を続けた。
「さて………バリアの発生装置に関しては、ボクの方で何とか出来るかもしれない。」
着いてきて、とアスカ丸は自身のマシンメイルまで案内をした。
一行がアスカ丸の黒い自動車型マシンメイルの元に向かうと、先ほどは気づかなかったが、その隣には2台のバイクが停まってた。1台は黒いボディでカウルの左右が後ろに大きく伸びており、もう1台は赤いボディでカウルの左右にアームのようなものが搭載されているのが見えた。
「あれ、バイクもあるのか?」
「これがボクのマシンメイル『サイレントシャドー』。バイクは黒いほうが『アメンバット
「二輪車型の機械か………」
初めて『バイク』という乗り物を見たフローらシンナセン人組が感想を漏らしていると、アスカ丸は苦笑気味に説明を続けた。
「本当はもう1機『ナイトターボ』っていう機体があるんだけど、大きさとかの問題から街の外で待機させちゃってってね。でも、この2機も簡易AIで自立行動ができるから、分散して行動可能だよ。」
「なるほど、それでバリアの発生装置を探すわけだな。」
「ああ。この2機にはちょっとした仕掛けもあるし、破壊もお手の物って訳さ。」
アスカ丸の説明を聞いて草介やロンが納得をして頷いた。これで後は、タランテナの弱点を探り無力化するだけだと考えていた、その時、背後からガタンッ、という物音が聞こえてきた。
「今の音は………?」
物音に草介が振り返るが、積まれた木箱の向こうで何かが動いているのが見えた。直ぐに一同は獲物を手にして、フェイは探査魔法を発動させていた。
「あの機怪魔獣はもういないって言ってなかったか!?」
「違う、この反応は生物………!」
草介が疑問を口にすると、フェイが短く返答をする。アスカ丸が先頭に立ったかと思うと、三味線の軸が「カパリ」と一部外れて、鍔のない忍者刀が引き抜かれた。
「仕込み刀か………忍者っぽいな………」
「誰だ!出て来い!」
「ひゃぁあ!?」
アスカ丸が叫んだ瞬間、物陰から悲鳴と共に小さな人影が顔を出した。
「え!?」
「は………?」
出てきたその者に、一同は呆気に取られた。
「ゎ、わぅう………」
「こ、子供………?」
「魔族………?」
涙を浮かべた金色の目で怯えるその者は、灰色の長い髪をウルフカットにした、オオカミの耳と尻尾を持った幼い少女であった………
【つづく】
アスカ丸本格登場の回。初めて草介たちの目の前に出てくる時は三味線で弾き語りながらって考えていたんだけど、今思うと大分『快傑ズバット』だなって。
意外なものが苦手だったフローとレピオ。泣きながらタランテナ解析するレピオはお気に入り。
サブタイの通り、マリオネットと化して襲い掛かってくる住民たちという、苦戦する危機的状況。
ラストはミュールと初遭遇するというハプニング。次回はこの辺からスタートします。