異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~ 作:オレの「自動追尾弾」
異世界勇者ロボ 第4話
勇者は異界で夜空を見上げた
王都ロシロのモルデュア城、その玉座の間では、クリセイ王がウロウロしていた。
「………王よ、心配なのは分かるが、もう少し落ち着いたらどうじゃ?」
「そ、そうは言うがなレヴァンティ………」
呆れた様子でレヴァンティが話しかけるが、王は不安そうな表情を隠す事が出来ないでいた。
「正直、我らの身勝手な事情であの2人を巻き込んでしまった……ガラティンがいるとはいえ、あの2人には重荷すぎたのかも知れん……」
「……それでも、既に賽は投げられたのじゃ。今は待つしか無かろう。」
「そうは言ってもだな……」
レヴァンティは不安そうな王に対して呆れにも似た表情になる。その時、玉座の間の大きな扉が勢いよく開き、兵士の1人が慌てて入って来た。
「何事だ!?」
「し、失礼します!お、王都の入り口に、巨大な空飛ぶ機械が!!」
「何!?まさか、機怪魔獣か!?」
兵士の報告に王とレヴァンティは驚く。しかし、兵士は続けた。
「い、いえ……それが、降りて来たのは、姫様や例の勇者達でして………」
「何と!それは
兵士の報告に王は目を見開いて驚いた。しかし、レヴァンティは驚きつつも疑問を抱いた。
「し、しかし、空を飛ぶ機械で帰って来るとは、どういう事じゃ………?」
「いや、今は勇者やフローレントの帰還を喜ぶべきだろう。」
王はレヴァンティに対して笑顔でそう答えると、玉座の間から飛び出して行った。取り残されたレヴァンティと兵士は互いに顔を見合わせると、王の後を追って行った。
†
王都の出入り口は、人でごった返していた。突如として飛来してきた乗り物―――Dキャリアーとなったブレイバード―――に民が近づこうとしているのを、兵士たちが「危険だから!」と言って押し留めている。
「あー、流石にこれで飛んで来たのは、目立ちすぎたかな………」
「だな……」
あまり考えずにDキャリアーで王都まで戻って来てしまった事を反省するデュランと草介。後ろではニールが呆れたように首を左右に振り、アルスとシャスティは後ろに隠れるようにしている所に、フローレントが姿を現した。
「みんな、心配かけてすまない!」
「おお、姫様だ!」「フローレント様!!」
フローレントが手を振ると、民衆は喜びの声を上げた。
「人気なんだな、あのお姫様。」
「そうだな。」
デュランと草介はフローレントの人気に感心していた。すると、集まっていた民衆の後ろから、ひときわ大きな声が上がる。
「フローレント!!」
その声の主は、クリセイ王だった。王の姿に気付いた民衆と兵士は一斉に左右に分かれて彼に道を開けると、王はフローレントに向けて走って来た。
「父上!」
「おお、フローレント!無事で何よりだ!」
王はフローレントに駆け寄ると、彼女を抱きしめた。
「心配をかけました。」
「いや、良い。お前が無事だったなら、それで良いのだ。」
親子の再会を喜ぶと、王は草介とデュラン達に向き直って頭を下げた。
「ありがとう!娘を守ってくれて本当にありがとう!」
「い、いや、俺なんて、ほとんど何もできなかったし………」
草介は言いよどんでいると、追い付いてきたらしいレヴァンティが小走りでやって来た。
「おお、戻ったか勇者よ。」
レヴァンティの一言に、周囲は草介達を「勇者」と呼んだ事でざわめき出した。
「勇者だって!?」
「あの人が昨日召喚されたという……!」
「おお、あれが噂の………!」
「噂になってたのか………」
「人の口に戸は立てられぬって言うしなー………」
草介が照れくさそうにしていると、レヴァンティはシャスティの姿を見つけて意外そうな顔になった。
「む?シャスティか!?何故勇者達と一緒におる?」
「お、お師匠さま………」
「お師匠さま?」
「シャスティって、レヴァンティさんの弟子だったのか?」
「ん、んだ………」
デュランの疑問にシャスティが応える。王もシャスティだけではなく、ニールやアルスの姿を見て、更にガラティンがいない事に気付いた。
「何故シャスティがいる?それにそこの2人は?それとガラティンの姿が見えぬが?」
「第一、この機械は何じゃ?魔王軍の機怪魔獣とも違うようじゃが?」
王とレヴァンティが次々と疑問をデュラン達にぶつける。デュランは説明をしたいとは思ったが、周囲で多くの民衆が聞き耳を立てているのが見えた。
「と、とりあえず、どこか人目のつかない場所に移動しましょう!ここじゃ人が多すぎるんで!!」
「……む?それもそうだな………よし、話は城でしよう。その機械も、城の敷地内に移動できるよう手配させよう。」
「ありがとうございます。」
王が兵士に手配をさせると、兵士は通信装置で連絡をした。場所の手配が済んだのを確認すると、デュランはDキャリアーに乗り込んで飛び立ち、草介達は王に連れられて城へと向かった。
†
城に到着してから数十分後、デュラン達と王、レヴァンティ、そしてフローレント姫を囲んだ会議が、城の一室で開かれた。
大きなテーブルと多くの椅子が並ぶ広い大広間に案内された草介とデュラン達が座って待っていると、ドアが開いて王やレヴァンティ、シャスティたちが入って来た。
シャスティは白を基調とした服の上から黒いとんがり帽子とマントを付けた服装に着替えていた。そして、その後ろから金髪ストレートヘアで薄いピンク色のドレスを身に纏った、フローレント姫が入って来た。
「お待たせしてしまって、申し訳ありませんわ。」
「フローレント姫……」
姫の姿を見た草介とデュランは唖然としていた。先ほどまでの凛々しい姿とは打って変わって、お淑やかなお姫様となったフローレントに驚きを隠せなかった。その様子に気付いたフローレントが、柔らかい笑顔をフッ、と崩して、いたずらっぽく笑った。
「ごめんごめん、普段は一応、お姫様らしくしておかないといけなくてね………この髪も
「驚いたな……とてもお姫様らしい恰好じゃないか。」
デュランが素直に感想を述べると、フローレントはちょっと機嫌を良くしたようだった。王やレヴァンティは慣れているようだが、フローレントの変わりように、草介とデュラン達は驚きを隠せなかった。
「あー………それで早速なのだが、何があったのか、聞かせてもらってもいいか?」
王の問いに、草介は「そうですね……」と頷いてから語り始めた。
「―――以上が、ズンケート砦での戦いの顛末、そして、我々『銀河連邦警察』の身分と目的になります。」
「……そうか。」
王は、重々しい口調で言葉を発した。デュラン達の話には理解できない単語もあったが、自分たちの行動のせいでデュラン達に迷惑がかかった事は理解できた。王はゆっくりと立ち上がって、草介とデュラン達の前に歩み寄った。
「本当に、すまなかった……!」
そう言って、深く頭を下げた。
「我らの身勝手な事情で、そなたたちに損害を与えた挙句、危険な目に遭わせてしまった……」
「い、いや!そんな頭なんて下げなくていいですから!!」
「そうですよ!」
草介が慌てて言うと、デュランも慌てて立ち上がる。
「私も、現状把握のためとはいえ素性をちゃんと話さなかったですし、追っていたワルンダイツの足取りがつかめたから、結果的に助かったといえば助かりましたから………」
「そうだとしても、我らが勇者として召喚した者に、このような負担を強いてしまったのだ。国王として、申し訳が立たぬ。」
王の言葉に、草介はそれ以上返せず、ただ黙って頭を下げるしかなかった。だが、その空気を破るように、王はフローレントへと視線を移した。
「それから……お前だ、フローレント。」
「……はい。」
フローレントは姿勢を正して答える。
「なぜ、影武者などという手段を使ったのだ。しかも、我らにも知らせずに。」
「……申し訳ありません、父上。ですが、あの時、魔王軍の狙いが“聖なる石”にあると知り、私自身が囮となる必要があると判断しました。」
「その判断が誤りとは言わぬ。だが、それであれば、せめてわしらに一言申してくれても良かったであろう!」
王の一喝にフローレントは身を縮こませた。
「おかげでワシだけではなく、民や兵士にまで心配をかけたのだぞ!?分かっておるのか!?」
「ほ、本当に申し訳ありません………皆に心配をかけていたのは、十二分に分かっております……何せ目の前にいたので………」
「姫、あんた、どんな気持ちでその場にいたのさ?」
「めっちゃ気まずかったです………」
王の怒りに、フローレントは申し訳なさそうに答える。草介はフローレントの言葉に思わず突っ込みを入れると、レヴァンティがシャスティに向けて話しかけた。
「お前もじゃぞシャスティ。何故ワシに何も相談しなかった。」
「は、はい……」
「まったく、変装魔法では、見た目と声はどうにかなったとしても、お前の訛りではバレる可能性が大いにあろうに………」
呆れた様子でレヴァンティが苦言を示す。フローレントとシャスティは、叱られてシュンと小さくなっていた。草介とアルスは顔をしかめ、デュランはため息をつき、ニールはやれやれと小さく左右に首を振った。
「まあ、確かに本人の承諾があったとしても、そんな小さな女の子を影武者に使うのはいかがなものかな………」
「ッ!オ、オラ!男だべ!!」
「「「え!?」」」
デュランの言葉に、シャスティは強く大声で言い返す。草介やデュランは驚きのあまり声を上げた。3人が呆気に取られていると、クリセイ王はため息をついて、2人に語り掛けた。
「……まあ、心配はしたが、結果的に無事であったのは良かった。これからは、あまり無茶や危険な事をするな。いいな?」
「は、はい!」
王の言葉にフローレントは慌てて応えた。シャスティもホッと胸をなでおろすと、ニールが口を開いた。
「さて、これからの事についてだが………」
「王よ。勇者たちの正体や銀河連邦警察の存在については、当面、秘匿とすべきでは?」
レヴァンティが手を上げて提案する。王も小さく頷いた。
「……うむ。口さがない民の中で噂となれば、魔王軍に情報が漏れることもある。」
「全てはまだ始まったばかり。今こそ、我らが一致団結すべき時でしょう。」
「……分かった。」
王は深く頷いた。
「勇者デュラン、ソウスケ、そしてその仲間たちよ。これより貴殿らの正体と力に関する情報は王国の最上位機密とする。代わりに――」
王は強く言い切った。
「国を挙げて、そなたらを全面的に支援しよう。」
「父上……!」
フローレントの瞳に安堵の色が広がる。
「まずは、必要な物資、情報、協力者の手配だ。これからが本当の戦いとなろう。」
「……ありがとうございます。」
草介とデュランは、感謝の言葉と共に、深々と頭を下げた。
「先ずは、当面の拠点だな。王族の別荘が王都の郊外にあるから、そこを使えるように手配をしておいた。あそこは王族の土地だから、限られた者しか出入りできない。フローレント、後で案内してやれ。」
「分かりました、父上。」
王に言われて、フローレントはお辞儀をした。
†
王都から馬車でおよそ15分。王国最大の湖『トトメチオ湖』の畔に、それはひっそりと佇んでいた。
白を基調とした三階建ての屋敷は、石造りの重厚な外壁に、赤褐色の瓦屋根を頂いている。玄関には半円アーチの柱廊があり、そこには王家の紋章が彫り込まれた紋章旗が風にはためいていた。湖に面した側には広々としたバルコニーがあり、湖面を望む開放的な窓が数多く設けられている。
周囲には手入れの行き届いた庭園が広がり、季節の花々が彩りを添えている。
「ひゃー!王族の別荘だけあって、デカいなぁ……」
門から庭園を通り、屋敷を前にした草介が思わず声を上げた。
「これでも、王族の所有するものの中では、小さいほうなんだけどね………」
(わー、金持ちっぽいセリフ………)
苦笑交じりにフローレントが嫌味の全くない感じで言うと、草介は内心呆れていた。フローレントは白いブラウスに黒いズボンという服装に着替えていた。
「まあ、確かにこれだけ大きければ、拠点として十分だろうな。」
デュランが屋敷を見上げながら評価する。草介達はフローレントに案内されて吹き抜けのある大広間に入り、その奥の廊下を抜けてドアを開くと、暖炉のある広いリビングに出た。
「ここがリビングだ。部屋はたくさんあるから、好きに使って良いよ。」
「ありがとう、フローレント姫。」
草介がフローレントに礼を言う。しかし、フローレントは苦笑して首を横に振った。
「気軽に『フロー』で良いよ。親しい人はそう呼んでくれるんだ。ソウスケとはそんなに歳も変わらないみたいだしね。」
「じゃあ、フロー。」
草介がそう呼ぶと、フローは笑顔で頷いた。
「さて、落ち着いたところで、今後の方針を決めたい。」
肩にかけたリュックサックを下ろしてソファーに座ったニールが切り出した。デュランも頷いて、口を開いた。
「先ずは、バラバラになった私達の仲間とジップレートの捜索、魔王軍と手を組んだワルンダイツの情報収集と討伐に、『聖剣』の捜索、それに、草介を元の世界、あるいは惑星へ帰還させる事、だな。」
「ああ。」
デュランの言葉にフローが頷くと、草介が聞いた。
「デュランの仲間って、何人いるんだ?」
「私の部隊は、私とニールさんにアルスの他に3人、それと、別の部隊から出向した1人を合わせて7人だ。」
デュランがスマホを取り出して操作をすると、空中にモニターが投影されて、4人の顔写真が映された。
「わ!?何だべ、それ!?」
「随分ハイテクなんだな、そのスマホ?」
「『GPデバイス』だ。銀河連邦警察隊員に配布される通信デバイスで、警察手帳も兼ねている。」
デュランが簡単に説明すると、モニターに映った4人の紹介をした。
「右から「レピオ」、「ハバキリ」、「レイェン」、「アスカ丸」だ。」
「ワープの際の事故の影響か、GPデバイスの通信機能に障害が出ているせいで、現在地は不明だ。だが、ジップレートの捜索機能は生きていた。」
ニールがそう続けると、リュックサックを開けて小さな箱を取り出すと、中からジップレートをいくつか取り出した。
「ジップレート!?」
「お前たちと合流するまでに、いくつかジップレートを回収する事ができた。まあ、主にマシンメイルの整備パーツや衣料品関係だがな。だが、これを回収できたのは良かった。」
そう言って、ジップレートの一つを手に取った。他の物と違って、中央にGPデバイスの裏に記されたものと同じ、銀河連邦警察のものと思われるエンブレムが刻まれていた。
「そのプレートは………!!」
「どっちにしろ、デュランカーは修理が必要だ。それに、こいつがあれば色々と便利だからな。」
ニールはニヤリと笑いながら言う。
数分後、ニールに連れられて屋敷の外に出た一行。
「何が始まるんだ?」
「ジップレートを解凍するなら、外に出た方がいいもんなー」
草介は、この2日で見たジップレートの解凍を思い出しながら言った。あれだけ大きなマシンメイルが出てくるとなれば、狭い屋内では大変なことになるのは目に見えていた。
しかし、それを聞いたデュランが口の端を吊り上げながら言った。
「まあ、これから解凍するのは、それ以上のものだけどね………」
「え?」
デュランの言葉に草介が聞き返そうとするが、デュランはプレートをGPデバイスのスロットに装填した。
[ジップレートのセットを確認しました。]
「ブレイベース、解凍!!」
[ブレイベース、エクストラクト!!]
デュランの宣言と共に電子音声が鳴り響くと、屋敷の上空に光が放たれ、直径が数100m以上もある巨大な八角形の円盤型の建造物が現れた!
「な!?何じゃこりゃぁあああ!?」
「で、デカい………!?」
「デュ、デュラン殿、あれは一体……!?」
突然現れた巨大建造物に慄く3人。デュランは無理もないと思いつつも答えた。
「あれは『ブレイベース』、惑星での長期間任務を行う際に持ち込める大型移動基地だ。」
「移動基地……」
「こいつがあれば、マシンメイルの修復も出来るし、情報の精査も可能だ。」
ニールがそう言って上空のブレイベースを見上げた。だが、と草介が疑問を投げる。
「だけど、これどこに置くんだ?湖の中とか?」
「いや、問題はないであります。ブレイベースには、惑星の環境と一体化して地下や海底に隠す機能があるのであります。」
「一体化だって!?」
アルスの説明にフローが思わず声を出すが、デュランはGPデバイスを操作し始めた。すると、ブレイベースが再度光りはじめたかと思うと、屋敷を中心に降り注ぐように降り立ち、姿を消してしまった。
「今、ブレイベースはこの屋敷の周囲と一体化して、地下に潜った。」
「そ、そんなことまでできるのか?」
「すごいな………」
草介とフローが感嘆の声を上げる。シャスティは声も出ない程驚きと感動を覚えていた。
「さて、入り口は……」
デュランがそう言って屋敷の中に戻っていくと、草介たちも後を追う。そして、先ほどのリビングに戻ると、暖炉の上の方に先ほどまではなかった、銀河連邦警察の小さなエンブレムがあった。
「あれ、このエンブレムって………」
「ここが入り口だ。」
そう言ってデュランは、エンブレムにGPデバイスをかざした。すると、ガコンッという音と共に暖炉が奥に引っ込み、銀色の金属製の小さな部屋のようなスペースが現れた。
「うお!?隠し通路か!?」
「す、スゴイだぁ………」
「まさに秘密基地だな………!」
驚く草介、シャスティ、フロー。一同は部屋に入ると、デュランは壁に埋め込まれたパネルを操作した。すると、出入口のスライドドアが閉じて、部屋がゆっくりと下降を始めた。
「部屋が動いている!?」
「エレベーターか………」
「エレベーター?昇降機の事か?」
草介は直ぐにこの部屋がエレベーターである事に気が付き、フローは聞きなれない単語を聞き返したが、すぐにこちらの世界でいう昇降機であると理解した。エレベーターは40秒程度の時間で静止した。
「着いたぞ。」
「早いな………」
「ここは屋敷の地下100m程だ。」
エレベーターを出ると、そこには銀色に光る円形の大広間が広がっており、中央には円卓と丸型のソファー、周囲の壁にはモニターやコンソールが並んでいる。
「ここが、メインルームだ。基地中枢にあたる場所で、作戦の立案、通信の統括、そしてジップレートの管理などを行える。」
「み、見た事のないものばかりだぁ!」
「急にSFになったな………」
「これは興味深いな………」
フローとシャスティは未知の技術に目を輝かせ、草介は今までのファンタジーな世界から急にSFな世界観に軽く引いていた。
そんな3人をしり目に、アルスとニールはコンソールを操作していた。
「………うん、基地の機能は正常に稼働しているであります!」
「よし、これで大分任務が捗るな。」
「すげぇな……ここ、全部動かしてるのか?」
「一部は自動で制御されてるが、ほとんどは我々が操作してる。まあ、慣れれば誰でも扱えるさ。」
草介の質問にデュランが答えた。
「さて、それじゃあ早速、マシンメイルの修復を始めるか。」
デュランはそう言ってGPデバイスを操作した。数分後、壁の一部が開くとガラス窓があり、その外には大きな格納庫が広がっており、巨大なリフトが下りてDキャリアーが運ばれてきた。
「あそこが整備ドック兼格納庫だ。他のマシンメイルも格納できる。」
デュランが説明をしている間に、Dキャリアーからデュランカーが巨大なアームによって分離されて、それぞれ格納庫に運ばれて行くと、無数のアームやセンサーが機体を調べ始めた。
[デュランカー、損傷率58%。修理完了までの予測時間、10時間。]
[ブレイバード、損傷率3%。交換必要部品の確認後、交換と洗浄に移る。]
電子音声がメンテナンス状況を報告する。窓の外では、デュランカーに取り憑いていたアームが損傷したパーツを外し始めていた。
「ああやって、メンテナンスできるのか。便利だな………」
「まあ、流石に細かい部分の修繕とかは、私も行うけどね。」
「メンテナンスといえば、私たちのGPデバイスも、一応検査しておくか。」
そう言ってニールがコンソールを操作すると、壁際の機械の一部がスライドして、30cm×15cm程の穴がスライドして開いた。デュラン達はそれを見ると、それぞれGPデバイスを入れた。すると、再度蓋が閉じて、何やら機械の駆動音が聞こえ始めたかと思うと、1,2分もしない内に再度開いた。
[GPデバイスの検査、メンテナンス完了しました。]
「さて、これで通信が問題なく出来るはずだ。」
デュランがそう言ってデバイスを操作しようとしたその時、部屋の中に電子音が鳴り響いた。
「この音は!?」
「受信音?って、このナンバーは………!!」
モニターを見たアルスが慌ててコンソールを操作すると、モニターの一つの画面が切り替わり、濃い紫色の長髪を後ろで三つ編みにして、眼鏡をかけた鋭い目の女性の顔が映し出された。
[ああ、やっとつながった………!]
「クレシュさん!!」
「誰……?」
「銀河連邦警察長官の秘書の、クレシュさんだ。」
少し焦った様子の女性・クレシュの説明を小声でするデュラン。画面の向こうでは、クレシュが咳を一つして冷静な表情になった。
[ブレイバー・デュラン、定時連絡がなかったので、長官も私も心配しましたよ。]
「すみません、こちらに到着時に、トラブルに見舞われまして………」
[トラブルですか?]
[デュランと通信がつながったのか!?]
クレシュが聞き返し、デュランが説明をしようとしたその時、画面の向こうから男性の声が聞こえてきた。
クレシュが慌てたかと思うと、クレシュの後ろから毛先が青くグラデーションになった銀色の長髪を持った男性が現れた。白い制服に肩には円形の赤い飾りを中心に3つの突起が付いた肩当てを着けている。
「!?」
その姿を見た瞬間、草介達は気が引き締まる思いとなった。画面越しだというのに、その男性の持つ威厳や威圧感を感じ取ったからである。
しかし、画面向こうの男性はデュラン達の顔を確認すると、安堵の笑みを浮かべていた。
[デュラン、無事だったか………ニールとアルスも、怪我はなさそうだな!]
「エ、エクスロード長官………!!」
エクスロードと呼ばれた男性の姿を確認したデュラン達銀河連邦警察の3人は、姿勢を正して右手の人差し指と中指を伸ばした敬礼を向けた。エクスロードはそれに笑顔で応じる。
[いや、楽にしてくれ。ああ、そちらの方々は、現地の方かな?」
「は、はい、ロコロ王国第一王女、フローレント・モルデュアです……」
「勇薙草介です。」
「あ、シャスティだ、です………」
エクスロードに自己紹介をする草介達。
[はじめまして。私は、銀河連邦警察長官のエクスロードだ。協力に感謝する。]
エクスロードは穏やかな笑顔で自己紹介をした。その笑顔を見た草介達は、思わず緊張が解けて、肩の力が少し抜けるのを感じた。
[それで、一体何があったのだ?さっきの話を聞く限り、何やらトラブルが起きたようだが?]
「それについてですが………さっき同じ説明をしたばかりなので、かくかくしかじかで済ませても大丈夫ですか?」
[……うん、それは構わないよ。]
デュランの提案にエクスロードは呆気に取られた顔になるが肯定し、デュラン達の説明を受けた。
「かくかくしかじか………」
[なんと………そのような事態になっていたのか………!!]
[小説って便利ですね。]
デュランの説明を聞いて、少し驚いた表情になるエクスロード。クレシュは少しメタな呟きをしていたが、全員流した。
[とりあえず、他のメンバーとの合流と、ワルンダイツの対応を頼みたい。]
[こちらも、救援を出したいのですが、ワルンダイツの援助を受けた犯罪組織の活動が宇宙各地で活発化している影響で、他のブレイバーを始めとした隊員が対応に追われている状況のため、手が離せません。]
エクスロードがデュランに頼み、クレシュはワルンダイツの対応に追われている現状を説明する。デュランはそれに対して、真っ直ぐな目で返事をした。
「それは承知の上です。長官直々の指令です。私たちはこの任務を完遂してみせます。」
デュランの目に迷いは無く、揺るぎない意志があった。それはニールやアルスも同じであり、誰一人として任務を下りる素振りを見せることはなかった。エクスロードは、それに笑って見せた。
[うむ、頼もしい限りだ。だが、無茶なことだけはしないでくれ。任務が遂行されても、君たちの命が失われてしまっては、意味がないからな。]
「はっ!」
エクスロードの言葉に、デュラン達は敬礼で返した。
[さて、次にソウスケくんについてなのだが……]
「え!?あ、はい………」
突然話を振られて、慌てる草介。エクスロードは続けた。
[君の故郷は、太陽系第三惑星・地球の日本という国だったね?]
「は、はい。」
[太陽系第三惑星・地球………こちらの宇宙でも惑星の確認が出来ました。シンナセンから数十光年離れた惑星ですね。]
「あ、そうだったんだ………」
シンナセンが異世界ではなく、別の惑星であると知って少し拍子抜けする草介。「異世界じゃなくって、
[草介くん、君の家の住所を、詳しく教えてくれないか?向こうでは、君が突然姿を消して騒ぎになっているだろうからね。我々の方で説明ができるようにしたいからね。ビデオレターを送れるように、こちらで手配しよう。」
「あ……はい、ありがとうございます!」
エクスロードの申し出に、草介は了承した。そして、自分の住所をエクスロードに教えた。
[さて、ソウスケ君やフローレント姫、それにシャスティ君には、これからデュラン達に協力してもらう事になるだろう。そこで、協力者用のデバイスを貸し出す事を許可しよう。アルス君、“アレ”を彼らに]
「はいであります!」
アルスはエクスロードの指示を受けて、コンソールを操作した。すると、壁の一部が小さく開いて、中から3つの腕時計のようなものが出てきた。地球でいうスマートウォッチのようにも見えるが、8cm近くあって大分大きい。
「これは?」
[それは『GPウォッチ』。銀河連邦警察協力者に渡されるデバイスだ。通信や位置情報の他にも、様々な機能を有している。君たちにそれぞれ1つずつ渡しておこう。詳しい説明は、アルス君にでも聞いてくれ。]
「あ、ありがとうございます!」
草介達はお礼を言うと、それぞれGPウォッチを受け取って、左手首に装着した。
「これ、かっこいいなぁ………!」
「少し重い気もするけどな。」
シャスティは目を輝かせて見ていたが、フローはGPウォッチの重みを感じていた。しかし、その重みは不思議と悪い感じはしなかった。
[では諸君、こちらも可能な限り支援をしよう。皆の無事と健闘を祈る!]
エクスロードはそう言うと、右拳の甲を見せるポーズと共に、叫んだ。
[ギャラクシー!!]
「「「「「「………………………」」」」」」
エクスロードが掛け声を言うが、草介やデュラン達は反応に困るだけであった。エクスロードはそんな微妙な雰囲気に気がついたのか、姿勢を正して気恥ずかし気に後頭部を掻いた。
[うーん、3日くらい考えた挨拶なんだけど、どーしてかウケないなぁ………]
[くだらない事考えないで下さいよ………では、通信はこれにて。]
「あ、は、はい………」
クレシュが呆れた様子でツッコミを入れつつ、通信は終了した。
「さ、さて、それでは、GPウォッチの操作説明をするでありますね!」
「あ、うん。お願いするよ。」
アルスに提案されて、草介達は中央のテーブルに集まった。
†
その日の夜、別荘のメインルームの一角――大きなアーチ型の窓辺に、草介はひとり立っていた。
蝋燭の光が揺れる室内とは対照的に、窓の外には、闇に溶けそうな森と、その上に広がる異世界の星空。
「……見慣れない星ばっかだ。」
草介はぽつりと呟いた。
星の配置も、月の形も、地球のそれとは微妙に違う。
昔、田舎で見た星座を探そうとして、気づけば何も見つからず、代わりに胸の奥がひりついた。
家族、友人、部活、学校――あたりまえだった日々が、まるで夢だったかのように思える。
「……戻れるのかな、いつか。」
そんな独り言に、返事はない。
が、次の瞬間、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「夜空を見上げるのが好きなのか?」
「デュラン………」
振り返ると、そこにはデュランの姿があった。デュランは笑みを浮かべながら、歩み寄って来る。草介が言いよどんでいると、彼は隣に立った。
「私は好きだな。任務で色々な惑星へ行くたびに星空や空気も変わるから、その違いを見るのが、密かな楽しみになっているんだ。」
「そうなんだ………地球ではあんまり気にしたことなかったけどさ……昨日から、なんかよく見るようになった。」
草介は苦笑しながら答える。
「……地球の星空は、どんなものなんだ?」
デュランの問いに、草介は少し目を細めた。
「こことは、全然違う。街の光で星なんてよく見えなくてさ。でも、光の少ない田舎や山の方に行けば、結構よく見えるよ。」
「そうなのか……興味あるな。」
「でも………それも懐かしく感じるなぁ………」
デュランが興味深そうに相槌を打つ。しかし、草介は少しもの悲し気な目で星空を見ていた。
(これは、故郷を思い出してるのか……)
デュランが草介の心中を察して、口をつぐんでいると、草介がぽつりと呟いた。
「………帰れるのかな、俺………?」
草介が少し俯くと、デュランは言葉を選ぶようにして、そっと言った。
「帰れるさ、我々も帰られるように努力しているからね。」
デュランの声は穏やかで優しく、それでいて力強いものだった。そしてそれは、草介の胸の奥にじんわりと広がっていく。
「……ありがと。」
「いや?礼を言われるほどでもないよ。」
デュランが冗談めかして笑うので、草介もつられて笑ってしまう。その瞬間、二人の間の空気が一気に軽くなった気がした。
「さて、そろそろ私は寝るが、ソウスケはどうする?」
「………もう少ししたらにするよ。」
「そうか、お休み。」
「ああ。」
デュランは短い会話を交わしてから、部屋を出て行く。草介はその背中を見送ると、窓越しに夜空を見上げた。
【つづく】