異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第46話
仮面よ、再び
ロコロ王国の南東に位置する町『ハンクニーニ』には、とある貴族の屋敷が1件建っていた。そこのひと際大きな一室に、金髪碧眼の男性が乗り込んできた。
「父上!ルイを追い出したというのは、本当なのですか!?」
部屋の執務机についていた、男性がそのまま歳をとったかのような男性は、乗り込んできた自身の息子の顔を見て、タメ息をついた。
「………ああ、そうだ。我が一族にとってあのような恥さらしをいつまでも家に置いておくわけにもいくまい。」
「しかし!!」
「そんな事よりもラダン、お前をベロースリット領の新しい領主として推薦をしておいた。近いうちに王都に向かえ。」
男性は息子・ラダンの言葉を遮って淡々と告げた。息子は驚きの表情で父を見た。
「なっ!?私はそんなもの………!!」
「これは決定事項だ。お前に拒否権はない。」
「くっ………!!」
ラダンは悔しそうに顔を歪ませると、吐き捨てるように言って部屋を出て行った。入って来た時のように乱暴に大きな音を立てて閉められたドアを一瞥すると、男性は椅子の背もたれに寄りかかって鼻を鳴らした。
†
「―――あー、これ、結構傷んでるなぁ………」
草介とデュランの夜の話し合いから1週間がたった。
草介があてがわれた別荘の部屋で訪ねてきたシャスティやレピオと談笑をしながら武具の手入れをしていた草介が、抜いた剣を見ながら小さく呟いた。剣は所々傷つき、多少の刃こぼれも見られた。
「勇者様、2ヶ月くれぇ戦いっぱなしだっただからなぁ。」
「それにしたって、随分ボロボロだな?ソウスケ、何を斬ったんだ?」
レピオが問いかけると、草介はうーん、と考えてから口を開いた。
「えーと………ユーア村でゴブリンを1人斬って………後は、ほぼゾロゾロイドだな。」
「そりゃ、ボロボロになるわな。あんな金属の塊斬ってちゃ。」
人間サイズでそこまで強くない戦闘員型とはいえ、ゾロゾロイドは機怪魔獣だ。生物を斬って骨に直撃しても刃こぼれが生じるのだから、精密機械の塊であるロボットを斬ったのなら剣へのダメージは当たり前だろう。
納得したようにレピオが頷き、草介が顔を引きつらせていると、部屋をノックする音が聞こえた。
「はーい、どうぞー」
「失礼します~」
草介が返事をすると、ドアを開けて掃除用具を持ったクララが入って来た。
「お部屋の掃除に来ました~」
「うん、ありがとう。」
草介が頷くと、クララは窓に向かうと、用意していた雑巾で窓ガラスを吹き始めた。
「ソウスケさんのお部屋は、他の皆さんと違って掃除のやり甲斐がありますね。他の人のお部屋は、ほぼ未使用状態なものですから………」
「そっか………オレら、寝るのとメシ食うの以外は、ほとんど下のブレイベースにいるからな………」
「あー、それで………ずっと分からなかったんですけど、これで謎が解けました。」
レピオが何気ない感じで言うと、クララは納得したように頷いた。
「掃除が楽なのはいいのですが、お賃金をもらっている以上、仕事が少ないと申し訳ない気がしますね………」
「あー、何かゴメンな?」
「あ、いえ、そういうつもりでは………」
「ていうか、ちゃんと賃金もらってたのか?」
「匿ってもらっている身とはいえ、ちゃんと貰わないと周りに怪しまれてしまうので………」
ため息交じりに小さく言うクララにレピオが少し申し訳なさそうに答えると、逆にクララは恐縮して慌てて手を振った。草介とシャスティが苦笑をしている中、クララは執筆机のふき掃除を始めようとするが、机の足元あたりに置いてあった鞄を蹴って倒してしまい、その拍子に蓋が開いて中の物をぶちまけてしまった。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
「あーあ………まあ、大丈夫だよ。」
クララが慌てて中の物を拾おうとかがむのを見て、手伝おうと立ち上がった草介は笑いながら言った。
その鞄は、このシンナセンに召喚された時に持っていた草介の通学鞄であり、床には教科書やノートに筆記具等が散らばっていた。レピオとシャスティも手伝おうと腰を浮かせると、ふと、シャスティは自身の足元に1枚の紙製のカードが落ちているのが見えた。
シャスティが拾って見ると、それは透明の小さな袋のようなものに入っており、キラキラと虹色の光が反射し、3分の2を黒と白を基調としたゴテゴテしたドラゴンの精巧なイラストが描かれ、その上下にはシャスティの見たことのない文字や記号が記載されていた。
「キレーだなー………何だべ、これ?」
初めて見たそのカードに、思わず声が漏れる。このようにキラキラ光るカードも、ここまで精巧な絵も、シンナセンでは見たことがない。魔法を使った形跡がなく、どのように作られたのか分からない、草介のいた異世界のカードに目を輝かせた。
その声に反応して草介たちが振り返り、その手の中のカードに気が付いた。
「ん?なんだそれ?トレカか?」
「綺麗ですね………描かれているのは竜、でしょうか?」
「え?ああ、それか………」
覗き込むようにカードを見たレピオとクララが呟くと、草介は少し恥ずかしそうに頬を掻きながら口を開いた。
「それ、俺が小学生の時にハマった『バトルクリーチャーズ』っていうカードゲームでさ、部活の時にその話題になって、みんなで見せ合おうって話で持っていたんだよ。」
「そうなんですか………」
「ホログラム加工されてスリーブに入れてあるってことは、レアカードか?」
「まあな。『光魔絶対神竜グレイテストワイバーン』っていうレアカードでさ、これ当てた時は、本当にうれしかったんだよなー………召喚条件難しくて、デッキに入れらんなかったけど………」
「名前は強そうですね………」
懐かしそうにつぶやく草介に対して、クララは小さく首を傾げる。シンナセン生まれの2人にトレーディングカードゲームの事はよく分からないが、カードの名前から伝わってくる強そうな印象だけは想像できていた。レピオは微笑ましく思っていると、自身の足元にもう1つ何かが落ちているのが見えた。拾ってみれば、それはカブトムシを模した真っ赤な特撮ヒーローのアクリルキーホルダーであった。
「これも、地球のものか?」
「これって、カブトムシ、ですか?」
「え?ああ、それ?『カブトリオン』だよ。」
「カブトリオン?」
レピオの手の中のキーホルダーに気づいた草介が告げた名前に小首を傾げるシャスティ。草介は説明を続けた。
「俺が5歳の時に放送してた、『
「そ、そうか………」
「よっぽど好きだったんですね………」
レピオから受け取ったカブトリオンのキーホルダーを手に、いつになく熱く語る草介に若干引き気味になりレピオたち3人。草介の語りは止まらず、鞄の中を漁ってもう1つ、黒いスーツと長い触覚状のアンテナ、真っ赤なツインアイが目立つヒーローのキーホルダーを取り出した。
「カブトリオンも好きだったけど、敵のマカイゾーンにいたこの『
「そ、そうなんですね………え?これゴキブリなんですか?ゴキブリってここまでカッコよくできるものなんですか?」
「シリーズ20周年記念作品で歴代
「そ、そうなんだー………」
「すげーだなー………」
「あ………」
好きな作品の推しキャラを熱弁する草介であったが、レピオたちのどこか引いた反応に気が付いて、ハッとした。温度差で自分との間に『心の壁』を感じ取り、草介は恥ずかしそうに頬を赤くした。
「あー………ゴメン、熱くなりすぎた………でも、見たら多分、良さが分かると思うから………」
「そ、そうか………(ここ(シンナセン)じゃあ、見る機会ないと思うけど………というか、10周年までクワガタのヒーローいなかったんだ………カブトムシとツートップのイメージなのに………)」
「勇者様の憧れのヒーロー、見てみてぇなぁ………」
草介の弁解に、呆れた表情ながらもレピオは頷いた。シャスティとクララも少しどうしたらいいか分からない様子ながらも、草介の知らなかった一面を知れたためか少し笑みを浮かべていると、入り口の方でノックをする音が聞こえた。
「ノックして、もしもぉ~し?」
「あ、アスカ丸………」
「盛り上がっているところ申しわけないけれど、ちょっと今いいかな?下で隊長さんたちも集まってるから。」
いつの間にか入り口に立っていたアスカ丸にそう言われ、草介は少し焦ったような表情を見せながら頷いた。
†
草介がレピオとシャスティと共に1階の談話室に向かうと、デュランやニール、ハバキリたちが集まっており、フローも一緒にいた。
「話って、何?」
「うん、実はさっき、冒険者ギルドに行ったのだが、マスターから「厄介そうな依頼を受けたのだけど、受けてくれないか」と相談を受けてな。」
「厄介そうな相談?」
デュランが切り出した内容を草介が聞き返す。デュランは少し困ったような表情のまま続けた。
「それによれば、「ハンクニーニ」という町の調査をしてほしいと、匿名の依頼だったそうだ。」
「ハンクニーニ?」
「王国の南東にある町だよ。木材や物資を運ぶ運河がある物流の町なんだけどね、どういう訳か、貴族や商人、他にも冒険者や騎士が、異質なほど多く訪れているようなんだ。」
フローが簡単に説明をすると、草介はふーん、と頷いた。ニールも小さく頷くと、デュランが口を開いた。
「詳しい依頼内容は、直接話したいとのことだ。」
「私も少し気になってね。それで思い出したのだけれど、騎士団の誰かが「あの辺りには国に内緒で開かれているカジノがある」って噂しているのを聞いたことがあったんだ。」
「違法カジノが開帳されているって事か?」
「どうやら、ソイツが関連してそうだな………」
フローの情報に、デュランと草介は小さく頷いた。一同が考え込む中、アスカ丸が手にした三味線を「べべん」と鳴らした。
「何はともあれ、隊長、依頼人とは、数日以内に話し合う予定なのでしょう?」
「ああ、数日後に王都に来るそうだから、その時にギルドで話を、ということでな。」
「そうか………」
「カジノの真偽と正確な依頼内容はともかくとして、いずれにせよ、調べる必要はありそうだね。」
デュランの話を聞いて、草介とフローは頷いた。そこで何を思ったのか、フローは何かを決心したかのような表情で立ち上がった。
「フロー?」
「国に隠れて違法な賭博場を開帳している連中だ。私が行っては警戒されてしまうだろう。しかし、だからと言って、王族としても違法なカジノを放っておくわけにはいかない。」
そう言って、フローは部屋のドアに向かって歩き始めた。
「ここは、ふたたび『彼』の出番だ………」
「彼?」
草介が首を傾げている間に、フローは部屋を出て行きドアが小さく音を立てて閉じられた。
「隊長、『彼』とはいったい?」
「さあ?」
デュランたちが首を傾げる中、ふと、草介の脳裏にある可能性が浮かび上がった。
「まさか………」
草介が呟いて数分後、再び談話室のドアが開いたかと思うと、1人の人物が入って来た。
「話は聞かせてもらった。ここは私の出番だろう。」
入って来たのは、短い金髪の上から顔の上半分を白い仮面で覆い、濃いクリーム色の服に黒いズボン、肩に紫色の短いマントを羽織った騎士風の男性―――ベロースリット領の調査でも活躍をした『謎の冒険者』、ドン・エルティゴ・ティリメンヤーその人であった。
「やっぱり………」
「フロー、まだその一式持っていたのか………」
「気に入ってたのか、それ………」
「………まあね。」
呆れた様子で苦笑する草介たちに、エルティゴことフローレント姫は、仮面を両手で下げて目元を見せながら、少し恥ずかしそうに小さく返した。
†
その2日後。
冒険者ギルド『シルバー・ジョーンズ』の2階から上は、冒険者のための宿になっている。
その中でも、本来は団体客用の大部屋で、草介、デュラン、アスカ丸、そしてエルティゴの4人は、依頼人と面会していた。
「………」
「………」
「「「………」」」
草介たちの目の前に座るのは、右目の上に渦巻きのような模様が入った灰色の仮面で顔全体を隠した、そこそこ質のいい青系の服を着た成人男性であった。互いに顔を合わせて口を開かないまま、気まずい静寂が流れていた。
「「「「………(か、仮面キャラ被ったぁああーーー!?)」」」」
沈黙が続く中、草介たちは内心叫びたい気持ちでいっぱいだった。
(え?こんな事あるの?向こうも仮面付けてるなんて、想定外なんだけど!?)
(被っちゃったよ………キャラも仮面も被っちゃったよ………!)
(やれやれ………)
「あの、よろしいでしょうか………?」
「あ、はい………」
草介とデュランが冷や汗をかきながら内心で叫び、アスカ丸が肩をすくめていると、目の前の依頼人が少し困惑しながらも口を開いた。
「えー、私の事は………そうですね、『R』とでもお呼びください。訳があって、正体を明かせないものでして………」
「はあ………(まあ、正体明かせないのは、私も同じだけれど………)」
Rと名乗った男性に相槌を打つエルティゴ。草介は少し困惑するが、デュランとアスカ丸は警戒を怠らなかった。
「さて、依頼の内容だが………噂は聞いていると思うけれど、ハンクニーニの町で噂になっている、違法カジノを摘発してほしくてね。」
「私も噂は聞いているが、実在するのか、そのカジノというのは?」
「ああ、私自身は行ったことはないので場所は知れないが、あの町にカジノが存在しているのは確かだ。そのせいでガラの悪い連中も屯するようになって治安も悪くなっているというのに、町をまとめる貴族は証拠がないと言って何も対応してくれないのです………」
Rはそこまで言うと、仮面の下で憂鬱そうにため息をついた。
「私の弟も、そのカジノで大金を失ってしまい、それでもやめる事が出来ず、ついには実家の資金にまで手を出そうとして、家を追い出されてしまったのです………」
「それで、カジノをなくそうと?」
「ええ………」
Rの動機を聞いて、草介は納得をしたように頷いた。
「私の知っている情報を全て渡します。どうか、カジノの実態を掴んでください………!」
Rはそこまで言って頭を下げた。デュランとエルティゴはそこまで聞いて顔を見合わせると、頷きあってからRに向きなおった。
「………分かりました。そう言う事でしたら―――」
と、そこまでデュランが言いかけて依頼を受注しようとしたその時、ドアがノックされる。Rが顔を上げて返事をするよりも先にドアが開き、白髪で口ひげを生やして片眼鏡をかけた初老の男性が入って来た。
「え?あの………?」
「失礼いたします。」
服装からどこかの執事と思われる男性にデュランが声をかけようとするが、男性はそれを無視してRの傍まで近づいて行った。
「ラダン様、旦那様からの伝言です。『カジノの件については何もするな。用事を済ませる事だけを考えろ。』とのことだそうです」
「っ!!」
男性に「ラダン」と呼ばれたRが肩を震わせる。草介たちには何が何だか分からずにいると、Rは男性の方を見ずに、絞り出すように口を開いた。
「な、なんのことだ?私は………」
「とぼける必要はありません。」
Rが言い切るよりも先に男性はピシャリと遮ったかと思うと、右手を素早く振るって仮面を剥がして金髪碧眼の男性の顔が露わとなってしまった!
(あの顔は………?)
「もう一度言います。『用事を済ませる事だけを考えろ。』、以上です。」
「エスツーク………!」
エスツークと呼ばれた執事の男性は、Rことラダンの事を気にする素振りを見せずに「外で待っています。」とだけ言って、出口に向かい歩き始めた。
「くっ………!」
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ………」
ラダンが悔しそうに歯噛みをしているのをデュランが声をかける。これは何かあるそうだな、と草介が考えていると、そこでエルティゴがラダンに問いかけた。
「あなたは、確かギャンブルク家の長男でしたよね?」
「!ご存じでしたか………」
「ええ、まあ。(城での晩餐会で、見た事あったからね。)」
エルティゴに言われて少し驚いたものの、あきらめたかのようにため息をつくラダン。デュランがエルティゴに聞いた。
「ギャンブルク男爵?」
「ああ。ハンクニーニを治める男爵家で、物流業を生業とした貴族だ。しかし、男爵の息子が、何故?」
「………」
エルティゴが問いかけると、ラダンは少し顔を俯かせていた。デュランやアスカ丸は「想像以上に厄介そうだな………」と思っていると、ラダンがぽつりぽつりと話し始めた。
「………先ほど言った通り、私の弟を始めとした者がカジノの餌食になっているというのに、父は何の対処もしないでいるのです。挙句、賭けに取りつかれた弟のルイを家から追い出して………!」
「なるほど、先ほど話していた事は事実というわけか………」
「ええ………」
草介の問いかけにラダンは頷くと、彼は懐から紙の束と金貨の詰まった革製の袋を取り出した。
「これは、私が個人的に調べたものや、弟の部屋にあったカジノに関するものと思われるものをまとめた資料と、今回の報酬です!私はこれ以上、動くことは出来ません………だから、どうかこれ以上、弟の、ルイのような者を出さないためにも、どうか、どうか!お願いします………ッ!」
「………」
資料を手に頭を深く下げて懇願するラダンを前に、草介たちは顔を合わせて考え込んだ。しばし後に4人は頷きあうと、デュランが代表をしてラダンに声をかけた。
「………分かりました。その依頼、受けさせていただきます。」
「本当ですか!?」
顔を上げて、希望を滲ませた声をあげるラダン。デュランは軽く頷くが、そこでラダンが差し出してきた革袋を手にした。
「ですが、今回の件に関しては正式にギルドを通した依頼とはいえ、事情が事情なので報償を受け取るわけにはいきません。これは、弟さんが社会復帰をするための費用に充てるといいでしょう。」
「そ、それは………!」
「あなたが弟さんの事を大切に思っている事は、ここまで話してくれた事で十分に伝わっています。その気持ちだけで十分ですよ。」
「あ………ありがとう、ございます………!」
デュランはそう言いながら、ラダンに革袋を手渡す。ラダンはその手を取ると、涙を浮かべながら何度も感謝を述べていた。
†
「―――さて、と………」
「今回の件、クシーフの時よりも厄介そうだな………」
ラダンが部屋を出て行ってから数分後、4人は部屋で話し合いを始めていた。ニールやトライヤーズも、GPデバイス越しにリモートで参加している。
[町を治めている貴族が問題を放置しているとなると、その貴族が違法カジノに深くかかわっている可能性はあるな………]
「だとしたら、弟さんを追い出したのは、事情がバレそうになったから、ってのもあるな………」
「どちらにしても、現地で調べるべきだね。」
「ああ、先ずはハンクニーニの町に向かおう。」
ニールたちが話し合うと、仮面を外したフローも頷いた。デュランもそれに賛同をすると、アスカ丸に視線を移した。
「アスカ丸、すまないが草介とフロー………あ、いや、エルティゴを連れて、ハンクニーニに先行して調査をしてくれ。私たちは準備を整えてから、バトルトレインで向かおう。」
「承知♪」べべん
「エルティゴと草介も、アスカ丸よりも地理に詳しいと思うし、頼んだよ。」
「ああ。」「分かったよ。」
アスカ丸はデュラン隊長の指示に、三味線を鳴らしながら応えた。草介と、仮面を被りなおしたエルティゴも頷いて、それに応えた。
「シャスティも連れていくか?」
「そうだな………向こうで何があるか分からないし、いたら心強いだろうからな。」
「わかった。」
デュランが答えると、草介は頷いた。
†
数十分後、ブレイベースに戻った草介たちは、格納庫でアスカ丸の専用機『サイレントシャドー』に乗り込んでいた。
「車で行くのか?」
「厳密に言えば、少し違うね。デュラン隊長やトライメイルと同じで、ボクのマシンも合体形態があるんだ。」
「そうだったのか………」
草介の問いにアスカ丸が答えると、エルティゴも頷いた。アスカ丸は運転席に、エルティゴが助手席に座り、荷物を荷台に詰めた草介とシャスティが後部座席に座ると、アスカ丸はインパネ中央のホルダーに自身のGPデバイスをセットした。
[GPデバイス、承認いたしました。サイレントシャドーへようこそ、アスカ丸。]
デバイスセット承認の電子音声が響き渡ると、アスカ丸はサイレントシャドーを定位置にまで走らせた。
「ナイトガリバー、スタンバイ。」
[ナイトガリバー、合体開始。]
停車と同時にアスカ丸がデバイスを操作すると、電子音声の後に隣のハンガースペースから3機のガンマビークル、ナイトターボがアームの付いた牽引車で、アメンバットB、オクトモールHが自動操縦でそれぞれ移動を開始した。
ナイトターボがサイレントシャドーに覆いかぶさるように移動をすると、ゆっくりと下がって4本のアームがサイレントシャドーを掴んで接続された。その後ろからアメンバットとオクトモールが両翼の下部に接続され、合体が完了された。
「これが、『ナイトガリバー』。ガンマビークルとの合体形態さ。」
「おお!」「これが………」
車内でアスカ丸が説明をすると、2人は感嘆の声を上げた。合体したナイトガリバーがリフトに乗って地上へ移動を開始している間、アスカ丸は説明を続けた。
「キミたちは現地協力者だから教えるけれど、ボクのマシンメイルとガンマビークルは、隠密諜報活動のために、光学迷彩を始めとしたステルス機能や隠し武器が多く搭載されているんだ。」
「そうなんだかぁー………」
「けど、これだけのマシンが合体して重量を飛ばす馬力なら、エンジン音とか大きくなりそうじゃないか?」
「いや、そんな事はないよ。」
草介の素朴な質問に、アスカ丸は口の端を上げながら振り返った。
「ナイトターボは『反重力ハンググライダー』でね、両翼に内蔵された重力軽減装置で浮力を生み出して、風に乗って飛ぶんだ。つまり、機体の重量を軽くして浮かぶことが出来るから、デュランブレイバー級のサイズを抱えても飛行が可能なんだよ。」
「なるほど、漫画とかで忍者が使う大凧みたいだなー」
草介が納得をしたように頷くと、エルティゴも質問をした。
「けど、ハンググライダーなら推進力はないんじゃないの?」
「そんだよなぁ、凧みてぇに風に乗るだけだもんなぁ………」
「それも大丈夫だよ。合体したサイレントシャドーに内蔵された噴出機構から空気を噴き出して、比較的静かに推進できるよ。」
「なるほどね。隠密行動の事を色々考えて作られているわけか………」
アスカ丸の説明に草介たちが納得をしたように頷く。説明をしている間にリフトは地上にまで上昇を終えようとしていた。
「重力軽減装置、起動。」
アスカ丸が機器を操作すると、両翼の上部に電子基板のような丸い模様が浮かび上がり、緑色に光り始めた。
同じ頃、屋敷の裏庭が左右に割れて、四角いハッチが開いた。その下からナイトガリバーがせり上がってくると、目の前の木々が道を開くかのように外側に倒れると、その下から滑走路が顔を出し、角度がついてカタパルトとなった。
「ナイトガリバー、発進!」
宣言と共にアスカ丸がアクセルを踏み込むと、ナイトガリバーは空に向けて射出される!そのまま上空まで紙飛行機のように飛んで行くが、その姿が一瞬歪んだかと思うと、直ぐに姿を消してしまった。光学迷彩機能で透明化をしたのだ。
「姿を消して飛んで行くのか………」
「これで相手に勘づかれることはないね。」
「さーて………地球でいうところの「鬼が出るか、蛇が出るか」ってね。」
「てか、操縦は車の運転なんだな。」
「まあね。」
草介の小さな疑問にアスカ丸は何てことない風に答える中、ナイトガリバーは誰にも見られることも察されることもないまま、ハンクニーニに向けて飛んで行った。
【つづく】
ちょっとしたハプニングが草介の趣味の話になる展開。この辺は、草介が『普通の17歳の高校生』であることの描写になったかなと。
『昆冑騎士ビートリオン』は『ビーファイター』を意識した作品で、キルローチもブラックビートをイメージしたんですが、読み返してみたらダークヒーローなのに後年の扱いがモモタロスな事に気付いて笑ってしまいましたw
まさかの再登場を果たしたドン・エルティゴ・ティリメンヤー。でも相手も仮面かぶってたっていうオチに。Rの仮面のデザインは言わずもがなw
今回、違法カジノ摘発回にしたのは、忍者キャラであるアスカ丸の活躍回を書こうと考えたら潜入調査かなと思い、そこから違法カジノ摘発を思いつきました。各種ビークルにも色々機能とか隠し玉があるので、お楽しみに。
ギャンブルク家は、最初にギャンブル依存症のキャラを出そうと思い、「ギャンブル狂い」をもじってルイ・ギャンブルクって考えたら『ルイ』っていうヨーロッパ系でよくある名前とハプスブルクっぽい響きの名字になって我ながら会心の出来になりました。ちなみにラダンは、「ギャンブル下らん」から。
発進シーンで木々が倒れるのはお約束w