異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第45話
宇宙の謎を追いし者【後編】
ブレイベースの格納庫に移った草介たち。足を踏み入れたケイリーたちは、それぞれのハンガースペースに収まった、まるで眠っているかのように目に光の灯っていないマシンメイル―――デュランダー、バトルパンサー、トライフェニックス、トライトータス、トライタイガー、マーブラー―――に圧巻されていた。
「改めてこうして見ると………」
「スゴイな、これは………」
格納庫を見渡しながら、感嘆の声を漏らすロンとケイリー。ふと、草介は気づいたことをデュランに尋ねた。
「ロボット形態で並んでるのって、珍しいな?」
「ちょうど、手足のモーターやカメラアイのメンテナンスのタイミングだったからね。」
「なるほど………」
草介が頷いていると、バトルパンサーの前に立ち、その姿を見上げるケイリーが声を漏らした。
「レピオさんのトライトータスもいいけど、このバトルパンサーも、がっしりしてるし武骨でかっこいい………♡」
「あ、あの人、変わった趣向をお持ちのようだね………」
「私は、ハバキリさんのメカの方が好きですけどね………」
うっとりとバトルパンサーを見つめるケイリーの後ろで、背後からフローが苦笑する。クララが小さく呟いたその時、ケイリーは急に振り返ったかと思うと、ニールに詰め寄ってきた。
「あの!できればマシンメイルの操縦系統を見せてもらいたいのですが!」
「あ、いや………」
ケイリーの勢いに、ニールはたじろいで数歩下がってしまう。ケイリーはその反応にはっとして、ニールから離れた。
「ご、ごめんなさい、私ったら………」
「ははは………研究熱心なのはわかるが………」
恥ずかしそうに俯くケイリーに、ニールは苦笑で返す。草介たちも苦笑いを浮かべていると、デュランが前に出た。
「あー、操縦に関してだが、我々はマシンメイルを操縦しているわけではないんだ。」
「え?」
「オレたちは『フューゾニア』っていう宇宙の種族でな。本来は肉体を持たないエネルギー生命体で、機械みたいな命を持たないものと一体化して、活動できるんだよ。」
「拙者たちのこの身体も、有機生命体のいる惑星で活動をするための『有機アバター』なのでござる。」
「マシンメイルは、アタシ達が戦闘兵器を持った犯罪者への対抗手段アル。」
「そ、そうだったのか………」
デュラン達からマシンメイルとフューゾニアの真実を聞いたケイリーたちは、驚きと共に納得をしたような表情になった。
「それならば、マシンメイルは完全にデュランさんたちフューゾニアの専用機って事ですか?」
「まあ、そうなるな。最近、GP本部で『フューゾニア以外の種族がフュージョインできる技術』の研究が始まったって聞いたけど。」
ケイリーにレピオが答えていると、話を聞いていたクララが、ふと問いかけた。
「一体化できるのって、機械だけですか?」
「いや、割となんにでも一体化できる。それこそ、その辺の石ころなんかとかにもな。」
「そうなんですね………」
デュランの説明に、クララは頷いた。そこで、デュランは続けた。
「だから、うっかり不本意な一体化をしないよう、一定の年齢になったフューゾニアは『フュージョイン』の掛け声と自分で決めたポーズで一体化する訓練が必須なんだ。」
「あの掛け声って、そんな重要だったの!?」
「魔法の呪文詠唱の類だと思ってた………」
意外な新事実に思わず声を上げる草介とロン。フローも意外そうに口を開く中、シャスティの脳裏では、道場のような場所で集まって掛け声とポーズの訓練をする、大勢のフューゾニアのイメージが浮かんでいた。割とシュールである。
「まあ、それでもくしゃみをした拍子に、座っていたソファーと一体化しちゃった話とか聞くけどねー」べべん
「完全には防げないのか………」
「だども、オラたちもなんかの拍子に魔法が暴発しちまうことがあるべ。」
「そういうところは、人間と変わらないのね。」
三味線を一弾きしたアスカ丸の補足に一同が苦笑する中、オリヴィアが改めてデュランダーを見上げた。
「つまり、あれはデュランさんたちが乗り込んで戦う機動兵器というよりも、戦うための手足の延長のようなものなんですね。」
「マシンメイル………文字通り『機械の甲冑』というわけね………」
「でも、それならマシンメイルが傷ついたら、デュランさんたちも怪我をしてしまうのでは?」
感心して頷いたダリアに対して、マシューが率直な疑問を投げかける。それを聞いていた草介たちも言われてみれば、と気づいたのかそちらに顔を向けた。その質問に対して、レピオが口を開いた。
「それなら大丈夫だ。マシンメイルには『フュージョイン・コア』っていう装置が内蔵されていてな。それに一体化すれば、マシンメイルが受けたダメージのフィードバックを60~80%軽減してくれるんだ。他の機械と一体化するための外付けのタイプもあるんだぜ。」
「そうなんだ………」
マシューが納得したように頷いた。それを聞いて、草介は思い出したように声を出した。
「言われてみれば、デュランダーって結構ボロボロになってたけど、デュラン自身のダメージはさほどない感じだったなー」
「最初のころは、マシンメイルが少ないのもあって、毎回ボロボロになってたもんね。」
「あ、あまり思い出したくはないな………」
「お、お兄ちゃん………」
草介とフローの言葉に、当のデュランは顔を引きつらせていた。そんな兄にアルスが苦笑しながら慰めていると、デュランダーを見上げていたフェイが、不意に口を開いた。
「私からも、前から気になっていた事がある。」
「ん?何だい?」
デュランが振り返ると、フェイはデュランダーを、厳密に言えばデュランダーの胸部、この機体の象徴でもある獅子の顔を指さした。
「何故、胸に獅子の顔があるの?」
「あ、その事?」
「言われてみれば………」
「今まで当たり前のように見ていたから、気にしたことなかったな………」
フェイの疑問を聞いて、デュラン達GP組はなんてことないような反応をするが、フローやシャスティは改めて疑問に思い同調をする。
「ふっふっふっ………」
「ソウスケ?」
デュランが説明をしようとしたが、そこで草介が何故か不敵な笑い声を出しながら前に出た。
「何故、ロボットの胸にライオンの顔があるかって?そんなの、言うまでもないだろ?」
「え?」
草介の言葉に、フェイやロンは首を傾げた。すると、草介はドヤ顔で言い放った。
「それは………カッコイイからだ!」
「………いや、あれは『ブレイバー』の証なのだが?」
「え?」
キリッとしたドヤ顔で言い切った草介であったが、直後にデュランに訂正されて目が点になる。そんな草介に、デュランは苦笑交じりに続けた。
「そもそも『ブレイバー』というのは、銀河連邦警察の中でも一握りしかいない、特に優秀な隊員に与えられる称号と階級でな。特権として、それぞれの隊員を象徴するシンボル、私でいえばライオンだな、それに加えて、自身の名を関したマシンメイルに、専用の強化マシンであるブレイバーユニットが与えられるんだ。」
「そ、そうなんだ………」
「言われてみれば、デュランダーとデュランブレイバー以外には、自分の名前ついてないね。」
デュランから『ブレイバー』の詳しい説明を聞き納得する一同であったが、一方で、ドヤ顔で言い切ってしまった草介は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「自分の名前の付いたマシンメイルなー」
「少し恥ずかしいが、銀河連邦警察に属している身としては、憧れるでござるな………」
「特にブレイバーの頂点、『
どこか目を輝かせながらにデュランダーを見上げて語るレピオ、ハバキリ、レイェン。その様子を見ていたカールとドラムは、ふむ、とどこか納得したように呟いた。
「やはり、どこの組織でも憧れる役職はあるもんなのか………」
「その辺は、僕らと変わらないみたいだね。」
「ウチュウ人と言っても、考える事とかは私たちと大差ないのですね………」
2人の呟きに、クララもしみじみと同意して頷いた。そこで、格納庫を見渡していたオリヴィアが、ぽっかりと空いた一番右端のハンガーに気が付いた。
「1つ空いている?」
「あ、本当だ。」
「ああ、あそこは………」
「あ!分かった!」
オリヴィアの呟きにデュランが「予備である」と答えようとしたが、そこで何かに気づいたらしいマシューが声を上げて、アルスの方にクルリと向きなおった。
「あそこって、アルスちゃんのマシンメイルが入るんでしょ?」
「えっ!?」
「あ、なるほど。」
「そういえば、アルスさんはマシンメイルありませんでしたね。」
マシューの言葉に、ハッとしてアルスの方を見るケイリー達。その視線を受けて、アルスは何故か気まずそうな、困惑したような表情を見せた。
「え、えっと………わ、私のマシンメイルは、そもそもないのであります………」
「え?」
アルスの返答に、キョトンとする一同。アルスはもじもじと両手の人差し指を合わせながら、困り顔で話す。
「じ、実は私、本体のエネルギー体を構成するエネルギーの量が生まれつき少なくて………有機生命体で言うところの『病弱』、に近い状態でありまして………マシンメイルへのフュージョインに、耐えられないのであります………」
「そ、そうだったんだ………」
「フュージョインするだけでも、結構エネルギー使うもんな………」
「それで、オペレーターに専念していたのか………」
事情を聞かされた一同は一様に納得するものの、アルスは少し落ち込み俯いてしまう。話の切っ掛けであったマシューは、その様子を見て慌てて謝った。
「ご、ごめんね!私、そんな事情知らないのに勝手な事言っちゃって………!」
「あ、い、いえ!マシューさんが謝ることではないでありますよ!」
頭を下げるマシューに対して、アルスは両手を前に出してぶんぶん振って止めようとする。ふと、話を聞いていた草介が、疑問を口に出した。
「あれ?戦闘できないなら、何で銀河連邦警察に入れたんだ?いや、戦うだけが警察じゃないと思うけど………」
「確かに………」
草介の疑問にフローたちも頷く。しかし、それを聞いたデュラン達は、何故か一様に微妙な表情となった。
「あー………」
「その事か………」
「え?」
「な、何かあるの………?」
デュラン達の反応に、草介たちは顔を引きつらせて汗を垂らした。デュラン達の反応を横目で見たアルスは、何かに気づいたのか、はっとして声を出した。
「あ、私………報告書まとめて提出するの、忘れていたのであります!ちょっと戻るのであります~!」
「あっ………」
そう言うと、アルスは出入り口の方へ足早に走り去ってしまった。草介たちはその後ろ姿に呆気に取られていたが、一方でデュラン達は大きく息を吐いた。
「ま、マジで何があったんだ?」
「あー………実はアルスのヤツ、入隊前にとんでもない事をやらかしてなぁ………」
「これって、GP内では同期や先輩後輩関係なく有名な話なんだけどな?」
「といっても、ソウスケしか理解できないと思うアル。」
「へ?」
草介たちが小首を傾げる中、実兄であるデュランが始めに切り出した。
「あれはアルスが受けた、第443期採用試験でのことだ………試験の休憩時間に、手のひら大のミニラップトップPCで、銀河連邦警察本部のメインコンピューターをハッキングしてな………」
「ハッキング!?」
デュランの告げた事実に、草介は驚きすぎて素っ頓狂な声を出してしまった。
「ものの10分程度で中枢まで侵入した挙句、セキュリティの問題点をまとめたレポートをGP本部に提出してな。それで、短時間でハッキングをしたその技術を買われて、ハッキング技術とそれに対するファイアウォール構築を得意とする、ホワイトハッカーとして入隊したんだ………元々筆記は合格だったらしいけど………」
「ぶっちゃけ、オレよりもヤバい経歴持ってるわ、アイツ………」
「とんでもないなアルス!?何でそんな事したんだよ!?」
「『休憩時間で暇だったから』って言っていたぞ?」
「そんな『暇だしSNSでも見てよー』みたいなノリでしちゃったの!?」
デュラン達の話を聞いて草介はドン引きするが、そこで、ある事実を思い出した。
「そ、そういえばアルスって、機怪魔獣のシステムをジャックしていたな………なるほど、ハッキング技術を活用していたのか………(第31話参照)」
草介は呆れながらも納得をしていたが、フローやシャスティ達は、いまいちピンときていないらしかった。
「は、はっきんぐ?」
「こんぴゅーたー?」
「どういうこと………???」
首を傾げるシンナセン人組。魔法技術が発達しているとはいえ、中世ヨーロッパ風の文明レベルではコンピューターやインターネットを理解するのは難しかったのだろう。
「あー………みんなに分かるように言うなら、そうだな………王国のお城に忍び込んで宝物庫を開けた状態で衛兵を待ち構えて、警備の問題点を指摘するようなもん、かな?」
「………なるほど、普通にヤバいねアルス………」
「だけど、泥棒を防ぐために泥棒を雇うのも、防犯としては悪くないのかもね………その道のプロなんだし………」
草介のたとえ話で、アルスが何をしでかしたのか何となく理解したらしいロン達は顔をひきつらせた。一方でフローは、防犯の手段としては意外と理にかなっているのか、と妙に納得をしていた。
「でもそれって、要するに「野放しにしたらヤバいから手元に置いている」って事なんじゃあ?」
「うん、その認識でいいと思うよ?」
「大人しいフリして、何やらかしてるのさ………」
クララの質問にデュランが答えると、ロンは呆れて呟いた。
「アイツ、デュランの所で一番ヤバいヤツだったんだな………」
呆れた様子でアルスがいるであろう上階の方を見上げながら、草介はため息をついた。
†
ロコロ王国南西の片田舎にある小さな村『ビャーツ』のはずれには、村で一番大きな建物である教会よりも少し小さい程度の建物が建っていた。
その一室、窓辺に置かれた机についていた女性が羊皮紙にペンを走らせていた。
「ふぅー、後もーちょいだなぁ………」
ふょ~ん♪ふょ~ん♪
「んあ?」
ペンを置いて伸びをして一言こぼした彼女は、肩にかかる程度の癖のある茶色い髪の30代ほどの女性であった。肩を叩きながら大きく息を吐いていると、部屋の隅に置いてあった水晶型の通信装置が着信を伝える何ともいえない音を鳴らし、淡い光を点滅させた。
「はいはーい。」
女性はどこかのんびりしたような間延びした声で返事をしながら立ち上がって、通信装置に向けて早足で向かっていく。軽く触れて受信をすると、水晶に金髪ストレートにツリ目で眼鏡をかけた同年代と思わしき女性の顔が浮かび上がった。
[ティファル、お久しぶりですわね。]
「あんれまぁ、クラレーちゃんでねぇの!元気だっただかぁ~?」
[あなたは相変わらずみたいですわね。]
ティファルとクラレーというらしい2人の女性は旧知の仲らしく、親し気に挨拶を交わした。
そう、この女性こそシャスティの母にして『
「そんでぇ、今日は何の用だべ?今度持っていくオラんとこの塾の報告書なら、今作ってっとこだよ?」
[いいえ、そちらは今度で問題ありませんわ。]
ティファルの問いに対して、クラレーは笑いながら首を左右に振った。
ティファルは、生まれ故郷でもあるこのビャーツ村にある自宅を兼ねた塾で、子供たちに魔法を教えていた。この塾はカシンバルト魔法学園公認のものであり、年に一度報告書を出すように言われているのだ。
[実はつい先日、シャスティ君が復学するという知らせが届きましたの。]
「あんれぇ~、そうだっただかぁ………」
[やっぱり知りませんでしたのね?自分の息子の事だというのに………]
「んだ、シャスティの事は、レヴァンティ先生に任せっきりにしちまってたからなぁ………手紙のやり取りはしとったけんども………」
呆れた様子のクラレーに対して、ティファルは誤魔化すように笑いながら頬を人差し指で掻いた。
「シャスティの問題は、オラがあれこれするようなもんでねぇからなぁ………手も口も出さねぇ方がええと思ってなぁ………」
[それはそうですけれど………ああ、それで、復学に関する書類が必要だから、近いうちに学園に来るよう手紙を返したところですの。もしかしたら、あなたと鉢合わせするかもしれませんわね。]
「おお、そうだべなぁー」
ティファルが小さく頷いた。合わなくなって久しい息子の顔を思い浮かべて、ついつい顔がほころんでいると、そこでクラレーが話題を変えてきた。
[ところで、彼、ブルート様の事は何か?]
「………いんやぁ、何も知らせはねぇだよ………」
[そうですか………わたくしの方でも情報収集をしてはいるのですが、リグーン王国の方へと向かったというもの以外は………]
「あん人のこっだから、無事だとは思っけどなぁ………まあ、オラたちには無事を祈るこっしか出来ねぇかもなぁ………」
[ですわね………]
少し暗い顔をしながら俯く2人であったが、ティファルはため息をつきながらも笑みを浮かべた。
「ま、今は気持ちさ切り替えっべ!」
[ええ、そうですわね。では、また学園で。]
「んだ!」
2人は短く言葉を交わすと手を通信装置に手をかざして通信を終えた。
「ほんじゃまぁ、報告書の続きさ書くべ!」
ティファルは袖を捲りながら気合を入れると、報告書を完成させるべく机に戻った。
†
その日の夕刻頃、レイヴン魔帝国リブアン城の玉座の間では、魔王ダインズがガラバーから受け取った報告書に目を通していた。
「なるほど。そのメカ・ゴーレムとやらの開発は順調ということか。」
「おう。じいさんのヤツ、かなり張り切っちまってたからな、多分予定よりも早く出来上がると思うぜ!」
大声で笑うガラバーに対して、ダインズは報告書を確認した。
「ふむ、ワルンダイツのバッファローとやらに頼んで部品やデータを提供してもらい、それを元にメカ・ゴーレムを作成、不足分は鬼族の予算から工面か………」
「まあ、鬼族の集会場の修繕費から出したから、そのせいで部下から睨まれたけどな………」
「………追加予算案出してくれれば、出してやるぞ?」
「すまねえな………」
珍しく申し訳なさそうに頭を下げるガラバーに、ダインズは呆れた表情になった。ため息交じりに報告書のページを捲って目を落とすと、そのページには、六魔獣将の駆るビーストメイルのデータ一覧が記載されていた。
「………うん?」
「どうかしたか?」
それを見たダインズは、小さな違和感を抱いた。ダインズの反応を見たガラバーが訪ねると、ダインズは手にした報告書のページを見せてきた。
「いや、連中専用の、このビーストメイルとやらの名前なんだが………デスダイトと統一されていると思ってな………」
「………言われてみれば、そうだな………機体名だけならともかく、首領であるデスダイトとまでなんて………?」
ダインズの指摘を聞いて、ガラバーもその点が気になって小首を傾げた。
ティラノダイト、ポーラダイト、シャークダイト、イーグルダイト、ウルフダイト、バッファローダイト、そしてデスダイト。改めて見ると、ここまで統一されているのは不自然に思えた。
「デスダイトが自分たちの威厳を見せるため、とも考えられるが………?」
「うーむ………今度ヤツに、それとなく聞いてみるか………」
「そうだな………」
2人は首を傾げながらも、そう結論付けてその話は終わりとなった。
†
翌日、モルデュア城でレヴァンティの指導を受けていたシャスティが訓練場の前を通りかかると、草介やデュラン、トライヤーズが、ロンたちと共に剣の訓練をしているところであった。
「
草介たちが見ている前でロンが剣を構えて呪文を唱えると、剣に水が纏われて大きな『水の刃』を形成した。
「でぇえいッ!!」
そして掛け声と共に目の前に立てられた丸太に向けて剣を振り下ろすと、丸太を一刀両断にするに留まらず、地面をも大きく斬り割いた!
「おお………!!」
「こ、これはすごいな………!」
「見たかい?これが『魔法剣』さ………僕もまだ、覚えたばかりではあるけどね………」
草介とデュランが感嘆の声を漏らす中、ロンが額に汗をかき方で息をしながら振り返り、説明をした。
「ふむ、武具に魔法を付与して、威力を強化するのでござるか………」
「だが、魔力と刃の維持が難しいようだな………」
「そうだね………それに、魔力が籠っている分、重量も増して振るう力も必要になるからね………僕ではまだ、1分くらいしか維持できないけれど、ベテランになれば30分以上維持できるって話だよ………」
ハバキリとデュランの発言に、服の袖で汗を拭いながらロンが説明をするが、大分魔力を消耗したのか、その顔には疲労の色が見て取れた。
「そうとう魔力を使うみたいだな………俺にも出来るかな………?」
「ソウスケも大分力を付けていて、魔力も順調に増えている。けれど、魔法剣を扱うには、まだ微妙に心もとない。」
「そうか………」
剣を握る手に力を入れる草介であったが、草介の魔力量を確認したフェイに言われてちょっと残念そうに肩を落とす。デュランが苦笑をしていると、こちらに歩いてくる者がいる事に気が付いた。振り返ってみれば、そこにはロンや草介と同年代と思わしき騎士の男女数名のグループがこちらに歩いてくるところであった。
「やあロン、また勇者どのと訓練かい?」
「まあね。ああ、ソウスケにデュランさん、彼らは僕の同期入隊した騎士たちだよ。」
「アティラです。よろしく。」
「あ、うん、よろしく。」
先頭に立っていた栗毛のショートカットの青年・アティラがロンと軽く言葉を交わすと、草介とデュラン達挨拶をする。彼は軽く会釈をすると、ロンに向き直って問いかけた。
「ロン、最近勇者どのとよく行動をしているな?」
「うん?まあ、そうだね。ソウスケとの決闘から、何度か任務を共にしているからね。」
「何か、すっかり仲間、っていうか友達って感じになってたよなー」
アティラの質問に対して、ロンと草介はどこかしみじみとしたように語る。アティラはふーん、と頷くと、ロンに再度問いかけた。
「そこまで勇者どのに入れ込むなんてね。何か特別な事でもあるのかい?」
「ん?うーん、それは………」
アティラの質問にロンは考え始める。自分にとって『ユウナギ・ソウスケ』とはどのような人物であるのか?改めてロンは考え込む。その様子を見て、草介やデュランだけではなく、アティラたちも少し心配になってきたところで、ようやくピッタリの表現を見つけたのか、ロンは口を開いた。
「ああ、そうか!僕はソウスケの『ファン』なんだ!」
「ファ、ファン………?」
「そうさ。僕にとって、ソウスケは友人であると同時に、彼のファンなんだ!」
自分でも納得したのか、うんうんと頷くロン。アティラ達騎士が唖然とする中、ロンは続けた。
「確かに、剣や魔法は僕たちに劣るかもしれないけれど、僕とソウスケの『決闘』で見せたような魔法の使い方や機転の利かせ方を、これまでも見てきたからね。戦闘員型の機怪魔獣相手でも勇敢に戦っていたし、『勇者』と呼ぶのに申し分ないと、僕は思うね。『聖剣の勇者』にあこがれる者は多いと思うけれど、『勇者ソウスケ』のファン第1号は僕であると言えるかもね!」
「そ、そうなのか………」
草介について妙に熱く語るロンに、少し引き気味に答えるアティラ。ふと、チラリとデュランが草介の方を見てみれば、嬉しさとそれ以上の恥ずかしさからか、顔を赤くしていた。
「あ、あんの!」
「うん?」
「シャスティ?」
そこで、アティラたちの後ろから声が上がった。振り返ってみれば、そこには少し控えめに手を上げるシャスティの姿があった。何事かと思っていると、シャスティは口を開いた。
「ゆ、勇者様のファンなら、オラの方が先だべ………!」
「えぇ?」
シャスティの主張に、ロンとアティラたちだけでなく、草介たちも驚いて口をぽかんと開けてしまった。一方で、シャスティは一同の視線に少し萎縮しながらも続けた。
「オ、オラ、ズンケート砦で勇者様と初めて会った時、助けて、守ってもらって………そん時から、勇者様はかっけええって思って………それから、相手が強くても立ち向かってくの見てたから………だ、だから、オラの方が、先だべ………!」
「シャスティ………」
(そういえば、シャスティが勇者と呼ぶのはソウスケの方でござったな………)
(シャスティ、意外と言う事は言うんだな………)
シャスティの主張を聞いて、一同は静まり返る。当のソウスケは何とも気まずそうな顔で頬を掻いていると、更にもう1人こちらに歩いてきた。
「それなら、私は2番目かな?」
「フ、フローレント様!?」
まさかのフローレント姫の参加にアティラたちが困惑するしかない。デュランが呆気に取られている中、ロンがフッと笑みを浮かべたかと思うと、右手をすっと上げた。
「………アティラ、訂正だ。僕はファン第3号だ。」
「………そ、そうみたいだな………」
ロンの発言に、アティラは苦笑気味に答えるしかない。デュランやハバキリが微笑ましく思っている中、草介は笑みを浮かべながらも、どこか思うところのありそうな顔をしていた。
†
「―――ふっ!はっ!ふっ!はっ!」
その日の夜、勇薙草介は別荘の外で木刀を手にして、全身汗まみれになりながらも素振りをしていた。
「ふっ!はっ!ふっ!はっ!」
それから何回も振り下ろすと、素振りを一旦止めて息を整える。痛みが走り、木刀を握っていた手を開いて見てみれば、血が滲んでいた。
「熱心なようだが、無理をしすぎだぞ?」
「デュラン………」
「ほら。休むことも訓練だ。」
「あ、ありがとう………」
後ろから声をかけられて振り返ってみれば、デュランが心配そうに草介を見ていた。手に持っていたタオルや水筒を渡すと、草介は礼を言って受け取った。
「どうかしたのか?今日はやけに熱が入っているようだが?」
「………」
草介が庭のベンチに腰かけて水筒に口をつけていると、隣に腰かけたデュランが問いかけた。草介はタオルで汗を拭きながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「………俺、シャスティやロンが言うほど「勇者」らしくないからさ。剣も魔法も全然だし………みんなの期待に応えられていないって思ったからさ………」
少し俯きながら草介が語るのを、デュランは静かに聞いていた。別荘の入口のあたりでは、レピオたちが心配そうにこっそりと、見守っていた。
「これまでの戦いも、ほとんどデュランたちの成果だったし………だから、せめて剣くらいはって思ってさ………」
「ソウスケ………」
血の滲む右手を見つめながら思いの丈を語る草介。デュランは悩んだ様子であったが、息を一つ吐くと、ポン、と草介の肩に手を置いた。
「何を言っているんだ?私は、ソウスケが「勇者」らしくないとは思わないぞ?」
「え?」
「ホパクやベロースリットでは、ソウスケの機転や作戦で助けられたし、ゾミクノーチでも的確な指示を出してくれたじゃないか。君のおかげで助けられたことは少なくなかったよ。」
「デュラン………」
デュランに諭されて、草介は顔を上げて彼の方を見る。デュランは小さく笑みを浮かべると、更に続けた。
「それに、ソウスケも言っていたじゃないか。『戦うだけが警察じゃない』って。勇者や戦士だって、同じ事だと思うよ?」
「そ、そうかな?」
「そうだとも。もっと自信を持っていい。」
デュランの言葉を聞いて、草介の悩んでいた事が少し晴れたようで、少し表情を明るくさせる。デュランが笑みを浮かべると、草介も頷いて笑った。後ろで見ていたレピオたちも、ホッと安心したように笑みを浮かべて顔を見合わせた。
「さ、もう寝ようか。手の傷も手当てしないとな。」
「そうだな。」
2人の勇者は笑いあうと立ち上がって屋敷に戻って行った。
†
「―――以上が、現状この惑星に来ている惑星に来ているGP、『デュランダー隊』に関する情報です。」
『うむ、ご苦労。』
シンナセンの衛星軌道上に浮かぶワルンダイツの拠点『マッドアドワーズ』。
巨大な窓のある部屋で、ワルンダイツ首領デスダイトは、立ったまま六魔獣将ティラノダイトからの報告を受け終えて、小さく頷いていた。
『うーん、カマリサの機動兵器は全くと言っていいほど驚異ではないけれど、GPの方は少し邪魔だね。このままでは、我々の『計画』に支障が出る可能性もあるね………』
「魔王軍内でも、機怪魔獣に対して懐疑的な意見が出始めているそうで、独自の機動兵器の開発に着手したとか………」
『うん、バッファローがデータを渡しちゃったらしいね。まあ、その程度でそれほどのモノを作れるとは思えないけれどね。』
デスダイトがため息交じりに切り捨てる。ティラノも同意するように頷いた。
「GPの連中は、私の方で一掃する計画を立てて準備いたします。」
『頼んだよ。』
ティラノの進言にデスダイトが頷いた。ティラノは頭を下げると退室をした。
『―――』
ティラノの退室後、デスダイトは窓の傍で微動だにしないまま、一切言葉を発さずに眼下の惑星を見下ろすように佇んでいた。
「………あのGP連中、とっとと片付けないと色々厄介かもな………そういえば『あの件』、どうなったかな………?」
退室をしたティラノは、廊下を歩きながら呟いていた。ふと、ある事を思い出して、歩きながらタブレット端末を操作した。
「あー、買ったやつは大した連中ではないけれど………アップデートしたザムラロイドの性能を試すにはちょうどいいかもな………」
ティラノはそう言うと、口元に笑みを浮かべながら廊下を進んでいった。
【つづく】
今回も総集編風エピソード。
フューゾニアとマシンメイルのおさらい&新事実。フュージョインの時に掛け声とポーズを取るのには、ちゃんとした理由がありました。
『ブレイバー』の意味とその頂点『マスター・ブレイバー』の存在の存在。最初は『グラン・ブレイバー』にしようと思っていたけど、デュランブレイバーと似てややこしくなりそうなのと、調べたら某アニメにも出ていたので、マスターにしました。
実はデュランダー隊で一番の危険人物だったアルス。シンナセンの世界観だから使う機会が少ないだけで、もしもサイバー世界だったら無双していたと思います。
シャスティの母ティファルと、ライバルだったクラレーが登場。カシンバルト魔法学園編で草介たちと出会う事になると思います。
勇者の重圧を受けていた草介。今作は「既に勇者であるデュラン」と、「勇者になろうとする、勇者であろうとする草介」という関係性で描写していたのですが、今回はそれが浮き彫りになった感じに。