異世界勇者ロボ~勇者として異世界に召喚されたら勇者ロボも一緒だったんだが!?~   作:オレの「自動追尾弾」

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第6話 氷と海の魔獣、魔法国に現る

異世界勇者ロボ 第6話

氷と海の魔獣、魔法国に現る

 

 

 

 

 

「何?ミノタウロスの群れを蹴散らした3人組?」

 

デュラン達が冒険者ギルドに到着したのと同じ頃、ロコロ王国の廃墟と化したとある村跡で休養していたキアラは、ゴブリンの1人から報告を聞いていた。

 

「はい、5日ほど前、あっさり蹴散らしたそうなのですが………」

「勇者達が現れたのと、同じ頃ね………機械兵器は使っていないようだけど、仲間の可能性も捨てきれないわね………」

 

カラから飲み物を受け取りながらキアラは気になるのか少し考え込む仕草を見せた。

 

「既に本国への報告も済ませてあります。いかがなさいますか?」

「気になるし、向かった方がいいかもしれないわね。機怪魔獣の到着次第、その街に向かいましょう。」

「承知いたしました。」

 

キアラの決定に、ボルグとカラは頷き承知した。すると、キアラの休んでいたテントに入って来る者がいた。ポーラとシャークの双子だ。

 

「それなら、私らも一緒に行こうかしらね。」

「あ、あんた達………」

 

首から先日拾ってそのままの赤い宝石のネックレス―――『聖なる石』であるのだが、ポーラ達はそれを知らない。―――をかけたポーラの申し出に、キアラは一瞬苦い顔になった。それに気付いたのか、シャークがキアラに告げた。

 

「まあ、タダでとは言わないよ。俺たちのマシンで機怪魔獣と一緒に乗せてあげるし。」

「あんた達のマシン?」

「ああ。デスダイト様の命令でもあるしね。例の銀河連邦警察の連中の相手は、私達に任せてよ。」

 

シャークの言葉にキアラは訝しげに聞き返し、シャークは当然のように頷いた。

 

「まあ、そこまで言うなら乗っけてもらおうかしら……」

「そうこなくっちゃね♪」

 

キアラは渋々と頷くと、双子は足取り軽くテントから出て行った。

 

「キアラ様………」

「よろしかったダスか?」

「……気にくわないけど、連中の力無くしては私達の、お父様の悲願は叶わないわ。」

 

少し不安そうなボルグとカラの問いに、キアラはバツが悪そうに顔をしかめて言った。

現状、レイヴン魔帝国の戦力は、ワルンダイツの提供する機怪魔獣に依存をしている。戦力は圧倒的であるものの、自分たちの力で侵攻できないのは歯痒い思いだった。

 

「今はまだ、機怪魔獣を使うしか無いわ。だけど、いずれは………!」

 

キアラは拳を握りしめて、そう呟く。その様子を、ボルグとカラはただ見守るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

センオウ大陸の南側に位置する、『サンルスター魔法国』。

その国名が示す通り、シンナセンにある国の中でも魔法技術の発展と研究が盛んに行われており、歴史に名を遺すような著名な魔導士を数多く輩出している。

魔法を学ぶ魔法学園もあり、魔導士を目指す者はサンルスターを必ず訪れると言われている。

 

隣国・ロコロ王国の国境沿いにある街『ホパク』は、周囲を山々に囲われ、魔法に使う杖や儀式に使う素材を作成する工房や販売する店が立ち並ぶ『魔道具職人の街』として知られている。数日前までミノタウロスの群れに占領されていたが、それも解放されてかつての賑わいを取り戻し始めていた。

 

「ここがホパクか………」

 

ロコロ王国の王都ロシロから一晩かけて、入国にはあまり手間はかからずホパクに到着した草介達。初めて訪れた草介やデュランは、見た事もない物だらけの街に目を輝かせていた。店先には杖や箒、燭台等の魔道具が並び、乾燥された素材や薬草が吊るされ、街の広場では複数人の魔導士が競い合うように魔術を出し合っていた。

 

「こ、これが『魔法の世界』、かぁ………!」

「2人とも、気持ちは分からないでもないけど、あまりキョロキョロしてるとお上りさんって思われちゃうよ?」

 

ホパクの街並みに目を奪われながら歩く草介たち。フローが3人に呆れていると、何故かシャスティはフローの後ろに隠れるようにして歩いていた。

 

「ん?どーしたシャスティ?」

「あ、いや……オラ、この国ってあんまり………」

 

気になった草介が聞くと、シャスティは顔を伏せた。何か事情があるのだろうと思った草介は、それ以上聞かない事にした。

 

「さて、3人について情報を集めるとしようか。」

「あ、そうだな。迷子になるといけないし、二手に分かれるか。」

 

デュランがそう言うと、草介達は二手に分かれて聞き込みを開始した。

 

 

 

Q.あなたは、この街を救った3人組について何か知っていますか?

 

魔法の杖専門店店員(32)

「俺はその場を見てないけれど、とにかく助かったよ。店の商品も金も無事だったしな。」

 

魔法薬薬局 薬剤師(72)

「ああ。私は逃げ遅れて隠れていたんだけど、ミノタウロスに見つかってしまってね。その内の1人が助けてくれたんだよ。その後かい?さあ?直ぐにどこか行っちゃったからねえ………」

 

魔法道具行商人(36)

「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!取り出したりますはこのお鍋、魔力を込めるとあら不思議!温かくなったり冷たくなったり!野営の際のお料理に便利だよー!え?街を救った3人について?いやぁ、自分、実はミノタウロスの襲撃前に街の外出てて、帰って来たのは昨日なもんでねぇ………」

 

若い冒険者の魔法使い(24)

「僕もミノタウロス討伐の依頼を受けてこの街に来たんだけどね、とっくにやっつけられちゃったって聞いて気が抜けちゃったよ……ああ、その3人なら、ミノタウロスに街の片づけさせた後に、東の方に行ったって話だよ?」

 

街の子供(9)

「お姉ちゃんたち、すごかったんだよ!ミノタウロスをどりゃー!あちょー!ってやっつけて!それでミノタウロスにいう事聞かせてね。それで、ちっちゃい銀色のプレート知らないかって聞かれたから、東の森で見かけたって教えたよ。」

 

 

 

―――1時間後、ある程度情報の集まった草介達は、一度集まるために街にある冒険者ギルド『魔女の鍋』で集まっていた。

 

「―――情報をまとめると、3人は東に向かって行ったって事か………」

「こちらの予測通りではあるな……」

「それじゃあ、ここから東に向かうか?」

「森でジップレートを見つけたとしたら、その後の動向が分からないからなぁ……」

 

 

集めた情報を基にこの先の行き先を考える一同。

 

「先ずは、話に出てきた東の森に行ってみるか。何か足取りの手がかりがあるかもしれないからな。」

「そうだな。」

 

デュランがそう言うと、一同はそれに賛同して立ち上がった。

 

「ほら、この間潰したゴブリンの巣で見つけた宝箱だぜ!いっちょ前に鍵がかかってるから、中身はまだ見てないけどよ。」

「それでは、鍵開けのできる者を呼んできますね。」

 

後ろのカウンターで冒険者と受付のそんな話が聞こえる中、デュランは飲み物の代金をテーブルに置いてギルドから出て行こうとした。

 

「街を出る前に、行きたい所があるのだが、良いだろうか?」

「ん?ああ、構わないが………」

 

ギルドを出て直ぐにニールはデュラン達にそう言う。デュラン達はそれに了承すると、一同は街の中央に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ホパクの街を一望できる山では、魔王軍が木々の間から街を見下ろしていた。

 

「あれがホパクの街か………」

「ミノタウロスから解放されて、活気を取り戻しているようですな………」

 

望遠鏡を手に街の様子を見ていたキアラとカラが呟く。ボルグは部下のゴブリン達から、情報を収集していた。

 

「キアラ様、どうやら勇者達もこの街に来ているみたいダス。」

「何ですって!?」

「やはり、ミノタウロスを倒したのは連中の仲間だったようですね。いかがなさいますか?」

 

ボルグの話を聞いてキアラは少し考えていると、背後でネイルを弄っていたポーラが話しかけてきた。

 

「まだ街にいるんでしょー?それなら、街から出られないよーにしてから、街を襲うってのはどうよ?」

「………確かに、それが得策ね。」

 

キアラはポーラの態度にムッとするも、提案には賛同する。テーブルに広げられたホパクの地図に目を落とした。

 

「この街は周囲を山に囲まれている関係上、街の出入り口は南と東西の3つしかない。そこでランダート複数機で待ち伏せして、街の中央広場に『アレ』を送り込むのよ。」

「おお、いいわねーそれ♪」

 

キアラの作戦を聞いてポーラもそれに賛同する。シャークも頷いていると、カラが話しかけてきた。

 

「正直、『アレ』には我らも助かっている。我らの犠牲が少なくて済むからな………」

「そりゃどーも。」

 

シャークはカラの言葉になんてことないように答える。キアラは顔を上げると、指示を飛ばした。

 

「総員、直ちに配置に着きなさい!作戦開始よ!」

「「は!!」」

「りょーかーい♪」

「はいはい。」

 

キアラの号令にカラたちは力強く、ポーラとシャークは気の抜けた感じで応えた。

 

「デュランブレイバーが出ても、アンタたちに任せていいのよね?」

「ああ。GPをほっておくわけにもいかねーからな。」

 

キアラの問いにシャークが笑いながら応える。隣のポーラも、不敵に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なるほど、情報の通りだったな。」

 

一方その頃、『()()()』を目の前にニールが神妙な面持ちで呟いた。

 

そして、―――手にしたフォークでそれを突き刺すと、口に運んだ。

 

 

 

「………うん、やっぱりここの店のケーキ、おいしい♪」

 

 

 

ニールは満面の笑みでそう言った。

ここはホパクの街の中央広場にある喫茶店。

店先の席に座るニールの隣や対面の席では、デュランや草介、フローたちが、呆れたように苦笑していた。

 

「行きたい場所って、ここだったのかよ………」

「え……あ、うん。情報収集の時に、この店の評判耳にしてて………」

 

草介が呆れたように指摘をすると、ニールは恥ずかし気に頬を赤くしてもごもごと答える。

 

「ニールさん、甘党だったんだね………」

「本部でも『GPスイーツ部』を設立するほど有名であります……」

「そこまでか………」

 

フローも呆れながら紅茶を口にする。ニールは照れながらも、最後の一口をフォークに突き刺した。

 

「さて、最後の一口を~♪」

 

ニールは満面の笑みでケーキを口に運び―――

 

 

 

ドォンッ

 

 

 

「「「!?」」」

「ひやぁ!?」

「ぅえ!?」

 

しかし、ケーキが口に入らんとしたその瞬間、突如として上空から巨大なコンテナが4つ中央広場に落下すると、その衝撃で地面が震え、土煙が沸き上がった。

 

「な、何だ!?」

「空から落ちてきたぞ!!」

 

周囲の人々がざわつき、何事かと見に来ていると、コンテナの側面が一斉に開いた。

 

『ウィーン………』

『ピポポポ………』

『ギチチチ………』

 

コンテナの中には、くすんだ銀色の頭部に鋭利な爪を持った黒いボディのアンドロイドらしきものが何体もすし詰め状態で入っていた。アンドロイド達は吊り上がった双眼を赤く光らせると、電子音や駆動音をボディから発しながらゾロゾロと外に出てきた。

 

「な、何だあいつらは!?」

「あれは『ゾロゾロイドG1』!対人用の戦闘員機怪魔獣だ!」

「魔王軍という事か!!」

 

何十体ものゾロゾロイドG1を見たデュランがその名前を言う。ゾロゾロイドらはコンテナから出てくると、周囲にいる人々に襲い掛かっていた!

 

「あいつら、何の警告も無しに………!!」

「ニールさん、早く対処を………ニールさん?」

 

デュランはニールにゾロゾロイドの対処を指示しようとするが、ニールは何故か跪いていた。その視線の先には、フォークに刺さったまま地面に落ちて砂まみれになったケーキがあった。

 

「さ、最後の、ひとくち………」

「ニ、ニールさん………」

 

涙目で落ちたケーキを見つめるニール。今までのクールな彼女の印象が一気に崩れ去ってしまい、なんて声をかけていいのか分からなくなる一同。

 

『ピポポポ………』

 

そうこうしている内に、ゾロゾロイド軍団は周囲の人々に襲い掛かろうとしていた。冒険者や魔法使いが咄嗟に対処をしようと構え、剣や槍、弓を構えた冒険者が攻撃を仕掛け、次々に斬り捨てられ突き刺され、倒されて行く。しかし、1体1体倒すのにそこまで苦労はしないものの、ゾロゾロイドの数は多く、次第に押され始めていた。

 

「このままじゃ、街の人達が!」

「ニールさん!早く何とかしないと!!」

 

デュランと草介が思わず叫ぶ。ニールはフォークを握り締めプルプルと震えていたが、顔を上げると同時にキッとゾロゾロイドたちを睨みつけた。

 

「おのれェッ!!ケーキの仇ィイッ!!」

 

叫ぶと同時に、どこから出したのか両手にサブマシンガンを構えて乱射!10体近くのゾロゾロイドが銃弾に倒れていき、対処していた冒険者たちは唖然としていた。

 

「た、食べ物の怨みは恐ろしいとはよく言うが………」

「ケーキの最後の一口で、ここまでなるものなのか……?」

 

怒りのままにゾロゾロイドを次々に倒していくニールを後ろから見ていたデュランと草介が、そう呟いていた。

 

「ここは任せて、一般市民の避難を!」

「わ、分かった!」

 

ニールは怒りながらも振り返ってデュラン達に指示を飛ばした。デュランはそれに応えると、草介達と共に走り出した。

 

『ウィーン………』

「!?」

 

その時、銃弾を逃れたらしい1体がニールの背後から鉤爪を振りかざして襲い掛かってきた!ニールは咄嗟の事で反応が遅れたが、

 

「“アクアバレット”!!」

「!?」

 

その時、ゾロゾロイドの頭と胴体に、数発の水の球が着弾してその体を吹き飛ばした!それに止まらず、周囲のゾロゾロイドにも水の弾丸が命中して、倒れ込み機能を停止した。

 

「今の声は………!!」

 

ニールが振り返った先にいたのは、杖を構えたシャスティであった。シャスティは震える手で杖を持ちながら、ニールに向かって言った。

 

「ニ、ニールさん!オラも、手伝うだ!」

「し、しかし………」

「これでも、お師匠さんに鍛えられてるだよ!アレ程度なら、何とか………!」

 

ニールは少し難色を見せたものの、シャスティの目を見て「これは引かないな」と思い、頷いた。

 

「分かった。なら、頼む!」

「はい!」

 

シャスティは頷くと杖を構え直すと、ゾロゾロイドの群れに向かって駆け出した!

 

「な、何だ彼女は……!?」

「奇妙な武器を持っているが………」

「それにあの()、無詠唱であれだけの数を、正確に命中させるなんて………!」

 

2人の戦いぶりを見た冒険者たちは、その実力を見て感心と驚愕の混じった顔で呆然と見ていた。しかし、ゾロゾロイドたちの襲撃に我に返り、直ぐに武器を構えて迎撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、機怪魔獣が!?」

「ああ、街の出入り口に陣取っていて、避難が出来ないんだ……!」

 

一方、街の市民を避難させるべく動いていたデュラン達であったが、街の出入り口付近で同じく市民の避難を誘導していた魔導士から情報を聞いて、驚きを隠せないでいた。

建物の影から覗いてみれば、人だかりの向こうにある出入り口に先ほどのコンテナが陣取り、更にその後ろには、ランダート数体が立ちはだかっていた。市民たちは爪や銃を威嚇するように構える機怪魔獣たちを前に、距離を取って動けないでいた。

 

「他2ヶ所にある出入口も、同じような状態らしい………これでは、街から逃げる事が出来ないぞ………!」

 

冒険者が嘆く。ゾロゾロイド程度ならば冒険者で何とかなりそうではあるが、ランダート相手ではそうはいかない。

 

「デュラン、これじゃあ………」

「ああ。私が後ろの連中とコンテナを何とかするから、その隙に街の人の避難を………」

 

デュランと草介が小声で話し合い、デュランがポケットから取り出したGPデバイスを操作しようとしたその時、

 

ボゴンッ

「!?」

「何だ?うわあ!?」

「きゃあっ!?」

 

突然、石畳の下から太い木の根が何本も生えてきたかと思うと、草介、フロー、アルスの手や足を絡めとり、3人を拘束してしまった!

 

「みんな!?」

「やはり現れたわね、勇者!」

「!?」

 

デュランが頭上高くにまで吊し上げられてしまった3人(草介に至っては逆さ吊りである。)を見上げ叫んだその時、デュランの背後から聞き覚えのある声がした。振り返った先には、ボルグとカラ、ポーラとシャークを従えたキアラがいた。

 

「君は!!」

「ここで会ったが百年目!2度の敗北の雪辱、ここで晴らさせてもらうわよ!!」

「こーして会うのは初めてだな、GPのブレイバー?ワルンダイツ六魔獣将、海のシャークだ。」

「同じく、氷のポーラよ♪」

 

キアラが手にした剣の切っ先をデュランに向けて言い放つと、隣のシャークとポーラも名乗った。それに気付いてか、カラも杖を手に名乗りを上げた。

 

「そう言えば、我々もちゃんと名乗った事はなかったな………我はゴブリン族族長カレが一子、ゴブリンメイジのカラ!」

「同じく、オーク族族長ヴルフの息子、ボルグダス!」

 

カラに倣ってボルグも名乗る。周囲の冒険者たちはフローたちを助けようとしたが、ゾロゾロイドに阻まれてしまい近づくことが出来なかった。

 

「本当なら、あのデュランブレイバーの状態で決着を着けたかったけれど、合体前に倒せるなら、それに越したことはないものね。」

「冷静な判断をお持ちのようで………」

「姫様、あちらは我々が見張っておきます。」

 

剣を抜いたデュランが構えながら皮肉交じりに呟く。カラとポーラが見張りのために草介らの元に向かうと、キアラはデュランに向かって斬りかかった!

 

「でぇえいッ!!」

「くっ!」

 

デュランは咄嗟に剣で防ぎ、キアラの剣を弾く。キアラは一旦距離を取ると、その隙にボルグが棍棒を振りかざして飛びかかってきた!

 

「うおりゃぁあッ!!」

「く……っ!」

 

デュランは剣で棍棒を受け止める。しかし、ボルグのパワーに押され、後方に吹き飛ばされてしまった!

 

「“アクアバレット”!!」

 

更に、着地もままならないデュランに向けてシャークが水の弾丸を3発放つ!

 

「ぐぇ!?」

「きゃッ!?」

「あ………」

 

………しかし、放たれた水弾はデュランに掠りもせずに大きく反れて、1発は地面に、残りはボルグの頭とキアラの足元に着弾してしまった。

 

「ちょっとアンタ!どこ狙ってるのよ!!」

「ご、ごめん………まだ使えるようになってから日が浅いし………」

「それなら使わないでよ!カラ、戻ったら教えてあげなさい!」

「しょ、承知しました………」

 

シャークのノーコンっぷりにキアラが叱りつけた。頭に直撃したボルグは後頭部を押さえながらしゃがんで悶絶し、シャークは申し訳なさそうにしていた。

 

「く……ッ!」

 

デュランは立ち上がると、剣をキアラに向けて構える。それを吊るされながら見ていた草介達は、悔し気に下唇を噛んだ。

 

「このままでは、どちらにしてもお兄ちゃんが押される一方であります………」

「どうしたら………」

「術を扱っている、あのゴブリンメイジを何とか出来れば………」

 

吊るされたままで何も出来ない事を歯痒く思いながらも、草介達は打開策を考える。ポーラはフローを見つめて妙にうっとりしていたが。

ふと、その時草介は左手首に巻かれた物を、先日貰ったGPウォッチが目に入り、ある事を思い出した。

 

「そうだ!()()があった!」

 

草介はすぐさま、GPウォッチの液晶画面に人差し指を当てると、声を出した。

 

「『ウォッチャー』、GO!」

 

草介の声に反応して『ポォン』という電子音が鳴ると彼は指を離した。すると、GPウォッチがベルトから分離して液晶画面がパタンとたたまれると、空中で変形して人型のロボットになった!

 

これこそ、GPウォッチの機能の1つ、『ウォッチャー』である。

現地協力者の護衛や偵察を行う形態であり、全長が10cm程度であるにもかかわらず成人男性程度1人相手ならば完封できる程度の戦闘力を有している優れ物だ。緊急時に起動できるよう、使用者の指紋と音声で認識できる。

 

変形したウォッチャーは真っ直ぐにカラに向かって行くと、飛び蹴りをその頭に喰らわせた!

 

「うご!?」

「え!?」

 

突然の不意打ちにカラは対応する事が出来ずモロに喰らってしまい、おまけに被っていた鬘が外れて1本も毛のない頭が露出してしまった。その瞬間、術者の集中が途切れた影響か木の根が解けて、草介たちは地面に落下した。

 

「おっと……!」

「ぐげッ!?」

 

フローは直ぐに着地をして落ちてきたアルスを受け止めることが出来たが、逆さ吊りにされていた草介は背中から落ちて潰れたカエルのような声を上げてしまう。草介が痛がっていると、ウォッチャーが戻ってきて草介の顔の近くで得意げにガッツポーズを取った。

 

「あ、ああ、ありがとうな、ウォッチャー………」

 

痛がりながらも起き上がってウォッチャーにお礼を言うと、ウォッチャーの頭を人差し指で撫でてやった。

 

「あ、あいつら逃げたの!?」

 

草介達が逃れたのに気付いてキアラが声を上げると、草介は剣を引き抜いてキアラに向かって行った。剣を振り下ろそうとすると、キアラは咄嗟にそれを受け止めた。

 

「うぐっ………!」

「デュラン!ここは俺たちに任せて、あっちを頼む!」

「分かった!」

 

草介の剣の強さにキアラが顔を顰めていると、その間に草介が叫んだ。デュランはそれに応えると、GPデバイスを取り出して操作をした。

 

「させるかよぉ!!」

 

シャークとポーラがそれを阻もうとするが、シャークの目の前にウォッチャーが現れて回し蹴りを仕掛ける!シャークは咄嗟に下がって避けるが、ウォッチャーは小さいボディを活かした素早い動きでシャークの周囲を飛び跳ねて攪乱する。

 

「シャーク!」

 

ポーラがシャークの元に向かおうとするが、目の前に刀身が現れて動きを止めた。

 

「悪いが、私も君を見逃せないのでね。それと、その石は私の物だ。返してくれるかな?」

 

剣を持ったフローがポーラを睨みながら言い放った。しかし、当のポーラはフローを見つめていた。

 

「あら、そんなに私カワイイかしら?」

「いや、そう言う意味では………」

「何やってんだ、こいつら……?」

「さあ?」

 

ポーラが頬を赤らめてフローを見つめる様に、倒れたカラが起きるのを手伝っていたボルグは呆れていた。当のフローは困ったように苦笑し、後ろにいたアルスも呆れていた。

 

「デュランカー!!」

 

そうこうしているうちに、デュランがアプリケーションの1つを機動して叫ぶと、遠くの方から爆音を響かせてデュランカーが走って来た。

 

「何だあれは!?」

 

市民の1人がそれを見て思わず声を上げる。ランダートが気付いて迎撃しようとするが、デュランカーは緑色の光に包まれたかと思うと、さながら流星のように飛び上がってバリケードを超えてデュランの元に向かって来る!

 

「あんな機能付いてるの!?」

「人乗ってたら体持たなくて危ないから、無人の時限定だけどね。」

「「なるほど納得!!」」

 

ツッコミを入れたキアラに返答をしたデュランは、思わずハモった草介とキアラの声をバックに大きくジャンプをした。

 

「フュージョイン!!」

 

そして、飛んで来たデュランカーにフュージョインすると同時に空中でデュランダーに変形した!

 

『チェンジ!デュランダー!!アームシューター!!』

 

ゾロゾロイドを十数体踏みつぶしながら着地すると同時にアームシューターを展開、ランダートに向けて発射すると、2対が爆発に沈んだ!

 

「何だあの機械兵器は!?」

「機怪魔獣ではないのか………!?」

『みなさん、離れてください!!』

 

突然現れたデュランダーに市民や冒険者が困惑していたが、デュランダーは市民たちに向けて叫ぶ。何をする気なのかと思っていると、デュランダーはゾロゾロイドの入っていたコンテナを掴み、持ち上げ始めていた。

 

「み、みんな下がれぇえ!!」

『うおおおおおおおおおおお!!』

 

デュランダーが何をする気なのか察した冒険者が叫ぶと同時に、デュランダーはコンテナを振り回して残ったランダートにぶつけていく!

 

『どりゃぁあああああ!!』

 

ランダートが倒れたのを見たデュランダーはコンテナを放り投げると遠くの山の方に飛んで行った。デュランダーは出入口を塞ぐコンテナを退かすついでに、ランダートを一掃する手段を思いつき、この行動に出たのだ。

 

『みなさん、今の内に避難してください!』

「ああ、ありがとう!」「みんな、こっちだ!」

「随分ムチャするわね、アイツ………」

 

デュランの言葉を聞いた冒険者たちは、目の前にいるゾロゾロイドの残党を倒すと市民たちの避難を誘導し始めた。デュランの大胆な行動を見たキアラは、ドン引きであった。

 

『よし、後2ヶ所!!』

「好き勝手させないわよ!シャーク!」

「おう!!」

 

残り2ヶ所の出入り口に向かおうとしたデュランダーであったが、それを見たポーラとシャークは右手を掲げると「パチン!」と指を鳴らした。

その瞬間、その場に黒い光のエネルギーで出来た『道』のようなものが現れた。その『道』の出現した際の衝撃波で草介たちは思わず怯み、吹き飛ばされそうになった。

 

「な、何だ!?」

『これは………!?』

プワーーーッ

 

草介とフローが驚く暇もなく、遠くから甲高い警笛が聞こえて来た。黒い道の向こうを見れば、道の向こうから白いボディにグリーンのラインの走ったE6系新幹線と連結したブルーのラインの走った700系新幹線がこちらに向かって来ていた!

 

「新幹線!?」

「乗り心地良かったわよ?」

「あれ乗って来たのでありますか!?」

 

新幹線が向かって来るのに草介が驚くのも束の間、ポーラはブルーの新幹線に、シャークはグリーンの新幹線に向かって大ジャンプした!

 

「「フュージョイン!!」」

 

叫ぶと同時に2人は新幹線にフュージョイン・一体化をしてしまった!

 

『フュージョインだと!?』

「あいつらもフューゾニアだったのか!?」

 

ポーラとシャークがフューゾニアであった事実に驚くも、新幹線は草介達の目の前を通り過ぎた。それと同時にキアラ達も回収され、その場から消えていた。

 

『キアラちゃん、準備はいい?』

「ええ、良いわ。下ろしてちょうだい。」

『りょーかーい♪』

 

新幹線内で双子とキアラがそう言うと、新幹線の中央の貨物車両が分離して地面に下ろされた。すると、貨物車両のコンテナが開き、中からがっしりしたボディに両腕の先がトゲ付きの巨大な鉄球になった機怪魔獣が出てきた!

 

『機怪魔獣か!!』

『このトロルハンマーE2は、これまでの機怪魔獣とは違うわよ!』

『私らもいるしね!!』

『俺たちが『六魔獣将』たる所以を教えてやるよ!!』

 

キアラがトロルハンマーから叫ぶと、2両の新幹線が戻ってきた。

 

『『チェーンジ!!』』

 

掛け声と共に、青い新幹線の後ろ半分が左右に開くように反転すると四足歩行の動物の脚が出現、更に車両の先端がグルンと反転し、シロクマの頭部が出現した!

一方、緑の新幹線も同様に後ろ半分が反転すると、こちらは左右に大きなヒレ、屋根に背ビレ、後ろに尻尾が展開し、先端が反転すると鼻先に牙のような無数のトゲを生やした大きな吻を持ったノコギリザメの頭部が現れた!

 

 

 

 

 

氷魔獣将(ひょうまじゅうしょう)!ポーラダイト!!』

海魔獣将(かいまじゅうしょう)!シャークダイト!!』

 

 

 

 

 

シロクマとノコギリザメのマシンメイル、ポーラダイトとシャークダイトがトロルハンマーの両隣に並び立つ!ポーラダイトは後脚で立って、シャークダイトは空中に浮かんで牙を見せつけるように吠える。

 

「ポ、ポーラダイトに、シャークダイト、だと!?」

『さあ、私たち六魔獣将にのみ与えられた『ビーストメイル』の力、思い知らせてあげようじゃないの!』

「ビーストメイル………!?」

 

2体のマシンメイル、否、ビーストメイルの登場に、デュランダーたちに戦慄が走った………

 

 

 

 

 

【つづく】

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