異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第44話
宇宙の謎を追いし者【前編】
ファリージャの街を機怪魔獣から解放した数時間後、草介たちは拠点にしているの別荘へと戻り、地下のブレイベース格納庫では、マシンメイルやビークルのメンテナンスが進められていた。
「こうして見ると、マシンメイルも結構増えたよなー………」
メインルームの窓から格納庫の様子を見ていた草介が、感慨深げに呟いた。
彼の目線の先にあるのは、円柱状になったブレイベースの巨大な格納庫。内部にはぐるりと円を描くように、9つのハンガースペースが配置されている。
そのうち8つには、デュランカー、ブレイバード、バトルトレイン、フェニックスジェット、トータスドリル、タイガーアクアに加え、アスカ丸のサイレントシャドー、そしてガンマビークルの1機である、巨大なデルタ翼を持った反重力ハンググライダー・ナイトターボが収められている。機体それぞれに無数のメンテナンスアームが伸び、せわしなく整備作業が行われている最中であった。(なお、アメンバットBとオクトモールHは、ナイトターボと同じハンガースペースに格納されていた。)
そして、一番右端のハンガーだけが、まだ見ぬ主を待ち構えているかのようにぽっかりと空いていた。
「あと1つ空いてるけど………」
「一応予備ってことで空けてあるからな。」
「なるほどな………」
草介の疑問に、後ろで聞いていたデュランとニールが小さく笑みを浮かべながら答えた。草介が納得して頷いていると、メインルームの自動ドアが開いた音が聞こえてきた。草介たちが振り返ると、そこにはシャワーを浴びたように髪をタオルで拭きながら、アスカ丸が入って来た。服装は先ほどまでの吟遊詩人風のものではなく、Tシャツに短パンのラフな格好であった。
「ふぅいー………久しぶりのフルメンテナンスは、染みるなぁ………」
「そーいえば、マシンに乗りながらだとメンテ出来てなかったのか。」
「まあね。簡易チャージマシンは持ち歩いていたけど、有機アバターのフルメンテナンスまでは行き届かないからね。」
気づいたように言う草介にアスカ丸が答える。すると、同じくメンテナンスを終えたらしいトライヤーズも入って来た。
「ふぅー………あ、そういやぁ隊長。」
「うん?」
「さっきリジルさんから話があって、『例の件』について、明日にでもケイリーが来るそうです。」
「む、そうか………」
「まあ、アスカ丸も合流できたし、良いタイミングではあるのかもしれないな。」
同じく髪を拭いていたレピオからの報告に、デュランは承知の意味で頷いた。草介はそれを聞いて、何か察したのか小さく呟いた。
「って事は、ついにか………」
「ああ。」
草介の呟きに、デュランが頷く。するとその時、アスカ丸が何かを思い出したのか、あ、と声を出した。
「そうそう、忘れるところだった。」
そう言いながら、アスカ丸は手を後ろに隠したかと思うと、その右手に細長い小箱のようなものを取り出して、中央のテーブルに置いた。草介たちが何だろうと思っていると、アスカ丸が箱を開けて、中から銀色の手のひらサイズのプレート、ジップレート十数枚をテーブルの上に広げて見せた。
「ジップレート?」
「隊長さんたちがこの星に来た時、散らばっちゃったやつをいくつか回収しておいたよ。」
「ああ、ありがとう。」
「拙者たちも、訓練やギルドの依頼の合間に探していたが、すべて回収するには至らなかったでござるからな………」
「中身は、整備パーツがほとんどみたいだな。」
アスカ丸が広げたジップレートを見たニールとハバキリが、広げられたプレートを手に取りながら礼を言う。アスカ丸はそれを見ると、呆れたように息を吐きながらもう1つ、別の小箱を取り出してデュランに差し出した。その小箱は金属製らしく、天面の蓋には黄色と黒の警告縞模様が描かれていた。その箱を見たデュランは、ハッとして慌てた表情となった。
「!?こ、これは………!!」
「これも拾ったよ。流石にこれを無くすのはマズいでしょ………」
「す、すまなかったな………」
「デュラン、それは?」
デュランは申し訳なさそうにその小箱を受け取った。やり取りを見ていた草介が小首を傾げながらデュランに尋ねると、当の本人はどこか緊張感のある表情になった。
「これには、銀河連邦警察最強ともいわれる『究極兵器』が圧縮保管されているんだ。」
「きゅ、究極兵器………!?」
「過剰戦力になるからと断ろうと思ったんだが、ワルンダイツの首領や幹部が1つの惑星に集結している以上、備えておくのに越したことはないと言われてな………使わないことを祈るよ………」
「そうだな………」
デュランの説明を聞いて、ニールも同意する。
「
「噂には聞いているが、ワルンダイツ相手とはいえあのようなものを………」
「ひとつ間違えれば、とんでもない被害が出るらしいアルケド………」
「か、かなりおっかなそうだな、それ………」
話を聞いていたレピオ、ハバキリ、レイェンが、神妙な面持ちで反応するのを見て、草介は冷や汗をかいて顔をひきつらせた。そこでふと、アスカ丸はニールに向きなおって1枚の濃い目の緑色のジップレートを差し出した。
「はい、ニールさんにはこっちね。」
「む?これは………『リモートトレイン』か………」
「これがあれば、こちらの作戦行動もスムーズにできますよね。」
「ああ、感謝する。早速後で解凍するよ。」
ニールは受け取ったジップレートを手にすると、笑みを浮かべた。
†
「あれ、フェイさんだ。」
「本当だ。よくここに来てるよなー」
同じ頃、モルデュア城にある図書室に、フェイ・ル・ノートの姿があった。
周囲でフェイの姿を見た城の文官や学者たちがひそひそと話している中、彼女は図書室の窓際の席で一冊の本、ティルヴィ出版刊『魔族辞典【獣族編】(光皇歴238年最新版)』のページをパラパラと捲っていた。
「………あった、『人狼族』………」
目的の項目を見つけて捲る手を止めて、ページに記された内容に目を走らせた。
【人狼族】
二足歩行の大型狼のような姿をした魔族。非常に頑健で屈強な肉体を持ち、高い身体能力に加えて、人間と変わらない知性も持ち合わせている。
性格は乱暴ながらも狡猾な者が多いとされ、有名な話では寝たきりの老人に変装して家を訪ねてきた孫娘に襲い掛かった事例だろう。また、風魔法を得意とする者が多く、木造の家屋を吹き飛ばした事例も上がっている。
大半の人狼族は世界の北の果て『ティダマ大陸』に生息しているが、センオウ大陸やサイスト大陸の一部にも少数ながら生息が確認されている。
「やっぱり………」
「お、ここにいたのか、フェイ。」
本の内容と添えられた『人狼族』の挿絵を見ると、フェイは確信したように小さく呟き、頷いた。すると、そんなフェイに近づいてくる者たちがいた。鎧を脱いで私服に着替えたロン、カール、ドラムだ。
「ロン。」
「それって、魔族図鑑か?何でそんなもの読んでるんだ………?」
フェイが読んでいた本が気になったロンが問いかけてくる。フェイは少し考える素振りをした後、口を開いた。
「………あの時のミュールっていう子、自分は狼だと言っていた。狼の魔族は『人狼族』がほぼ唯一。」
「うん?それは確かにな………」
ドラムがフェイの言葉に相槌を打ち頷く。だけど、とフェイは、図鑑の挿絵を指さしながら続けた。
「だけど、人狼族は二足歩行の狼のような姿の魔族。あの子のような狼の耳と尻尾を持った人間のような姿ではない。」
「それは、そうだな………」
「じゃあ、あの子は………?」
フェイの指摘に、3人は首を傾げる。フェイは普段通りのポーカーフェイスながら、どこか真剣にも見える表情で自身の考えを口にした。
「考えられるのは………おそらくあの子は………人狼族と人間の『混血』………」
「なんッ………!?」
フェイの推測を聞いたロンたちは声を上げてしまいそうになるが、ここが図書室であることを思い出し、慌てて口を押さえた。周囲の視線を確認してから手を離すと、なるべく気を落ち着かせてから問いかけた。
「こ、混血、って………!?」
「だけどこの図鑑、昨年出た最新版だし………イラストと記載内容の通りなら、納得できるな………」
「だけど、あくまでこれは私の推測。事実は直接聞くでもしないと分からない。」
「そ、そうだな………」
フェイの推測に、ロンたち3人は顔を強張らせて頷いた。フェイは本を閉じると、席を立って本棚に向かって行った。
「魔族と人間の混血は、いくつか事例を聞いたことがある。けれど、いずれも人間からも魔族からも迫害されていると聞いている。もしかしたら、同族からも迫害されたのかもしれない。」
「レイヴン魔帝国は多種多様な魔族で構成されてはいるが、人間に迫害され北の果てに追いやられた魔族によって作られた国と聞いているが………」
「それで、親元から離れて………?」
「それならば、あの魔王姫はあの子を庇っていたのか?」
「おそらくは。」
本を本棚に戻しながらフェイと話す中、ロンとドラムも納得したような表情を見せた。4人は少し複雑そうな表情をしていたが、そこでロンが口を開いた。
「………いずれにせよ、あの子の問題に関しては我々では何もできない。敵国の事情とはいえ、あの姫が何とかしてくれるのを期待しよう。」
「………そう、だな………」
「ああ………」
ロンの言葉に、カールとドラムも頷いた。フェイは無言ながらも頷いて、4人は図書室を後にした。
†
次の日、地上の別荘と地下のブレイベースを繋ぐエレベーターが開き、メインルームに足を踏み入れる者たちがいた。
「こ、これは………!?」
「別荘の地下に、このような施設が………!?」
「ようこそ、ブレイベースへ。」
メインルームに入ったケイリーとクララは、周囲を見渡しながら感嘆の声を漏らした。ニールと一緒に後から降りてきたロッティン、ダリア、オリヴィア、マシューたちも、未知の施設に感動とも驚愕ともとれる表情で息を漏らしていた。デュランやトライヤーズたちにアスカ丸、草介やフローにシャスティ、そして既に来ていたロンたちが、彼女たちを出迎えた。
「ここが、デュランさんたちの………」
「ああ、言うなれば『秘密基地』ってやつだな。」
「ほ、ほぁー………」
「これは………」
メインルームを見渡しながら思わず感嘆の声を上げるマシュー。一同がメインルームに感心をしている中、ロッティンが呆れながらも納得したような表情になった。
「たまに別荘にいる時もいなくなることが多いと思ったら、こんな所に………」
「あー、マリワヒ領の時は、中央広場から乗り込んでいたからな………」
ロッティンの呟きを聞いて、ニールが苦笑気味に答える。そこで、ケイリーがデュランに問いかけた。
「しかし、何故我々をこの基地に招いたのですか?」
「ああ、ロッティンさんやクララは別荘で働いている以上いずれバレるだろうし、ケイリーくんは我々と協力体制にあるからな。」
それに、と、デュランはレピオの方に視線を移す。レピオは少し俯いていたが、意を決したかのようにクララたちに目を向けた。
「………オレから、みんなに伝えたかったからな。機怪魔獣と、オレ達の関係をな………」
「え………?」
レピオが少し困ったように眉毛眉を下げながら、しかし、真っすぐな目でクララたちを見据えた。レピオの視線にクララが思わず声を漏らしてしまうが、そこでデュランが苦笑しながら口を開いた。
「とりあえず、そこのソファーに座ってくれ。」
「あ、はい………」
デュランに促されて、ケイリーたちはすこし不思議そうに首を傾げながらもメインルーム中央のソファーに腰を下ろす。アルスが紅茶を淹れて全員に配り終わると、対面に座ったデュランが口を開いた。
「さてと………まずは、我々の素性から説明をしようか………」
デュランがそう切り出すと、ニールたちも同意を示すように頷いた。
「我々はこの星、シンナセンの外から来た『銀河連邦警察』所属のフューゾニア………つまりは、『宇宙人』だ。」
「ウ、ウチュウ人………?」
デュランがそう切り出すが、クララやケイリーは『宇宙人』が何なのか分からず首を傾げた。そこからだったか、とデュランが苦笑していると、草介が横から口を出してきた。
「つまりは………空の更に向こう側にある、果てしなく広がっているのが『宇宙』で、夜空で光る星が太陽になっていて、その周りを惑星、あー、シンナセンみたいな『世界』が回っている………って言って、分かるかな………?」
「な、何となくは………」
「何だか、壮大ですね………」
草介が簡単に説明をするが、話が壮大であまりイメージできていないのか顔を引きつらせていた。デュランは苦笑しながらも、話を続けた。
「まあ、とにかく………我々は宇宙の犯罪者を取り締しまり、宇宙の平和を守るための組織に属している。それで、今回我々は、機怪魔獣を用いて宇宙の各地で戦乱を引き起こしている『ワルンダイツ』を追ってこの星・シンナセンにやって来た、というわけだ。」
「機怪魔獣を………!?」
「で、では、魔王軍が機怪魔獣を戦線に投入したのは………!」
「ええ、ワルンダイツが魔王軍と同盟を組んだためだ。」
「そうだったのか………!」
デュランとニールの説明を聞いて、ケイリーが愕然としたように声を漏らした。クララたちも困惑を隠せないでいると、そこでレピオが話を変わった。
「で、機怪魔獣に詰め込まれているエンジンのベースになった『サーペント0-X』………あれを設計したのは、ハーキュリー重工業社長の娘でもある、オレなんだ………」
「え………!?」
「何ですって!?」
「あのエンジンを、レピオさんが………!?(それであれだけ詳しかったのですね………)」
レピオの告白に、クララとケイリーが驚愕の声を上げる。ロッティン達も驚きの表情になって、思わずレピオを睨んだ。
「あなたが、機怪魔獣の!………?」
ロッティンが思わず怒りの籠った声を出しそうになるが、レピオの目を見てハッと我に返って、言葉を引っ込めた。レピオの目には、後悔以上に強い意志が籠められていた。
「………確かに、元になったエンジンはオレの設計だ。だが、『サーペント0-X』を始めとしたオレや、オレの仲間の設計はワルンダイツがだまし取る形で奪ったものだ。そのせいで親父達も捕まるほどの事態になってな。」
「そ、そんな事が………!!」
「親父の事もあって、身元は明かせなくてな。それに、クララみたいに機怪魔獣に苦しんでるのを何人も見ていたら、なかなか言い出せなくてさ………ごめんな………」
「レピオさん………」
レピオが立ち上がって頭を下げる。ロッティンはそれに言葉が詰まる。それまで話を聞いていたクララは、首を左右に振った。
「………頭を上げてください、レピオさん。」
「クララ………」
「その事を私たちに告げるのも、決心がいたことでしょう。よく事実を告げてくれました。」
「………………ありがとう、な………」
クララの言葉に、レピオは申し訳なさと安堵の混じったような苦笑を浮かべた。ロッティン達も顔を合わせて納得と安堵の様子で肩をすくめ、ため息をついた。
クララの素性を知っていたデュランや草介たちはやり取りにホッと胸をなでおろした。
「………さて、我々の素性と目的も理解してもらったことだし………せっかくだから、我々のマシンメイルの紹介をしようか。」
「そうだな。よし、格納庫に案内しよう。」
「あ、ありがとうございます。」
「こっちでありますよ~」
ニールの提案にデュランが頷くと、一行は格納庫へと向かうべく、アルスの先導でエレベーターへと乗り込んだ。
†
ガンガン!バチバチ!ガリガリ!
レイヴン魔帝国の帝都ミャキアの東に広がる『ラプーンの森』には、かつてセイマンという将軍が居を構えていた『セイマン城』があった。300年ほど前、魔王との王位継承争いで彼の将軍が戦死し、城も戦で半壊して以来、長年打ち捨てられていた。
ガチャガチャ!ゴンゴン!ゴリゴリ!
そんな主を亡くして久しい古城は、20年ほど前に『ブランドン』というドワーフが住み着き、『リフォーム』と称して『魔改造』を施されていた。石造りの城の壁や瓦屋根は一部残りつつ、破壊され失われた壁や屋根は鉄板やパイプ等でつぎはぎのように補修され、いくつも生えた煙突からは煙が立ち上っている。静かな森にあまり似つかわしくないけたたましい金属音が響き、無理やり機械化されたような歪なシルエットは、見る者に異様な威圧感を与える。草介やデュランが見たら、「まるでサイボーグだ」とでも言うだろうか。
ガコンガコン!ガシャンガシャン!ギュインギュイン!
「相ッ変わらず五月蠅ぇなぁーここは!」
そんな城の入り口、でかでかと『ブランドン工房』と手書きされた看板がかけられた巨大な金属製の門の前に、2人のオーガが立っていた。
1人は、大きな2本角に筋骨隆々の赤い肌と右頬の古傷が目を引く大男、レイヴン魔帝国四族長が1人、鬼族長ガラバーだ。
「ち、父上の声ですら、かき消えそうな音ですね………!」
「流石の俺も、この五月蠅さには敵わねーよ!」
耳を押さえながら話しかけるもう1人は、そんな彼の肩より低い身長で同じく赤っぽい黒髪に赤い肌を持ち、筋肉質ながら細身で角もまだ短く、少し気弱そうな少年であった。隣のガラバーを「父上」と呼んだ事から分かるように、この少年はガラバーの息子・ブランガである。
(前に見たセイマン城の資料にあった絵と比べたら、大分改造されてるなぁ………)
「おーい!じいさん!ブランドンのじいさんよぉ!ガラバー様が来たぞ!!」
父に無理やりに近い形で連れられて来たブランガが、初めて訪れたセイマン城を見上げながら顔を引きつらせていると、隣のガラバーは門の横にある、日本の神社の鈴かと見紛うような大きな呼び鈴をガランガランと鳴らしながら、大声で中にいるであろうブランドンに声をかけた。
数十秒ほど間が空いて、門が軋み大きな音を立てながらゆっくりと開いて中から白い口ひげとオールバックになった茶髪交じりの白髪を持ち、小さな丸眼鏡をかけ鋭い目つきの小柄なドワーフの老人が顔を見せた。
「おお、ガラバー殿。」
「コルドン。ブランドンは中か?」
「すまないが、弟は今作業で手が離せなくてなぁ。代わりにわしが案内しよう。」
「おう、頼むぜ!」
ガラバーにコルドンと呼ばれたドワーフの老人は、ガラバーたちを城の中へと案内する。
城の内部はパイプや金属製の扉が並ぶ廊下を進んでいた。廊下にはブランドンの作ったと思わしき発明品が展示されるように並んでおり、『自動走行椅子・コシカケ・
「相変わらず、便利なようで微妙に不便なモンばっか作ってんなー、あのじいさん………」
「テナガ・Aは便利だと思いますけどね、僕は?」
「使ったやつが、使い勝手悪いって言って、不評だったそうだ。」
ブランガにガラバーが投げやり気味に説明をすると、ブランガは苦笑するしかなかった。しばらく歩いて行き着いた大きなドアをコルドンが開くと、先ほど以上に大きな作業音が響いて来る。3人が中に入ると、その部屋は広い作業工房になっており、周囲には機怪魔獣のものと思わしき部品や残骸が転がり、そして目の前には巨大な人型の機械が鎮座しており、それに張り付いた小柄な老人が、ハンマーを打ち付け作業をしていた。
「おーい、ブランドン!ガラバー殿が来たぞ!」
「あん!?」
作業をしていた老人はハンマーを振るう手を止めて、赤いレンズのゴーグルをかけた顔をガラバーたちへと向けた。腰まである白い長髪をオールバックにして尖ったあご髭を生やした老人・ブランドンはロープを使って床まで降りてくると、工具をぶら下げたオーバーオールにハンマーをマウントし、グローブを外しながらガラバーに歩み寄ってくる。
「おお、これはガラバー殿。こんな小汚い所まで、はるばるご苦労様なことじゃな。」
「よう、ブランドン!経過を見に来たぞ!」
142cm程度しかないブランドンに目線を合わせるべく片膝をついて握手をするガラバー。互いに手を離すと、ガラバーは立ち上がって目の前の機械を見上げた。
「で、だ。コイツが例の機怪魔獣に変わる機動兵器か?」
「おうよ!完成までもう少しってとこだがな。『魔族一の発明王』であるこのブランドンお手製の『メカ・ゴーレム』1号機の性能は、機怪魔獣なんかにゃ負けんよ!」
ガラバーの問いかけに対して、ゴーグルを上げてコルドンとよく似た鋭い目で自信満々とばかりに言い切るブランドン。父と共に興味深そうに『メカ・ゴーレム』を見上げていたブランガであったが、そこで、背後から声が声をかけてくる者がいた。
「ブランドンおじいちゃーん、勝手に入っちゃったわよー………って、ガラバーさんたちも来てたのね………」
「キアラ姫!?」
「何だ、キアラちゃんも来たのか。」
振り返った先にいたのが魔王の娘であるキアラだと気づいて驚くブランガに対して、ガラバーはちょっと意外そうにする程度の反応しか見せなかった。すると、キアラの後ろからミュールがひょこっと顔を見せると、ブランドンに向けて駆けて行った。
「おじいちゃーん!」
「おお、ミュール!帰ったか~!」
ミュールの姿を見たブランドンは、顔を緩ませながらミュールを抱きとめた。キャッキャとはしゃぐミュールを微笑ましく思いつつも、ブランガはガラバーに小声で話しかけた。
「父上、確かあの子って、この森の先にあるビルカ村の………?」
「ああ。詳しくは知らないが、色々訳アリらしくてな。人狼族から離れて、じいさんのトコで世話になってるって話だ。」
「そうでしたか………」
ガラバーが、彼にしては珍しいくらい小声でブランガに教える。ブランガは少し眉をひそめるものの、キアラはわざとらしく、大きく咳ばらいをひとつしてみせた。
「それはそうと、これまでのデータと、バッファローから預かった戦闘データよ。」
「お、おお!それはすまんな!」
キアラに声をかけられて、慌ててミュールを下ろしたブランドンは、キアラから自身が渡したゴーレムコアと、バッファローから預かってきたというデータディスクを受け取った。
「さーて、コイツがあれば………」
「そいつをどうする気だ?」
ブランドンにガラバーが問いかける。ブランドンが振り返ると、笑みを浮かべながら答えた。
「なあに、コイツを元に『自分で考え戦闘のサポートを行うゴーレムコア』を作成しようと思ってな!」
「自分で考えるゴーレムだと!?」
「そんな事が、可能なのですか!?」
驚きの声を上げるオーガの親子。キアラやコルドンも驚きと疑いの混ざったような表情をしていたが、ブランドンはメカ・ゴーレムの足元に置いてあったコンピューター装置の元に歩いて行った。
「あのワルンダイツの連中が『AI』とか『人工知能』とか呼んでいた物がどんなモンか聞いた時に、ゴーレムコアで同じようなモンが作れねぇかと思ってな。それで、キアラ姫に渡したコアに戦闘データを学習させたり、バッファローから姫の係わってない戦いのデータを学習させようと送ってもらったワケよ!」
そう言いながら、ブランドンはコンピューターにゴーレムコアとデータディスクを接続させた。
「このコンピューターってのも、仕組みと使い方は分かったからな!材料があれば作成も出来そうだが、それはまた今度だ。コイツもありがたく使わせてもらって、最新のゴーレムコアを作るって訳よ!」
言いながら、カチャカチャと音を立ててコンソールを操作するブランドン。コンピューターから立体モニターが複数個浮かび上がった。
デュランダー、デュランブレイバー、バトルパンサー、アームドパンサー、トライフェニックス、トライトータス、トライタイガー、トライディアン、マーブラーらGPのマシンメイル。
グランダートF2、キャノンダートF3、トロルハンマーE2、キャノンシャD3、アダムックD2、シンパンジャンD3、カルキザースD3、パイルコーンC1、グリフォンバーC1、オチムダートE1、アラクネットD3、ソードダートD1ら機怪魔獣軍団。
ポーラダイト、シャークダイト、イーグルダイト、バッファローダイト、ウルフダイト、ティラノダイトらワルンダイツのビーストメイル。
それら全ての戦いがの戦闘データが、映像として表示される。
「改めて見ると、いろんな戦闘があったわね………」
「見ているだけでも、面白いものだなぁ………」
「わぅ~」
少し懐かしむように呟くキアラに対して、ガラバーとブランガは興味深そうに眺めていた。
「うむ、このデータは大分集まったな。コイツを学習させればこちらの勝利は確実に………ん?」
ブランドンは笑みを浮かべながらデータを見ていたが、ふと、そこであるデータに目が留まって、コンソールを操作した。映し出されたのは、トライトータスと並び立つ、角ばった人型機動兵器であった。
「何だ、この不格好なのは?機怪魔獣でも、マシンメイルとかいう機動兵器とも違うみたいだが………?」
「ああ、それ?確か、カマリサ帝国で作られているっていう、対機怪魔獣兵器だったと思うわ。パンツァーって呼ばれてたと思うわよ?」
「何!?対機怪魔獣兵器だと!?」
「うわ!?」「きゃん!?」
ブランドンの疑問にキアラが答えると、ブランドンは目を見開いて振り返りながら声を上げた。突然大声を上げたブランドンに、キアラたちはギョっとして体を跳ねさせた。
「な、なんという事じゃ………既に人間たちが機怪魔獣のような機動兵器を開発していたとは………!!」
「お、おじいちゃん………?」
「くぅん………」
ブランドンがわなわなと震えるのを見て、キアラとミュールが心配そうに声をかける。ガラバー達も少し困惑していると、ブランドンはがばっ!と顔を上げた。
「こうしてはおられん!人間も同じように機動兵器を作っているのならば、負けるわけにはいかーん!」
ブランドンはひとしきり叫ぶと、コンピューターを激しく操作をしてからメカ・ゴーレムに飛びついて制作を再開した。
「ぬおおおおおお!わしこそが魔族一の!いや、目指すはシンナセン一の発明王じゃああい!!」
「お、おじいちゃん………」
「何か、人間に対抗意識燃やしちゃったみたいですね………」
「………ま、まあ、それがモチベーションにつながるんなら、良しとするか………」
対抗意識から制作意欲と職人魂に火が付いたらしいブランドンを前に、呆れながらも頼もしく思うキアラたち。
彼女たちがメカ・ゴーレムを見上げる中、その足元のコンピューターでは、ゴーレムコアにデータがインストールされ続けていた。
【つづく】
今回と次回は、総集編っぽいお話にしつつ、新情報や今後の布石をいくつか。
アスカ丸によって回収されたジップレート。究極兵器とリモートトレインはいずれ。
ケイリーとリグーン王国組に真実を話す展開。特にクララたちに話すのは辛かっただろうけど、意を決して明かしました。
何度か話には出ていたブランドンじいさんと双子の兄のコルドン、それにガラバーの息子のブランガが登場。戦闘データが表示されるシーンは総集編っぽくていいかなって。
人間(ケイリーたち)に対抗意識を燃やすブランドンさん。ケイリーとブランドンはどっちも機怪魔獣を元に対抗兵器の開発をしているので、ライバル関係にしたら面白いかな、と。